異世界卜部 〜異世界でもコードギアスの世界でも四聖剣は虚名にあらず!〜   作:シャール

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卜部 食する

「じゃーん!ここよ!」

 

 たどり着いたのはいかにも酒場といった雰囲気の場所だった。

 

「ほう、なかなか良い雰囲気だな。」

 

「でしょ!早速中に入るわよ」

 

スイングドアを潜り抜けた先は、様々な年齢の男女が楽しそうに食事をしていた。

 

「ここはギルドっていうのよ。本当は酒場じゃないんだけどね。」

 

「ギルドとは一体何だ。」

 

「えっ!そこから!?流石に世情に疎いというかなんというか・・・。生まれてずっと森の中で生活してきたワケ?」

 

「すまない。」

 

 カルメンはため息をつく。

 

「まあいいわ。今に始まったことじゃないし。」

 

 少しは学ばないとな。図書館があるといいのだが。

 

「まあギルドっていうのは簡単に言えば便利屋組合ってところかしらね。」

 

「便利屋か。」

 

「そう。まあ基本的には依頼主がここ。ギルドに依頼を持ってくるの。ほらあそこ。」

 

 カルメンに指さされた方向を見ると丁度一組の男女がコルクボードから何かしらの紙を取っていた。

 

「丁度依頼を受けたって感じね。ああやって依頼を受けて、達成に向かって行動。で、報酬を受け取るって感じね。シンプルでしょ。」

 

「それは失敗したらどうなるんだ?」

 

「え?そうね・・・。基本は皆身の丈に合った依頼を受けるんだけど、もし失敗したら違約金を払うことになってるわ。手痛い出費だから無茶する人も出てこないってワケよ。」

 

 なるほど。よくできたシステムだな。

 

「まあ、最近は戦争もあってか軍隊がやる仕事を代行して羽振りが良いみたいだけどね。」 

 

 成程。ある時は傭兵。ある時は冒険者。ある時は狩人と大分幅の広い仕事をしているみたいだ。

 

「卜部さんも登録するだけしてみたら?」

 

「できるのか?」

 

「まあ、身分を問わない実力主義な仕事だからね。」

 

 この世界でもし長く過ごすなら確かに食い扶持は必要になる。それにいつまでもアリシラや他の皆に世話になるわけにはいかない。

 男たるもの自分の世話は自分でしないとな。

 

「ではやろう。」

 

「決まりね!向こうのカウンターでできるから。私は先にテーブルに着いてるわね。」

 

 カルメンは手を振ってテーブルの方へと向かう。

 

 俺は彼女に教えられた通りカウンターの方に向かう。

 

「初めまして!ギルドの方は初めてですか?」

 

 受付嬢と思しき少女が声をかけてきた。

 

「ああ。登録をしたいのだが。」

 

「登録ですね。少々お待ちください!」

 

 元気がいいな。それに身なりがしっかりしている。このギルドは大分儲かっているようだな。

 

「ではこの書類にご記入をお願いいます!」

 

 書類とペンを受け取るが。

 

 よ、読めない。

 

 そう、俺はこの世界の文字が読めないのだ。これは困った・・・。

 

「えっと。代筆いたしましょうか?」

 

 そんな俺を慮ってくれたのか、にこやかな笑みで俺に問いかけてくる。

 

 無念だ・・・。

 

 俺は書類とペンを彼女に手渡す。

 

「ありがとうございます!では年齢とお名前を伺ってもよろしいですか?」

 

「卜部巧雪。歳は36になる。」

 

「ありがとうございます!卜部様でよろしいですか?」

 

「好きに呼んでくれて構わない。」

 

「はい!では卜部様ですね!次にですが何か資格はございますか?」

 

「資格?」

 

 資格か。一応1級戦車整備士と危険物取扱者の資格はあるが、通用するとは思えんな。

 

「特には無いな。」

 

「かしこまりました。こちらはお仕事を通して取得可能なので是非ご一考ください!」

 

「どういった資格があるんだ?」

 

 受付嬢はカウンターの下から何らかの用紙を取り出す。

 

「ええと、有名どころで言うと大型モンスター狩猟許可証。薬草鑑定士。宝物鑑定士。モンスタテイマー等ですかね。まだまだ沢山あります!この用紙に書いてあるのですが・・・。」

 

 ばつの悪そうな顔をする。

 

 そればかりは仕方がない。カルメンを頼ることにしよう。

 

「連れに頼むとしよう。それをくれないか。」

 

「はい!」

 

 俺は用紙を受け取る。

 

「話が逸れましたね。では次の項目に移りますね!」

 

「ああ。」

 

「出身国はどちらですか?」

 

「日本だ。」

 

「ニッポン?ですか?」

 

 しまった。つい反射で答えてしまった。

 

「遠い遠い東の島国だ。田舎過ぎてあまり知られていないんだが・・・。」

 

「確かに大陸の外には広い海があってまだ未知の場所が多いといいます。まさかその人と会えるなんて光栄です!!」

 

「あ、ああ。とても遠くだ。」

 

 騙したようで申し訳ないな。しかし何とかごまかすことができた。

 

「では次の項目ですね。現住所ですね。」

 

「流浪の身故、決まった住所は無いな。」

 

「住宅は無し。ですね。完了です!お疲れ様です!では処理してくるので少々お待ちください!」

 

 受付嬢はそのまま奥へと消えていった。

 

「へー『ニッポン』ね~。」

 

 気が付かなかったが横のカウンターに寄っかかっていた、つばの広い帽子を被った男がそう言った。

 

「盗み聞きしたようで悪いね。僕、吟遊詩人兼冒険家をやらせてもらってるんだけど、非常に気になるなあ。その『ニッポン』って国。」

 

 まさか誰かに話しかけられるとは思いもしなかった。だが一度ついた嘘はばれなければ嘘ではない。

 

「遠い遠い東のしがない国だ。そこには四季があって季節ごとに美しい景色がある。それに食事も絶品だ。」

 

「へえ。どうゆー料理なのかな?」

 

「魚が主食だ。それに合わせて白飯。漬物を合わせ、みそ汁という汁物がある。」

 

「予想はできないけど気になるねえ。君も冒険者になるみたいだし、もし良かったらもっと教えてよ『ニッポン』の事をさ。」

 

 するとその男に奥から戻ってきた他の受付嬢が話しかける。

 

「リューク様。こちら報酬になります。」

 

 麻の袋に入った通貨が手渡される

 

「なんか申し訳ないね。あんなのを狩っただけでこんな大金貰っちゃって。」

 

「いえ!リューク様にはお世話になっておりますので!」

 

「そうかい。ありがとうね。じゃあ僕はこれで。」

 

 リュークと呼ばれたその男は帽子のつばを掴んで軽く会釈をする。

 

「では卜部さんもまた。」

 

 そう言ってギルドの外に歩いて出ていった。

 

「お待たせしました!」

 

 丁度戻ってきたようだ。

 

「登録手続きはこれで完了です!これを。」

 

 何らかのカードを手渡される。

 

「これは?」

 

「ギルドカードです!白色なのでまだ最低ランクですね。お仕事ぶりによって昇給するのでお仕事頑張ってくださいね!あと身分証にもなるので失くさないようお願いします!再発行料が別途必要になってしまいますので!」

 

「ああ分かった。世話になったな。」

 

「いえ。では!」

 

 ふう。やっと終わったようだ。カルメンを大分待たせてしまったな。

 

 俺はギルド内を歩き回ってカルメンを探す。

 

 お、いたいた。どうやら既に何らかの料理を頼んでいたようだ。

 

「もう。遅いわよ卜部さん。でも丁度料理来たところだしタイミングが良かったわね。エールで良かったかしら?」

 

「ああ。ありがとう。」

 

 俺はカルメンの正面側に座る。

 

「では私たちの出会いを祝して!乾杯!」

 

「乾杯。」

 

 ジョッキを片手に乾杯する。

 では早速頂こう。

 

 まずは一口。

 

 ほう、見た目は普通の発泡酒だが中々フルーティーな味わいだ。大麦から作られるのによくぞここまで果実感を出せるな。

 深みのある香りだ。まさに大人の飲み物といった感じだろう。

 

 これまではずっと焼酎や日本酒ばかり飲んできたので中々新鮮だ。悪くないな。ビールも。

 

「どう!この店で発酵させてるのよ!ここに比べれば他の店なんて泥水ね泥水。」

 

「自家製か。」

 

 また一口飲んでみる。

 

 やはり美味い。

 周りを見ると他の皆もこのエールを飲んでいるようだ。この店の名物なのだろう。

 

「さ、料理もどうぞ!」

 

 机に並んでいるのは、多種多様な料理だった。ではまずはこの野菜の和え物から頂こう。

 見たところほうれん草の胡麻和えに近いが・・・。

 

 木製のフォークでそれを掬い取って口へと運ぶ。

 

 こ、これは!

 

 ほうれん草に食感は近いが、味が独特だ。これは胡椒?

 どうやら胡麻のように見えたそれは胡椒のようにピリリと辛かった。

 

 癖はあるがなかなかイケる。塩茹でしてあるであろうこの葉物は癖があまりなく、胡椒の味を際立たせている。

 

 これに合わせてエールを飲む。

 

 ほう。ピリリとした辛さの後にすっきりとしたフルーティーな味わい。この緩急が癖になりそうだ。

 これなら無限にいけそうだ。

 

「へー。ひょっとして卜部さんも結構通?そのコンビに気付けるなんて。」

 

「これは、中々行けるな。」

 

「私も飲みたいだけの時はそれとエールを頼むわね。最高に相性バッチリって感じの組み合わせでしょ!」

 

「ああ。だが別の料理も食べないとな。」

 

 次はこのステーキ?にしよう。

 

 ナイフで一口大に切り分け、それを口の中に放り込む。

 

 これは、鶏肉?いや、もっと筋肉質だ。見た目よりかはさっぱりとしている。だが脂も程よく乗っており、ぱさぱさではない。

 例えるなら鶏肉と豚肉を半々で混ぜたものだろうか。お互いのいいとこ取りをしたような肉だ。

 

 それにかかっているソースはベリーか何かを使っているのだろうか。程よい酸味とフルーティーな味わいが感じられる。しかしあくまでも肉の味を引き立てている。

 これがあるおかげで肉の味がしつこくならず、臭みも気にならないのだろう。

 

「それね、オオトカゲの肉。苦手な人も多いんだけど偏見さえなければ美味しいから頼んじゃった。どうかしら?」

 

「ああ。これも美味い。良い肉だ。」

 

「でしょ!本当に美味しいんだから!私も頂こうっと。」

 

 カルメンは彼女の分のステーキを食べる。

 

 俺はエールをまた一口飲む。再三言うがこのフルーティーさが良いのだ。今食べた肉も口の中がすっきりして二口目もまるで最初の一口のように食べられる。

 

 次はこのパスタのようなものを頂こう。見たところソースはかかっていないようだが。

 

 俺はフォークでパスタを巻いて一口でそれを食べる。

 

 これは素パスタ?だがしかし塩味と胡椒。ほんのり感じるオリーブオイルだろうか。

 

 勿論メインの料理には及ばないが日本人でいう白飯だろうか。主食を際立たせるのには充分。

 それに味が薄いからかしつこくなく、さっぱりと次々と食べられる。

 

「あまり味が濃すぎるものが多いとしたが混乱してしまうでしょ。だから私はこの素茹でパスタを頼むのよね。」

 

 此奴。分かっている。日本人の舌を分かっているじゃないか。

 

 日本人にしかない文化。白米で一度口の中を無の状態に戻す。それを彼女は無自覚にやってのけているのだ。

 他の奴らもそうなのかと周りを見渡すが、特にそういったことは無いようだ。各々が好きなものを好きなだけ食べている。

 

「ひょっとして、不味かった?」

 

 俺は。

 

「いや、感動している。まさかこんなに美味しいとは!」

 

「そう!?良かった!ちゃんとバランスを考えた甲斐があったわ!」

 

 俺は次々と料理を口に運んでいく。

 そしてあっという間に完食してしまうのであった。

 

「ちょっと!いいかしら!」

 

 カルメンは手を上げて店員を呼ぶ。

 

「食後の果実酒を頂戴。あとそうね。アレをお願い。」

 

 店員はメモを取って厨房の中に入っていった。

 ただ一つ。気がかりなものがある。

 

「アレとは一体なんだ?」

 

「まあまあ!来たら分かるわ!」

 

 カルメンはニコニコとほほ笑んでいる。まあ彼女に任せておけば大丈夫だろう。

 

「ところで、ギルドカードはどんな感じ?見せてよ。」

 

 特に減るものでもないし、いいだろう。

 

「これだ。」

 

 俺はカードを渡す。

 

「へー。良いじゃない!ん?『ニッポン』?聞いたことが無いわね。」

 

 忘れていた・・・。

 

「実は島国の出身でな。だから世情に疎いんだ。」

 

「へぇ。ナルホド。だからだったのね。」

 

 彼女は俺にギルドカードを返す。

 

「まあ、あの森林にも依頼は沢山あるからそれをこなしながらランク昇格を狙っていったら?まあアリシラさんとの修行ついでだけど。」

 

 確かに。修行も受けられて実利もある。一石二鳥だろう。

 

「ほら、私も小遣い稼ぎの為に登録してるのよ。」

 

 カルメンは自分のギルドカードを出す。

 

 銀色?のカードを俺に見せびらかすように言う。

 

「ま、私銀級だから、大先輩って訳よ!」

 

「その、正直どれぐらい凄いんだ?」

 

 いまいち凄さが分から無い。

 

「銀級っていったら!上から三番目に凄いって感じね!下からだと白、青、緑、黄色、赤、銅、銀、金、白金って感じね。どう?凄さが少しは分かったかしら?」

 

 俺から数えると、6階級上という事か。

 

「ああ。しかし昇給はどうやったら良いんだ?」

 

「うーん。あんまり詳しいことは分からないんだけど、こなした依頼によってこっちからは分からない点数が加点されるみたいで、一定数を超えると昇給って感じね。でも銅からは試験も必須って感じかしら。」

 

 中々に奥が深いようだ。

 

「お待たせいたしました。」

 

 なんやかんや話していると店員がやってきた。どうやら注文した品を持ってきたようだ。

 

「ありがとう。」

 

 机に並べられたのはグラスに注がれた果実酒と、何だこれは。

 

 見たところ、衣をつけて揚げた何かだが、いかんせんその衣のせいで肝心な食材が分からない。

 

「食べてみてよ。」

 

 未知との遭遇。だが。四聖剣を舐めるなよ!!

 

 とりあえず一口。

 

 衣のカリッとした食感を超え、中にたどり着く。これは・・・?

 ぷちっとしていた。そして口の中に広がったのはまるで。

 

「海老・・・?」

 

 やわらかいその食感に感じたのは海老だった。いやカニかもしれない。

 もう一口食べてみる。

 

 やはり甲殻類の味だ。だがこの感じ。どこかで・・・。

 

「それね、マジックワスプの幼虫。どうかしら?」

 

 それはもう悪そうな笑みだ。俺が驚くと思ったのだろうか。

 

「生憎、幼虫は食べ慣れている。これは中々の絶品だな。カルメンも食べるといい。」

 

「えっ!?」

 

 驚いた表情。どうやらミイラ取りがミイラになったようだな。

 

「どうした。俺ばっかり食べていてもしょうがない。」

 

「い、いいわよ。そんなに美味しいなら全部食べても!」

 

 そうきたか。

 

「まあ、そう言わずに。」

 

「あー、おなか一杯!そうだ果実酒飲まなきゃ!」

 

 そう言うとカルメンは果実酒を飲み始める。

 

 まあそんなに嫌なら仕方がない。

 

 俺も果実酒に口をつける。

 

 ふむ。中々甘めの酒だ。しかし後味はしつこくない。これもベリー系の味がするな。

 食後の口直しには中々良い酒だ。

 

 俺は幼虫フライをまた一口口の中に放り込む。

 この甲殻類のような味がまた良い。果実酒と非常によく合う。

 

「美味しそうに食べるじゃない。そんなに美味しいのかしら。ソレ・・・。」

 

「気になるなら食べてみればいい。ダメだったらダメで良い。」

 

「そうね、選り好みは良くないものね。」

 

 カルメンは恐る恐るそれを人差し指と親指でつまむ。

 

「よしっ!」

 

 その掛け声と共にフライを口の中に入れた。

 

「えっ・・・。美味しい・・・。」

 

「そうだろう。何故か苦手な者が多いのだが虫は中々美味いんだ。」

 

「ええ。それに衣に隠れているからこれならイケるわね。」

 

 カルメンはさっきまでの態度が嘘のように次々とフライを口の中に放り込んでいく。

 

「美味しくて悔しい・・・。」

 

 俺はその様子を果実酒を飲みながら見る。

 

 やはり性格面でも紅月に似ている。前いた世界とこの世界には何か共通点があるのだろうか。

 

「ところでカルメン。これなんだが。」

 

 俺はポケットから先ほど貰った用紙を取り出す。

 

「資格というのがいまいち分からなくてな。良かったら教えてくれないか。」

 

「ん、いいわよ。」

 

 カルメンは手を拭いて俺から用紙を受け取る。

 

「うーん。この中からだと卜部さんに向いてそうなのは。剣術と素手武術かしら。これは試験を受けなきゃいけないけど今の卜部さんなら大丈夫かも。丁度明日試験があるみたいだし、依頼を受けるついでにそっちも受験しちゃいましょう。これも昇格に有利になるし。」

 

「成程。その二つなら予備知識が無くても大丈夫そうだ。」

 

「取り敢えず、今日はこれを飲み終わったら私の実家に行きましょう。一応客間もあるし。」

 

「そうだな。世話になる。」

 

「いいのよ。まあ卜部さんがいなかったらあんな家帰る勇気も湧かなかったし。」

 

 やはり訳アリのようだな。

 

「ま、今はゆっくり飲みましょ。」

 

「ああ。」

 

 そうして夜は更けていったのだった。




細かい食事描写に苦心しました笑

次回は遂にカルメンの実家へ!
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