異世界卜部 〜異世界でもコードギアスの世界でも四聖剣は虚名にあらず!〜 作:シャール
「さあ、始めようか!」
ヴィトラが自信満々といった風にほほ笑む。
「ああ。」
お互い剣を構える。
「かァッッ!!」
直線的な攻撃。これならば受け流すのは容易い。
「覚悟!」
刀身の上で敵の刃を滑らせる。胴がガラ空きだッ!
その刃は見事に胴を捉・・え・・?
「死ねッッ!!」
急いで後ろにステップを踏む。何とかその攻撃を避ける事が出来たがまたもや攻撃が見えなかった。
早すぎて見えないのではなく、本当に見えない。
「へえ。やるじゃない。」
「この俺を嘗めてもらっては困るな。」
「じゃあこれはどうだ!!」
空気が歪むッ!?
急いで刀で防ぐが、何かが通り抜けた。そして頬に強い衝撃ッ!
「ぐぁッ!」
地面に尻もちをついてしまう。
「ハハッ!ねえ、勝てないよね!?ボクに勝つなんてムリなんだよぉ!!」
「まるで餓鬼だな。」
口の端からこぼれた血を袖で拭いながら立ち上がる。
「『身体強化』!!」
身体中に気を巡らせる。
各関節に気を流し込み、液体になった自分をイメージする。
そして閃く。
「流体剣ッッ!」
関節のしなりを利用する!まるで己の身体が液体になったかのように。
「ッ!?」
次こそ捉える!!
刀を振り下ろすが見えない『何者』かに、またもや攻撃を防がれてしまう。
「この野郎!!」
またもや空気が歪む。受けてはいけない!!
バク転をしながら距離を取る。
「おいおい!逃げてるんじゃねえよぉ。正々堂々決闘だ!!」
だがあの攻撃は防げない。身体強化をしても目には見えなかった。
「卜部さん!!」
カルメン!?
「気を付けて!ソイツ一人じゃない!!」
「一人ではないだと・・・!?」
成程合点がいく。その見えない何者かに何とか対処できれば。
「余計な真似を。だがバレたところで・・・!」
空気がまたもや歪む。俺はそれに合わせて刀による斬撃を叩きこむが。
当たらない・・・!?
「ぐはぁッ!!」
次は吹き飛ばされる。
砂埃を上げながら転がるが、地面に腕を叩きつけて衝撃を吸収する。受け身は成功したが・・・。
「長引けば負ける・・・!」
「そろそろ降参したらどうだい。今なら命も。」
「四聖剣の実力。侮るなよ!!」
ヴィトラを叩くッ!
「何ッ!?」
奴はそこに蹲る。だが。
「くぅッ!!」
またもや何者かに攻撃を阻まれる。
「卜部さん!ここは私も!」
カルメンが短刀を取り出そうとする。
「手を出すな!これは俺の決闘だ!」
「でも敵は二人!なら私も!」
「猶更だ!」
敵の手を打ち破ってこそ決闘!そもそも二人いる事に気付けなかった時点で後れを取っていたのだ。
「うぅ!ボクを守れぇ!!」
ヴィトラは蹲りながら叫び続けている。
なんと無様な。
だが例のもう一人は立て続けに攻撃を加えてきている。この俺が避ける事しかできぬとは。
だが空気の流れから察するに攻撃者は遠隔で攻撃しているわけではない。確かにここにいる。
俺の攻撃だけは通らない。
先ほどから共通しているのはこの空気の歪み。素人目で見ても分かるだろう。
まさかッ!!
両手を胸の前で合わせ、一気に気を解放する。
「破アァッッ!!」
周囲に衝撃波が発生し俺を中心に半径3メートルに強い風が吹く。
「きゃあああッッ!!」
「やはりか。」
小さい何かが衝撃波に吹き飛ばされ、遠くへと吹き飛ぶ。
それをカルメンが見事に掴み取った。
「こ、これは・・・!」
「もうッ!痛いわね!!」
「これ、ウインドフェアリーよ。」
「ういんどふありー?」
「ウインドフェアリー!でもおかしいわね。人間に肩入れするなんて・・・。」
小人?のようなものだったのか。小さいなら余計姿を隠しやすい。か。
「離してよッ!」
「ダメよ!」
アレはカルメンが相手してくれているようだ。ならば俺は。
「覚悟しろヴィトラ。」
「ひッ、ヒィィイイ!!ボクを殺したらどうなるか分かっているのか!ち、父上が許さないぞ!!」
「そうやって己の力に頼らず家の力に頼る。貴様はブリタニアと何も変わらない!」
俺は刀を振り上げる。
「い、嫌だ!!」
ヴィトラは這いつくばって逃げようとする。
「この期に及んでまだ!」
「そうだ!ボクを助けろ!そうすればカネをくれてやる!庶民には・・・。」
「これ以上醜態を晒すな。」
ヴィトラはその瞬間に永遠に話すことができなくなった。もう二度とその口で誰も不快にすることは無いだろう。
俺は刀を鞘にしまう。
「決着だ。」
「卜部さん・・・。」
「ところでそいつはどうする?」
「離して!離してってば!!」
カルメンの手の中にいる小人を指さす。
「どうするも、妖精を殺しちゃうのはちょっと・・・ねえ。」
「まずいのか?」
「まあちょっと宗教的に。」
俺は顎に手を当てて考える。閃いた!
「食っちまえばいい。そうすれば。」
「ヒッ!?」
「ちょっとダメダメストップ!!卜部さん何考えてるの!?」
変か?殺すと食うのは別だと思うが・・・。
「とにかく!この子は私が預かります!卜部さんに渡すと何するか分かったものじゃないわ!」
「だが。」
「ダガーもナイフもありません!これは決定事項です!」
「・・・分かった。」
そんなに悪いか?
「ふう、助かった。」
「大丈夫よ。もう怖いおじさんに食べられる心配は無いからね!」
怖いおじさん・・・。
「そういえば何でこんな奴に協力してたの?」
妖精の顔が暗くなる。
「・・・恩人だから。」
「恩人?」
「お母さんを知っているって。里が人間の軍に襲われたんだ!その時お母さんとはぐれちゃったんだけどそこでお母さんを知っているって・・・。」
「卜部さん。この子。」
「ああ。」
恐らく騙された。多分だが。
「だから協力したんだ!お母さんの居場所を知っているから!」
俺たちが黙っていると。
「嘘。嘘だったの?じゃあお母さんは?ねえ!お母さんは!?」
「恐らくは。」
「イヤッ!!嘘!嘘だ!」
カレンの手の力が緩んだのだろう。妖精が逃げだす。
「許さない!!人間を!全てを!」
そう言うと空中でまた見えなくなった。
奴はこれから復讐の炎に身を焦がすだろう。願わくば救いたかった・・・。
「ねえ。卜部さん。人間って悪なのかな。最近は良くない噂も沢山あるし・・・。」
これはそのうちの一つに過ぎないのだろう。
「君は軍人だろう。君は君の正義を貫け。」
するとカルメンの父親が呟く。
「これで我が家も終わりだな・・・。」
「卜部さん。時間貰っていいかな?」
「・・・ああ。」
「転移広場で待ってて。」
俺は静かに頷くとその場を後にした。
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これは、中々美味い!!
リンゴをベースとしたソースが美味い!ニンニクとの相性も抜群だ!
それにしても何の肉だ?爬虫類だろうか?淡白な味だが・・・。
「大将。これは何の肉だ?」
「そいつはイビルバードっちゅうんだよ。あのでっかい鳥さ。筋肉質だからパサパサで人気があんま無いけどな。」
「ほう、それをソースで補っているのか?」
「兄ちゃん分かってるね!肉自体は安いからな。料理の道を目指しているのかい?」
「まあ、そんなところだ。まだひよっこだが。」
「まあ頑張んな!料理は二つの『I』だよ。」
「二つの『I』?」
一体何だ?
「アイデアと愛さ!」
「なるほど。」
「どこに需要があるか分からねえ。それに美味いもんを提供するのに愛が必要だろ?俺の人生哲学さ。」
「肝に銘じておこう。」
すると大将が俺の後ろの方に目線を向ける。
「アンタの連れかい?」
振り返るとそこにいたのはカルメンだった。
「卜部さんお待たせ。」
「カルメンも食うか?」
「私は・・・いいかな。」
「そうか。」
あの後何があったかは知らない。だが、暗い顔色を見るに何かがあったのは確かだ。
「そうだ!帰る前に依頼受けなくちゃね!忘れてたっ!」
・・・空元気だな。
だが今は放っておくしかないだろう。時が解決する筈だ。
「ああ、行くか。大将ありがとう!」
「おう!頑張んな!それでお代なんだが・・・。」
「カルメン。すまない。」
「卜部さん・・・。」
すまない・・・。
・
・
・
「この依頼とか良いんじゃない?」
手渡された紙を見る。そこにはトカゲのような絵が描かれていた。
ただ普通のカナヘビと違うのは立って二足歩行していた事だった。
「これは一体何だ?」
「リザードマンよ。魔族側の一般兵ってところかしら。」
「なるほど。」
よく分らんが、恐らくは立って歩くトカゲのようなものか。
益々現実離れしているな。
「そうか。字が読めないんだっけ。えーと。一体につき銀貨2枚だって。結構良いじゃない。」
どれぐらいの通貨価値かは分からんが、カルメンがそういうなら良いのだろう。
「早速受けましょう!と言いたいところだけど。」
「問題があるのか?」
「そっか。卜部さんはまだランクが足りないのかー。」
そう言えば昨日そんな話があったな。
「あっ。忘れてた。資格試験しないと。」
「そうだったな。俺も忘れてたぞ。」
「善は急げよ!」
「ああ。」
俺たち二人はカウンターへと向かう。
すると、昨日いた受付嬢がいた。
彼女は俺に気が付いたようで。
「卜部さん!おはようございます!」
と元気に挨拶してきた。
「おはよう。」
「本日はどのような?ってカルメンさんじゃないですか!」
「知り合いなのか?」
カルメンは不思議そうな顔で首を横に振る。
「その、一方的に知っているだけですので・・・。卜部さんはお知り合いなんですか?」
「彼女は保護者のようなものだ。」
「ええ!?」
「ちょっと!いきなりボケないでよ!反応に困るじゃない!」
後頭部を軽く叩かれる。
場を和ませようとしただけなのだが・・・。
「連れがごめんなさい。改めてカルメン・ソードラインよ。よろしく!」
「あ、よろしくお願いします!まさか帝国の『紅い剣』と出会えるなんて・・・。感激です!」
帝国の紅い剣。それが彼女の二つ名か。
「それはちょっと前の話よ。とにかく、これからちょくちょく来るからヨロシクね?」
「はい!あっ、ごめんなさい!脱線しちゃいました!何かご用でしたね?」
「ああ。資格試験を受けたいのだが。」
「試験ですか!剣術と素手武術なら今からなら1時間後に可能ですよ。」
「丁度それじゃない?受けたかったのって。」
「そうだな。話が早くて助かった。」
「では手配しますね!」
彼女はそう言うと奥へと消えていった。
「時間もできたしどう?卜部さん。」
「いいだろう。」
俺たちは飯を食べることにした。
「さっき食べてたけど大丈夫そう?」
「あれは別腹だ。」
カルメンが俺の身体を見る。
「卜部さんって痩せているのに意外と食べるんだ。」
「まあ、戦後はひもじい思いをしたからな。その反動が出ているんだろうな。」
「戦後?」
しまった!つい気が緩んだ!
「小さな島の内戦だよ。あれは大変だった。」
「ひょっとして卜部さんはそれで?」
「まあ、そんなところだ。」
良かった。どうやら勝手に勘違いしてくれたらしい。
「うーん。しょうがないわね!じゃあとびっきり良いの振舞ってあげる!ちょっとお高いヤツ!」
「お、いいのか!悪いな。」
「卜部さんって謙虚なんだか傲慢なんだか。」
「何か言ったか?」
「いいえ。こっちの話!」
何を言ったのだろう。まあ奢ってくれると言っているし素直に好意に甘えよう。
俺たちはカウンター席に座る。
「すみませーん。オーダー良いですか?」
「はい!少々お待ちを!」
昼時だからか忙しなく働いているウエイターを横目にしながら俺たちは会話をする。
「ねえ、卜部さんって何が好きなのかな?」
いきなり何だ?そうだな。俺が好きなものは。
「やはりメープルシロップをかけた目玉焼きだろう!」
「・・・え?」
「あれはたまらないぞ。結局は白飯とメープルシロップ掛け目玉焼きだ。あれぞ日本で食べる故郷の味だな。」
あれは本当に最高だ。
我が家では親父が間違えてメープルシロップを目玉焼きにかけた事が発端だった。幼心に覚えている。
『澄子!新しいのを焼いてくれないか。』
『ええ!?間違ったのはアナタじゃない。』
『俺の言うことが聞けんのか!!』
そう、いつもの夫婦喧嘩になりそうだった。だから俺は。
『いただきます!』
両親が口論している間に俺の目玉焼きの皿とすり替えたんだ。
『・・・ッ!?』
衝撃だった。お袋の完熟目玉焼きの黄身が最高にメープルシロップと合った。
『おいしい!!』
親父もその言葉を聞いて恐る恐る食べていたよ。でも次に口から出た言葉は。
『澄子!こいつは美味いぞ!ほら食べてみろ!』
『嫌よ~。』
『いいから!』
『しょうがないわね。』
お袋も恐る恐る。
『あらっ!』
この日から我が家ではメープルシロップを目玉焼きに掛ける事になった。
懐かしい。俺にとってのおふくろの味なのだ。
「おうい。聞いてますか~?」
おっと、つい昔の記憶が。
「すまない。」
「卜部さんが飛んでる間に注文しちゃったけど良かったかしら?」
「ああ。お前の選択に間違いは無いと信じている。」
「えっ。」
カルメンが俯いた。
「何か悪いことでも言ったか?」
「い、いいえ!なんでもないですよ!」
「どうしたんだ?いきなり畏まって。それに顔が赤い。熱でもあるのか?」
俺は熱を測ろうと彼女の額に手を当てようとするが。
「わわ!ちょっと触らないでよ!」
その手は払いのけられた。
「すまない。俺は女性に疎くてな。失礼だったら謝る。」
「そ、そんな。」
気まずい。
お互い無言の時間が続く。
「お待たせしました。」
その沈黙を打ち破ってウエイターがカウンターへ料理を運んでくる。
「あ、ありがとう!ほら見て卜部さん!」
「ほう、これはッ!」
パスタ・・・。だが昨日とは違いしっかりと具が乗っている。それにこの香り。
「ニンニクか。」
恐らくはペペロンチーノ。だがシンプルなそれではなく何やら何らかの海鮮物がゴロゴロと入っている。
取り敢えず。
「では、頂こうか。」
「ええ。冷めない内にね。」
木のフォークでくるくるとパスタを巻き、それをスプーンで崩れないように押さえ、口へと運ぶ。
こ、これはッ!!!!
「美味いッ!!」
「そう?良かった!」
従来のペペロンチーノと同様。しっかりとニンニクが効いている。やはり最初にニンニクを炒めてからパスタを投入したのだろう。ニンニクの香ばしさが鼻を抜けていく。
だがニンニクだけではない。これは柑橘系の味か?
良い塩梅で混ざっている。ニンニクの香ばしさを邪魔せずに、むしろ共にいる事でニンニクのしつこさを打ち消している。そのお陰でニンニクを感じるもののさっぱりとした味わいになるのだ。
まるで味のおしどり夫婦だ。
それに加えてこれは・・・。甲殻類。海老だろうか。
ほんのりと感じる磯の香り。EUにある地中海の風を感じる。
一見、おしどり夫婦の危機に感じられるかもしれない。間を引き裂こうとする間男がいると。
だが安心してほしい。この海老さんは間男ではなかった。そう、ニンニクと柑橘夫婦を結びつける子供。つまりは
感動だ。一度に主張の強い三つの味が揃いながらも喧嘩せずにお互いが抱きしめあっているッ!!
「もう、ほんと。子供みたいなんだから。」
「何か言ったか?」
味に集中しすぎたか。何と言ったか聞きそびれた。
「ううん、なんでもない。それより美味しい?」
「ああ。カルメンはよく食べるのか?」
「たまにね。何故だか分からないけど美味しいのよね。量のわりに値段が張るんだけどまあこの味だったらね。」
確かに皿の大きさに対して量は少ないといえる。昨日の塩茹でパスタは皿いっぱいに盛ってあったのだが、これは6割ほどといったところか。
だが味を考えると彼女が言うことに納得だ。それほどの自信作なのだろう。
次はこの海老を頂こう。
「ッ!!!」
敢えて皮を残すことによって風味を引き立てている!それに口の中に残ることなくかみ砕くことができるッ!!
まさか貴様!一回素揚げしたな!!
それを踏まえてもう一匹。
やはりそうだ!!
海老の香りを引き立てつつ、皮を残す方法。『揚げ』しかないだろう。
中華連邦で食べられているという皮付きエビチリ。まさかその手法がこんな異国でも・・・。
中途半端ではない。モノが違うッ!!
俺はあっという間にそれを食べつくしてしまった。
「もう、卜部さんったら周りが見えなくなっちゃうんだから。」
「す、すまん・・・。」
藤堂中佐には『お前は寡黙に食すな。』と言われたことを思い出した。
本当は頭の中で目まぐるしく考察が行われているというのにな。
だが彼女は気付いているようだった。
「で、どうだったかしら。ちょっとは舌を満足させられたかしら。」
「ああ。お前とならどこに行っても大丈夫そうだな。」
「え、それって・・・。」
「そうだ。最高に美味い飯が食える。」
「やっぱりソウデスカ。」
「ん?何かまずいことでも言ったか?」
「ええ。なんでもないわよ。今はね。」
変な奴だ。
「卜部様!準備ができました。」
丁度良い時間らしい。
「じゃ、頑張ってきてね!」
「ああ。」
俺は襟を正し、試験場へと向かうのだった。
食事をすると饒舌になっちゃう(脳内)卜部さん。
お盆関係で更新が中々できず、すみませんでした!!
これからは更新ペースがもうちょっと上がると思うので。これからも楽しんでいただけると幸いです。
近々登場人物一覧を作る予定です。お楽しみを。