月香のペンダント
月の香りがする狩人が持っていたペンダント。誰かとの写真が入っているようだが、血によって見えなくなっている。
それが彼女の大切な人だったのかもしれないが、分からない。もうずっと前のことだ。
1.夢は覚めるものだよ。
夢を、見ていた。長い、長い、終わらない夢を視ていた。
目が覚めた時、私は古ぼけた診療所のベッドに眠っていて、近くには私の筆跡で『青ざめた血を求めよ。狩りを全うするために』と書かれたメモがあるだけ。
状況を把握しようとして階段を降りると、何かを喰らっている化け物がいた。武器がない私は逃げるためにゆっくりと足を動かしたが……運悪く薬品が落ちて、私は獣に襲われた。頭から噛みつかれ、死んだ。……これが、一回目の死。
「やぁ、君が新しい狩人かね」
死んだはずの私が目覚めると、不気味なまでに幻想的な屋敷と、車椅子の男性が私を迎えた。彼────ゲールマンは言った。私は獣狩りを行う狩人であり、ここはその狩人の憩いの場であり工房である、と。そして、私は獣を狩り続ければいいと。
使者と呼ばれた小さな者達から渡された武器、ノコギリ鉈と獣狩りの散弾銃を手に取り、私はもう一度あの診療所に向かった。酷く手に馴染むノコギリ鉈と散弾銃を使い、私を殺した化け物────獣を殺した時……私の獣狩りの夜が始まったのだ。
二度目の死は、数の暴力による死。斧によって叩き斬られ、サーベルで切り裂かれ、レーキによって串刺しにされて死んだ。三度目の死は犬。四度目はカラス。何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
何度死んだ?
何度も死んだ。何度だって死んだ。
数えていない。だが────
何度も何度も何度も何度も殺し、殺され、その度に自己嫌悪と高揚に苛まれる。
血が私を落ち着かせる。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
ああ、なんだろうな、この高揚は。酷く気持ち悪くて……それでいて、酷く官能的だ。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
「馬鹿だねぇ……あんたみたいな女が、獣狩りなんて世も末だよ」
ああ、アイリーン……私はあなたのような狩人であれただろうか?
殺し、殺されて。痛みなどとうに忘れて獣を狩り続けて……ゲールマンの介錯に身を任せて、また診療所。
「あなたは、綺麗な眼をしている。あなたに会えて良かった」
アルフレート……私はあなたのように真っ直ぐにはなれなかったよ。
悪夢は終わらない。巡り、終わらず、巡り続けていくだけ。
「娘を……頼む……」
ガスコイン、あなたの娘を守れなかった……すまない……すまない……ああ…………獣は……汚物だ。
ミコラーシュが言っていた通りだった。悪夢は巡り、そして終わらないものであった。それでも、私は足掻き続けた。連盟が、教会が、血族が、多くが私を成長させてくれたのだから。
「なぁ、同士。……いや、なんでもない。忘れてくれ」
ヴァルトール、あなたはまるで父親のような人だったな。
「なぁ、狩人さん。無理はしないでおくれよ? 友達がいなくなるのは、嫌だからさ……」
赤布の男、あなたはいつも私の友人であってくれたな。ありがとう。それに私はどれほど救われたか。
多くの者の遺志を継ぎ、私は三本目のへその緒を喰らい、上位者としての領域へと辿り着いた。二度と誰も悪夢に魘されることがないように、全てを終わらせるために。長い……本当に長い夢を終わらせるために。
「おやすみ、ゲールマン。もう、悪夢は終わりだ」
「……ああ、そうか。……そうだな……全て、長い夢のようだったよ……ああ……」
ゲールマンを解放し、私は月から現れた魔物との戦いを始める。血を浴び続け、やつの臓腑を奪い取り、ついに私は────────
「夢は、覚めるものだよ。私は、狩人だ。神でも、獣でもない。……きっと人でありたいと願う、小さな狩人さ」
悪夢に終止符を打った。その達成感に笑みを浮かべて目が覚めた時、私は古ぼけた診療所ではなく、最新鋭の機械が利用された病院に寝かされていた。
確か……そう、私は……月見アラヤ。トリニティ総合学園一年の、月見アラヤ。確執のあるゲヘナ学園を主軸に、他校の生徒と良好な関わりを持とうとしていたためか、いじめや嫌がらせを受けていた……ただの異端者。
いや、それよりも……この感覚は……脳の奥で囁く瞳の感覚……蒙が啓くような感覚。私の中に渦巻いている狩人としての力が残っている。
「クヒッ、ヒッ、ヒヒッ……ヒヒヒッ……」
誰もいない病室で、私は嗤う。
「Oh,Majestic……!」
復讐など、興味はない。天使など、柄ではない。夜が明けたとしても、私は変わらず狩人だ。ミコラーシュ、喜ぶがいい。私は夢から覚めても狩人であったよ。
マリア、あなたは落葉を振るいながら言ったね。私は狩人ではなく、ただの少女であったはずだったのに、と。私の本性は血を浴び、歓びを得る狩人だったようだ。ヤーナムで過ごした長い夜は、間違いなく私の本性を呼び起こしたのだろう。
「ヒヒッ、ヒヒヒヒヒッ……!」
「……アラヤ、見舞いに来……た……?」
「────────ああ、イオリ。いい朝だね」
「……は、え……あ……アラ、ヤ……?」
「ああ、私は月見アラヤだとも。……どうした? 何か悪い夢でも見たような顔をして」
長い銀髪と褐色の肌が特徴的な少女が、私しかいない病室に入ってきた。銀鏡イオリ。かつての私の自惚れや勘違いでなければ、友好な関係を築いていたはずだ。ゲヘナ学園の風紀委員と仲良くしてもいいのか、など……過去の私にはどうでも良かったのだよ。
「夢、じゃないよね?」
「夢は覚めるものだよ、イオリ。都合のいい夢は、すぐに泡沫と消える」
「その意味分からない言葉……本当にアラヤだ……!」
そう言って私の手を掴んだ彼女は、私の体温を確かめるように何度も何度も握っては離し、握っては離しを繰り返す。……どうやら私は長い間眠っていたらしい。……ふむ、イオリの反応からして、大体一年と一ヶ月……というところか。
「良かった……目が覚めて……一年も目を覚まさないからさ」
ふむ、やはり一年は眠っていたか。……ヤーナムではもっと長く生きたがな。
「ゲヘナ学園の多くの者と仲良くなるまで、私は死なんよ」
「トリニティの学生なのにね」
「そんな者と仲良くなったあなたも同類だよ」
それにしても一年……留年は確定している……か。まぁいい。進級テストで全て満点を取ればいいだろう。飛び級という制度はあっただろうか、うちの堅苦しい学園に。
「イオリ、再会の交流はまた日を改めよう。そうだな……私が退院し、二年に上がったら……改めて再会を喜ぼうじゃないか」
「────それは、いいけどさ。大丈夫?」
「何……ただテストをするだけなら、容易いさ」
獣を殺すよりも、な。
────────────────────────────────────
1:名無しの先生
このスレは我らが狩人様たる月見アラヤちゃんさんについて語るスレです。誹謗中傷は、止めようね!!
2:名無しの先生
建て乙。
3:名無しの先生
ヒャア、我慢できねぇ! 性癖暴露大会じゃあ!!
4:名無しの先生
アラヤちゃん可愛い……綺麗……黙ってると人形みたいだね♡
5:名無しの先生
あの鋭い眼差しを向けながら罵ってほしい……
6:名無しの先生
いや、ここは敢えて甘く囁いてほしい。こう……脳に直接響くような感じで。
7:名無しの先生
初っ端からフルスロットルで草。
8:名無しの先生
でもその子、獣狩りの夜越えてきた化け物ゾ?
9:名無しの先生
だからいいんじゃない……
10:名無しの先生
そういう子ほど依存し始めたらドロドロになるまで愛し愛されてくれるんだ! 俺は詳しいんだ!
11:名無しの先生
アラヤちゃんはそんなことしない。(確固たる遺志)
12:名無しの先生
これだから啓蒙の低い連中は……アラヤちゃんは色んな女の子の脳を蕩けさせるのが仕事だよ!
13:名無しの先生
お前も啓蒙が足りていない定期
14:名無しの先生
啓蒙ってなんだよ(困惑)
15:名無しの先生
より高次の思考を得るためのもの?
16:名無しの先生
「あなた達は思考の次元が低すぎる。もっと瞳を得なくては」とかなんとか言ってたけど、やはり狩人様なんやなって。
17:名無しの先生
誰だあの透き通った世界に血腥い啓蒙にまみれた人連れてきたの。
18:名無しの先生
そりゃYO! 星さんでしょ
19:名無しの先生
マジかよ黒服最低だな!
20:名無しの先生
殺してやる……殺してやるぞベアトリーチェ……
21:名無しの先生
情け容赦のない殺意がベアおばを襲う! いいぞもっとやれ。
22:名無しの先生
いや草
23:名無しの先生
ベアトリーチェは強敵でしたね。
24:名無しの先生
お、そうだな。(白目)
25:名無しの先生
アヒッ(ピングー)
26:名無しの先生
ところでアラヤちゃんさんってどんな人? 始めたばっかで分からん。
27:名無しの先生
ようこそ、新任教師。歓迎しよう、盛大にな!!
ゲヘナ学園の生徒とも関わりを持つ月見アラヤという少女は、トリニティの中でも有数の異端者であった。何を考えているのか分からない得体の知れなさや、凡人には理解できぬほどの高次元的思考から発される言葉の数々に、誰もが困惑し、恐怖し、目の上のたんこぶや腫れ物のように扱った。
だからだろうか。月見アラヤという少女を恐れた権謀策略を巡らせる生徒の手引きにより、殺される一歩手前の重症を負う。そして今日まで、意識不明のまま病院で眠っていたのである。
彼女と交流のあった者は大なり小なりキレた。それはそれは恐ろしい祭が始まるほどに。
そして一年後、彼女は目覚めた。宇宙のように美しく、青ざめた瞳は何を見る。
28:名無しの先生
うーん、コズミック。
29:名無しの先生
この子、不思議な魅力あるよね……
30:名無しの先生
ふつくしい……
31:名無しの先生
可愛い。イオリと絡んでるの尊い……アッ
32:名無しの先生
成仏してクレメンス
33:名無しの先生
まだだ! まだ終わらんよ!
34:名無しの先生
もう眠れよ。アラヤちゃんさんに刈り取ってもらえよ。
35:名無しの先生
夢から覚めさせるつもりで草。
36:名無しの先生
逝ってらっしゃい、先生。あなたの目覚めが有意なものでありますように。
37:名無しの先生
いや殺意よ。
38:名無しの先生
まぁ、あれだ。オススメするけど期待しない方がいい。
39:名無しの先生
なぜ?
40:名無しの先生
そいつ、実装されてないもん。
41:名無しの先生
ええ……
42:名無しの先生
先生涙目やでぇ……
43:名無しの先生
アラヤちゃん実装まだですか……?
44:名無しの先生
アラヤ……イオリと絡んで……もっと……ねっとりじっくりしっぽり絡んでもろて。ほら、君の手の中にあるナメクジみたいなのみたくドロッドロになるまで。
45:名無しの先生
あれ精霊やぞ。あと性癖暴露大会終わってなくて草。
46:名無しの先生
性癖の暴露は!!! 終わらねぇ!!!!
47:名無しの先生
そんな黒髭やだわ。
48:名無しの先生
それはもはや黒ひーなんよ。
49:名無しの先生
笑われていこうじゃねぇか。(性癖の)高みを目指せば、暴露しねぇといけねぇスレもあるもんだ!!!!
50:名無しの先生
人を(性癖で)凌ぐってのも楽じゃねェ!!!
51:名無しの先生
黒髭増えてて草。
52:名無しの先生
んまぁ、ぶっちゃけ……刺さるよね。
53:名無しの先生
分かる。
54:名無しの先生
分かる
55:名無しの先生
分かるマーン!!
56:名無しの先生
分かる。
57:名無しの先生
アラヤ、いいよね……
58:名無しの先生
いい……
59:名無しの先生
あの幸薄そうな細っこい体と珠のような白い肌。堪らねぇぜ……(女先生)
60:名無しの先生
イオリみたくやろうとすると慈悲の刃が握られてるのはご愛敬。イオリにもやりすぎるとノコギリ鉈が飛んでくるぞ!
61:名無しの先生
獣判定されてるじゃん……
62:名無しの先生
しかもアラヤちゃん曰く、性能を追求した最高クラスのノコギリ鉈って言ってたし……絶対ヤバイやつでしょあれ。
63:名無しの先生
特級呪物だよあんなん。
64:名無しの先生
黒服が接触した直後にモツ抜きされそうになってたの笑った。
65:名無しの先生
「銃は能動的な盾となる。だから音は大きければ大きいほどいいのさ」
↑
君、本当に何してたの……? 寝てる間別世界にでも行ってた?
66:名無しの先生
そりゃあ獣狩りでしょ。
67:名無しの先生
あっ、そっかぁ……(蕩けた瞳)
68:名無しの先生
ここに獣おるぞ
69:名無しの先生
(性欲の)獣だって!?
70:名無しの先生
性癖に正直な時点で獣なんだよなぁ……