透き通る世界で、月の香りがした。   作:エヴォルヴ

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まさかのコラボです。許可していただきましてありがとうございます。……でも、私には彼女を扱いきれなかった……!!なんて偉大なんだ、伝説の超三毛猫先生……!!

いつか、リベンジすることを考えながら初投稿です。

下記URLは、コラボを許可してくださった伝説の超三毛猫先生の作品となります。

作品名【HENTAIの野望〜キヴォトス同人誌化珍道中~】
https://syosetu.org/novel/311789/

死ぬほど面白いので是非お読みください。……URL、機能してるよね?


番外編.HENTAIと狩人

(誰だこいつ)

 

「ん? あなたは……」

 

 日が落ちて、街の灯りが目立つようになり始めた頃。トリニティ総合学園の廊下を歩いていると、同じトリニティの生徒に出会った。見覚えは……ない。恐らく一年生だろう。

 

「この時間まで校舎にいるとは。野暮用かね?」

 

「え? あ、ああ……」

 

(マジで誰だ? こんなキャラ、ブルアカにいなかったぞ?)

 

 ふむ。何やら困惑しているようだが……私のことを知らなかったか。

 

「初めまして。私は月見アラヤ……トリニティ総合学園高等二年だ」

 

「こりゃご丁寧に……俺は間島スバル。トリニティの一年だ。あんたに聞きたいことがある」

 

「何かね?」

 

「どんな男がタイプだ? 女でもいいぞ」

 

 ────タイプ……好みか。……私は女だが、どちらかと言えば女性の方が好みだ。そうだなぁ……女の好み、か。考えたこともなかったが、ふむ……やはり……

 

「銀髪、赤目、褐色肌の女。これは外せない。目隠れ、エルフ耳、悪魔の尻尾があればなお良い」

 

「……イオリのことじゃね?」

 

「ああ。そうだが、どうかしたかね?」

 

「いや、どうもしないけどさ」

 

 私にとって、一番過ごしてきた時間が長いのがイオリである。思い出が多いのもイオリだ。好みともなればこうなるのだ。

 

「それで、あなたは?」

 

「俺か? 俺は胸板と身長がデカい大人の男がタイプだ」

 

 ……ふむ、そう言われると幾人か思い付くな。ヴァルトール、アルフレート、意外なことに着痩せしていたミコラーシュ……ヤーナムの男達は結構胸板と身長が大きい。

 

「ところで、あんたはどうしてこんな真夜中にトリニティを歩き回ってるんだ?」

 

「ああ、ただの散歩だよ。許可は貰っている」

 

 正直な話、昼間よりも夜の方が活動しやすい。ヤーナムに毒されている自覚はあるが、やはり夜が動きやすいのだ。

 

「あんたみたいな人がトリニティにいるなんてな。真夜中に散歩なんて、許されねぇだろ、トリニティから」

 

「そうかね? 許可書があれば、夜であっても外出は可能だぞ。それに、私は家持ちだからな。寮生じゃないのさ」

 

(……ん? そういえばコハルが何か言っていたような……確か、接触自体が禁忌指定されてる先輩がいるとか、なんとか……)

 

 会話をしながら、別のことを考えるとは……中々の食わせ者らしいなこの少女は。しかも意識はしっかりこちらを向いているところから鑑みるに……大分修羅場を潜ったようだな。

 

「さて、ここで会ったのも何かの縁。何かあれば私の工房に来るといい。なんでも、は無いが、ある程度の武器なら見繕うよ」

 

「武器?」

 

「私はブラックスミスもやっていてね。銃のカスタムパーツも取り扱っている。……それと、こういうものも扱っている」

 

 あなたには、こちらの方がいいかもしれないな。

 そう呟きながら手にしたのは、分厚い鉄の鉈にノコギリ歯を付けたような武器────獣肉断ちと呼ばれる仕掛け武器だ。

 

「今は持ち合わせがこれしかないが、持ってみるといい」

 

「これは……変形、するのか……!」

 

「仕掛け武器、と言っただろう?」

 

 鉈は形を変え、強靭なワイヤーに繋がれた鞭のように変貌する。古狩人達が使っていたこの武器は、ノコギリ鉈、獣狩りの斧、仕込み杖の三つに洗練されることになる。使いにくいかもしれないが、それでも、獣皮を、肉を強引に引き裂くあの感覚に虜になる者は多くいた。

 

「ま、そういうわけだから、何か武器が欲しいのなら、ある程度は融通しよう。月香の工房を訪ねたまえ」

 

「……あんたの工房とやらには、ロマンの塊みたいな武器もあるか?」

 

「む? ロマンというのが何を定義しているか分からないが……複雑怪奇な機構を持つ武器はある」

 

「よし、今度あんたの工房に行かせてもらう。物は自分の目で確かめないとな」

 

 素晴らしい心がけだ。偏見で物事を見ない……人として、為政者としても必要な要素だ。狩人の中には生まれるべきではなかったと言われていたらしい方もいた。彼は立派な神秘マンになったと聞いている。誰がどうなるかなど、誰にも分からないのだ。

 

「いつ来るかだけ教えてくれると助かる。来週に検査があるのでね」

 

「検査って……どこか悪いのか? あ、言わなくてもいいんだけどさ」

 

「いや何。ついこの間まで昏睡状態だったものでね。医者から経過を見るための検査を義務付けられているのさ」

 

「昏睡状態……? …………ああ! あんたが接触禁忌の天使(アンタッチャブル)か!」

 

「どこまで伝わっているのかね、その渾名は」

 

 これが、私と間島スバルという少女の出会いだった。

 

 

 

 ────────────────────────────────────

 

 

 

 スバルとの邂逅から数ヶ月。キヴォトスでは珍しい穏やかな日々が続く中、私は椅子に腰掛けながらアクセサリーを作成していた。

 

 ────────漫研だったか? スバルという少女が率いる部活に所属する彼女達は、星のように輝いている。彼女達の想像力、創作力、作品、在り方。人間の生き方は私のような狩人のインスピレーションを刺激してくれるのだ。

 

「ふむ……」

 

 星、集団、星団。プレアデス星団……牡牛座の散会星団である星達のように輝く彼女達から発注されたペンダント。星の瞳の狩人証と雷光の狩人証をモデルとしたペンダントだが、もう少しで完成しそうだ。

 

「……そういえば、今日の午後から同人誌の販売をすると言っていたか」

 

 同人誌……というのがどんなものなのか、と調べたところ、年齢制限のないものから年齢制限のあるもの、エロス、グロテスク、スプラッター、日常、非日常……様々な己の性癖や想像力を満たすもの。プロでなくとも、読者を楽しませるために尽力する者達が作る作品のことを示すらしい。イラスト集や小説もあるそうだ。

 

 どんなものであったとしても、文化に貴賤はない。知識はあればあるほどいい。そういうものだろう。ヤーナムで生きてきた時間が長い私にとって知らない文化の一つ……実際に見なくては分かるまい。確か、会場は……ブラックマーケットの付近だったか。

 

「行ってみるか」

 

 そうと決めたらすぐ行動だ。狩人とは、そういうものなのだ。

 幸いなことに、会場は私の家があるすぐ近くにある。同人誌の平均価格は千円くらいだと聞くが……余分に持っていくくらいが丁度いいだろう。二万もあれば問題ないか? 

 

 使者達との相談を行い、間を取って一万五千円を持っていくことが決定した。さて……どのような文化に触れられるのか、楽しみなことだ。

 

 そんなことを思いながら使者達が灯した灯りを移動し、会場付近までやってきた私は少々驚いた。

 

「中々の盛況だな」

 

 そう、人が中々多いのだ。ヤーナムでは見られなかった光景に驚きを隠せない。ヤーナムの行列と言えば、あの広場のバーベキュー会場くらいだろうか。

 

「────から、私を本の────」

 

「む?」

 

 イオリの声が聞こえた。誰かと言い争っているようだが……どこだ? 

 

「ましてやアラヤまで────」

 

「ん? おお、そこにいたのかイオリ」

 

「あ! アラヤ……!」

 

 案外近くにいた彼女に手を振りながら合流すると、イオリの顔が赤くなっていることに気付く。言い合いがヒートアップしていたのか? 

 

「お、アラヤ。お疲れ」

 

「ああ、スバル。イオリと言い合いをしていたのはあなたか」

 

 トリニティ総合学園プレアデス性団団長────漫研部長の間島スバルその人が、ヒラヒラと手を振ってきた。

 

「言い合いというか、イオリが一方的だな」

 

「ほう? 何があったのかね?」

 

「私とアラヤをエロ本にしてたんだよ……!」

 

 ……私をエロ本に? 死臭と血に濡れた貧相な体つきの私に、需要があるとは思えんがね。あるとすれば、倒錯した趣味のある人間だろう。

 

「見せてくれるかね?」

 

「はいよ」

 

「アラヤ!?」

 

 スバルから受け取った同人誌────いや、この厚さは合同誌の類いか────を開き、パラパラと目を通していく。……ふむ、なるほど。これは見事な絵だ。題材は全て同じでありながら、全員の性癖というものを大胆かつ繊細な絵のタッチで如実に表現している。

 

 トップバッターは、ケラエノ氏による『女装生徒は月夜に』。

 文字通り、女子校でありながら女装して通う男子生徒が、月夜にとある少女と出会い、関係を結ぶというもの。

 私をモデルとした少女をヒロインとして、イオリを主人公にするとはな。

 

「アラヤ……普通に読まないで……!」

 

「よい作品だ。これ単品でも伸びるだろう。デッサンもよくしているのだろうな。肉体の陰影もしっかりしている」

 

「おお、結構高評価」

 

 それが終われば、次は『どこまでも続く純愛』という、純愛展開たっぷりのタイトル。その期待を裏切らず、内容は遠距離恋愛を行う彼氏と彼女が久しぶりに会ったことで燃え上がり、最後までしてしまうという話だった。気恥ずかしさは少々あるが、これもまた素晴らしい作品。

 

 それが終わった次の作品はメイドマユキー氏による作品だ。……ほう、濡れ場がない作品と来たか。だからこそ、技量が試されるというものだが……

 

「……見事だ。絵に散りばめられた熱意を感じさせてくれる。濡れ場がないからこそ、より官能的に魅せる……か」

 

「こ、これならまだ……でも許してないからな!」

 

 その次のページで見たのは、グレーフロスト氏による、おねロリの純愛もの……再び刺激の少ないものだ。幼さと妖艶さのバランスが大事にしたらしい本作品、想定していたよりもバランスが限界ギリギリまで保たれている。これを越えれば、濡れ場をメインとする作品となっていただろうが……

 

「表裏一体……見事なおねロリ作品だな。私をロリ側にするのにも驚いた。称賛しよう」 

 

 そして。その次に収録されているものこそ。スバルの────プリンスメロン氏の作品。『黒百合の蒴果(さくか)』。

 

 内容は、私に似た少女に男性器が生え、それを何とかするために幼馴染みと性行為をするというもの。最初はどちらも「仕方ないから」、「治すためだから」と理由を付けていたが、回数を重ねるごとに誤魔化しが利かなくなり、歯止めが利かなくなっていく。その推移を詳しく……そして繊細に描いており、研究した時間を感じさせてくれた。

 

「クッ、ククッ……まさか私に生殖器を生やすとはな……見事な発想だよ、スバル」

 

「ちょっとアラヤ!?」

 

「これもいける口なんだな、アラヤって」

 

「ああ。表現は誰でも自由だとも。……だが、あれだな。最後の行為……もう少し前戯を増やした方が官能的では? これでは獣のようではないか」

 

「そこは好み分かれるよなぁ……今度はそうしてみるか」

 

 他にも文学小説の類いや、NTR、NTR返しなど……たくさんのジャンルが収録されていた。『ピンクアーカイブ~課題作品集~』……中々素晴らしいものだった。

 

「素晴らしい作品達だ。これは一人何冊までかね?」

 

「五冊だな」

 

「なら、三冊買おう。それと……ふむ。イオリ、あなたの分はどうする?」

 

「か、買うわけないだろ!? アラヤのヘンタイ!」

 

 変態か……確かに今私が付けているカレルは右回りの変態と左回りの変態だが……

 

「んじゃ、こっちのノーエロ本はどうよ? こっちも課題作品集だ」

 

「ほう?」

 

 ……これは、画集か。キヴォトスの風景を描いたものを集めた作品集だろう。

 

「……これは」

 

 アビドスの砂漠、リゾート地の海、温泉、桜並木……他にもたくさんの美しい絵が載っている。繊細なタッチで描かれたものもあれば、力一杯描かれた生命力に満ちた絵もある。自然の儚さ、美しさ、華やかさ、雄大さ……全てが魅力的だ。

 

「二冊買おう。イオリ、あなたの分も合わせてね」

 

「ま、まぁ、これなら……」

 

「毎度~」

 

 ……ふむ。五冊の本を買っただけのはずだが、この満足感。同人誌の販売会というのは……こういった効果もあるのだろうか? 

 

「……というか本当にエロ本買ったの!?」

 

「ああ。これもまた知識。叡智とは、あらゆる場所にあるのだよ、イオリ」

 

「だ、ダメだ! 没収! 私をモデルにしたやつはダメ!」

 

「おや……」

 

 スバルに言えば恐らく控えてくれるだろうが……面と向かってそういった話題を出すのはやはり恥ずかしいものなのだろうか。

 

「だそうだぞ、スバル」

 

「ああ、うん。気を付けるわ」

 

 フンッ、と顔を赤くしながら同人誌を持ち去ってしまったイオリに苦笑しながら、私はスバルにチップを渡してイオリを追いかける。……ああ、そうだ。

 

「スバル────いや、プレアデス性団の諸君。貴公らに、血の加護がありますように」

 

「……その加護、本当に加護か?」

 

「加護さ。……血は、誰よりも貴公らを見てきたのだからね」

 

 

 

 

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