透き通る世界で、月の香りがした。   作:エヴォルヴ

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どちゃくそサクサクいきます。

【誰かのリボン】

艶のある黒いリボン。手の中にあったそれは、美しい銀髪によく似合う品であろう。

誰かへの贈り物だったのか、丁寧に包装された形跡がある。

しかしこのヤーナムで贈り物など、必要もない。贈る相手など、どこにもいないのだから。


16.トリニティからゲヘナへ

 トリニティ総合学園を退学し、ゲヘナ学園へと転校する。そう伝えた時、事務職を行っているロボットの教員は納得したように印を押してくれた。

 

「あっさり通すのですね」

 

「月見さんがここを去る日が、いつか来ると思っていましたからね」

 

 事務職を担当する教員は複数いるが、その誰もが私に良くしてくれていた。突飛な言葉や行動があったとしても、いつも通りに、普通に接してくれていたことを覚えている。

 

「ここは……あなたにとって息苦しい場所でしょう」

 

「教員の私達が言うのもあれですが……ここは酷くカビ臭いですからね」

 

「違いない」

 

 くつくつ、と教員達と共に笑った私は、教員の印が捺された書類を確認する。

 

「正当な理由がない限り、転校、退学はできませんが……月見さんには正当な理由がありますからね」

 

 恐らく、昏睡状態での入院について言っているのだろう。今思えばヤーナムに訪れるきっかけになったあの事件は、私にとっていい経験だった。

 

「問題は……ティーパーティーとシスターフッドですよ」

 

「ああ、確か月見さんは……」

 

「ええ、一応、次期ティーパーティーとしての推薦があったそうですよ。吐き気がしますね」

 

「腫れ物扱いをしておきながら、ティーパーティーへの推薦……本当に矛盾ばかりだ」

 

 政治などには不干渉である教員達だが、内情はよく知っている。だからこそ、今のトリニティ総合学園はカビ臭いと言えるのだろう。素材になる墓所カビの方がまだマシだ。こっちのカビは素材にもならんからな。

 

「実力を示せばいい。圧倒的な力によって捩じ伏せたことで退学の資格を手にした者もいるそうです」

 

「……なるほど。私達は何かしてあげることはできませんが……どうかご武運を、月見アラヤさん。もう会うことはないでしょう」

 

「ええ、そうですね。……あなた方に、血の加護がありますように」

 

 そう言って事務室を出た直後、私の鼻先を弾丸が通っていった。……なるほど、そこまでして私を留まらせようとするか、この学園は。

 

「……動くな」

 

「まさかあなたが投入されるとはね、ツルギ先輩」

 

 彼女の横にはコッキングを終わらせて、いつでも撃てる状態にしているハスミ先輩がいる。正義実現委員会を引っ張ってくるとは、余程焦っていると見た。何だ? 私が暴こうとしているものが気に入らないか? ティーパーティーとシスターフッド……不干渉と言いながら、何やら密約を交わしているらしい。

 

「月見……お前にトリニティ総合学園へのスパイ活動の容疑がかかっている……」

 

「そうですか。それで?」

 

「多少手荒にしてでも連れてこい……と言われている。事情を聞かせてもらえ────ハスミッッ!!?」

 

「ゲッ……ボォッッッ!!!??」

 

 ツルギ先輩の言葉が終わる前に、ガラシャの拳がハスミ先輩の腹に突き刺さる。狩人に発砲────攻撃したのであれば、それは殺し合いの合図だ。……とはいえ、彼女らには世話になったし……半殺しに済ませるとしようか。

 

 幸い、悪夢の辺境で対人戦は腐る程やってきた────いや、今でもやっているが────凄まじい狩人ばかりだ。掠っただけで致命傷を与えてくる最高倍率愚者聖剣、瀕死になった瞬間からが本番の最高倍率貧者シモンの弓剣などが特に恐ろしい。

 

 それはともかく、武器の厳選が必要だ。ノコギリ鉈、獣狩りの斧、仕込み杖は論外。あれらはカスタムし尽くしてしまって確実に殺してしまう。ガラシャの拳でもいいが……ツルギ先輩やハスミ先輩はともかく、他の正義実現委員会のメンバーは勢い余って殺しかねない。……となれば、偉大な狩人への敬意を示すべきか。

 

(報告にあった武器を構えない……? いや、この圧……)

 

「ツルギ先輩、ご教授しよう……どれだけ耐久力があろうと────」

 

(速────ッ!)

 

「殴り続ければ敵は死ぬ」

 

 両手を合わせ、上から振り下ろす。素手……狩人達がなぜか一度は到達する極地の一つだ。己の力のみで獣を殺す……その快楽に身を滅ぼす狩人もいるそうだが……私の筋力は数値的に表示するなら99……つまるところ、狩人の到達点である。

 

 そんな私が拳を本気で振り下ろすのだ。ツルギ先輩であっても────いや、ツルギ先輩だからこそ、回避を選択する。彼女程の実力者ならば、私の拳を避けることを選択できるのだ。

 

「話を聞け、月見!」

 

「敵の言葉に耳を貸す程、私は甘くない。どこもかしこも獣ばかり……貴様も知っているだろう……?」

 

(分かっていたが、話し合いは無理か。だが、月見が本当にスパイ活動をしていたわけがない……が、その証拠もない……ティーパーティーとシスターフッドは何を考えている?)

 

 考え事とは感心しないな、ツルギ先輩。絶対的強者だからこその余裕というやつか? ……あなたのように強ければ、私はあの子を喰われることはなかったかもしれないな。

 

 ツルギ先輩、あなたが羨ましい────いや、羨ましかったよ、私は。だが、もう羨むことはしない。それはきっと、彼らへの冒涜になってしまう。あの夜を過去の出来事だったと割り切る行為になってしまうのだから。

 

 だから────────あなたを倒す。かつての憧憬、かつて憧れたあなたの強さ故の自由、確固たる意思……どこまでも己の正義を貫けるその強さに、私は二度と憧れることはない。

 

 心の中で訣別の言葉を呟き、私はツルギ先輩の腕を掴む。あなたは再生ができた。だが、内臓を掻き回された後、引き千切られたら、どれだけの時間を再生に費やさねばならないんだ? 

 

「ガァァァァァァァッ……!!?」

 

 ズヂュッッ、という音が私の耳に届いた直後、私はツルギ先輩の腹を貫いていた。そのまま温かい体内にある内臓────大腸を掴み、ズルルルルルッッ!! と引きずり出し、引き千切る。

 

 凄まじい量の血が彼女から噴き出すが、この程度で死ぬなら私はこの攻撃────内臓攻撃を行っていない。彼女の神秘は瀕死に陥ったとしても生存することができる程のポテンシャルがあるし、ツルギ先輩はそれを引き出せているのだから。

 

「────次に会う時は……いや、止めておきましょう」

 

「ゼヒュッ…………待゛、で……づぎ、み゛ぃ゛……!」

 

「私はもう、トリニティ総合学園の────この腐敗しきった鳥籠の敷居を踏むことはない。さようなら、剣崎ツルギ、羽川ハスミ。あなた達との交流は……まぁ、悪くはなかったよ」

 

 傷を治しながら、立ち上がろうとする彼女────剣崎ツルギと気絶している羽川ハスミの横を通り抜けて、私は廊下を歩く。外で待機しているであろう正義実現委員会は、あの二人からの通信が消えた時点で何か行動しているだろうが────む? 

 

『この先、友人があるぞ』

 

『水着! だから、友人』

 

『友人万歳! この先、対話が有効だ』

 

『友人、あるいは友人』

 

 友人、か……ククッ、今の私を見てもまだ友人と呼べるのなら、それは狂人や奇人の類いだろうよ。……あるいは狩人か。狩りに優れ、無慈悲で、血に酔っている……そんな狩人ならば、今の私を見ても笑うだろうな。

 

「……こんにちは、アラヤちゃん」

 

「ああ、ハナコ。貴公だったか」

 

「その姿……ああ、言わなくても大丈夫ですよ。何となく分かっていましたから」

 

 非常事態だろうに、水着姿で玄関前を闊歩していた私の友人……だったであろう浦和ハナコは、いつものように笑みを浮かべている。それは作り笑いか? それなら止めておけ。せっかく弾けたのだ。もっと感情を露にした方が楽だろう。

 

「トリニティを出ていくと聞きました」

 

「ああ、出ていくよ。……貴公はどうする?」

 

 貴公は、外に出たがっていた人間だったはずだ。

 言外にそう聞いた私に対して、彼女はただ静かに首を振った。

 

「いいえ。それは止めました」

 

「ほう……その心は?」

 

「このトリニティを……腐り果てた鳥籠を、内側から変えるために」

 

 その言葉に嘘偽りはなく、彼女の思いがはっきりと伝わってきた。変える……変えてみせる。この腐りきった鳥籠を、内側から変えてみせるのだと。

 

「アラヤちゃん、私ね、友達ができたんです。こんな私でもいいと言ってくれた友達が」

 

「そうか」

 

「アラヤちゃん以外に、こんな私を受け入れてくれる人がいたんです」

 

「そうかね」

 

「だから────そんな友達のためにも、変えてみせます。アラヤちゃんが大きな声で笑うくらい、変えてみせますから!」

 

「ああ……」

 

 なんと美しい。啓蒙が、獣性が、私の五感全てに届く覚悟の丈。我らはまだ弱く、そしてまた幼い。だが、それでも強くあろうとすることは悪ではない。だから、私はこの言葉を贈ろう。

 

「素晴らしい選択だ。天晴れだ、浦和ハナコ」

 

「……!」

 

「貴公に敬意を。貴公と友であれたことを、私は誇りに思う。貴公と友であったことを、私は生涯忘れることはない」

 

 だから、やってみせろ。やってみせろよ、浦和ハナコ。この腐りきった鳥籠程度、消し去ってみせろ。そして私を盛大に笑わせてくれ。

 

 彼女に一礼をして、私は外に出る。……ああ、正義実現委員会だけではなく、ティーパーティーの親衛隊とシスターフッドもいたか。……なるほど、試練と仮定したか? この程度払いのけられないのなら、転校などさせないと。勝てば試験の合格者として、負ければ私を罪人として扱う……そんな筋書きだろうが……足りん。足りんよ、その程度では。

 

 ────おや? Mr.暁もいるのか……ならば遠慮はいらない。恐らくは合格云々しか聞かされていないのだろうが、私の前に立ったのだ。多少の痛い目は見てもらおうか。

 

「彼らの亡骸の埋葬……これだけが心残りだな……」

 

 

 

 ────────────────────────────────────

 

 

 

1:名無しの先生

 このスレは3章2節をクリアした前提でのスレです。ネタバレ注意。

 

 おい、誰だあんな化け物連れてきたの

 

2:名無しの先生

 負 け イ ベ ン ト 三 連 続

 

3:名無しの先生

 ヴォエッ!! 

 

4:名無しの先生

 ツルギ&ハスミ、一撃死。正実&シスターフッド&ティーパーティー親衛隊どんなに粘っても壊滅。突然の自由編成からの────────

 

5:名無しの先生

 獣 肉 断 ち

 

6:名無しの先生

 なんだよもおおおおおお!! またかよおおおおおおおお!! 

 

7:名無しの先生

 えぐない? 

 

8:名無しの先生

 あれで手加減とか嘘でしょ

 

9:名無しの先生

 でも死者はいないし重傷も手足が抉れた程度

 

10:名無しの先生

 程度じゃねぇ!! 

 

11:名無しの先生

 シナリオでも言ってたけど、獣ってなんだよ……

 

12:名無しの先生

 どこもかしこも獣ばかり……

 

13:名無しの先生

 あの子にとって、トリニティは腐り果てた鳥籠だったのか……

 

14:名無しの先生

 そもそもアラヤちゃんはなんで上層部に怒ってたん? 

 

15:名無しの先生

 さぁ……亡骸がうんたらかんたら言ってたけど……

 

16:名無しの先生

 サクラコ様が苦い顔してた以外に考察要素がない。

 

17:名無しの先生

 知り合いでも殺されたんか、アラヤちゃん

 

18:名無しの先生

 でもそれはおかしくね? アラヤちゃんって処刑隊なるとこにいたんでしょ? シスターフッドの暗部みたいなとこ

 

19:名無しの先生

 知り合いがいたって感じだろ。そもそも処刑隊自体、シスターフッドの暗部なのかも分からん。

 

20:名無しの先生

 亡骸かぁ……聖者の亡骸とか? 

 

21:名無しの先生

 ありそう

 

22:名無しの先生

 でもそうなるとアラヤちゃんの年齢がおかしなことに……

 

23:名無しの先生

 聖者の血族とか? 

 

24:名無しの先生

 あー、その線もあるのか

 

25:名無しの先生

 それなら確かに、血族の亡骸を勝手に保管されてたりしてたらキレるよね。あの言い方だと多分、許可取ってないし。

 

26:名無しの先生

 トリカスがやらかしたんだろうか……

 

27:名無しの先生

 サクラコ様達的には、ただ昔から保管しておけと言われていたから保管してただけで、その前身となる存在がやらかしたくさい? 

 

28:名無しの先生

 もっと情報が欲しいな……

 

29:名無しの先生

 イオリのセリフも気になるよな。アラヤちゃんがエミーリアって呟いてたって……

 

30:名無しの先生

 エミーリアねぇ……

 

31:名無しの先生

 ……さっき調べてきたんだけど、エミーリアってキャラストで出てるわ

 

32:名無しの先生

 は? 

 

33:名無しの先生

 マ? 

 

34:名無しの先生

 いつ? 

 

35:名無しの先生

 ヒナタとマリー。エミーリアとローレンスって名前が出てる。

 

36:名無しの先生

 マジだ! 

 

37:名無しの先生

 ローレンス? 誰? 

 

38:名無しの先生

 知らん。けど、シスターフッドの倉庫の奥でひっそりと保管されていたけど、大部分を盗まれたっていう話があった。どちらも鹿みたいな角がある人間の骨だったらしい。

 

39:名無しの先生

 鹿。

 

40:名無しの先生

 鹿みたいなキヴォトス人いたんだ……

 

41:名無しの先生

 え、じゃあ何? アラヤちゃんってケモミミ要素ないけどケモミミの血族ってこと? 

 

42:名無しの先生

 情報くれ。マジで分からん。

 

 

 

 

 

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