エミュが欲しい。
ところで皆もBloodborne、やろう!(唐突なステマ)そしてブルアカと悪魔合体、しよう!(悪魔の囁き)
ゲヘナ学園に転入してから、一週間が経過した。今日は珍しく登校必須日で、私が所属する部を決めるらしい。マコト先輩からの電話でその旨は聞いている。……他にも理由はあるがね。
「……なぜ部長が揃っている?」
「キキッ、それはだな────」
「あなたをこぞって欲しがってるからまとめてプレゼンしてもらうことにした。それだけよ」
「空崎ヒナ、私のセリフを奪うな!?」
……論外な部活の、論外の部長が多くないか? まともなのは……給食部と風紀委員会と生徒会と……帰宅部ぐらいではないか。
「そも何だ、温泉開発部とは」
「おや? 私達の活動に興味がある────」
「テロリストの間違いではないのか?」
「失敬な!?」
事実であろうが。私は知っているぞ……私が贔屓にしていた飲食店の下に温泉があるとか言って吹き飛ばしたことを。幸い怪我人はいなかったらしいが、その店は潰れたぞ。
「ところで貴公……だけではないが、なぜここに来てしまったのだ?」
「「「え?」」」
「私は賞金首も狩っているんだが」
何の前触れもなく懐から取り出したエヴェリンを見た賞金首共はギョッとした表情を見せた後、酷く可笑しそうに笑みを浮かべた。
「何がおかしいのかね?」
「見たところとても古い銃……骨董品もいいところですわ。そんなものだけで私達を捕らえられるとでも?」
「そもそも風紀委員長と万魔殿のリーダーが手を出さない時点で捕まえるつもりがないのは分かっているだろ?」
……ふむ、なるほど。確かにヒナ先輩とマコト先輩だけでは、問題児達を捕らえることはできないかもしれんな。ああ、それは一応同意しておこう。だが……エヴェリンを馬鹿にしたな?
「試してみるかね? エヴェリンの威力を」
「ハンドガン程度では私達を気絶させられないぞ? ゼロ距離でデザートイーグルとかならまだし……も……?」
カァァンッ! と凄まじい音と共に発射された弾丸が、温泉開発部の部長の頬を掠めて壁を貫いた。ゲヘナ学園の壁は凄まじい強度を誇るが、私の血を混ぜた水銀弾の前では無力だったようだ。
「エヴェリンの威力はどうかね、テロリスト」
「……ん゛ん゛っ……!」
掠めた頬から血を流すテロリストを一瞥した後、私はふとした疑問を投げ掛ける。
「部活は全員が入る必要があるので?」
「その方が面倒が起きた時に対処しやすいから」
なるほど、入部後に提出するデータから問題児を見つけるわけだな。温泉開発部や美食研究会────もとい、テロリストがなぜ消えないのか疑問だったが、そういう背景があったか。
「……では、私はこれまで通りブラックスミスとして活動させてもらおう」
「ゲヘナでは起業は校則で禁止されてるんだけど」
「金銭の取引が発生しなければいいのでしょう? ならば問題ないですよ」
そもそも私に多くの金は必要ない。賞金首を捕らえているのも、寄付の一貫だ。つまるところ、ボランティア。おくるみの館の維持費や、アビドス復興支援募金などに寄付しているため、収入は日銭程度にしかならないのだ。
本当ならヤーナムで知り合った者達の墓を建ててやりたいのだが……まだ遺体が見つかっていない者がいる。彼らを見つけた曉には、必ず墓を建てる。豪華なものでなくともいい……彼らが静かに眠ることができる場所を用意したい。
「……さて、話はこれで終わりだ。覚悟はいいか、犯罪者共」
ゲヘナ学園というのは、力こそが全てなのだろう? ならば私がテロリストを捩じ伏せたとしても、何ら問題はないはずだ。貴様らは多くに被害を出したからな……大人しく捕まって、牢屋に入っているがいい。
「まぁ、待ちたまえ、えーと……アラクネ君?」
「余程死にたいらしいな貴様」
遠慮するな、死ね。
「ぬわぁあああああ!!?」
「チッ、外したか」
「危ない危ない……山勘が働いて助かったってゲベェッ!?」
(……見えなかった?)
(今のは……やつが一瞬消えたように見えたが……?)
狩人の秘儀、加速。マリアやゲールマンが扱うそれを用いて、私は温泉開発部の部長────鬼怒川カスミの顔面にガラシャの拳を叩き込んだ。ふむ、やはりガラシャの拳はいいな。血晶石が嵌め込めないのが難点だが。
「さて……次はそちらだテロリストその二」
(やはり逃がすつもりはないみたいですわね……しかしここで戦えば負けるのは私……ここは一度降参のポーズを……)
「話などは牢屋でするがいい」
私の友人が迷惑しているのでね。貴公は一度反省したまえよ。あの時のようにガラシャの拳を腹に数回叩き込んだ後、ヤーナムで拝借してきた鎖で縛り上げる。実験体すら抑え込む頑丈な鎖だから、キヴォトス人であっても抜け出すには時間がかかる。
「……さて、手筈通りにしましたよ、お二方」
「ええ、助かったわ」
「これである程度の治安は維持されるか……」
まだ残党はいるから油断はできんだろうがね。それにしても、なぜここまで簡単に誘い出されたのだろうか……どうせ捕まらないとでも思っていたのか? ゲヘナのトップが揃っていたのに? だとすれば思考の次元が低すぎやしないかね。
部屋の外で待機していた風紀委員会の人間が入ってきて、気絶している犯罪者を回収していく。ゲヘナ学園はまともな部活が少ないな。やはり力こそが全てという考えが浸透しているからだろうか。
「アラヤ、さっきのは歩法か何か?」
他の部長達も撤収していく様を眺めていると、ヒナ先輩が声をかけてくる。歩法……ああ、加速のことだな?
「あれは歩法ではありませんよ。神秘の応用……とでも言いましょうか」
「神秘……?」
おや、神秘を知らぬとは。……いや、そもそも神秘を知る機会が少ないのだから当然か。思えばヘイローを持つ人間達は、無自覚に神秘を扱っている。ティーパーティーの一人、パテル派の長、聖園ミカは隕石を落とす。隕石……あれを私は斬れるだろうか? ヤマムラやカインの騎士は、私の神秘が込められた夜空の瞳から放たれる隕石を両断していた。もしかしたらできるかもしれない。
「神秘。我々が頑丈だったり、異能を手にする者がいる理由ですよ」
「ほう?」
「不思議に思いませんでしたか? 我々がなぜ頑丈なのか」
そういうものだと思っていれば、不思議には思わないのだろうが。
「まぁ、これも異能の類いですがね」
「なるほどな。……ところで月見」
「何でしょうか」
「ゲヘナの地下にあったものについて何か知っているか?」
ゲヘナの地下……ああ、前に写真が送られてきたあれか。というかやはりヤーナムなのだな、ここ。
「有毒ガスが立ち込めていて、専用の装備がなくては入れないのだが……しかも油まみれだし」
「? 毒は治しながら進めばいいだろう?」
「「治しながら……!?」」
送られてきた写真に写っていたのは、血に渇いた獣の亡骸であった。思えばこの辺りは旧市街だったか。……デュラ、貴公もどこかで眠っているのか?
私は懐から白い丸薬を取り出してみせる。ヤーナムにおいて灰血病の治療薬として使われたそれは、遅効毒だろうが劇毒だろうがたちまち解毒する効果を持つ。ちなみに鎮痛解熱消炎剤としても使える。案外便利だぞ。くそ不味いが。
「これを飲みながら進めばいい。それか燃やしましょう」
「ガスが爆発しそうだけど」
「あれは可燃性ではありませんよ。発生源はよく燃えますが」
懐かしいな、デュラ。貴公との出会いはよく覚えているぞ。
『狩人よ、警告は読まなかったのか?』
『どこに書いてあった!?』
『引き返したまえ。旧市街は獣の街。焼き捨てられ────』
『ええい、話を聞け! そもそもここはどこだ!? 聖杯を手にせよとは言われたが、そも聖杯はどこにある!?』
『……貴公、狩人らしからぬ落ち着きの無さだな』
犬に追い回され、辿り着いた旧市街。狂った狩人に追いかけ回され、設置型ガトリング砲の前に立っていたデュラの下まで走った旧市街。聖杯を得るためとはいえ、苦しみ続けていた血に渇いた獣をデュラと共に狩った旧市街。さすがのデュラも、血に渇いた獣────もとい、旧市街のシスターがああなってしまったのには堪えていたらしい。信条を一時仕舞い、弔うことを決めた時、彼はどう思っていたのだろう。
『貴公……わがままに付き合ってもらい、感謝する』
『彼らを守ると決めた時から、彼女は────苦しみ続けていた。だが、踏ん切りが付かなかったのだ』
『それにしても貴公、まさか変形させた状態のノコギリ鉈を使うとはな。獣に対しては────』
『彼女は、人だったのだろう? 獣ではないさ』
『……そうか。………………すまない、貴公。私はもう少しここにいることにする。貴公は目的を果たしたまえ』
血に渇いた獣、その正体は定かではないが、旧市街のシスターであったことは間違いないだろう。信心深い者だったそうだからな。聖職者程、恐ろしい獣へと変わる。無慈悲なことだ。
「足を踏み入れたくないのであれば、私がやりますが」
「…………マコト、私はやらせてもいいと思う。適任がいるなら、それをやらせるべき」
「ふむ……」
(シスターフッドから送られてきた情報からして、適任は月見だが……他にも処理を頼みたいものがあるからな……)
マコト先輩が何やら考え事をしている。大方、ゲヘナにもヤーナムの遺物があるだろうからな。旧市街だけならまだしも、恐らくヤハグルもゲヘナの自治区にある。トリニティも大概だが、ゲヘナもまぁまぁあれだな。政権争いがない分、空気が澄んでいるが。
「……月見、頼んでもいいか?」
「承りました。……他にあるのであれば、この場でどうぞ」
「キキッ、助かるぞ。……これがよく分からないもののリストだ。確認しておけ」
そう言って教室を出ていくマコト先輩。ヒナ先輩もやることがあるらしく、教室を後にした。残された私は、マコト先輩から渡されたリストを見て、思わず溜め息を吐いてしまう。
「ヤハグルの研究資料に、メンシスの檻……黄色い背骨、血走った目玉……儀式素材ばかりではないか……!」
しかも、その下にはよく分からないけど目が離せなくなる石や頭蓋骨と書かれている。間違いなく扁桃石と狂人の智慧だ。上位者の叡智がないだけマシではあるが。あれらは処理する時に人払いをしなくてはいけない。扁桃石はまだしも、狂人の智慧は。
「だが、盗まれていない……となれば」
ヤハグルのことは全力で秘匿したのか。研究資料についても、合言葉がなければ開けないようだしな。リストに合言葉を聞いてくる声がしたと書いてあった。……百鬼夜行学園にもヤーナム由来のものがあったら私はキレる自信があるぞ。赤布の男が叶えた夢を害する可能性があるからな。
何だったか……連盟の同士ヤマムラが言っていた……そう、百物語だ。儀式によって人の秘密を暴くものであり、怪異を生み出すこともできる代物。そんな感じで使われていたら使っている者を潰して潰して粘膜を剥き出しにした肉塊へと変える自信がある。というかその自信しかない。
しかし、それを使っているのが孤児だったら……赤布の男の理想を踏みにじることに繋がるかもしれない。………………ふむ。
「半々殺し程度に済ませるか」
とりあえず、この遺物リストは今日中に全て回収、または弔おう。面倒なものはさっさと片付けるに限る。