透き通る世界で、月の香りがした。   作:エヴォルヴ

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三次創作、大いに結構じゃあないか……書け。

あとキヴォトスをフロムで染め上げろ。

皆さんの気にしているシュロやアリウスの面々ですが、多分死んでは蘇るを繰り返すことになります。うふふ……それか目玉を水面に落としてもらいましょうか……ああ、楽しみね……キヴォトスの生徒での治験は初めてのことよ……

え? ダメ? 何をおっしゃる。傷付けるのなら、それ以上に傷つけられ、尊厳を奪われる覚悟があるということですよね? ね? そうですよね? ねぇ、アリウスの皆さんとそちらの怪談家と保護者様? ケジメってのが、あるんじゃあねぇんですかい? 別に指を詰めろ、とは言っていないんですよ? 凄まじい被害を与える、人の尊厳を踏みにじる。ならばそれ以上の報復をされる【覚悟】ってのがあるんですよね?

なぁ、なぁ、なぁ、なぁ、なぁ、なぁ、なぁ!! あるんだよなぁ? てめぇらにはよぉ!!!?? 奪われ、踏みにじられ、なぶられ、ゴミのように擂り潰され、生き地獄を味わう【覚悟】ってのがよぉ!! 最初にやってきたのはトリニティ? ゲヘナへの徹底抗戦を訴えただけ? それは過去の話だよな? じゃあてめぇらはなんだ? 少しでも環境を良くしようと考えたか? 恨む前に、現状をどうにかしようと死に物狂いで何かを成そうとしたか? 大人への抵抗を、最後まで諦めなかったか? 諦めなかったのなら、なぜ大人に従っている? 

ヤーナムにはいたぞ。獣が止めどなく現れると知っていても役目を果たそうとした女が。師を弔うために足掻いた男がいた。同士を愛し、全ての虫を踏み潰すと決めた男が。罪の清算を願った男が、秘匿を守り続けようとした男が、師を慕い続けた女がいた。獣の愚かを超えんとした男がいた。苦しみながら、役目を果たそうとした男がいた。お前達にあるか? 彼らにあった意志! 誰かに繋ごうとする遺志がお前達にはあるのか!!




はい、以上、アラヤちゃんがぶちギレた時に現れる内なるアルフレート+ヴァルトール+シモン+ブラドー+ガスコイン+アイリーン+先輩狩人でした。あと、今日も短いです。


26.教区長

 医療教会の大聖堂。ヤーナムで最も大きく、そして荘厳な聖堂の中に、一人の女性がいた。

 

「……どなた、ですか?」

 

「私は────狩人だ。医療教会の狩人とは、違うが」

 

 祈りを捧げる女性の前に現れたのは、狩人の装束に身を包んだアラヤであった。

 

「獣狩りの……ようこそ、狩人様。何のもてなしもできませんが……」

 

「いや、いい。……荘厳な聖堂だな」

 

「ええ……ヤーナムで、最も大きな教会です」

 

 眉目秀麗な女性────教区長エミーリアは小さく笑みを浮かべ、来訪者たるアラヤに一礼する。

 

 美しい女性だと、女であるアラヤでも思うほど、エミーリアの容姿は整っていた。美しい灰色と銀色が混ざったような髪、透き通った肌、黄金比を形作る顔立ち。スタイルも細身でありながら出るところは出ている……どれを取っても美しい女性だった。

 

「ところで、狩人様はどうしてこの教会に?」

 

「オドン教会の上に行くために必要な情報が欲しくてな」

 

「オドン教会……ああ、あの生存者が集う……狩人様、お気をつけください。オドン教会には、姿なきオドンと呼ばれる何かがおります」

 

「ああ、何かあったな、言い伝えが」

 

 赤い布を纏った男が言っていた、姿なきオドンという上位者の話。なんとなくで聞いていたが、エミーリアの言い方から察するに、ろくでもない存在の可能性が高いのだろうとアラヤは感じた。

 

「子を成せぬ夫婦に奇跡を与えると聞きますが……それは、本当に夫婦の子供なのでしょうか?」

 

「ふむ、そういう化生の類か……」

 

 さて、そうなってくると赤布の男は信頼できるのか、という考えが浮かぶが、アラヤは赤布の男自身は善性の存在であることを感じ取っている。問題とするのであれば、姿なきオドンと呼ばれる存在なのだろう。神というのはどの時代であっても厄ネタの火種だ。

 

「しかし、オドン教会の上に向かうとなれば、あちらの道へ向かうべきかと」

 

「外の巨人を避ける必要があるな」

 

「いえ、その点につきましては、こちらをお持ちください」

 

 そう言ってエミーリアが渡してきたのは、美しい金のメダリオン。赤い宝石が埋め込まれたそれを渡されたアラヤは、首をかしげながらも口を開く。

 

「これは?」

 

「私が、教区長になった時に譲り受けたものです。これを持っていれば、予防の狩人達からの攻撃は来ないでしょう」

 

「ふむ……それは助かるが、いいのかね? 大事なものなのだろう?」

 

「此度の夜はどこかおかしい。狩人様のお力を頼るしか、ありませんので……」

 

 獣狩りの夜は、ヤーナムにおいて何度も行われた行為だ。しかし、今宵の狩りはどこかおかしいとエミーリアは口にする。アラヤという新しい異物が取り込まれたからこその、異常だったのだろうか。

 

 アラヤはしばらく考え、ふと、思い付いた。

 

「少し待っていてくれるかね?」

 

「? ええ、はい」

 

 アラヤが消えたと思えば、数十秒後に戻ってくる。しかしその数十秒で何があったのか……妙に疲弊した顔を見せていた。

 

「すまない、待たせたな」

 

「いえ、そんなことは────」

 

「これを、代わりに贈らせてほしい」

 

 アラヤがエミーリアに渡したのは、銀色の輝きを放つ美しい髪飾りだった。

 エミーリアはその銀の輝きが何なのかを知っている。獣狩りの武器に使われる特別な隕鉄────その中でも最も希少度の高い高純度隕鉄の輝きだ。艶めかしく、それでいてどうにも目が離せない魅力的な輝きを放つその髪飾りには、「親愛なるエミーリアへ」と刻まれている。

 

「エミーリア、あなたにとっては短い付き合いだろう。だが、私にとって……余所者の私を受け入れてくれたあなたは、得難い友人なのだ。だから、これを贈らせてほしい」

 

「……」

 

「それに、あれだ。友人のために何かを作るというのは、初めての体験だ。できれば受け取ってくれると嬉しいんだが……」

 

「ふふっ……不思議なお方ですね、あなたは」

 

 どこかおかしそうに、それでいて嬉しそうにエミーリアは笑い、アラヤから髪飾りを受け取った。

 

「受け取らせていただきます。……狩人様、お名前をお伺いしてもよろしいですか?」

 

「アラヤだ」

 

「アラヤ、様……素敵なお名前」

 

 ベールのフードを外し、美しい銀髪を下ろしたエミーリアは、アラヤの名前を反芻するように呟き────やがて彼女に髪飾りを手渡すかのように向ける。

 

「よろしければ、私の髪に、付けてくださいますか?」

 

「ああ、もちろん」

 

 上質な絹のような髪に触れ、髪飾りを通す。美しい銀によく映える髪飾りは、薄明かりの中で艶めかしい輝きを放ち続けていた。

 

「よく、似合っている」

 

「ああ、それは嬉しいです。素敵な贈り物をありがとう、アラヤ様」

 

「……では、私は行くよ。エミーリア、あなたの目覚めが、有意なものでありますように」

 

「ご無事を、お祈りしています、アラヤ様。あなた様に、血の加護がありますように」

 

 お互いに無事を祈り、アラヤは大聖堂を後にする。

 

 エミーリアは誰かのために祈りを捧げるのではなく、この夜に出会った一人の友人のために祈る。時折、どこか嬉しそうに微笑み、髪飾りに触れながら。夜が明けた後、彼女との再会を楽しみにしながら、彼女は、アラヤの無事を祈り続けた。

 

 

 

 ──────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

「アラヤ、ごめんね。忙しいだろうに」

 

「いいえ、問題ありませんよ、チヒロ先輩」

 

 コタマ先輩に救援要請を受けた私は、ミレニアムサイエンススクールに立ち寄っていた。

 

 忠告を聞かずに映像と音声を見た愚か者がいるとは、本当に天才が集う学校か? まともな生徒を少ししか見たことがないのだが。チヒロ先輩、コタマ先輩、ノア、ユウカなど、まともなやつが────忠告を守る者が少ないのはどういうことだ。

 

「それで、うわ言を呟いて倒れた者は?」

 

「医務室で寝てる。ただ、ぼそぼそと何か言ってるのが不気味なんだ」

 

「ふむ……」

 

「宇宙は、空にある? とか、血を恐れよとか、なんとか……」

 

 ヤーナムの気にやられたな。再誕者というヤーナムの残滓は、キヴォトスの人間には刺激が強すぎる。

 

 ヤーナムの狂気に対抗できるのは、今のところ私ぐらいだろうな。まぁ、あんな狂気に対抗できるやつがポンポン生まれていたら、またヤーナムの悲劇を繰り返すことになる。そうなれば、私は容赦なくその元凶から末端まで狩るぞ。ミレニアムサイエンススクールがビルゲンワースミステリースクールになったとしても。

 

「さて……」

 

「ここからはアラヤだけ面会を可能にしてる。二人のこと、お願いね」

 

「ええ、もちろんです」

 

 医務室に入った瞬間、感じ取る啓蒙の気配と、聞こえてくるうわ言。全く、忠告を無視するからこうなるのだ。

 

 デュラの警告を見つけることができずに、叫びながらガトリング砲が設置された場所に向かったのが懐かしいな。獣除けの松明がなかったら私は肉片となっていたに違いない。

 

「ああ……許してください……許してください……」

 

「誰か、あの赤子の泣き声を……」

 

「悪夢は終わり、そして蒙は閉じられる。お前達の悪夢、狩人が貰い受けるぞ」

 

 全てにおいて真逆な二人の少女の額に手を当てて、啓蒙と悪夢を吸い上げる。これは上位者になってから開花した権能だ。これを使うと上位者の姿に戻りかけるから、あまりやりたくはないのだが……仕方あるまいよ。処置が終わったらすぐに帰って、一度夢に入る事にする。一日もあれば、何とかなるだろう。

 

 そして、この悪夢は私の周回場として活用させてもらおう。視たところ、狩人の悪夢に似た聖杯ダンジョンのようになっているではないか。具象化すればきっと、良い冒涜の聖杯となる。美しい血晶石を手にすることができるに違いない。名付けるのなら、【円環叡智の聖杯】だろうか。

 

「……さて、処置はこれでいいだろう」

 

 

 早くこの聖杯を使わせろ。どんな血晶石が手に入るのか、地底人達と共に行う行軍で確かめさせてくれ。

 

「愚かしいが……おやすみなさい、キヴォトスの子供達。あなたの眠りが、穏やかなものでありますように」

 

 穏やかな寝息を立てる二人の少女を一瞥した後、私はチヒロ先輩に連絡を終え、小躍りしたくなる気分を疲労感で相殺しながら自宅へと帰還した。

 

 灯りを用いた転移を利用したため、この触手まみれの髪や、ゴースの遺児のような鱗の生えた腕、メルゴーの乳母のような翼などは見られていないだろう。というか視線を感じなかったから多分問題ない。

 

「さて、寝るか」

 

 今日は少々疲れた。丸一日休んでいいとマコト先輩から伝えられているし、私は惰眠を貪るぞ。そして聖杯ダンジョンに潜るのだ。

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