―― もう終わりにしよう。こんな世界なんか、要らない。
「母さん、もうすぐ行くからね」
俺はそう言って、ビルの屋上から飛び降りようとした――
その時だった。
「まだ死ぬのは早いんじゃね?」
そう、男は言った。
「……何だよ、お前」
「お前、生きるのに嫌気が差しちまったんだろ? だったら手を貸すよ。俺がこんな世界よりもっとスゲェ世界に連れてってやる!」
彼は救う価値の無い俺に救いを手を差し伸べてくれた。
「その代わり、お前の大嫌いな世界を、喰らい尽くしてやる」
男の言葉と共に世界が暗転する。
人が、街が、自然が、次々と壊されていく。
凶悪な侵略者によって、世界は喰い尽くされていった。
だが、そんなことはどうでも良い。こんなガラクタの世界、どんな風に壊れたって良い。
俺は、悪魔の囁きに乗ってしまった。
「俺を、この世界から救ってほしい」
「了解した」
一ノ瀬蓮司の物語は、ここから始まった。
◆
「誰かぁ! 助けてくれぇえええええ!!」
「嫌だぁ、死にたくないっ!」
「痛い…お母さん、お母さぁん……!」
「誰か、息子を! 息子を知りませんか……!?」
「いやっ、来ないで! 来ないでよぉ!」
街の方から悲鳴や断末魔が聞こえる。人々は逃げ惑い、殺され、攫われ、喰われていった。
「ギャアアアアアアッ!! 痛い! 痛いよぉおおおおお!! お母ちゃああああ――」
「クソッ、何で俺がこんな目に…チクショオオオオ――」
「ちょっ押さないでよっ! 私だって死にたくないのに…いだっ、何しやがんだテメェエエエ!!! こちとら社長令嬢なんだぞゴラァ!! テメェらみたいなゴミなんかの命よりもアタシの命の方が何倍も――」
「や、止めてくださいっ、お願いしますっ! 許してくださいっ! 助けて、助けて、お願いしま――」
「ハハハッ、お、俺……終わった――」
「何で、何でよ! 私は何にも悪い事なんかしてないのに、人生で何にも悪い事なんか一度も足りともしていないのに! 神様の嘘――」
嘆きを叫ぶ前に一人がグシャリ、また一人がグシャリと殺されていく。
「アハハハハッ! 殺せ殺せー!!」
「新鮮な内に皆殺しにしろー!」
「顔が良いのや体格が良いのは残して置け! 後で性処理用にして愛でてやるからよぉ!」
侵略者たちは、笑いながら惨殺していった。大量の殺戮兵器を使って、笑顔で、殺しまくった……。
◆
目を覚ますと、俺はベッドの上だった。
「おっ、起きたか」
見知らぬ男が、俺の様子を窺う様に顔を覗き込んだ。長く眠り過ぎた為か、暫く身動きが取れない。
「こ、此処は……」
俺は、男に尋ねる。
「ここは俺達の……アナザイーターの世界だ」