有馬かなに転生したので、俺の意識が消えるまで彼女を守護ろうと思う   作:雑穀ライス

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本日2話目となります。


君の名は

「やだぁああああああ!わたし、『木』の役なんてやりたくなぁいぃいいいいい!!!!」

 

 小学校の演劇の出し物で、配役決めのじゃんけんで最後まで負けた女の子が泣き出した。

 ちなみに私は速攻で勝ち抜けしてお姫様役に内定している。つか配役に「木」の役なんて入れてるところ本当にあったんだ。下手すりゃ虐めの原因になるぞ。…あ、ディズニーみたいなイメージならアリかな。いやナシだ小学生にそんな機微が理解できるわけがない。

 いや待てよ。その機微が理解できる小学生…ここにいるじゃないか。

 

「あ、それなら私が『木』の役やりまーす」

 私は女の子と配役を変わって貰った。

 

「その代わり、私に脚本をいじらせてください。…児童の自主性の成長を抑え付けるみたいなこと、先生はしませんよね?」

 そして、担任の先生を脅して脚本をめちゃくちゃに変えてやった。

 

 

 

『ちょっとおかしい白雪姫』

 

 私たちがやる演劇のタイトルである。私の付け加えたオリジナル要素がふんだんに加えられている問題作だ。

 おおまかな流れは普通の白雪姫と同じで、魔法の鏡に「おめーよりも白雪姫のほうが可愛いに決まってんだろ。自分の歳を考えろよババア」と煽られたお妃様がキレて白雪姫を毒林檎で毒殺しようとする話だ。

 

 私の役は、「りんごの木」である。木の絵の真ん中に顔の部分だけ切り抜いて見えるようにしてある、観光地でよく見かけるアレみたいな恰好をしている。

 この劇では「りんごの木」は、りんご売りのお婆さんに化けたお妃様が、毒りんごを作るために私から林檎を収穫しようとするシーンの脇役だ。最初は「木」の役は背景に徹するものだと思っていたが、なるほど、こういう役なら配役の一つとして割り振ってもいいのかもしれない。

 最初の台本には、私が演技する内容は「お婆さんに林檎を渡す」とだけ書いてあった。

 当然、そんなつまらない展開は書き替えさせてもらった。

 

「最近、歳のせいか目が悪くなってきてねぇ…よし、これだね!」

 お婆さん役の子がそういって、私の持っている林檎を……受け取らずに、俺にアイアンクローを仕掛けてきた。

 

「ふんぬ!ふんっ!…なかなか取れないねぇ!!」

 私は大きく口を開けて、大袈裟に嫌がる素振りを見せる。私の顔を掴むお婆さん役の子に合わせて、ダンスを踊るように身体を右へ左へ動かす。

 私たちの滑稽な仕草に、演劇を見に来ていた父兄の席から笑いが起こった。

 私はお婆さん役の子の肩を叩いてタップ宣言。手に持った林檎をお婆さんの顔の前に持ってきてアピールする。

 

「おや?こんなところにあったのかい!?全く、紛らわしいんだよ!!」

 お婆さんの理不尽な言葉を聞いて、私は泣く真似のリアクションをする。観客は笑顔で私たちの劇を見ていた。良い感じだ。

 「木」の役には一切台詞はないが、私にとってはハンデでもなんでもなかった。顔芸とリアクション芸だけでなんとでもなる。天才子役無礼(なめ)んなよ!

 

 そして劇は進んでいく。毒りんごを喰った白雪姫に、王子様がズギュゥウウウン!とキスをしてめでたしめでたし。それが本来の白雪姫の物語だ。

 当然私は、そんなオチは許さない。

 

 

「みんな丸太は持ったな!行くぞォ!!」

 白雪姫を毒殺しようとしたお妃さまを倒すため、城攻めが始まった。なんとお妃様は本物の魔女で、この国を乗っ取ろうとしていたのだ!

 私は「りんごの木」から「丸太」にクラスチェンジ。上級職だよ!やったねかなちゃん!! 

 王子様と白雪姫、7人の妖精と私でお城の兵士と戦う。いや白雪姫、なんでお前が戦闘に参加してるんだ。ピーチ姫かよお前は。

 

 そして魔女との最終対決。

 

「今だ!パワーを丸太に集中するんだ!!」

「いいですとも!」

「スーパー丸太アターック!!!!」

「ウボァー!!!」

 

 王子と白雪姫の愛のパワーで聖なる丸太に進化した私のビンタで、魔女は滅びた。

 魔女が滅んだことで、王国に平和が戻ってきました。めでたしめでたし。

 

 

 

 あまりにもバカバカしいストーリーに、観客は大笑い。こういうネタで笑わせるコツは「真剣にバカなことをする」ことだ。

 真剣にやるバカは、「天然」と呼ばれるバカ行為と同じ笑いを生み出す。

 ああ、楽しい。今の私は、幸せだ。

 

 演劇を終えて、トイレにいって顔を洗う。仕事だとこんなコントみたいなおふざけは出来ないので楽しかった。鏡に写った私の顔を見る。そのとき、脳裏にふとした疑問が浮かんだ。

 

 

 

 

 

「私って、()()()だっけ?」

 

 

 

 

 

――鏡に写る()は、何も答えてくれなかった。

 

 

 

 

 

 

『変わりたいと思うことは、自殺と同じだね。』

 

 かつて()が自問自答した言葉だ。()は、その言葉に対して、変化を受け入れて成長すべきだと結論づけた。

 ただ、あの悪夢の誕生日で()は有馬かなの叫びを聞いてしまった。()のせいで、「有馬かな」は孤独を抱えてしまったことを知ってしまった。

 そのとき()は――

 

 

 

 

――変わりたい(死にたい)と思ってしまったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――勝手に私に全部押し付けて消えようとしないで」

 ()は、鏡の中の()に向かって言ってやった。…正直、()の身勝手さにムカついていたところだった。

 

「ていうか、今の人格、あなたの性格が前面に出過ぎてて全然消滅出来てないから。…次のドラマ、二重人格の少女の役なの。あなたの力が必要だから、拗ねてないで出てきなさい」

 

 このドラマは()が事務所に無理を言って取ってきてもらった仕事だ。ギャラの減額にも応じるし、バーター取引でもなんでも使ってオファーを貰ってきて欲しい。なんなら一般オーディションに参加するとまで言った。

 

「…私、あなたに誕生日プレゼントのお返ししてなかったわよね?」

 ()は、()を慰めるために「祝福」の歌をプレゼントしてくれた。…B小町に楽曲提供していれば数千万円の印税は得られたであろう歌を、()()のために歌ってくれた。

 

「私は、あなたに心を救われた。だから、私もあなたの心を救ってあげたい」

 守護られるだけの存在では、対等になれない。()は、()と対等の存在になりたかった。

 

 

――どうしようもない苦しみを抱えていた私たちを救済してくれる、「明日への希望」を体現するような(あなた)に憧れたから。

 

 

「どうしたらあなたの心を救えるのか一生懸命考えた。そしてこれが私なりの答え」

 取ってきてもらったドラマの内容は、「人間の闇の心を食料にする悪魔に憑りつかれた少女が、悪魔の人格と入れ替わりながらサイコパスの犯罪者と魂を賭けた闇のゲームで戦う物語」というもので、遊戯王と脳噛ネウロが混ざったような感じのストーリーだ。

今の()()が演じるのにぴったりの内容だ。

 

「あなたに名前をつけてあげる。あなたの名前は――()()()()()よ」

 このドラマの、少女に憑りついた悪魔の名前がメフィストだった。それを見た瞬間、()はこの役を絶対にやると決めた。

 

 

いつか消えゆくもの(テセウス)でも、共に歩むもの(エリクト)でもなく、明日への希望(メフィスト)。それがあなたの名前よ」

 

 

 【推しの子】アニメのオープニングテーマである「アイドル」の対となるエンディングテーマの「メフィスト」。それが、(あなた)にふさわしい名前だと、()は思った。




やりたかったことリストその11
主人公の命名儀式


次回、有馬かな救済ルート編ラストです。
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