有馬かなに転生したので、俺の意識が消えるまで彼女を守護ろうと思う   作:雑穀ライス

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カミキヒカル編開始です。


第三章 カミキヒカル救済ルート
お家騒動


 有馬かな完全復活から1年が経ち、俺は9歳になっていた。

 この1年はまさに順調で、メフィストのドラマの2シーズン目に続投して安定した高視聴率を叩き出してやった。もはや有馬かなの凋落の兆候はどこにも見えない。俺たちは原作という運命に打ち克った。そう思っていた。

 しかし、ご都合悪い主義の神様はよっぽど性格が悪い奴だったらしい。今、俺が所属している事務所はちょっと困った事態になっている。

 

 ()()()()だ。

 

「この契約更新の条件は納得できません!かなちゃんはこんなに頑張ってるのに!!」

 俺の代理人として契約更新の話し合いに同席していた母親が声を荒らげる。

 前年度比で、報酬額-10%でのオファー。俺が言うのもなんだが、この有馬かなに対してどうしてそんなに強気な交渉に出られるのか正気を疑うような提示額だ。

 こんな頭がおかしくなりそうな状況に陥った経緯を一言でいうと、事務所の後継者争いに巻き込まれたからだ。

 

 この事務所はいわゆる一族経営の事務所で、現社長夫妻の娘である副社長が後継者と目されていた。そこに突然、とあるマネージャーが後継者候補として上がってきた。

 そのマネージャーは俺にアニソン案件を持ってきた狂人だが、巷では副社長にマネジメントのノウハウを教えた人物との噂で、なかなかのやり手だった。

 その状況で、とある週刊誌から「(後継者問題での)派閥争いがある」という話と、副社長のことを「次期社長()()」と呼ばれたことで社長夫人がブチ切れた。

 週刊誌の記者に自分の娘が次期社長であることを宣言し、インタビューを受けている部屋に件のマネージャーを呼び出して厳しく叱責し、記者の前でこのマネージャーを辞めさせるとまで宣言した。なんか前世で聞いたアイドルグループの解散騒動のような状況になってやがる。そういえば只野くん元気かなぁ?社長に掘られてないだろうか。

 そしてそのときに「派閥争いは神に誓ってありません」と言ったマネージャーに対して「もし、それが事実なら有馬かなを連れて事務所を出ていきなさい」と社長夫人は言ったらしい。いや、そのりくつはおかしい。なんでそこで俺の名前が出てくるの?歴史の修正力さんちょっと有馬かなに厳しすぎなぁい?

 

 そしてこのパワハラじみた提示額は、その流れを汲んだ敵対派閥に組する相手への制裁というわけだ。…ちょっと待って?俺なにも悪いことしてないよね!?

 

「…お気持ちは痛いほどよくわかります。ですので、副社長がこの契約内容の件も含めて直接お話したいと申しております」

 

 しかし副社長は俺が金の卵を産むガチョウだと思い出し、マネージャーと一緒に追い出すのが惜しくなったらしい。

 ドア・イン・ザ・フェイスというやつだ。絶対に受け入れられない契約条件を提示して権力誇示を行いつつ、副社長の直接談判にて本命の契約内容を提示する。

 副社長の度量を見せつつ、敵対派閥の取り込みとこちらへの借りを作らせるという一石二鳥も三鳥も手に入れられる小賢しい作戦だ。

 だが、副社長の狙いが成功することはない。

 

 この交渉で、「有馬かなが冷遇されている」という印象を母親に強く与えてしまった。

 つまり、()()()()()()()()()()()()()()()

 原作知識と今生の経験から判断した結果、俺はその結論にたどり着いてしまった。

 

「もういいよ、お母さん。『有馬かなはこの事務所に必要ない』。そう言ってるんだから、仕方ないよ。帰ろ?」

 そう言って俺は席を立つ。

 

「ま、待ってください!私たちは本当にこの条件で契約を結びたいとは思っていません!せめて話だけでも聞いてください!!」

 なんだか追放系ライトノベルの主人公になった気分だ。今更そんなことを言われてももう遅い。いや冗談抜きで手遅れなんだよマジで。

 

「今までお世話になりました」

 俺は事務所の人にぺこりと頭を下げた。文句は歴史の修正力さんに言ってくれ。俺は悪くない。

 

 

「かなちゃん…これからどうするつもりなの?」

 車の中で、母親が心配そうに尋ねてくる。俺としてはあんたが余計なことしないかどうかのほうが心配なんだが。

「しばらくフリーでやっていく。助けてくれそうなところには心当たりあるし」

 苺プロに事情を話したら大喜びで囲い込んでくれるだろう。すぐに移籍したら元の事務所から目の敵にされるだろうから、ほとぼりが冷めるまで待ってから原作通りにルビーがアイドルデビューするタイミングで移籍でいいか。俺はそう考えていた。

 

 …自分の運命を決める選択をする日が、すぐそこにまで迫っていることを知らずに。




やりたかったことリストその12
母親の暴走タイミング調整

第2章の時点で暴走してたら多分バッドエンドになっていたので、どう処理するか結構悩みました。RTAみたいなことやってんなお前
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