有馬かなに転生したので、俺の意識が消えるまで彼女を守護ろうと思う   作:雑穀ライス

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カミキヒカルがアイと初めて出会ったのがアイが15歳のころだと思い込んでいたので危うく本物の再走案件になるところでした。
先生のカバンにメガトンコインを入れた人、怒らないから出てきなさい。



すべての真相②(カミキヒカル視点)

――初めて女性と肉体関係を持ったのは、11歳のころだった。

 

 相手は「姫川愛梨」という僕より10歳以上も年上の女性で、当時朝ドラでヒロインをやっていた有名な女優だった。

 誘ってきたのは、()()()()()()()からだった。夫の浮気に耐え兼ねて、それならこちらもと言った感じで火遊びがしたかったのかもしれない。今となっては闇の中だ。

 「愛を教えてあげる」と、その人は言った。それが、彼女に抱かれる決め手の言葉になった。

 

 僕は、金と権力を持った偉い人が愛人に産ませた「妾の子」だった。母と父の年齢が30歳近く歳が離れていたのは笑えない冗談としか思えなかった。父が母に会いに行くとスキャンダルになるので、母が父のところに表向きは秘書という扱いで「通い妻」をやっていた。

 そのせいで、僕は長い間、父の顔を知らなかった。

 母は僕にあまり興味を示さなかった。母の愛は、すべて父に向けられていた。母の愛を独占する父が妬ましい――とは、思わなかった。そもそも、愛というものを理解出来なかった。

 愛と思しきものを与えられた覚えがなかったのだから、まあ当然の話なのかもしれない。

 

 母は美しい人だった。

 そんな母が、癌で死んだ。30歳半ばの年齢だったので、あっという間に癌が進行して、癌が発覚したときにはとっくに手遅れになっていた。

 美しかった母は、たったの1か月で骨と皮だけの痩せ細った姿になって、死んだ。

 

 顔も知らなかった父親が、僕を引き取った。

 何かやりたいことはあるか、と父が聞いてきた。演劇に興味があったので、「役者になりたい」と言ったら、父は僕を劇団ララライに紹介してくれた。

 空っぽだった僕は演劇にのめり込み、砂地に水が染み込むように技術を吸収していった。運がいいことに、僕は役者としての才能があった。劇団ララライの代表から「お前は『人を騙す眼』を持っている。嘘を真実と思わせる、役者としての最高の資質を持っている」と褒められたときは、誇らしい気分になった。

 僕の居場所が出来た、そんな気持ちになった。

 そんなときに、姫川愛梨が劇団ララライに現れた。それが始まりだった。

 

 姫川愛梨は、なぜ僕を選んだのだろうか。小学生を抱いてみたいという歪んだ性的嗜好があったのだろうか。

 もしくは、本当に愛を教えてくれるつもりだったのだろうか。

 母と同じように、自分の倍以上の年齢の異性に抱かれれば、母の気持ちを理解できるのだろうか。愛を理解できるのだろうか。そんな縋るような気持ちで彼女に抱かれた。 

 当然、愛なんて理解出来なかった。「なんか、思ったのと違う」というのが、正直な感想だった。

 

 姫川愛梨と寝たのは1度きりだった。それなのに、彼女は妊娠してしまった。「夫との子だと言うから大丈夫よ」と、彼女は言った。僕はその言葉を信じた。それ以降、僕は姫川愛梨と会うことはなかった。

 

 

 そして、姫川愛梨と入れ替わるように、僕は一人の少女と出会った。 

 僕より一つ年上の女の子だった。

 

 外見は美人なのに周囲と馴染もうとせず、他人を拒絶する雰囲気を隠そうとしないその姿に、僕は強烈なシンパシーを感じた。彼女は僕の同類だ。一目見て、確信した。

 僕は、一人でケータイをいじっている彼女に近づいて声を掛ける。

 

「こんにちは。僕の名前はカミキヒカルです。よろしく」

「…こんにちは」

 

 彼女から返ってきたのは素っ気ない挨拶だった。名前さえ教えて貰えなかった。こちらを拒絶しているというよりは、全く興味を持っていないという感じだった。

 

「…僕、最近家族とうまくいってなくてさ。君の家族ってどんな感じなのかな?」

 世間話をしていても聞き流されるだけだと判断し、最初の話題から彼女のプライベートゾーンに踏み込んでいく。普通なら滅茶苦茶に嫌われるような内容だったが、それでも彼女の興味を引くことは出来た。

 

 彼女は僕の同類だ。ならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、興味を引ける。ほどなくして、僕は彼女…星野アイと友達になることに成功した。

 

 僕は自分の技術のすべてをアイに教えた。少しコツを教えただけで、彼女は『人を騙す眼』を完全にマスターした。やはりアイは僕の同類だ。演技の才能まで僕と似通ったものを持っている。ますます、彼女に興味が湧いてきた。

 少しずつ、彼女のことが好きになっていった。

 

 アイのアイドルデビューが決まった。B小町という、地下アイドルグループのセンターだ。

 彼女は、僕から学んだ演技でファンを魅了していく。それが僕の功績のように思えて、嬉しかった。

 アイがアイドルとしてデビューした後も僕たちの関係は続いた。交際と言って良いのか怪しいぐらいの、清く正しいお付き合いだった。

 そんな関係が数年続いて、僕とアイとの間に愛情が――

 

 

 

 生まれなかった。

 

 僕とアイは似たもの同士だ。だから、二人とも愛が理解出来ない。

 「恋愛」という言葉があるが、「恋」とは「相手から与えられることを望む心」であり、「愛」とは「相手に与えたいと望む心」であるらしい。

 

 僕たちがやっていたことは、()()()()()()()()()()()()()()であり、お互いが持つ心の傷をなめ合うだけの自分勝手な行為だった。

 

「アイ、僕は君を愛してる。愛したい」

 …好きな人がいるのに、愛が理解出来ないという状況に焦った僕は、アイに告白していた。

 

「…ごめんなさい。私には、愛するという気持ちがわからないの」

 彼女は、僕の告白を拒絶した。しかし、僕は結果を急いでしまった。

 

「もしかしたら、愛が理解できるかもしれない行為がある。君に、協力して欲しい」

 姫川愛梨が言った「愛を教えてあげる」という言葉が僕の脳裏に浮かんだ。もしかしたら、肉体関係を持つことで本当に愛が目覚めるかもしれない。一縷の望みをかけて、僕はアイに言う。

 そんな、手段と目的が完全に逆転したような状態で僕はアイと行為に及んだ。その結果は、語るまでもないだろう。

 

「なんか、思ったのと違う」

 アイが僕と同じ結論に至ったのが、悲しかった。

 

 後日、アイが妊娠したことが発覚した。

 行為に及んだのは1回きりなのに、姫川愛梨のときといい、なんでこんなことが起こるんだと本気で神を恨んだ。妊娠が成功するのは4週間のうちの8時間~12時間ぐらいだという話なのに、僕の場合だけ何故か成功率が異常だ。

 とにかく妊娠したままではアイドルなんて続けられるわけがない。僕は父に、交際している女性を妊娠させてしまったことを話して、胎児を堕胎してもらえる病院を探して貰えるよう頭を下げた。

 

 …アイに堕胎の話をした数日後、彼女は僕の前から姿を消した。

 

 僕は父に劇団ララライを辞めさせられた。愛人の子とはいえ、まだ中学生である自分の子供が15歳の女の子を妊娠させたなんて世間にバレれば父にとって大きなスキャンダルになる。

 僕とアイが交際していたということは、父が圧力をかけて劇団員に口止めさせた上で、僕が劇団ララライに所属していたという事実ごと闇に葬ってしまった。

 

 僕は、アイと同時に自分の居場所まで失ってしまった。

 

 ほどなくして、アイの活動休止が発表された。僕はその報道をぼんやり見ていた。

 友達以上恋人未満の関係から一気に1ファンの地位に転落してしまった事実に、目の前が真っ暗になりそうな気分になる。

 

 それから数か月後、僕はなんとなくB小町ファンのオフ会に参加してみた。

 オフ会の参加者は8人ぐらいだったが、一人だけ、目立って口数の多いアイのファンがいた。

 

「アイー!愛してるー!だから早く戻ってきてくれー!!」

 

 酒も飲んでいないのに五月蠅い奴だった。

 アイのことを何も知らないくせに無責任にアイを愛してると連呼するこの男に苛立ちを感じ、そしてこんなのと同じ扱いになってしまった自分に苛立ちを感じた。

 

 こいつに、「アイは妊娠している」と言ったらどういう反応を見せるのだろうか?

 頭の中に、ふとそんな考えが思い浮かんだ。

 

 オフ会が終わってお開きになったタイミングで、その男に近づいて話しかける。

「アイの体調不良による活動休止の原因なんだけどさ…あれ、アイが妊娠したからって噂があるんだよね」

 

 アイのファン()()()男の顔が蒼白になった。

「だからさ…ちょっと確かめに行かない?」




アイ12歳のタイムスケジュール
①鏑木Pに紹介されて劇団ララライ入り。カミキヒカルに出会う。
②アイ覚醒&B小町結成
③B小町を見てさりなちゃんがアイのファンになる
④さりなちゃんB小町のライブに行ってガチャでアイのキーホルダーを当てる
⑤さりなちゃん死亡(享年12歳。アイと同い年)


1年間のタイムスケジュールが過密過ぎて本当に合っているのか不安になる。最悪この世界ではさりなちゃん享年13歳だったということで許してください。
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