有馬かなに転生したので、俺の意識が消えるまで彼女を守護ろうと思う 作:雑穀ライス
皆さまの応援のおかげでここまで連載を続けることが出来ました。このまま完結まで頑張っていきたいと思います。
百合漫画のヒロイン役
――言葉にするのならば、「魔法が解けてしまった」という感じだろうか。
メフィストは、私の中から消えてしまった。だが、私以外にメフィストがいなくなってしまったことに気づく人は誰もいなかった。アクアでさえも、カミキヒカルでさえも。
だが、気づかなくても当然のことだ。第二次性徴と第二次反抗期は同時期に起こることが多い。この年齢で多少性格が変わったところで、反抗期に差し掛かったことによるメンタルの変化だと解釈するのが普通だ。気づけと言うほうが無理筋だろう。
そもそも、
初めて生理が来たとき?それともカミキヒカルにスカウトされたあの日から?それとも――あの7歳の誕生日のときから?
メフィストは、私の肉体が大人になれば自分が消えると言い続けてきた。それを私は、「
私は、
――そして時は流れて、私は中学生になった。かけがえのないパートナーであったメフィストを失った喪失感も、時間とともに薄れていく。それを適応というべきなのか、それとも鈍麻というべきなのか、私には答えが出せなかった。
そんな腑抜けた生活を送っている私のところに、興味深いオファーが届いた。
「『恋愛ビターチョコ』?ごめん、読んだことないわ」
カミキヒカルが私に持ってきたオファーは、漫画原作の実写ドラマの企画だった。私はメフィストの影響もあって、恋愛ものの漫画はほとんど読まない。そのくせおバカなお色気系のラブコメ漫画は結構読むので女としてはかなり終わってる感じがしないでもない。私は悪くない。メフィストが悪い。
「実はすでに単行本を買ってある。メフィスト好みのストーリーだと思うよ」
「さっすがミキさん。話が早い」
私はカミキヒカルのことをミキさんと呼んでいる。ミキさんにはメフィストが消えてしまったことを伝えていないので、彼はまだ私のことをメフィストと呼ぶ。自分のことながら、ミキさんがメフィストのことを知っているというだけで懐き過ぎだと思う。あいつがこの状況を見ているのならば、「チョロ過ぎて先行きが不安になる」と苦笑することだろう。
私はミキさんから漫画を受け取り…表紙に書いてある作者の名前を見て一瞬だけ硬直した。
吉祥寺頼子。【推しの子】原作世界で「今日は甘口で」を描いていた作者だった。
「ふーん。『今日あま』の作者の漫画だったんだ」
今の私は13歳。原作世界で「今日は甘口で」のドラマに出演したのが私が高校一年生、アクアが中学三年生のときの話なので、すでに「今日あま」の連載は開始している。あまり少女漫画には興味はなかったが、メフィストの知識にすらない漫画の内容に興味が湧いてきたのでとりあえず1巻を読み始める。
…てっきり少女漫画だと思って読み進めていたのだが、予想もしていなかった衝撃の展開に私は度肝を抜かれた。
「うわぁ…
「君はこういう作品、好きだろう?」
悪戯が成功した、というような表情でミキさんが言う。アクアをそのまま大人にしたような姿でそういう子供のような表情をされると反応に困るから止めて欲しい。14歳離れの年の差恋愛…うーん、ナシだわ。私はルビーのようにはなれない。
私は漫画を読み進めていく。この百合漫画のストーリーを一言で言い表すと、こんな感じだった。
――恋人のいる男の子に恋をした女の子と、その女の子に恋をした女の子の、報われない恋の物語。
メフィストの世界にあった、「クズの本懐」という漫画によく似た話だった。
たっぷり2時間かけて「恋愛ビターチョコ」を読破した。好きになってはいけない人を好きになった2人の女の子の心理描写がかなり繊細に描かれていて面白い。うん、気に入った。ちなみに私はレズビアンやバイセクシャルへの抵抗感はあまりない。絶対にメフィストの影響だ。というか水星の魔女の影響だ。尊死してやがる…パーメットスコアが高すぎたんだ……
「オファー受けてもいいよ、ミキさん。私は誰の役なの?」
「『安楽岡花火』役だ。『絵鳩早苗』役の女の子とのキスシーンがあるけど、君はそういうの気にしないよね?」
『安楽岡花火』がメインヒロインの名前で、『絵鳩早苗』がレズビアンの女の子の名前だ。「クズの本懐」の登場人物の名前と一緒だった。この世界にある漫画やアニメはメフィストの世界の漫画と同じものが多いが、【推しの子】の原作者である「赤坂アカ」と原画の「横槍メンゴ」が作った漫画は一切存在しない。どうやらその因果が吉祥寺先生の漫画にスライドしているようだ。
しかし、『安楽岡花火』役か…
「出来れば、『絵鳩早苗』役がいい。逆オファーはアリ?」
「クズの本懐」と違って、「恋愛ビターチョコ」では「安楽岡花火」と「絵鳩早苗」の恋愛感情にフォーカスを絞っているので、この作品の良さを生かすも殺すも「絵鳩早苗」にかかっているようなストーリーになっている。自分の性癖…もとい、感情移入の度合いを考慮すると、私は「絵鳩早苗」のほうが適任だ。
「まあ可能だが…そうするとメインの『安楽岡花火』役の子はかなり演技のハードルが高くなるぞ。少なくとも君と同格以上の演技が出来るのが最低条件だ」
サブヒロインがメインヒロインより目立っては芝居にならない、とミキさんが忠告してくる。私と同格の演技が出来る同年代の女優…いるんだよなぁ、これが。
「『劇団ララライ』の黒川あかね。彼女ならメインヒロインを任せても大丈夫。…ミキさんは確か『劇団ララライ』のOBだったよね?引っ張ってこれる?」
「…なるほど、確かに彼女なら問題ないな。監督に掛け合ってみよう」
「あとは出来ればアクアも呼べるなら完璧…ミキさん?」
アクアの話題を出したら途端にミキさんが渋い顔をした。まさかアンタ、まだアイに謝ってなかったのか…
やりたかったことリストその18
有馬かなと黒川あかねの初共演。ただし百合漫画原作
GLタグさん「遅かったじゃないか……」