有馬かなに転生したので、俺の意識が消えるまで彼女を守護ろうと思う   作:雑穀ライス

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ルビー参戦

 私と黒川あかねの問題のシーンは、撮影したシーンの9割がカットされるという大きな犠牲を払いながらもなんとか乗り切った。ちなみにリハーサルの内容だと10割カットだったらしい。

 全く、黒川あかねがスケベで困る。そう言ったら監督に「お前も十分エロかった」とか言われた。解せぬ。

「でもまだまだこれからもっと過激なシーンが増えていくんですよね?放送出来るんですか?」

 漫画を読んだ感じでは、ベッドシーンよりも図書室で勉強中にスカートの中に手を突っ込まれるシーンのほうがヤバいと思った。何これ?エロゲかな?

 

「じゃあそういうシーン、少し減らしたほうがいいか?」

「わ、私はかなちゃんがいいならこのままでも大丈夫です!」

 黒川あかねがやや食い気味に言った。メフィストの影響で性自認がふたなりの私がいうならまだしも、なんであんたが乗り気なんだ。もしかして目覚めちゃったの?私以外にやったら犯罪だよ?

「私も黒川あかねがいいと言うならこのままでもOKです。…言っておきますが、私は女の子が好きというわけじゃないですからね?」

 監督が「やっべ、こいつらガチレズかよ」って言いたそうな顔をしていたのできっちり訂正しておく。私は女の子が好きなんじゃなくて、女の子にそういう行為をされても嫌悪感を感じないだけだ。むしろ好きだ。性欲と尊さの違いも分からないとは…これだから素人は困る。

 

「…俺が言うのもなんだけど、お前らレズビアンでもないのによくあんな演技出来るな。プロ意識ってやつか?」

「自分的には演技というよりも、降霊術って感じなんですよねぇ」

 

 黒川あかねにセクハラされまくってるときに至った境地なのだが、黒川あかねに蹂躙されている間は「有馬かな」ではなく「安楽岡花火」が私の身体を操っているような気持ちになる。余りにも現実味のない状況に()()()()したタイミングで「安楽岡花火」の人格とチェンジする、といった感じだ。「星の瞳の演技」の応用とでも言うべきだろうか、それとも防衛本能による精神の鈍麻の一種なのだろうか。

 私は自分ではない誰かが身体を動かしている感覚に恐怖感を感じたことはない。むしろ楽しいというか、()()()()。なんだかんだ言っても、私はこの役を楽しんでやっているのだ。下心なんてあんまりない。

 

 そんなこんなで「恋愛ビターチョコ」は更に盛り上がりを見せていく。そして今度はルビーが演じる「皆川茜」にスポットが当たる話になった。

 皆川茜。「クズの本懐」では手当たり次第に男を喰いまくるナチュラルボーンのクソビッチだったが、「恋愛ビターチョコ」では年齢が下がったこと以外にも大きくキャラが変わっている。一言で言えば、()()()()()()()のような感じのキャラになっていた。

 愛が理解出来ないから、他人から略奪する。彼女は他の女の子が好意を寄せている男の子を奪うことで、その女の子が持っている愛を自分のものに出来るという価値観を持った人物だった。

 彼女は、安楽岡花火が鐘井鳴海へ向けていた恋愛感情に羨望を抱いた。だから、安楽岡花火から鐘井鳴海を奪った。

 略奪愛こそが、彼女の愛の在り方であった。

 

「でもこれって、鐘井鳴海を奪われる前に安楽岡花火がさっさと告っとけば別に問題なかったよね」

「それ以上はいけない」

 ルビーが切れ味抜群のツッコミを入れてくる。人にとってはNTRとBSSは同ジャンルなんだから、正論で殴りつけるのはやめなさい。ちなみに皆川茜は最終的に善堕ちして鐘井鳴海ラブになって両想いの勝ち組になる。こいつはメチャゆるさんよなぁ。

 まどマギで例えるなら志筑仁美ポジションに近いかもしれない。そして美樹さやかポジションたる我らが安楽岡花火に寄り添う佐倉杏子役は、クレイジーサイコレズの絵鳩早苗。魔女堕ち不可避である。合掌。

 

「そういえば、ルビーって演技出来るの?」

「かなちゃんからアクア寝取って勝ち誇った顔で鼻で笑うだけでしょ?楽勝よ」

「言い方ァ!」

 10年近くアクアのところに入り浸ってるせいで、ルビーは私に対しての遠慮が全くない。というかその言い方は安楽岡花火だけではなく私にもダメージが入るからやめろ。

 

「そうじゃなくて、後半のアクアにガチ恋するシーンのことを言ってるのよ。ルビーは恋愛シーンなんて初めてでしょう?」

「あー、それがあったか…」

 私と黒川あかねの演技が尖りまくってるので、ここで下手な演技をすればルビーたちにヘイトが向かう。ただでさえ悪役みたいな扱いのキャラなので、ルビーの評判への傷は可能な限り避けたかった。

 

「まあ、アクアを初恋の相手(雨宮吾郎)だと思ってやれば大丈夫なんじゃない?」

「いや、全然似てないし」

 即答された。ルビーの目が節穴過ぎてこちらのほうが不安になってくる。駄目だこいつ…早くなんとかしないと…

 

――私がそんなことを考えていたその時、

 

「あー、アクアがせんせーだったらやる気出るんだけどなー」

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 私は思わずアクアに視線を向ける。ばっちりアクアと目が合った。確かアクアは「ルビーが天童寺さりなの生まれ変わりであって欲しい」という思いからシスコンになったんだっけ。私が動揺してアクアの顔を見たことも含めて、これは流石にルビーの前世がバレたかなぁ?

 

「ん?どうしたの?」

「いや、自分の知らない男と比べられたらアクアもあまりいい気がしないんじゃないかな?」

「それもそっか。ごめんね、アクア」

「いや、気にしてない」

 呑気に首を傾げているルビーに咄嗟に言い訳する私。アクアもルビーの発言を流す。冷や汗を流しているのは私だけだ。ルビーがヒロインレースに参戦とか激戦になる予感しかしない。黒川あかねが脱落気味だから頭数的には差し引きゼロな感じもするが。

 

「…かなはルビーの事情も知っているんだな」

「…うん」

 ルビーに聞こえないように、アクアが私に話しかけてくる。

 

「ルビーにはきっちりやる気を出させてやるから、かなは心配しなくてもいいぞ」

「…やる気を出させるのは皆川茜がガチ恋モードに入った話の後にしてね?」

 私はせめてもの悪あがきとして、カミングアウトを少しでも先延ばしにすることをアクアに提案した。黒川あかねとイチャついてる場合じゃねぇ。

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