有馬かなに転生したので、俺の意識が消えるまで彼女を守護ろうと思う   作:雑穀ライス

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絶対に許さんぞゴールドシップ

 俺が推定ツクヨミちゃんこと「月宮美琴」に転生してから3か月が経過した。

 菊花賞は見事にキタサンブラックが勝利し、俺の家族は1000万円を超える大金を手に入れた。しかし一人の子供を大学まで進学させようとすると4000万円近くかかるとの話だし、キタサンブラック様から頂いたお金も競馬税と住民税を合わせて最大55%もお上に没収されてしまう。子供を育てるということはとてもお金がかかる行為なのだ。ぴえん。

 え?競馬税じゃなくて所得税だって?負け額を経費に計上できない時点で所得というか実収入を考慮してないし、実質ギャンブル税扱いでいいだろあれは。

 というわけで、俺はツクヨミちゃんの養育費を稼ぐためにとりあえず1億円を目標金額として金策を進めることにした。とりあえずという言葉を使うには少々金額がデカすぎて脳がバグりそうになるが、しばらくは高配当のレースが続くので問題はないはずだ。そして、早速目標金額を達成するチャンスがやってきた。

 2015年の有馬記念。ゴールドシップの引退レースだ。一番人気のゴールドシップが伸びずに8着に沈み、我らが崇める神の化身であるキタサンブラックも3着に終わるので最終的な配当額が結構すごいことになる。

 

 1着、ゴールドアクター(オールハイユー)。2着、サウンズオブアース。3着、キタサンブラック。

 三連複で配当額200倍。三連単で当てれば、配当額1250倍の超万馬券である。

 

 

 

「――抜け出しているのはゴールドアクター!そしてサウンズオブアース!ゴールドシップは3着でゴールインだぁ!!!!」

 

 

 ゴルシィー――ッ!!!!何をするだァーッ!ゆるさんッ!

 

 

 

 

「そうだあいつもてんせいしゃなんだうまにしてはあたまがよすぎるとおもってたんだおれがてんせいしてるんだからうまにてんせいしてるやつがいてもおかしくはないんだおれはわるくないごるしがわるい」

「み、美琴様?単勝は当てたので、そんなに気を落とさなくても大丈夫ですよ?」

 

 いともたやすく行われるえげつない歴史改変を喰らった俺は、危うく精神崩壊しそうになった。おしっこもちょっと漏らした。生後6か月の赤子でなかったら社会的に死んでいたところだったぞおのれゴールドシップ。第4コーナーでゴルシがマリアライトの前に出てた時点で嫌な予感がしてたんだよなぁ!

 ちなみに目標金額自体は翌年の宝塚記念で達成した。マリアライトちゃん大好き愛してる。

 

 

 2016年の宝塚記念の後はキタサンブラックのオッズも落ち着いてしまうので今までのように大きく稼げないが、すでにこちらは20年分の生活費を稼ぎ終わっている。資産運用は大人たちに任せて俺は赤ん坊らしく堂々と食っちゃ寝の生活を続けていた。

 投資はどこの会社の株を買えばいいのですかと聞いてきたので、電気自動車関連の会社(テ〇ラ)でも買っておけと言っておいた。2017年にはEUがEVシフトとか言い出してマッチポンプみたいに関連会社の株価が上がるので、上前をハネるにはいいタイミングだ。いやーネットで株も馬券も買えるなんて便利な時代になったなぁ。

 

 そんな凡俗な手段で「人を導き運命を司る神の使い」の真似事をすること早2年。

 有馬かな主演のドラマ、「恋愛ビターチョコ」がオンエアされた。

 

 

 

「えっろ」

 最初に出て来た感想はこれだった。中学生がやっていい演技じゃねぇ。

 特に絵鳩早苗役の黒川あかねが本当にハマり役だ。演技から「安楽岡花火に自分の痕を残したい」というドス黒い欲望がビンビンに伝わってくるので、ただ見ているだけで彼女たちの世界に引き込まれてしまう。感情演技の極致だな。

 つか半分以上は演技じゃなくて素だろ、あれ。原作の「15年の嘘」収録時のシーンでもあったけど隠れSの本性が隠しきれてないぞ黒川あかね。

 

「そういえば、この世界ではこのドラマの最終回を収録した後にツクヨミちゃんとかなちゃんが会ってるんだったな」

 俺は前世で起こった出来事を思い出していた。頑張った有馬かなに対してツクヨミちゃんは願い事を叶えてあげるって言ってたけど、もちろん俺は神龍じゃないのでかなちゃんの願い事なんて叶えられない。どうすっぺ。

 

「…あっ」

 そう言えば、ツクヨミちゃんは「メフィストに会わせてあげることも出来る」って言っていた。俺という事例がある以上、あのときにかなちゃんが出会ったツクヨミちゃんの中身はツクヨミちゃん本人であるとは限らない。実際、「自分は一周目(原作)のカラスの少女とは別人」って言ってたし、さもありなん。

 …もしもあのときに会ったツクヨミちゃんの中身が俺だったとしたなら。

 

 

 ――かなちゃんが「メフィストに会いたい」と言ったなら、中身が俺だってカミングアウトするつもりだったんじゃないかな?

 初っ端に「会いたかったわ、メフィスト」とか言われたせいでパニクって、あることないことアドリブで言いまくったとかいうオチじゃないよな?

 

「さて、俺はどうしたらいいのかねぇ」

 前世で起こった出来事をなぞって、この肉体でかなちゃんに会うことは決めた。しかし、そこで何を語ってどんな結末にもっていくのかのビジョンが浮かんでこない。

 「恋愛ビターチョコ」の収録完了と打ち上げは、最終回が放送される10日前の出来事だ。それまでに、俺はどんな結末を選ぶのかを決めなければならない。

 

 

 

 

 

――それから、3か月が経過した。

 俺は、結末(ルート)を選択した。

 

 

 

 

 

 

 

 …「恋愛ビターチョコ」の収録完了祝いの打ち上げ会の最中、一通のメールが有馬かなに届いた。

 

 『事務所にて、待つ』

 

 メールには、ただそれだけの文章が書かれていた。

 それは見知らぬメールアドレスから送信されてきたメールであり、迷惑メールとして無視するのが普通の反応だろう。だが、有馬かなはその「見知らぬメールアドレス」の前半(アカウント)部分を見て背筋に冷たいものが走った。

 

 

 

 『[email protected]

 

 

 …「鴉の少女(raven_girl)」を名乗る人物からの呼び出し。これでメールを無視するという選択肢が有馬かなから消えた。

 「自分のメールアドレスを知っている人物」で、「鴉の少女」を名乗る存在。普通ならばアクアから「疫病神」呼ばわりされているカラスを引き連れた少女を想像するところだったが、有馬かなは全く別の人物を連想していた。

 カラスの少女なら、きっと「(crow)」を使う。根拠はないが、「推しの子」原作を読んだ限りでは彼女はカラスを「レイヴン」と訳すサブカルチャーにどっぷり漬かっている印象は全くなかった。

 カラスを「(raven)」と呼ぶ、ある意味で中二病とも呼べるセンスを持っていて、なおかつ自分のメールアドレスと「カラスの少女」というワードを知っている人物。背筋を伝う冷や汗は止まり、代わりに胸を躍らせる高揚感が身体中に広がっていた。メアドの最後の621の意味は分からないが、多分メールアドレスの重複を避けるために誕生日か何かを入力したのだろう。

 

「メフィストが…事務所で待っている……」

 

 有馬かなは打ち上げ会を中座して、SA芸能の事務所に足を急がせた。

 




やりたかったことリスト25
ゴールドシップの歴史改変。第一話からの超ロングパス。


やりたかったことリスト26
有馬かなが「ツクヨミちゃん=メフィスト」と見抜いた理由。

 主人公が自分用に作ったメールアドレスからメール送信したせいで一発で身バレした。でも事務所で待ってたのがカラスの少女そっくりの女の子だったのでブチ切れた。ホームラン級のガバである。
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