有馬かなに転生したので、俺の意識が消えるまで彼女を守護ろうと思う 作:雑穀ライス
今回の話に合わせて、40話のツクヨミちゃんの外見描写を「3歳ぐらいの女の子」にこっそりと変更しています。
また原作最新話でアイの母親が登場したので、その内容に合わせて15話の描写を変更しています。アイが施設入りしたの9~10歳ごろの話だったんか…
「これでよしっと」
俺は黒色のレトロワンピースに着替えた。鏡には「推しの子」の漫画に登場したツクヨミちゃんを更に小さくしたような姿の女の子が映っている。
コスプレの出来は上々だ。ツクヨミちゃんの身体でかなちゃんに会うのは初めてなので、一目で俺だとわかる恰好をしないと「お前誰だよ!?」って言われてしまうからな。
ちなみに俺は子供用の巫女服を普段着にしているので、かなちゃんたちに街でばったり出会っても俺だとバレない自信がある。俺の巫女服は袖の飾り紐がないシンプルなデザインなので萌え度があまり高くないのが悩みだ。剣道着と大して変わらねぇ。
あれ?袖の飾り紐があるのは巫女装束じゃなくて陰陽師の服装だっけ?まあいいや。とにかくある程度は見映えのする装飾が欲しいというのが俺の感想だ。もっと可愛い服はないのかと大人たちに言うと、七五三に着るような豪奢な着物を着せようとしてくるのでうっかり口を滑らせることも出来ない。祭りの日でもないのに下手に醤油もこぼせないような衣装を普段着として着せようとするのはやめろよ!怖ぇよ!
おめかしを終えた俺は、大人たちにSA芸能の事務所まで車で送ってもらった。郵便受けに入っている合鍵を使って誰もいない事務所に侵入。ククク、ダイアルロック式の小箱の中に鍵を隠しておいてもパスワードが割れていたら無力無力ゥ!
2周目のRPGの如く謎解き要素カットで鍵付きの扉を突破した俺は、かなちゃんにメールを飛ばして彼女の到着を事務所の長椅子に座って待つ。大人には事務所の外で待機してもらった。不法侵入で犯罪になるからな。俺は3歳未満の幼女なので「迷子になりましたぁ~。てへぺろ♪」とでもいえば最悪でも怒られるだけで済む。完璧で究極の作戦すぎて自分の才能が怖い。
冗談はさておき、俺はこれからかなちゃんに会う。俺がこれから選ぶ結末は――
待つこと数十分、かなちゃんが事務所に現れた。
我が物顔で長椅子に座る俺の顔を見て、かなちゃんの顔が引きつった。むむ、やはり俺の不法侵入にドン引きしてるのか。この真面目ちゃんめ。
「…初めまして。久しぶりね」
硬い表情のまま、かなちゃんは俺に向かって言う。
俺はメフィストではなく、
…別に無理して歴史改変しなくてもいいんじゃね?
あの日ツクヨミちゃんがかなちゃんに語った「この世界は神様の描いた物語である」というホラ話は、「推しの子」世界の外からやってきた俺が如何にも考えそうなストーリーだった。「ありきたりな物語に悲劇をブレンド」という台詞回しなんか、言葉選びの感性が俺そのものだ。
ターミネーターやバックトゥザフューチャー等、未来からタイムスリップしてきた人物が起こした事件がそのまま本来の歴史として組み込まれてしまう展開はタイムパラドックスの理論としては定番だ。まあアイ死亡ルートと生存ルートでパラレルワールドが発生したときみたいな感じになるのかもしれないが、今回はアイの場合と違ってわざわざパラレルワールドを発生させるほどの必要性はないと思う。というわけで今回は歴史の流れに従ってみることにした。
まあ本音はというと、せっかくいい流れで主役をかなちゃんにバトンパス出来たのに俺みたいな名無しのモブ…もとい、身体無しのモブが今更出しゃばるのもなんだか違うかなと思ったからだ。しかし俺では
「――逢いたかったわ。メフィスト」
ツクヨミちゃんそっくりのファッションをしているのに、かなちゃんは中身が俺だと見抜いてくる。鑑定スキルでも持ってるのかな?
「よくわかったね」
メフィストとして返事をするなら「キッショ、なんでわかるんだよ」って言うところだが、文面通りに解釈されると全面戦争待ったなしなので流石に自重する。今の俺はツクヨミちゃんだ。皮肉屋で人を見下したところがあるキャラだがこの言葉選びは少しパンチが強すぎる。
かなちゃんの目つきが険しくなった。ツクヨミちゃんは慇懃無礼なメスガキキャラなので、かなちゃんから敵意を持たれるのは俺の演技が上手くいってる証拠なのだがそれでも心にくるのものがある。ボロが出る前にさっさと芝居を進めてしまおう。
「むかしむかし――ではなく、今の時代に人間が大好きな神様がいました」
「その神様の趣味は、人間の紡ぎ出す物語を観ること。困難を乗り越えて栄光を掴み取るハッピーエンドの物語が大好きな神様でした」
…ハッピーエンド好きを嘯く割には、推しの子のヒロインたちはアクアがいなければバッドエンド一直線の女の子ばかり登場していた気がするんだが。お前難易度フロムソフトウェアかよ。
「ある日、神様はとある女の子に目を付けました。親に捨てられた、かわいそうな女の子でした。
不幸な生い立ちを持つ少女がスターダムを駆け上る、定番のシンデレラストーリー。神様の好きな演目でしたが、似たような物語を観過ぎていて少々食傷気味でした。
ありきたりな物語に、隠し味として
…実の親から女として嫉妬されて捨てられる物語のどこがありきたりな物語なのかと小一時間ほど問い詰めたい。この設定ガバガバなところが俺が考えたストーリーっぽくて嫌な汗が流れてくる。
あと味付けを間違えたってアレだろ。ハッピーエンド好きの神が脚本を書いていたというならば、本当はアイとカミキヒカルをくっつけるつもりでストーリーを考えてただろこれ。似たような不幸な生い立ちを持つ二人が傷の舐め合いから絆を深めていくはずが、アカン方向に化学反応起こして大事故起こしてるんだが何をどう間違えたらこんな展開になるんだよ。
「
――
2周目のみ選択可能な、
ルートを選択できる立場にあった俺は、さしずめプレイヤーキャラってところか。ドームライブ編以降のかな虐展開はまだ許してないからな覚悟しとけよ神様連中ども。
…本当にいるのかどうかも分からないし、いてもどうやって会えばいいのか分からないけど。
まあ今回はラスボス役だ。精々このまま道化を演じるとしますか。