有馬かなに転生したので、俺の意識が消えるまで彼女を守護ろうと思う   作:雑穀ライス

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ツクヨミちゃん、ゲットだぜ!

 

「この映画で、僕は君にアイ役を演じてもらいたいと思っている」

「…え、えぇええええええええええええ!!!!!!」

 ミキさんの爆弾発言を聞いて、私は素っ頓狂な叫び声を上げた。

 

「…ルビーじゃなくて、私?」

「そうだ。僕が君をスカウトしたときに言った言葉を覚えているかい?」

「あっ」

 

 

――君を僕の手で第2のアイにしてみせる。それが、僕の新しい愛の形だ。

 

 そういえばそんなことを言っていたなぁ。いやでもこういう形で実現させるのは、何というか…ズルくない?

 

「その…クレームとかこないかな?」

「誰がクレームを入れてくるんだ」

「えっと…第四の壁の向こう側から?」

「君は何を言ってるんだ」

 

 呆れた顔でミキさんが言った。いやルビーの出番を丸ごと奪うことになるんだから事情を知ってる人は怒るでしょ?まあそんな事情を知ってる人の声は次元の壁に阻まれてこっちまで届かないんだけど。

 

「元々『15年の嘘』でルビーがアイ役に抜擢されたのは不知火フリルと黒川あかねがアイ役を辞退したからだ。君がその上流で止めてしまえば、何も問題はない」

「それはそうだけど…って、ちょっと待って。なんでミキさんがそれを知ってるのよ」

 私やメフィストならともかく、なんであんたが配役についての裏事情を知っているんだ。未来知識って言えばなんでも許されると思ったら大間違いだぞ。えっ?お前が言うな?アーアーきこえなーいキコエナーイ。

 

「…フェレスの呪いのせいで、そういう情報がどんどん入ってくるんだ。つまり君のおかげだということだね」

「私は悪くない」

 超常現象が起きたらとりあえず有馬かなを疑うって風潮、やめてもらえませんかねぇ?

 

「…まだ何の準備も根回しもしていないし、ここからどう転ぶのか僕自身全く想像も出来ないんだけどね。そもそもこれから僕達とアクア達の親子関係が世間にバレるかどうかも未知数だし、どこまで『見せて』いいのかはアイ達に関わった人とじっくりと話し合う必要がある」

 それは行き当たりばったりというのではないだろうか?私は訝しんだ。

 

「君には『15年目の愛』のキャスト選びの時点で不知火フリルや黒川あかねに匹敵する看板役者になって欲しい。今の君なら大丈夫だと思うけど、くれぐれもスキャンダルには注意してくれよ」

「はいはい。『彼方』の世界の私のようなミスはしないわよ」

 ピンポイントで原作の私がやらかした失態に釘を刺してくる時点で、ミキさんもある程度の原作知識を持っていると考えていいだろう。うーん、私のアドバンテージがなくなってしまった。もう全部ミキさん一人に任せてしまってもいいんじゃないかな。

 

「ま、ミキさんが制作するならルビーが主演じゃ気まずいだろうしね。仕方ないかな」

 ミキさんとルビーの修羅場の話は、アクアのところに遊びに行ったときに少し聞いた。ルビーがミキさんに向かって「親は子供を愛するものでしょう!」などと言い放ったと聞いたときには嫌な汗がぶわっと出た。私もミキさんとルビーの和解なんて不可能だとは思っていたが、初対面でミキさんの地雷ポイントを的確に踏み抜くとは二人の相性が最悪すぎる。

 

 …でも、その恨み言は本当はミキさんじゃなくて前世の両親に言いたかった言葉だろう?

 ミキさんは、立派に君の親の役目を果たしたと思うぞ、ルビー。

 

「…いや、それもあるが、僕がルビーにアイ役をやらせたくない理由はほかにもある」

「え、違うの?」

「ああ。…あの子に、アイの闇を知って欲しくないんだ」

 疲れたような笑みを浮かべて、ミキさんはそんなことを言った。

 

「…それが、ルビーの物語を邪魔することだと知った上で、そんなことを言うの?」

「ああ、彼女は光り輝いている。僕やアイとは違う」

 ミキさんが断言する。その瞳には、迷いはなかった。

 

 

「あの子に、『嘘』は必要ない」

 

 

 そう言い切るミキさんの顔が、一瞬だけアクアとダブった。

 

 

 

「やっぱ、あんたたち親子だわ」

 顔が似てるのは勿論のことだが、どんなに嫌われてもルビーのことを大事に思ってるところまで似ているのは本当に面白いと思う。今になってようやく愛を知った反動なのか多少ルビーに対して過保護になってる気がしないでもないが、原作の彼と比べれば今のミキさんのほうがよっぽど良い。

 

「はいはい。まったく、愛の力は偉大ね」

 私は両手を上げて降参のポーズを取った。それがミキさんなりの愛情だというのならば、もう私は口出ししない。ミキさん一人では斎藤社長の説得が出来ないというのならば、私が口添えをしてやっても構わない。

 私は彼の計画に全面的に協力する。その覚悟を、決めた。

 

 

「えろえろえろえろえろ」

 そんな話をミキさんとした翌日の早朝、私はメフィストの知識にない原作知識の「続き」を脳に流し込まれてトイレで嘔吐していた。

 …映画のためとはいえ、ルビーとの友情をぶち壊してまで役作りするとか覚悟決まり過ぎだろ。原作の私。

 

 

 

 

 

 

「何サラっとウチの住所を突き止めてんだよ」

 

 次の休日、私はカラスの少女の自宅まで押し掛けた。彼女とはメールでのやり取りは続けていたものの、「恋愛ビターチョコ」の収録が終わったあの日から一度も会ってなかったので、直接顔を合わせるのは実に3年ぶりとなる。前に会ったときよりも少し背が伸びて、より原作の彼女の姿に近い印象になっていた。

 彼女は原作のように人を見下したような慇懃無礼な口調は使っていない。しかしそれは当然のことだ。彼女は原作のカラスの少女とは別人なのだから。

 

 以前会ったとき、別れ際にメールで「あなた、本当はメフィストなんでしょ?」ってカマをかけてやったら速攻で自白(ゲロ)しやがった。コイツは私をおちょくるためにカラスの少女のフリをして接触してきたのだ。将来は立派なメスガキに成長することだろう。いつか理解らせてやる。

 つい最近、私の原作知識が更新されてオリジナルのカラスの少女もコイツに負けず劣らず面白い性格をしていたことを知ってしまったが、原作には彼女がどこに住んでいるのかという情報なんて一切出てこなかった。

 だから、私がコイツの住処を知ったのは、こちらの世界で手に入れた情報からだ。

 

「あんた、ここの神社のマスコット役やってるのね」

「え゛っ」

 そう言いながら、私はスマホでコイツが住んでいる神社を紹介するホームページを開いて彼女に見せつけた。ホームページには、巫女服姿の彼女が大人たちに混ざって笑顔で仕事を手伝う写真がいくつも掲載されていた。

 

 動物と子供の写真は人気が出る。そんなあざといアピールにノリノリで加担するカラスの少女の姿を見つけたときは原作とのギャップで眩暈を起こしそうになったが、まあ中身がコイツなら「さもありなん」としか言いようがない。

 

 

「くっ、こんなところから俺の個人情報が流出してしまうとは…」

「あんた隠す気全くないでしょ」

 やることなすことの全てがガバガバ過ぎて、もうわざとやってるとしか思えない。…って、いけない。こんな話をしにきたわけじゃなかった。

 

「そんなことよりも、うちのミキさんが『15年目の愛』をリメイクするとか言い出したの。あなたもこの映画に出演しなさい」

 この魂の奥底からガバを流出させるガバ生物のせいで本題を忘れるところだったので、強引に話題を軌道修正する。中身が原作と多少違ったところで誤差の範囲だ。大した問題ではない。むしろ当事者の一人なのだからこれほど適任はいないだろう。

 

「えー」

「返事は『はい』か『イエス』の二択で答えなさい」

「二択じゃなくて一択じゃねーか」

 気分が乗らないから原作改変しますとか絶対に認めないぞ。潔く諦めなさい。

 

「責任から逃げるな卑怯者」

「しつこい。もう芸能界は俺の居場所じゃない。俺は未来知識を使って株と競馬で稼いでだらだらスローライフを送るんだ」

 …へぇ。そういうこと言うんだ?だったら私も遠慮する必要なんてないよね?

 

「出来ないなら出来ないって言えば?勿体ぶってるけどやろうと思えば出来るけど感出してるのダサいし。そういえば子供のときから私の才能におんぶにだっこだったわよね?感情演技以外のお芝居が出来ないって泣いていたのはいつだったかしら?

 まあでも仕方ないわよね。一般人に転生しちゃったんだから7歳児の演技レベルからまったく成長してなくても当たり前だし。ゴメンね、あなたに期待した私が間違っていたわ。

 『実力無いので出来ません。ごめんなさい』って言いなさい。だったら私も諦めてあげる」

 

「はぁー?出来るしなめんな」

 

 

 

 

 

「というわけで、幻のポケモンをゲットしてきました」

「ポケモン扱いするな」

 

 私がカラスの少女(メフィスト)を事務所に連れてきたのを見たミキさんが絶句していたのは、きっとコイツの雰囲気が原作と激しく乖離していたからだろう。私は悪くない。

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