有馬かなに転生したので、俺の意識が消えるまで彼女を守護ろうと思う   作:雑穀ライス

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アクアとのおうちデート(大嘘)①

 本番中にカラスに襲撃されるというアクシデントはあったものの、1日目の撮影はこれで終了。

監督は「良い絵が撮れた」と言っていたが、反面その顔はかなり渋い表情だった。

 

 まあ気持ちはわからないでもない。クライマックス前にこんな度肝を抜くシーンを出して、最後に盛り上がらずに終わったら尻切れトンボ呼ばわりは免れないからな。

 だがその心配は杞憂に終わるだろう。監督の手札に残っているのは星野アイという完璧で究極のジョーカーだ。

 むしろアイが全力を出すためのお膳立てに過ぎないと思い知らされることになるはずだ。勝ったな風呂入ってくるガハハ!

 

 1日目の撮影しか参加しない俺とアクアはこれでお役御免だ。後はそれぞれの事務所が出した車に乗って帰宅するだけ。

 

 

 だがその前に、俺には一番重要な仕事が残っている。

 

「今日はこれでお別れだねー、アクア」

 別れの挨拶を装ってアクアに近づく。アクアの他にルビーとミヤコ女史が近くにいて内緒話をするには少々ロケーションが悪い。

 

 だから、一芝居を打つ。

 

「ふふふー、えいっ」

 あと一歩の距離まで近づいて、そのままアクアに抱き着く。傍から見るルビーとミヤコ女史からすればどこからどう見ても甘酸っぱい青春の1シーンに見えるだろう。

 そして昼間の休憩時間にやったように耳もとに口を寄せ、囁く。

 

()()()()()()()()()()()()()、まだアイのことを狙ってるよ」

 

 

 …誰も知るはずのない前世の自分の情報を今日初めて出会った少女から伝えられ、アクアの目が大きく見開いた。

 

「決行日は星野アイの20歳の誕生日、B小町ドームライブ開催日の午前中。

 せいぜい戸締りには気を付けることね」

 

 

 続けて不吉な予言を告げる。

 前世の記憶持ちの転生者だとカミングアウトしたのも、映画の撮影で「カラスの少女」の演技をやったのも、このための布石。

 すべてこの「与太話」を信じさせるための仕込みだ。

 

 情報量の爆弾を食らって硬直しているアクアに自宅の住所が書いている紙を握らせて、アクアから離れる。

 

 

「お…おい!待て!」

()()()()、ゆっくりお話しようね」

 

 

 服を掴んで引き留めるアクアに、今日話す内容はこれで終わりとやんわりと突き放す。

 まだ何か言いたそうな顔をしていたが、やがてアクアは服を離して解放してくれた。

 

 

「またねー」

 アクアに手を振ってから、俺は車に乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「思ったよりアクアの行動が早かった」

「去り際にあんな不吉な予言を残されてのんびりしていられるわけないだろ」

 

 

 翌日、アクアが自宅に乗り込んできた。ハヤスギィ!!

 娘の友達、しかも男の子を自宅に呼ぶのは初めてのことなので母が張り切っている。常識と倫理観が多少怪しいだけで、普段はいい母親なんだよ。

 心の奥底では絶対親は子供を愛するものなんだから当然のことですよねHAHAHA!(死亡フラグ)

 

「今日は洗いざらい全部話してもらうぞ」

「やだー、怖いかおー」

 

 好きな男の子(未来知識)との会話なのに、なんでこんなに殺伐としているのかな?(自業自得)

 

 

「で、私は何から話せばいいのかな?」

「何故俺の前世のことを知っているのかと、何故アイがまたストーカーに襲われることを知っているかだ」

 

 その答えは「俺が第4の壁を越えて【推しの子】世界に転生してきたから」なのだが、これを馬鹿正直にアクアに言うつもりはない。

 信じて貰えるかは5分5分の勝負になるし、ある日俺の意識が消滅して本来の「有馬かな」の意識が戻ったとき、アクアの認識に余計なノイズは残したくないからだ。

 

「ではここで問題です。何故私が将来アイがストーカーに襲われるということを知っているのでしょうか?ヒントは『私は前世の知識を持っている』ということです」

「質問に質問で返すな」

「少しは自分で考えないと、私の言っていることが嘘かどうか判断できないよ?」

 

 私の煙に巻くような態度に顔をしかめながらも、真面目に考え始めるアクア。

 馬鹿げた会話に思えても、かかっているのは自分の家族の命だ。真剣に考えてもらわないとこちらも困る。

 

 「前世の知識」と「未来の知識」。片方だけ持っているというだけでもナンセンスな話だが、あいにくとアクア自身がその当事者だ。

 片方の事象が実際に起きてしまったのだから、もう片方の事象が絶対に起こらないと否定出来る要素はなくなった。

 しばらく考えた後、アクアが答えを出した。

 

「…未来の世界で死んだ後、子供時代にタイムスリップ転生した?」

「未来で死んだという自覚はないけど、だいたいは正解かな」

 

 俺が誘導したかった答えにアクアがたどり着いてくれたことに、胸の中でこっそり安堵する。

 

 

 

「私は、西暦2023年までの記憶を持っているの」




ストックが尽きたので次からは不定期更新です。
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