有馬かなに転生したので、俺の意識が消えるまで彼女を守護ろうと思う   作:雑穀ライス

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恋愛リアリティーショー編
インターミッション


「君達、恋愛リアリティーショーに興味はある?」

 鏑木プロデューサーは、私とアクアに向かってそう言った。

 

「…アクアが出演するなら、出ます」

 

 少しだけ考えて、私はそう答える。

 無難な答えだ。私は今のところ、アクア以外の男の子は眼中にないのでアクアが出演してくれない限り番組にならない。当然鏑木プロデューサーもそのぐらいは分かっているだろう。彼がアクアだけでなく、私にもオファーした理由は「今日あま」を盛り上げてくれたことに対するご褒美、あるいはお節介と言ったところだろうか。

 これは私とアクアの「友達以上、恋人未満」といった雰囲気を感じ取った彼が、もう一段階ステップアップするための舞台をお膳立てしてあげようという話だ。お見合いをゴリ押ししてくる親戚のおばちゃんかいアンタは。

 それはともかく、この話は私にとっても都合のいい展開なので鏑木プロデューサーの提案に乗っかっていく。この先に起こるであろうイベントを考慮した場合、私が恋愛リアリティーショーに出演することでかなり対策が取りやすくなる。

 

「かなちゃんはこう言ってるけど、アクア君はどうだい?」

「…一度事務所に話を通してから返事をします」

 対するアクアの返事は、保留。アクアはアイドルをやっているので恋愛リアリティーショーに出演することによる反響がどうなるかをミヤコさん達と相談してから決めるのは正しい選択だ。

 

「いい返事を期待して待っているよ」

 私たちの反応にそれなりの手ごたえを感じた鏑木プロデューサーは、上機嫌な様子で笑いながら去っていた。

 

「…かな、本当に出るつもりか?」

「アクアが出るならね。恋愛リアリティーショーに出演しておけば、アクアとスキャンダラスな関係になった場合にいくらでも言い訳出来るようになるから願ったりの展開よ」

「そんなにスキャンダルを起こしたいのかお前は」

 

 げんなりした顔をしながらアクアが言った。

 どうもアクアは私のことを性欲が抑えきれないセックスモンスターか何かのように思っている節があるが、それは大きな勘違いだと言わせてもらいたい。私が本当に気にしているのは、「原作の因果」だ。

 「原作」でこれから2年後に起こるストーリーでは、私はカミキヒカルへの復讐に囚われて心を病んでいたアクアに邪険にされたことでアクアに嫌われたと勘違いし、そこから迷走を重ねていく。

 「アクアに好きになって貰いたい」という自分がアイドルになった理由を見失ったところに、アイドルとして成功していくルビーの姿を見せつけられて、だんだんと疲弊していく心の隙を突かれて親密になった監督…アレ、なんていう名前だっけ?ヤバい、完全に思い出せない。

 どうやらあの辺りは私の汚点そのものなので、魂が記憶を抹消したがっているらしい。

 

 とにかく、そのナントカ監督の口車に乗せられた「原作」の私が彼と二人っきりになったところをマスゴミにスッパ抜かれて酷いことになる。そのスキャンダルをもみ消すためにアクアが「自分たちはアイの子供である」という情報をリークしたのが、「15年の嘘」の映画を作るきっかけとなるのだ。

 私が警戒しているのはそれだ。この世界の歴史の修正力さんは無能な働き者なので、このスキャンダル編の流れもきっちり再現してくるはずだ。ここはアクア達がアイの子供であるということが世間にバレる重要なイベントなので、あちらにこのイベントをスキップさせるつもりはきっとないだろう。

 しかし私はすでに役者として一定の成果を上げていて、アイドルに転向する予定もない。なのでナントカ監督とのフラグは立つことはない。となると、私のスキャンダル相手はやはりアクアになるのだろう。

 もしも将来、私とアクアの交際がスッパ抜かれたとしても、恋愛リアリティーショーに出演することで「私とアクアが交際していてもおかしくない雰囲気」を事前に作っておけば、醜聞(スキャンダル)は単なる特ダネ(スクープ)に変わる。なんなら原作で黒川あかねが建てたフラグをNTRしてアクアとゴールイン出来れば完璧だ。

 つまり、鏑木プロデューサーのオファーは私にとって本当に「渡りに船」だったのだ。

 

「私はアクアと一緒に恋愛リアリティーショーに出演したいと思っている。アクアがアイドルとしての体裁を気にしているなら、最後の告白シーンをパスすればいいじゃない。」

 ぶっちゃけアクアと恋愛リアリティーショーに出演した時点で未来のスキャンダル対策が成立するので、この番組でアクアに結果を求めるつもりはあんまりない。事前に台本を準備したところで「八百長だ」とクレームをつける視聴者はいないだろう。むしろ視聴者に「彼氏同伴で出演かよ」と言わせてやる予定だ。現実よりリアルな「嘘」というものを教えてやろう。

 

「ねぇ、アクア。私と『恋愛ごっこ』しよ?」

「…はぁ。責任取らないぞ、俺は」

「ぷっ!くくく、あはははは!!」

 仏頂面でクズ男みたいな発言をするアクアの姿が、私の笑いのツボに直撃した。

 恋愛リアリティーショーが始まるのは春シーズン、つまり4月以降だ。それまで、暫しの休息を取ることにしよう。

 

 

――そして、月日は流れて。

 

「入学おめでとう、アクア、ルビー。陽東高校へようこそ」

 あっという間に4月になり、アクアとルビーは陽東高校に入学した。晴れて私の後輩となったというわけだ。

「歓迎するわ、盛大にね」

 アクアたちの高校生活についての話は割愛させてもらう。私がB小町に加入するイベントがないため、殊更に説明すべき出来事が存在しないからだ。

 強いて言えばアクアが芸能科に入学したことと、その因果でアクアが高校生活ぼっちデビューを回避したことぐらいだろうか。アクアの人間強度が下がってしまう。由々しき事態だ。

 

 そんな惰眠を貪るような、私たちのつかの間の休息期間は終わりを迎えて。

 恋愛リアリティーショーの撮影が、始まる。

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