有馬かなに転生したので、俺の意識が消えるまで彼女を守護ろうと思う   作:雑穀ライス

62 / 93
感想&評価&お気に入り登録&誤字報告ありがとうございます。


おっぱいはすべてを解決する

前回までのあらすじ。カメラの前でアクアとイチャついたら炎上した。ぴえん。

 

 

 『勘違い女ウザい #有馬かな#今ガチ#退場希望』

 『アイドルに逆セクハラして金貰えるとかいい身分だよな #有馬かな#今ガチ』

 『恋愛リアリティーショーは風俗じゃない。いい加減にしろ有馬かな』

 『有馬かな、PやDにも身体売ってそう』

 『失望しました有馬かなのファン辞めます』

 

 

 

「おーおーよく燃えとる」

「丸っきり他人事だな」 

 私はアクアの家で自分が炎上している様子を確認していた。えっ、わざわざアクアの家で見るのは炎上させている相手への嫌味のつもりかだって?そのつもりですが何か?お前らがどれだけ私を叩いてももう勝負ついてるから!残念!!

 

「まあ最初から炎上させるつもりだったしね。なんか想定以上に燃え広がってる感じだけど」

 世間にアク×かなを認めさせるため、延いてはスキャンダル編のフラグを折るためには多少の被害を覚悟して強引にアクアに迫ったほうがいいと思って犯行に及んだのだが、下手をすればスキャンダル編が前倒しになる可能性を完全に失念していた。というか歴史の修正力さんがユーザーに有利なバグを見つけたネットゲーム運営みたいな対応速度で炎上させにきたので結構ビビった。私がやったのは故意の不正利用じゃなくて恋の不正利用なので私は悪くない。冤罪での誤BANに抗議します。

 これで失敗していたらきっとツクヨミ(メフィスト)から「もう『有馬かな』から『有馬ガバ』に改名したほうがいいんじゃね?」と煽られていたに違いない。アイツにガバを笑われたら正気を保てる自信がないぞ、私は。

 

「身も蓋もない言い方をすれば、炎上商法よ。初っ端からこれだけかませば一話切りする人は大分減ると思うわ」

 私は言い訳じみた説明をアクアに語った。ぶっちゃけ鏑木Pも私とアクアを同時オファーした時点でこうなることは想定していたのだろう。食えない人だ。

 

 第一回目の撮影からガバりかけるというハプニングはあったが、概ね私の計算通りだ。黒川あかねに代わって炎上を体験してみた感想だが、思ったよりアクアの魅力に脳をやられているジャンキーが多いなぁとぼんやり考えた程度のものであり、思わず身投げしたくなるほどに私の心を揺さぶる言葉はどこにもなかった。

 原作の私の言葉を借りるならば「なんで好きでもない奴らに文句言われること怖がってんの!?」といったところだろうか。あちらの私は多少瘦せ我慢が入っていたが、今の私は結構ガチでそう思っている。

 他者の言葉で憤慨するときは、図星を突かれたときだ。ステカセキングに「お前はバカだ」と言っても効果はないが、「お前は弱い」と言えば激怒するのと同じ理屈だ。私を理解していないお前たちに、私を傷つけることは出来ない。私の存在を揺るがすことは出来ない。

 お前たちが憤っている有馬かなの姿は、すべて(えんぎ)だ。未来の「星野アイ」役の女優を、無礼(なめ)るなよ。

 

 そんなこんなで絶賛炎上中の私であったが、だからといってすべての意見が誹謗中傷というわけでもない。

 

 『これやらせだろ?現役アイドルを登場させたらこうなるのは当たり前だし、オファーの段階でスタッフの誰かが気づくでしょ?』

 『これが事故ならアクアを出演させた制作側のミスだけど、流石に番組を成り立たせるためのシナリオぐらい用意してるだろ』

 『Dに指示された通りに演技して炎上したかなちゃんが可哀想なので俺が慰めます』

 

 

 冷静に状況を分析出来ている人たちは、私の仕掛けた炎上商法を見抜いていた。「制作者も出演者も馬鹿ではない」という前提で思考すればすぐにたどり着ける結論なので、勘づく人が現れても別に不思議ではない。ところでツィッターでも匿名掲示板のようなノリで会話する人たまに見かけるんだけどアレは大丈夫なのだろうか。取り敢えず最後のは通報しておいた。

 

「で、これからどうするつもりなんだ?」

「プランはあるわ。これだけ大きな花火を打ち上げたんだから、火の後始末をしないとね」

 炎上対策は初動が肝心とはよく言うが、敢えて火消しをせずに放置する。これだけ強烈なインプレッションを稼げたのだから利用しないと燃やされ損だ。私に注目している人たちの意見を第二回目の放送で上書きしてきっちり「今ガチ」のファンにしてやる。

 少し予定より早いけど、まあいいや。お前の出番だぞ、黒川あかね。

 

 

「かなちゃん…ネットで酷いこと言われてたけど、大丈夫?」

 「今ガチ」第二回目の撮影にて、私はアクアへの接触を避けて黒川あかねと会話をしていた。

 今回は黒川あかねに「今ガチ」の立ち回り方を教えるターンだ。「今日あま」ドラマを成功させるのにメルトが必要だったのと同様に、「今ガチ」を成功させるにはコイツの力が必要だ。これ以上の余計なトラブルを回避するため、今のうちに色々と入れ知恵しておくことにする。

 全く、トラブルメーカーを抱えた番組の立ち回りは本当に大変だなぁ。

 

「大丈夫。半分以上演技みたいなものだし、想定内よ」

 火加減を間違えて想定以上に燃やしてしまったことは黙っておく。バレなきゃガバじゃないんですよ。

 

「あなたも他人事じゃないのよ。明日は我が身と思って気を付けなさい」

「うぅ…この番組、台本がないからどうしたらいいのか全然わからないよ…」

「台本はあるわ。勘違いしちゃ駄目」

 待っていた言葉が出て来たので、すかさず黒川あかねの思い込みを訂正してやる。

 

「私たちは『白紙の台本』を渡されているの。そこに自分で台詞や演技の内容を書き足していくのがこの番組。自分がどんな『役』を演じるのか、どんな『演技』を求められているのかを理解していないと、台本に書き足すなんてとても出来ないわ」

 黒川あかねの敗因は、この番組では自分の素を出す必要がある…つまり「演技をしてはいけない」と思い込んでいたことだ。原作でも黒川あかねは星野アイの演技をすることで「パっとしない地味な女の子」という評価を覆して一躍スターになった。

 視聴者は私達を観に来ているわけではない。私達の織りなす物語を観に来ているのだ。リアリティを求める番組と言っても、結局のところ嘘と誇張(フィクション)があったほうがウケがいい。

 

「…かなちゃんは、今どんな『役』をやっているの?」

「決まってるでしょ。私は『有馬かな』の役をやってるのよ」

 

 有馬かな。星野アクアが好きな女の子。承認欲求は強め。役者としてのプライドが高く、一見自信家のように見えるが過去のトラウマのせいで根はかなり臆病でネガティブ。不安を隠すためにその場しのぎの嘘で強がったり、心の傷を笑顔で隠すために自虐ネタをいう癖がある。

 それが、「原作」の私の評価だ。

 

 ネガティブな思考をすべて「私は悪くない」の一言で蹴とばす今の私とは、結構違う。

 どうやら私は「有馬かな」の演技がとても下手糞なようだ。

 

「私に言わせれば『黒川あかね』の役なんて相当面白い役だと思うけどね。あなた、結構濃いキャラしているわよ」

「…それは褒め言葉なのかなぁ?」

「タレントにとっては褒め言葉よ。とにかく、自分の個性を嘘と誇張でデコレーションして、自分で自分の演技をするの。…演技は、あなたの得意技でしょう?」

「わ、わかった。頑張ってみる」

 黒川あかねと談話を続けていると、カメラが近づいてきた。そろそろ頃合いか。

 

「ま、そんなに肩ひじ張らなくても大丈夫よ。なにせこんなに立派なものを持っているんだし、男の子なんてイチコロよ」

 

 ぽよん。

 私は、黒川あかねの胸を突っついた。

 

「きゃっ!?」

 うん、良い反応。せっかくそんな武器をぶら下げているのだ私が有効活用してやろう。礼はいらんぞ。

 おっぱいが嫌いな男の子はいない。おっぱいはすべてを解決する。それは宇宙の真理だ。これで黒川あかねの名前を視聴者が記憶してくれることだろう。

 

「…かなちゃんだって、おっきいもの持ってるじゃない!」

 

 ぐわし。

 黒川あかねが、私の胸を両手で掴んできた。

 

「うにゅう!?」

 ちょっ、おまっ!やめっ、カメラ回ってるっ!!

 しまった!?この世界の黒川あかねは「ヤられたらヤり返す」いい根性してるんだったぁ!こらっ!揉むな!アッー!?

 

 …こうして、「有馬かなの被害者」ポジションで黒川あかねを売り出す予定が完全にポシャり、代わりに女同士の乳繰り合いをお茶の間に提供するハメになってしまった。

 地上波放送じゃないのが、せめてもの救いだった。

 

 

 『我々は一体ナニを見せられているんだ』

 『正直、推せる』

 『有馬かなが炎上している理由分かったわ。有馬かながアクアに浮気したのが原因だったのか』

 『失望しました有馬かなのファンやめて黒川あかねのファンになります』

 

 私たちの痴態はカットされることなく放送され、その結果として第一回の放送直後とは別の意味で大炎上していた。

 視聴者の印象を完全にプラス側に塗り替えられたのは喜ぶべきところだが何か納得いかない。あと最後の奴、微妙に真実味の混ざった推し変宣言はやめろそれは流石に傷つくぞ!

 

 そんな世間の評価に渋面を作っていたら、突然ツクヨミからメールが飛んできた。

 

 『火を点けろ、燃え残った全てに』

 うっせえわ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。