有馬かなに転生したので、俺の意識が消えるまで彼女を守護ろうと思う   作:雑穀ライス

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FF7リバースをやってたので遅くなりました。申し訳ございませんでした。
さっさとクリアしておかないとどこでネタバレ食らうかわからないから仕方ないよね!


エピローグ オチの子

 1シーズンに渡る「今ガチ」の撮影も、ついに最後の告白イベントを残すのみとなった。長い戦いだったというべきか、それともあっという間の出来事だったと言うべきか複雑な気持ちだ。

 振り返ってみると、最初から最後まで私と黒川あかねが番組をひっかき回す形になってしまった。そもそも1回目の放送直後に炎上するという最悪のスタートから始まってここまで持ち直したのだから、賞賛されこそすれ非難される覚えはないだろう。私は悪くない、企画を持ち込んだ鏑木プロデューサーが悪い。

 

 そして始まる告白タイム。トップバッターは4人目のモブ男(仮称)。

 モブ男くんはMEMに告白しにいった。速攻でフラれた。ナムアミダブツ!モブオ=サン!

 

 はい次。

 

 2番手はダンサーのノブこと熊野ノブユキ。彼は鷲見ゆきに告白しにいったが、そこでバンドマン森本ケンゴの「ちょっと待った!」コールがかかる。昭和生まれか、お前は。

 

 ノブがゆきに花束を差し出す。ケンゴがギターを弾きながら告白する。

 …そして、ゆきの答えは。

 

 

「ごめんなさい」

 

 ああぁ~~! まさに、大!どんでん返し!!

 

 …しまった。私まで昭和が伝染した。

 

 

 そんな昭和世代にジャストミートなやり取りが繰り広げられた後、今日のメインディッシュ。アクアの告白タイムだ。

 私が黒川あかねの炎上を肩代わりしたことで、アクアと黒川あかねの恋愛フラグは消滅した。恋は戦争であり、狩猟である。私はWSSを回避しただけなので私は悪くない。何故かアクアに向けられるはずの黒川あかねのクソ重情念がこちらに向いてるような気がしないでもないが、きっと気のせいだろう。多分。

 アクアは黒川あかねに告白しない。つまり、告白する相手はもう一人しか残っていないということだ。

 

 アクアが私の前に立つ。私はゴクリと唾を飲み込み、アクアの告白の言葉を待つ。

 少しの間沈黙していたアクアが、口を開いた。

 

「MEM、俺と付き合ってくれ」

「「えええええええええええ!!!!!?」」

 

 滑らかな動きでスッと身体をMEMのほうに向けて、アクアがMEMに告白した。

 私の悲鳴と、特にフラグを立てた覚えもないのに突然告白されたMEMの素っ頓狂な奇声がハモった。

 

 

 

 ――時を遡って、収録直前の出来事。

 

「告白タイムに入る前に、アクアに確認しておきたいことがあるの。…結局、恋愛NGなの?」

「…ああ。本業に影響があり過ぎるからな」

 

 私はアクアに恋愛NGかどうかを確認したが、結果はお察しの通りだった。まあ手を出したら即座に炎上するところを実際に体験しているので当然の結果ではあるのだが。

 アクアとルビーは双子キャラで売り出しているので、アクアたちのアイドルユニット「Twin☆Stars!」のファンはどちらか片方ではなく兄妹どちらも推せるという所謂「箱推し」タイプのファンが多い。ファンにとって、ある意味ではアクアとルビーが「推しカプ」なのでアクアとルビーが多少過激なパフォーマンスをしても好意的に受け止めてくれる。

 しかし、ユニット外での恋愛…言わば「箱外コラボ」に対してだけは激しい拒否反応を見せる。

 箱外コラボは上等な料理にハチミツをぶち撒けるが如き行為であり、純愛ギャルゲーでメインヒロインに主人公以外の彼氏を持たせるようなものだ。そんなゲームはディスクを真っ二つに叩き割って返品するのが人として当然の反応だろう。不意打ちNTR、ダメ。絶対。ついでにクラウド×ティファとザックス×エアリスは譲れない。

 

 というわけで、アクアの告白イベントは始まる前に終了してしまった。しかし番組的には告白を棄権することは流石に出来ないので、告白されても断ってくれるように女性側に事前に根回しをするという話になった。

 私は今までの展開上、告白を断るのは不自然過ぎるのでアウト。黒川あかねは何故かアクアの恋敵扱いになっているので論外。ゆきだとちょっと競争率が高すぎて番組的に面白くなくなるので却下。

 というわけで、アクアの告白相手にはMEMが選ばれた。アクアがMEMに告白するのは少々強引な展開に見えるかもしれないが、だからこそ告白を断る理由となる。

 

 原作の「今ガチ」では賑やかしポジションに収まっていた彼女だったが、この世界では立派なオチ担当の子、略してオチの子だ。

 良かったな、MEM。今日はお前が主役だぞ!

 

 

 というわけで、打ち合わせの通りにアクアの告白をMEMが断るという八百長試合が現在繰り広げられている状況だ。視聴者にバレないように演技が出来るのかとMEMが不安そうにしていたが、まあ大丈夫だろう。どちらかと言えば年齢がバレないように高校生の演技をするほうが遥かに難易度が高いと思う。

 

「…答えを聞かせて欲しい、MEM」

「待って!?これ告白を受け入れたら次は私が炎上する流れだよね!?」

 役者としてのスイッチが入ったアクアが真剣な表情でMEMに告白する。対するMEMは、満更でもない半笑いの表情を浮かべながらも理性で拒否する姿勢を見せる。うんうん、いい演技だ。いい演技過ぎてちょっとだけイラっとしたぞ。

 

「面倒見が良くて、親身になって話を聞いてくれるMEMと一緒にいると心が休まる。君のそんなところが好きだ」

「やめて誘惑しないで!?本気でオチるから!!」

 アクアが悪ノリし始めて本気でMEMを口説き始めた。こやつめハハハ、そろそろ暴れていいかな?

 

「ほら!あんなにアクアにアプローチかけていたかなちゃんも凄い顔してるじゃない!?」

「アクアどいて。そいつ殺せない」

「かなちゃんがヤンデレ化してるよぉおおおおおお!!!!」

 大丈夫、ちょっとカメラの前でおっぱい揉んで「Bカップぐらいかな?」って言ってデジタルタトゥーにしてやるだけだから。怖くないよ?痛くしないし、すぐ終わるから。

 

「はいストーップ」

「かなちゃん、ステイッ、ステイッ!」

 私はMEMににじり寄り、両手を広げて襲い掛かる寸前で黒川あかねと鷲見ゆきに邪魔されてしまった。無念。

 

 そんな感じで今シーズンの「今ガチ」最終回の撮影はカップル未成立のままグダグタな流れでお開きとなったが、後日放送の内容を見てみると視聴率を求める悪辣で邪悪なスタッフの最後の抵抗というべきなのか、スタッフロールが流れる最後のシーンで告白タイム終了後に喋った私と黒川あかねの会話が使われていた。

 

「かなちゃんには私がいるから大丈夫だよねー」

 仲良くお手手を繋いで帰るところをバッチリ撮られて、ご丁寧に「カップル成立…?」というテロップまで付けられていた。お前が言うなとか言われそうな気もするが、敢えて言わせてもらおう。

 やりたい放題かよ、お前ら!

 

 というわけで、これで本当に私たちの「今ガチ」は終了だ。最終回の内容の評価は、賛否両論といったところか。

 

 

『やっぱりアクア、恋愛NGじゃねーか』

『はいはい予定調和予定調和』

『最初に炎上しててよかったな。恋愛NGの言い訳が出来て』

 

 まずはアクアが槍玉に挙げられていた。まあ言っていることは事実だし、炎上の件を引き合いに出すまでもなく現役アイドルを恋愛リアリティーショーに引っ張り出すのは土台無理な話であったことは確かなので諦めて聞き流すしかない。

 反省?するわけないじゃない。文句はRTA並の速度で炎上させにくるアクア厄介ファンたちに言え私は悪くない。

 

 

『MEMちょがアクアに未練タラタラだったのがウケる』

『よく我慢した。えらい』

『アクMEM…アリだな』

 

 そしてアクアに告られたMEMの人気が急上昇していた。オイコラ待てぃお前ら肝心な女優さまの存在を忘れてるぞ。

 

 

『アクアに弄ばれたかなちゃんが可哀想…でもないな』

『かな虐たすかる』

『浮気はよくないぞ、有馬かな』

 

 私の評価と言えば、最初の炎上から始まって最後まで折れずに傍若無人に行動しまくった結果「かわいそうはかわいい」キャラ扱いになってしまった。どうしてそういうところだけ原作準拠になるのかな?歴史の修正力さん?

 

 黒川あかねはというと、完全に「黒川あかね=絵鳩早苗」のイメージが定着してしまった。昔は絵鳩早苗扱いするなと言ってた気がするけど、本当に大丈夫か?テレビ関係者ってイメージ戦略がメシの種だと思っている人たちが多いから一度ついたイメージを覆すのってかなり労力が必要になるんだぞ?

 まあいいか。まだネットで名前が売れたとかそういうレベルの知名度なので方向修正も間に合うはずだし、黒川あかねの将来は黒川あかね自身が考えることなので私がお節介を焼くのも筋違いだろう。私に火の粉がかからない程度に好きにやってくれ。

 

 

 近況報告はこんな感じだろうか。「今ガチ」の収録が終わり、肩の荷を下ろした私はいつも通りアクアの家で寛ぎに行く…わけではなく、ツクヨミの住んでいる神社でダラダラと時間を潰していた。

 

「なんでウチに来るんだよ」

「失恋中なのよ。ちょっとでいいから愚痴話に付き合いなさい」

 

 ツクヨミを適当にあしらいつつ、私はアクアとルビーが出演しているトーク番組をノートパソコンで観ていた。関西弁のお笑い芸能人がMCを務める番組で、トークの話題はアクアとルビーの恋愛観についての内容になっていた。

 

「やっぱりアイドルが恋愛するってファンも嫌がると思うし、軽々しい気持ちでそんなことをするのはダメだと思うんですよ。そこで私は閃きました!アイドルは恋愛出来ないのなら、お兄ちゃんと恋愛すればいいじゃない、と!」

「いやアカンやろ!!?」

 

 ルビーの近親相姦上等の爆弾発言に、思わずMCの芸人が突っ込んだ。視聴者はブラコン妹というキャラを作っているのだと思っているのだろうが、私は10割本音だということを知っているので複雑な心境だ。

 

「ルビーちゃんのお兄さん自慢は置いといて、もしルビーちゃんが仮に男の人と付き合うんやったらどんな人がええのん?」

「お兄ちゃんより優しくてカッコよくてお金持ちな人!」

「おらんわ!そんなやつ!!」

 MCの芸人が振って来たある意味でセンシティブな話題をルビーはきっちりと打ち返す。打てば響くといった内容のボケとツッコミの応酬にスタジオに笑いが広がった。

 

「ところでお兄さんは、どんな女性が好みなん?」

 ルビーとのトークが終了し、次にMCの芸人の矛先がアクアに向く。

 

「妹より可愛くて性格が良くてセクシーな人」

「おらんわそんなやつ!!」

 すかさずアクアが天丼ネタでルビーのネタに乗っかっていく。普段は毒舌クールのツッコミ役なのにボケ役も出来るとか最強かよ。アクアもこの場で「好みはアイみたいな女の人です」とマジレスするわけにはいかないので完璧な回答と言えるだろう。

 

「…はぁ」

 そこまで観たところで、私はノートパソコンのディスプレイをパタンと閉じた。燃え尽き症候群というわけではないが「今ガチ」の収録が終了してからというもの、何かにつけて気が乗らない、気が入らない感じが続いて色々とまずい状況だ。

 アクアは本業に影響があるから恋愛NGといった。つまり、アイドルを続けている間は恋愛をしないということだ。アクアはルビーに対して過保護気味なところがあるから、ルビーがアイドルを引退するまではずっと一緒にアイドルを続けていくのだろう。

 

 つまり、アクアは私ではなくルビーを選んだということだ。

 

 身も蓋もない言い方をするならば、ルビーがメインヒロインだから歴史の修正力が働いたのだと言えるかもしれない。しかしきっとそんな単純な話でもないのだろう。

 自分が生きた証のすべてを雨宮吾郎に託して死んだ天童寺さりなと、貝原亮介に殺されるまでそれを大事に持っていた雨宮吾郎。アクアがルビーにとことん甘い理由は、前世でため込んだカタルシスを解放するためという意味合いもあるのだろう。医者がメサイアコンプレックスを拗らせるなんて、笑い話にもならない。

 アクアがルビーを選ぶのは必然のことだった。そんな考えが頭によぎって、私の胸が軋んだ。

 

「理不尽だなぁ。私は有馬かなじゃないのに、有馬かなの苦悩と苦難は私を逃がそうとしてくれない」 

 動機こそ違えども、原作の有馬かなだけではなく私にとってもルビーは妬みと嫉妬の対象になってしまった。私が有馬かなであるための縁を嫌悪してしまったという状況に悔しさと自己嫌悪が広がっていく。

 

「なんだ、また中二病タイムか?青春してるねぇ」

「はっきり言わせてもらうけど、あんただけには言われたくないわ」

 私の独り言を拾って、ツクヨミが揶揄ってきた。アクアが言いそうなことをコイツに言われるのはなんか猛烈に腹が立つのでやめろ。

 

「アンタはいいよね。アンタはツクヨミじゃないのに、違和感なくツクヨミをやれているんだから」

 義務も責任も持たずに幼年期を謳歌しているツクヨミに対する苛立ちから、ついつい言い方がキツくなってしまう。

 原作のツクヨミは「幼女の肉体に老成した精神の宿った得体の知れない存在」というキャラだ。そこにレスバに弱いというポンコツ属性がついたことで、神秘さと俗っぽさを兼ね備えたキャラになってしまった。

 つまり、今のコイツそのものだ。多少性格が違ったところで「ツクヨミ」というキャラのアイデンティティは揺らぎもしない。

 私と違って、自力で「ツクヨミ役」という立場を自分のモノにしてしまったコイツが羨ましくて、妬ましい。

 

「あっそ。俺から見れば、かなちゃんは有馬かなそのものだと思うんだけどな」

 私の皮肉に動じることもなく、ツクヨミはあっけらかんとした態度で私の苦悩を一笑に付してきた。

 

「負けん気と承認欲求が強いくせに自己肯定感が低いところとか原作の有馬かなそのまんまだし、黒川あかねのプロファイリングでも解析しきれない巨星の演技の才能だって持っている。…かなちゃんが自分が自分じゃないって思うようになったのは、下手に『星の瞳の演技』に手を出したからじゃないかな?」

 

――ツクヨミの言葉を聞いて、私は途端に蒙が啓かれたような気分になった。

 

 有馬かなのアイデンティティは巨星の演技だ。それなのに、私はいなくなったメフィストを求めて「星の瞳の演技」に手を伸ばし、それからはずっと自分自身の個性を顧みることを忘れていた。

 馬鹿だな私は。有馬かなの個性を蔑ろにしていたのだから、有馬かならしくなくて当然じゃないか。こんな簡単なことに気づかないなんてツクヨミに中二病だと笑われても仕方ない。

 

「誰が何と言おうと、君は有馬かなだよ。ずっと一緒だった俺が保証する」

 小さな身体で私を見上げながら、ツクヨミが励ましてくる。うん、その気持ちは嬉しいし今はなんだか心が軽くなったような気分だけど、それを素直に認めるのは負けたような気がしてなんだか癪だ。

 私はツクヨミを後ろから抱えて、膝の上に乗せる。そして私は彼女の全身を撫でまわした。

 

「…かなちゃん、なんでいきなり俺の胸をまさぐり始めてるの?」

「今までのお礼の意味を込めて、アンタのおっぱい揉みまくってDカップにまで成長させてあげようと思ってね」

「ちょっ、おまっ、やめっ」

「諦めておとなしくメス堕ちしなさい」

「ふぎゃぁあああああ!」

 

 私のおっぱい責めを受けて、ツクヨミの色気もクソもない悲鳴が神社に響き渡った。

 その声を聞いてすぐに大人が駆けつけてきたため、私は不本意ながらツクヨミロリ巨乳化計画を諦めることになってしまった。無念。




やりたかったことリスト34
ねるとん紅鯨団ネタ。昭和の時代から恋愛リアリティーショーって存在してたのか…
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