有馬かなに転生したので、俺の意識が消えるまで彼女を守護ろうと思う   作:雑穀ライス

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MEM救済ルートはないと言ったな。あれは嘘だ。


エピローグその2 MEMのアイドルデビュー①

「『今からガチ恋始めます』全収録終了です!お疲れさまでした〜!」

「乾杯~!」

 「今ガチ」最終回の撮影…つまり告白イベントの収録後、私達はそのまま「今ガチ」収録完了記念の打ち上げ会に参加する流れとなった。人脈がそのままメシの種になる業界なので不参加という選択肢はない。飲み会不参加は甘え。はっきりわかんだね。

 私達はスタッフが予約を取っていた「Fellini(フェリーニ)」というお洒落なバーに入ってソフトドリンクで乾杯をした。確かフェリーニってイタリアの映画監督の名前だっけ?まあどうでもいいか、そんなこと。

 

「一時はどうなるかと思ってたけど、意外となんとかなったね」

 ほっとしたような表情で、黒川あかねが言う。

 

「みんな好き放題やってたからフォローが大変だったわ」

「一番好き放題してた人が何をおっしゃるか」

 私の発言にゆきがツッコんできた。いやいや、二人の男を手玉にとったあんたがそれを言うのはブーメランじゃないかな?

 

「ところでさ、かなちゃんに聞きたいことがあるんだよね」

 そこにMEMが私とゆきの会話にズズィっと割り込んでくる。

 

「かなちゃんとあかねって付き合ってるの!?どうなの!?」

「それ私も気になってた!」

 MEMとゆきが食い気味に問いただしてくる。原作ではここはアクアが問い詰められる場面だったはずなのだが、どうやらアクアとあかねのカップリングが未成立になった因果で役割がこちらに回ってきたらしい。

 

「いや別にそんなことはないけど…って、あんたたちって女の子同士の恋愛でもOKなの?普通引かない?」

「自分が百合の対象にならなければOKです!」

「観てる分には実害ないしね!」

「ゲスの極みか、あんたら」

 ゲスの極みに乙女脳がくっついてバンドグループの名前みたいになってるぞ、オイ。

 

「で、ぶっちゃけかなちゃんってレズなの?アクアにも粉をかけていたからバイ?」

 アルコールも入ってないのに、ゆきはグイグイとセンシティブな話題に切り込んでくる。怖いもの知らずか、アンタは。

「かなちゃんは雌雄同体だから男の子も女の子もイケるんだよねー」

「だから人をカタツムリみたいに言うな」

 そこにあかねが話に加わったことでテーブルの姦しさが更に増す。このタイミングで会話に入ってくるなんて自分から酒の肴になりに来たとしか思えないのだが、随分といい度胸だね?

 

「あかねのほうは、かなちゃんのことラブなの?」

「絵鳩早苗の役が抜けきってないだけでしょ。あまり虐めてあげないでよ」

 早速話題の矛先が黒川あかねに向いたので、代わりに私が答えてやる。初共演の日から数えてもう4年ぐらい経つけど、いつになったら絵鳩早苗の役から解放されるのかな?黒川あかねさん?

 

「…ドラマでやった役の演技が、普段の生活にまで影響することってあるの?」

 私の言葉にMEMとゆきが揃って首を傾げた。

「あかねみたいに没頭型の演技をする役者は、役に入り込んでるときは恋人役の人が本当に好きになっていることが多いって聞くわね」

 せっかくなので、2人に役者あるあるの蘊蓄を語ってやる。と言っても不知火フリルの受け売りの知識なのだが。

 

「役に入るときは自己暗示かけるから、ありもしない恋愛感情を持ってしまうのよ。普通は撮影が終わって少し経ったら一気に醒めるものなんだけどね」

「へぇー、そうなんだ。そこまでしなきゃ役者って出来ないの?」

「事前に演技プランをガチガチに立てたり、なんとなくでこなしている人もいるわよ。でもそのやり方だとアドリブに弱くなるから監督や演出の指示が入ったときに満足な演技が出来なくなる。だからこういう役作りはとても重要なのよ」

 

 役が頭に入ってると「このキャラが言いそうなこと」「このキャラがやりそうなこと」という方向性がわかるので、どんなシチュエーションになっても柔軟な対応が出来るのが強みだ。

 不知火フリル曰く「役者の質が問われるのは、作品の明暗を分けるたった1シーンに自分の中から別の人を見つけられる人」ということだが、私も全くその通りだと思っている。役に成り切れないとか未熟もいいところだ。

 黒川あかねに目を向けると、ニコニコしながら静かに私の話を聞いていた。その黒川あかねからどことなく絵鳩早苗のようなオーラを感じるのは、今この場でしゃべっている話題のせいだろう。多分。

 

「でもでも!今は演技の延長でも、そのうち本気になっちゃうかもしれないし!?」

「ならないわよ。無責任に煽らないでってば」

 女の子は恋バナで無限に会話が出来る生き物だ。こうなってしまえば彼女たちの興味が尽きるまでの間、暫く解放して貰えないだろう。私は逃げるのを諦めて彼女たちの冷やかしに付き合うことにした。

 そんな感じで私達の姦しい会話は途切れることなく、打ち上げがお開きになるまで続いた。

 

 

 

「…寂しいな。私、この現場めちゃくちゃ好きだった」

 打ち上げが終わった後の帰り道、MEMはそんなことを言った。

 ゆきやあかね達はタクシーに乗って帰宅し、徒歩で帰ることを選んだのは私とMEMとアクアの3人だった。3人で並んで夜の東京の街を歩きながら、MEMの身の上話に耳を傾ける。

 

「ここだけの話だよ?私、元々アイドル志望だったんだ」

 しんみりした雰囲気のMEMの話を、私とアクアは静かに聞く。そんなMEMの独白を聞いて、私の胸が少し痛くなった。

 

 本来なら、ここでアクアがMEMを新生『B小町』にスカウトしてMEMがアイドルデビューするという流れだ。しかし、私が物語に介入した結果、『B小町』が再結成されることはなくなってしまった。

 何の因果か私がこのシーンに立ち会うことになってしまったのだが、私の犯した罪を見せつけられているようで、少し辛い。

 

「でも色々あって挫折しちゃって、今は元気にユーチューバーやってますけど!」

「ふぅん。じゃあウチ来たら?」

 

「「えっ」」

 そんな思いもしなかったアクアの言葉に、私とMEMの驚きの声がハモる。

 

「確約は出来ないけど、まだ本気でアイドルをやりたいと思っているなら相談に乗ってやれるかもしれない」

「ちょっとちょっと!苺プロがアイドル募集していたなんて聞いたことないわよ!?まさか新規アイドルグループでも立ち上げる予定でもあるの!!?」

「募集なんてしていないし、そんな予定もないからな。これは俺の思い付きだ」

「そんな無責任な!?」

 MEMよりも私のほうが慌てている奇妙な状況に面食らいながらもアクアはそう答えた。私の葛藤は何だったんだと歴史の修正力さんに問い詰めたい気分だ。その優しさを私にも分け与えて欲しいのだが、クレームはどこに送ればいいのかな?

 

「ミヤコさんや斉藤社長と話をしたところで実際にアイドルになれるかどうかは未知数だけど、行動しなければ可能性はゼロのままだ」

 なんかアクアがカッコイイことを言い始めた。私やルビーだけでは飽き足らずにMEMまで攻略するつもりかこのスケコマシめ。フラグ乱立罪は最悪死刑まであり得るから注意したほうがいいと思うぞ。nice boatされてから後悔してももう遅いんだぞ。

 

「私がアイドル…あはは……そんな冗談……」

 そんなアクアの話を聞いたMEMは、希望の光を瞳に宿してキラキラと輝かせていた。

 ここまで煽っておいてやっぱりダメでしたは非人道的過ぎるからしっかり責任とれよ。アクア。

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