有馬かなに転生したので、俺の意識が消えるまで彼女を守護ろうと思う   作:雑穀ライス

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エピローグその2 MEMのアイドルデビュー②

 「今ガチ」の打ち上げ会の帰り道でアクアがMEMをスカウトしてから一週間ほど経ったある日のこと。アクアから私に電話がかかって来た。

 

「…かな、MEMのアイドルデビューの件で相談したいんだが、構わないか?」

「私にそういうことを聞いてくるということは、つまりダメだったのね」

 悲報、アクアがMEMに無責任アイドルスカウトを仕掛けたがデビュー失敗。うん、知ってた。

 

「…ミヤコさんがMEMを面接をしているときに、ちょっと問題が発生してな」

「MEMの実年齢のことでしょ?」

「知ってたのなら先に言え」

 不満げな声色でアクアが文句を言う。いやいや、女性の年齢の話は普通にタブーでしょ?

 一般的には女性は25歳、男性は30歳あたりから自分の年齢が気になり始めるというのが定説だ。アラサーという言葉が生まれる前から「四捨五入したら30歳よ!?」という女性の年齢を揶揄した定番ネタがあったらしい。どうして女の25歳はBBA扱いなんだろう?お肌の曲がり角と言われる年齢だからかな?

 少し話が逸れたが、アクアの話を聞いてみると面接中にミヤコさんがMEMの年齢詐称を見抜いて彼女の実年齢が25歳だというのがバレたらしい。そこまでは原作でもあった展開なのだが、ここで新生『B小町』が結成されていないことがMEMにとっての致命傷になってしまった。

 ミヤコさん達には、アイドルが定年退職する年齢まであと5年ほどしか残ってないMEMをソロデビューさせて事務所の投資分を回収するビジョンが思い浮かばなかったという話だ。中途採用に求められるのは即戦力、デビュー後すぐにヒットを狙える算段がなければ採用は難しいというのがミヤコさんの本音だろう。

 しかしアクアの方からMEMをスカウトしたという負い目があるので、ここではいサヨナラというわけにもいかない。断るにしても、手を尽くしたけどやっぱり無理でしたという形で誠心誠意を見せないとあまりにも苺プロの…というかアクアの印象が悪くなる。というわけで、ある意味ではMEMにハメられてしまったアクアが藁にも縋る気持ちで私に泣きついてきたという状況だ。

 

「しかしアクアが女性のトラブルで失敗するのは珍しいわね。初めて見たわ」

「お前は俺のことをどんな目で見てるんだ」

 えっ?天然のジゴロでしょ?違うの?

 

「…とにかく、なんかいい案はないか?アイのときみたいに『アイドル』のようなヒット曲とか作れないのか?」

「無茶言わないでよ。そもそも『アイドル』みたいな曲を作ってもMEMが歌えないでしょ?」

 MEMの歌唱力はアイドルデビュー直後のルビーとどっこいのお粗末さだ。そんな子にYOASOBIが作曲するような「生身の人間が歌うことを全く考えていない」と言われるようなボカロ系の曲を提供しても歌いこなすことなんて不可能だ。YOASOBIのヴォーカルである幾田りら本人だって、かつては「ライブでは(ブレス出来てなくて)声量が足りてない」と酷評されたこともあったぐらいに難易度の高い曲なのだ、YOASOBIの曲は。

 複数人でパートを分けて歌えるB小町に「アイドル」を提供するのとは、全くと言っていいほどに前提が違う。

 

「MEMにも歌えてなおかつ爆発的な話題性が期待できるような、そんな都合のいい歌なんてあるわけ…が……」

「…かな、どうした?」

 歌唱力が足りないMEMでも問題なく歌える曲で、なおかつ爆発的な話題性を期待できるもの。そんな都合のいい歌に、ひとつだけ心当たりがある。

 あるじゃん。MEMにぴったりのやつが。

 

「もしかしたら、いけるかもしれない」

 ()()歌なら、きっとMEMでも歌えるはず。

 

 

 

 

 

「というわけで、ツクヨミ。あなたの出番よ」

「めちゃくちゃ厄介事じゃねぇか」

 というわけで、私はまたまたツクヨミの住んでいる神社にやってきた。私にはMEMを売り出すための知識と構想はあっても、耳コピでMEMのデビュー曲を作成する技術も時間もない。しかしコイツにはその両方がある。というか、ないと困る。

 

「あんたの作曲にMEMのアイドルデビューがかかってるのよ。この曲の歌手がこの世界で芸能界デビューしてないのは確認済みだから、遠慮なくやっちゃいなさい」

「いやいや、あっちの世界のヒットソングとはいえ耳コピで作るのは無理があるだろ。それに()()歌ってダンスも重要だし、全部再現するの結構キツいぞ?」

 私の無茶ぶりにツクヨミが抗議する。しかしMEMのアイドルデビューがかかっているのだ、私もここで引き下がるわけにはいかない。

 

「無理でも無茶でも無謀でもとにかくやりなさい。そもそも私達がMEMの夢を潰しちゃったようなものだし、取り返せるのは今このタイミングしかないのよ」

「いやでも」

 

「…はぁ、あんた肝心なところで役に立たないのね。あーMEMも可哀想。ツクヨミが大事なところで頼りにならないせいで無名のアイドルのまま埋もれていくのかーひどい話だなー。

 あとでMEMに『私が何の役にも立たないよわよわメスガキポケモンだったせいであなたの未来を台無しにしてしまいました。すいません許してくださいなんでもしますから』って謝っておくのよ?」

 

「なめんな出来るし(#^ω^)ピキピキ」

 

 

 

 …それから一か月後、ツクヨミは「アイドル」のときと同じように()()歌と振り付けをMMDで再現したダンスムービーを作成して持ってきてくれた。

 そのときに「歌手はこの世界にいないけど、これを作曲した人は普通にいるじゃねーか。苦情が来ても知らねーぞ俺は」とぷりぷり怒っていたのがちょっとだけ可愛かった。

 後でその作曲家を含めた本職の人に手直ししてもらうつもりだったので本当は全体のイメージが掴める程度の完成度でもなんとかなったのだが、これを言ったら本気で拗ねる気がしたので黙っておいた。すまぬ。

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