有馬かなに転生したので、俺の意識が消えるまで彼女を守護ろうと思う   作:雑穀ライス

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烏が鳴けば未来が変わる

 幼年期の一日は長いと言われているが、俺には適応されていないらしい。あっという間に時が過ぎていく。アクアとの出会いから1年が経過し、俺は4歳になった。

 

 有馬かなへの出演依頼のオファーはどんどん増えていき、仕事量に比例して収入も増えていく。

ギャラの高さが役者の評価だとマネージャーが嘯いていた。有馬かなの凋落を知っている身としては、危険な傾向だと感じる。

 

 

 毎日が忙しい。仕事も忙しいが、演技の練習がキツい。

 

 労働基準法により、15歳以下の児童の場合は就学時間+労働時間(稽古や衣装替えを含む)の合計が1週間に40時間、1日7時間を超えてはいけないと決められているが、自主的に行う練習量までは考慮されていないらしい。毎日バカみたいに課題が出る。

 社畜の皆さまに馴染みの深い言葉に変換するならば、いわゆる「自宅持ち帰り残業」に近いかもしれない。俺の残業手当どこ…ここ…?

 

 

 俺に出される課題の内容は多岐にわたるが、本質はすべて同じもの。

感情演技に頼らない基礎的な演技能力の向上…つまり「有馬かなの演技をやめて演技をする訓練」だ。

 

 近い将来訪れる有馬かなブームの終焉後も女優を続けるつもりならば、今のままでは演技の幅が狭すぎる。基礎能力も応用技術ももっと伸ばす必要がある。

 【推しの子】の作中で有馬かなは、芸能界に骨を埋める覚悟が出来たと宣言した。ならば俺が有馬かなの足を引っ張るわけにはいかない。

 いつか俺の意識が消えてなくなる日まで――俺は有馬かなを守護らなければならない。

 

 

 有馬かなも順調に売れているが、アイのほうも順調だった。

 1年前に出演した映画をきっかけにメディアへの露出が増えて、色々な媒体でアイの姿を見かけるようになった。カメラ映りが最高にいいし、少し…いやかなり天然が入っているところも視聴者ウケがいい。

 アイの人気に釣られるようにして、B小町の注目度もどんどん上がっていく。そして、B小町の人気が上がるということはドームライブの日が近づくということだ。

 

 

 

Xデーは、近い。

 

 

 

「なあ、どうしてストーカー男にうちの住所がバレたんだ?」

 俺の家に遊びに来ていたアクアが聞いてきた。…ついに来たか、その質問。

 

「情報提供者がいたのよ」

「誰だよそんな迷惑なやつ」

「誰だと思う?当ててみて?」

 

 質問に質問で返すな、とボヤきつつもアクアが頭に手を当てて考え始める。

 

「…厄介オタの特定班?」

「はずれー」

「…駄目だ。わからない、降参」

 

 アクアが軽く手を上げて降参のジェスチャーをする。まあ、幸せな家庭で育ってたら思いつかなくても仕方ないか。

 

「情報提供者は、アイよ」

「…どうしたらそんな状況になるんだ」

 

 自分からリークした情報で自分がストーカーに襲われる。そんなガバガバなコンプライアンス意識で引き起こした人災だと言われてアクアが頭を抱えた。

 

 

「唐突にアイが『子供に父親の顔を見せてあげたい』と思いついて、元カレに住所を教えたのがバレたんだってさ」

「勘弁してくれ…」

 

 天井を仰ぎ見るアクア。まさか実の父親が共犯者だなんて夢にも思うまい。

 

「じゃあ父親に俺たちの住んでる住所をバラさなければ襲撃自体がなくなるんじゃないのか?」

「肝心のアイの行動が制御しきれないんだよねー」

「…ああ、そういうことか。まあ駄目元でも父親に住所を教えないように言っておくか」

 

 

 その後は俺とアイ、B小町の近況についての世間話をしばらくしてからアクアは帰った。

 

 

 

――昔、「ブラジルの一羽の蝶の羽ばたきが、テキサスで竜巻を引き起こすか?」と言った学者がいた。

 一般的にはバタフライエフェクトと呼ばれ、「非常に小さな出来事が、最終的に予想もしていなかったような大きな出来事につながる」ことを意味する言葉である。

 

 

 【推しの子】の原作知識を持って転生した有馬かなと会話したことで、星野アクアは自分の父親にアイが住所を教えたことがきっかけでアイが殺されたことを知ってしまった。

 アクアは父親への住所漏洩を避けるため、「自分たちを放置している男なんて父親じゃない、顔も見たくないから絶対に呼ばないでくれ」とアイに言い放った。

 それを聞いたアイは、()()()()()()()()()()()()()()アクアとカミキヒカルを会わせることを決心した。

 

 

 

 

 

「ねぇ、子供達も結構大きくなったんだよ。一度会ってみない?」

 

 アイはカミキヒカルに連絡を取った。

 

 

「いや寄りを戻すとかそういう話じゃなくてさ。アクアなんか『顔もみたくない』って言ってるけど、もしかしたら実際に会ってみれば気持ちが変わるかもしれないし」

 

 アクアが何も言わなくてもアイはカミキヒカルに住所を教えていた。

 物語の大まかな流れにはほとんど差異はない。蝶の一羽ばたき、カラスの一鳴き程度の差異しかないのであろう。

 しかし、その一羽ばたきが【推しの子】原作世界との明確な差異を創り出していく。

 

「私たち再来週引っ越すからさー。その後にでもどうかな?

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()絶対にオートロック式のマンションのほうがいいとアクアが言って聞かなくてさ。結構いい物件なんだよ?

 

…えっ?引っ越す前に会いにいくから今の住所が知りたい?別にいいけど?」

 

 

 

――カミキヒカルが星野アイの居場所を知った日が、()()()()()()()()()()()()

 




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RTA走者「どぼじでぞんなごどずるのおおおお」
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