有馬かなに転生したので、俺の意識が消えるまで彼女を守護ろうと思う   作:雑穀ライス

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※化野めいが演じる女鬼の名前を「宇佐美」と命名しました。由来はJR網代駅の次の駅名です。
※船戸竜馬が演じる大鬼の名前を「貫」と命名しました。由来は匁の1000倍の重さですが、自分は「つらぬき」と読んでいます。


舞台「東京ブレイド」第四幕

 舞台「東京ブレイド」第四幕。これがこの舞台の最終幕となる。

 

 

「弱い!弱い弱い弱い弱い、弱ぁぁぁい!!!」

 戦いの空気に酔いしれてまたもや正気を失った匁がキザミに襲いかかる。前回の戦いと同様に終始キザミが匁に押される展開となっていたが、キザミは実力が足りない分を気合と根性でカバーしてなんとか食らいついていた。

 

「家族の仇…!お前だけは……ッ!!」

「はぁ?誰のことだぁ?斃した相手のことなんか、いちいち覚えてねぇよ!!」

 

 一方では、キザミ配下の女鬼である「宇佐美」と渋谷クラスタの大鬼「貫」との戦いが繰り広げられていた。

 宇佐美にとって渋谷の「貫」は因縁の相手。しかし体格の差というハンデを覆すのは容易ではなく宇佐美はじりじりと追い詰められ、そして「貫」に捕まってしまう。

 

「トドメだ!」

「くっ……」

 「貫」が持った鎌状の武器が振り下ろされる。宇佐美は来るべき苦痛に耐えるために歯を食いしばるが、その刃は横から差し込まれた刺股によって止められた。

 

「先走りすぎよ、宇佐美!全く、しょうがない子ね!!」

網代(あじろ)っ!!」

 

 宇佐美の危機を救ったのは、同じくキザミの配下で羊の形の角を持った女鬼である「網代」だった。そのまま網代は宇佐美に加勢し、2対1の状況に持ち込む。

 個で勝てないのならば、数で勝負。「貫」相手に形勢逆転とまではいかないが、彼女たちはなんとか互角の勝負に持ち込んでいた。

 

「ええい!何を手古摺っているのです!?早く新宿の鼠どもを駆除しなさい!!」

「だったらお前も戦えよ!」

 戦況が中々好転しないこと業を煮やした平安貴族風の姿をした鬼が配下の鬼たちに檄を飛ばすが、鬼たちは命令ばかりで働こうとしない平安貴族風の鬼に対して文句を言うばかりで、誰も彼のことを相手にしていなかった。

 一進一退。新宿クラスタと渋谷クラスタの抗争は、両者互角の状態で進んでいた。

 

 

――ここで舞台が暗転。

 

 

 桜の花びらが舞うディスプレイ型舞台幕を背景にして、上手からブレイドが、下手から刀鬼がゆっくりと中央に向かって歩いていく。そして、舞台の中央で二人が対峙した。

 

「お前が渋谷で一番強い奴か?」

「…貴様には、志があるのか?」

「あん?」

 突然そんなことを聞いてきた刀鬼の言葉にブレイドが首を傾げる。

 

「鞘姫にはある」

「志ねぇ。ないことはないと思うが、俺は口で説明するのは得意じゃないんだ。だからよぉ…」

 強者と戦える喜びを表情に浮かべながら、ブレイドが盟刀を抜いた。

 

「語ろうぜ。俺たちの刃で!」

「いいだろう」

 対する刀鬼は、居合の構えで迎え撃つ。刀鬼が臨戦態勢に入るのと同時にブレイドが跳躍(ワイヤーアクション)し、刀鬼に躍りかかった。

 落下速度の加わった重い一撃を、刀鬼は涼しい顔で捌く。

 炎のような熱い感情を叩きつけてくるブレイドに対して、刀鬼はまるで無表情。正反対の二人が剣戟を繰り広げていると、門が開くかのように後ろの舞台幕が開いた。

 

「なんなんだアイツ…!?それにあの盟刀…他の刀とは何か違う……」

 

 舞台幕が開いた先には、手傷を負った「つるぎ」の姿があった。

 刀傷こそ少ないが、さんざん鞘姫に打ち据えられたのか打撲の痕が身体中に広がっていた。察するに、鞘姫との一対一の勝負で敗北してやむなく一時撤退を選んだというところであろう。

 そんな「つるぎ」の背中に目掛けて、鞘姫が追撃を仕掛ける。

 

「避けろ!『つるぎ』!!」

 ブレイドの声で後ろに迫る鞘姫に気づいた「つるぎ」は、咄嗟に振り向いて鞘姫の攻撃を防ぐ。

 その衝撃を利用して彼女は後ろに大きく飛び退き、ブレイドと刀鬼の間に着地した。

 

 

「…女か。貴様、なぜここにいる」

「何よ、私に文句でもあるの!?」

 突然現れた乱入者が女性だったことに気づいて眉をひそめた刀鬼が「つるぎ」に問いかける。

 

「女の身でわざわざ戦場に身を置く理由もないだろう。命を賭して死に合うのは男だけで良い。今すぐこの場を去れ」

「わ…私は戦える!!」

 男尊女卑ともレディーファーストとも受け取れる言葉を刀鬼は「つるぎ」に言い放った。対する「つるぎ」は、その言葉を自分に対する侮りの言葉だと解釈して刀鬼に反発する。

 そののち「つるぎ」は自分を女の子扱いしてくれる刀鬼に対して心を開くことになるのだが、今の彼女にそれを知る術はなかった。

 

「女を斬っても手柄にも誉にもならん。男は女を命を賭して守るものなのだろう。俺は鞘姫のために絶対に負けるわけにはいかないのだ。女風情が邪魔をするな」

「何よ、女、女って…!ナメないで!!」

「舐めてなどいない。…いずれにせよ、俺はお前に危害を加えるつもりはない。大人しくこの戦いを見ているがいい」

「………っ!!!」

 

 己を完全に無視して目の前を素通りしようとする刀鬼に「つるぎ」は激昂し、刀鬼に向かって突撃した。

 

「……むっ」

「バカにするなぁ!私を誰だと思っている!!」

 鉈剣を振るってくる「つるぎ」に応戦する刀鬼だったが、刀鬼はブレイドを相手にしていたときと比べて明らかに動きに精彩を欠いていた。顔は無表情のままだが、彼が「この女を出来るだけ傷つけずに無力化するにはどうすればいいのか」等と考えていることは明白であった。

 

「私を見くびったことを!後悔させてやる!」

 数合打ち合った後に刀鬼は「つるぎ」のことを手加減した状態では制圧出来ない相手だと認識を改めるが、それでも己の信念が足かせとなり彼女を積極的に傷つけるのを躊躇わせていた。

 刀鬼から放たれる、急所を外した殺気の乏しい攻撃を「つるぎ」は難なく凌いでいく。刀鬼が自分を敵だと認識しきれていない今なら勝てると「つるぎ」は考え、一気に攻勢を仕掛けた。

 

「はぁッ!!!」

 「つるぎ」は刀鬼の突きの一撃に合わせて、下から掬い上げる一閃を見舞ってその刀を弾き飛ばした。今まで無表情だった刀鬼の顔が、ここで初めて焦りで歪む。

 

「くっ!」

「ブレイド!今よ!!」

「応ッ!!!」

 そこで「つるぎ」は刀鬼との戦いに乱入するチャンスを窺っていたブレイドに声をかける。待ってましたと言わんばかりに自分の盟刀の力を解放したブレイドが、刀鬼に迫った。

 

「刀鬼ッ!」

 ブレイドが参戦した時点で自分も助太刀するつもりだった鞘姫が飛び出し、ブレイドの奥義を身を挺して防ごうとするが、

「あんたは大人しくしていなさい!!」

 その目論見は、標的を刀鬼から鞘姫に変えた「つるぎ」の妨害によって潰えることになった。

 

 

――盟刀・風丸 一の刃『疾風刃雷』

 

 

 刀身に雷を纏わせて敵を切り裂くブレイドの一撃必殺の奥義をまともに喰らった刀鬼は、鮮血をまき散らしながら地面に倒れ伏した。

 

 

「刀鬼ぃ!」

 鞘姫は慌てて刀鬼に駆け寄り、自分の盟刀の能力である「傷移し」を使って刀鬼の傷を癒そうとする。しかし、刀鬼の受けた傷は明らかに致命傷であった。

 鞘姫の盟刀の能力は傷を癒す能力ではなく、他者に傷を移し替えるだけの能力だ。刀鬼の傷を癒した分だけ自分の身体で負傷を引き受ける必要があるので、全ての傷を引き受けてしまえば今度は自分の命が危うい。

 そんなことは知ったことかと鞘姫は盟刀の能力を全力で使って刀鬼を助けようとするが、

 

「鞘姫…もういい……」

 そんな鞘姫に、息も絶え絶えな刀鬼が語り掛ける。

 

「これ以上…お前が傷つく必要はない……すまない…守ってやれなくて………」

 刀鬼はそう言い残すと、静かに瞼を閉じた。

 

 

「―――――ッ!!!!!!!」

 

 刀を抜けば、血が流れる。そしてこれは、自分が選んだ道の因果が巡ってきただけの話だ。

 今まで散々武を以て虐げてきたのが、今度は自分の番になったというだけのこと。

 

 鞘姫は、泣き叫びたくなる感情を歯を食いしばって必死に耐えた。

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