有馬かなに転生したので、俺の意識が消えるまで彼女を守護ろうと思う   作:雑穀ライス

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ババ抜き

「『深掘れ☆ワンチャン』らしい、頭のおかしい企画ですねぇ」

 私は「『東京ブレイド』の漫画家『鮫島アビ子』先生に成人漫画のレビューをして貰おう!!」とか書かれている台本を持ったままの姿勢で思ったことをそのまま口にしていた。

 

 内容は私が電話で出版社にアポを取って、鮫島アビ子先生に番組の出演依頼交渉。そして出演依頼が通ったら後日出版社にお邪魔してお題について面白おかしくお話するといったものだ。

 出演依頼が通らなかった場合の代替案がどこにも記載されていない。どうしてこの内容で企画を通したの?馬鹿なの?死ぬの?

 

「よくこんな成功率の低そうな企画通りましたね?」

「…実は最初に企画が上がったときに鏑木プロデューサーから『待った』が入ってお蔵入りになってたんですが、今回リポーター役が有馬さんに変わったところで鏑木プロデューサーのGOが出て解禁になった、といった感じです」

 

 こんなアホな企画が通った理由と経緯を吉住ADが説明してくる。完全に私のコネとタレント力をアテにした企画じゃねーか。

 しかし鏑木Pが噛んでいるというのは少々マズい。あちらはこっちの事情をキッチリ把握してるので、この企画がポシャれば私が手を抜いていたせいだと判断するだろう。これはハメられたかな?

 

「…あの、大丈夫ですかね?」

「大丈夫なわけないでしょ。いくら私でもこの台本のままバカ正直にやったら成功率はゼロよ。本気で番組を成立させる気があるなら、この『成人漫画』のジャンル指定を『エッチな漫画』に変更したほうがいいですね、これ」

 

 番組が炎上するのはもう勝手にしてくれというのが本音だが、自分の評判まで道連れにされるのは流石に困るので修正案を出す。

 漫画のレビューをしてもらうという企画なんだから、お題の中にアビ子先生が他の人にオススメしたい作品がないなら取材拒否されてそこで試合終了だ。なので、「成人漫画」という括りをなくして間口を広げることを提案した。

 R18指定がなくても作中でセックス描写が出てくる漫画なんて山ほどあるし、むしろ少女漫画のほうがそういう表現が生々しい作品が多い。わざわざ成人漫画を指定するよりもアビ子先生がエッチだと思う漫画を自由に選んでもらうやり方のほうが出演依頼が通りやすいし、もしかしたら私が知らないとんでもない作品をオススメしてくる可能性だってある。本当に成人漫画が出てきたときは、そのときはそのときで私も腹を括るしかない。

 

「番組ではお題を『エロい漫画のレビュー』とでも表記しとけばいいと思います。そうすれば各々が勝手にすごいのを連想してくれて、着地点が想像付かなくなるから番組の特徴であるギリギリ感は損なわれないと思います」

「なるほど…」

 

 年齢制限の制約さえ取っ払ってしまえば、視聴者的にもアビ子先生がどんなエッチな漫画が好きなのか興味はあるだろうから番組としては十分成り立つ。R15~R18のどれかが飛び出すエロのロシアンルーレットだ。レーティング低めの漫画が来たら視聴者ウケしそうな軽めの下ネタトークで無理やり盛り上げてやればいいだろう。

 

「おいっ!ADを言いくるめて勝手に台本の内容を変えようとするな!素人が口出しするんじゃない!!」

 ディレクターである自分の許可も取らずに台本の内容をイジり始めたことを漆原Dが咎めようとするが、

 

「まだ生理も始まっていない(ピー)学生のヒロインが金持ちのイケメンに心も身体も手籠めにされる少女漫画の話、します?」

 と私が言ったら漆原Dは黙ってしまった。素人が口出ししてるんじゃねぇぞ、オイ。

 

 

 というわけで私の説得の結果、番組の成立を最優先にするという名目でタイトルを「『鮫島アビ子』先生にエロい漫画のレビューをして貰おう!!」に変更してもらうことを了承してもらった。まだ何も始まってもいないというのにすでに疲労感がヤバい。

 

 それはさておき、方針が固まったのでカメラを回して撮影開始。出版社に電話をかける。

 

 

「…もしもし、有馬です。舞台『東京ブレイド』ではお世話になりました。今回『深掘れ☆ワンチャン』という番組の企画でご連絡させてもらったのですが、鮫島アビ子先生にこちらの番組に出演していただきたい、という件でお話したいのですけど、よろしいでしょうか?

 ……はい、アビ子先生が『気難しい方』だというのは重々承知しています。なのでこちらのほうで直接交渉して、難色を示すようであれば諦めますので…はい、番組の内容は『アビ子先生が()()()漫画をレビューしてもらう』といった企画になります。

 …はい、ありがとうございます」

 

 取り敢えず出版社サイドから許諾を取り付けることには成功した。嘘は言ってない、オブラートな表現で説明しただけだ。私は悪くない、「アビ子先生が嫌がったら諦める」という言葉に安心して油断した出版社サイドが悪い。

 これで第一関門は突破。続けて自分のスマホを取り出し、アビ子先生に連絡を入れる。

 

「…あっ、有馬です、お仕事お疲れ様です。今回『深掘れ☆ワンチャン』という番組の企画でご連絡させてもらったのですが、アビ子先生にこちらの番組に出演していただきたいという依頼なのですが…あっ、ありがとうございます!

 ですが、こちらの番組の企画が『ゲストのアビ子先生に、えっちな漫画のレビューをしてもらう』という内容でして……レビューする漫画はアビ子先生に選んでもらって結構ですので、アビ子先生が視聴者に推したい、えっちな漫画があればそれを番組で紹介してもらいたい……えっ、本当ですか!?ありがとうございます!!」

 

 難色を示すかもと思っていたアビ子先生だったが、意外とノリノリで出演依頼をOKしてくれた。第二関門もあっさりと突破してしまった。順調すぎて逆に不安になってくる。

 

「…なんかあっさりとOK貰えましたね」

「今のうちに言っときますけど、個人的なコネ使って交渉してるのでアビ子先生に失礼なことしたら本気で怒りますからね?」

 

 カメラを止めて拍子抜けした表情をしている吉住ADに釘を刺しておく。あの人基本的にコミュ障なのでここまでトントン拍子に話が進むとは私も想定していなかったんだけど、まあ順調な分には問題ないだろう。勝ったなガハハ!

 

 

 そして、アビ子先生に取材する日がやってきた。

 

「このたび深掘りリポーターに任命された有馬でーす!女優やってまーす!!」

 出版社の前でカメラを回して本番開始。取材をする前の導入部分を撮影する。

 

「今回私がお邪魔させてもらうのはこちら!少年ジャンプで有名なあの集英社でーす!!そして本日のミッションはこれ!!」

 集英社のビルを背景にリポートを続行。私はフリップボードを取り出し、紙テープで目隠しされた今日のお題の1行目を剥がしてそこから出て来た文字を読み上げる。

 

『東京ブレイド』の漫画家『鮫島アビ子』先生に!

 

 続けて2行目の紙テープを剥がす。

 

エロい漫画のレビューをして貰おう!!

 

 私はテレビ用の笑顔を浮かべながら、問題のワードを噛まずに言い切った。

 羞恥心は置いてきた。ハッキリいってこの戦いについていけそうにない。

 

「はい!この番組らしい頭のおかしい企画ですね!!わたくし集英社を出禁にならないかとても心配になってきました!!」

 本日のお題の説明のついでにここぞとばかりに制作サイドを貶していく。最初にガツンと漆原Dにレスバをかましたこともあったせいか、この方向で私のキャラ付けをしていくという要望はあっさりと認められた。

 制作陣とプロレスしていくことで視聴者のウケを誘うといった狙いもあるが、本命は番組が炎上したときに他人のフリをするのが目的だ。制作陣の喧嘩相手、あるいは被害者ポジションというキャラに落ち着けば炎上のもらい火を受ける可能性はグッと下がるはず。

 … 第一印象(つかみ)はこのぐらいで十分だろう。いざ鎌倉。

 

「気が向かなくてもやらなきゃいけないのが雇われリポーターの辛いところ!では有馬かな、逝ってきまーす!!」

 辛辣な台詞とは裏腹に楽しそうな笑顔を浮かべたまま、私は集英社のビルに突入した。

 

「お久しぶりです、アビ子先生。大変お忙しい中お時間いただき本当にありがとうございます!」

「ぜんぜん!私もこの日を楽しみにしていました!!」

 

 集英社のビルの会議室。そこでテレビ撮影用におめかしをして待っていてくれたアビ子先生が笑顔で私を歓待してくれた。

 

「早速本題なのですが、今回の企画は『鮫島アビ子先生にエロい漫画のレビューをして貰おう!!』という企画です!アビ子先生、準備はOKでしょうか!?」

「はい!すごいのを準備してきましたよ!!」

 

 カメラの隣でアビ子先生を見守っている担当編集が「おいィ!?そんな話聞いてないぞ!!?」と言った顔をしているが、特に問題はないので無視。アビ子先生の担当やってるんだ、今更胃の一つや二つ追加で壊れたところで誤差の範疇だろう。

 

「私がオススメする作品は、これです!」

 アビ子先生は自分のバッグから単行本を取り出し、カメラに向ける。

 

『恋愛ビターチョコ』!全年齢向け作品ですけど、すごくえっちですよ!!」

「ひぎぃっ!?」

 

 悲報、この番組のセクハラの矛先がアビ子先生から私にチェンジした。

 何この展開?ババ抜きかな?




やりたかったことリストその40
アビ子先生の逆セクハラ。
感想欄で展開予想の正解が出るぐらいのミエミエのオチなのにかなちゃんが気付かなかったのは、実はとんでもないガバなのでは…?

なお成人漫画レビュー凸の元ネタは「赤坂アカ 【文才の無駄遣い】」で検索するとヒットします。
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