有馬かなに転生したので、俺の意識が消えるまで彼女を守護ろうと思う   作:雑穀ライス

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合意の上での暴挙

 私の深掘りリポーターとしての最初の仕事「『東京ブレイド』の漫画家『鮫島アビ子』先生にエロい漫画のレビューをして貰おう!!」という企画は、私の心とSAN値に大きなダメージを与えながらもなんとか無事に終了した。

 アビ子先生もご機嫌な様子だった。一片の悪意もなくああいうフレンドリーファイアを出来るとは彼女にはドSの才能があるようだ。勘弁してください、いやマジで。

 人生で5本の指に入るほどの大ピンチを乗り切った私だが、残念なことに「深堀れ☆ワンチャン」の仕事はあと3か月ほど続く。そして今回の収録で私の扱い方を完全に理解した深掘りスタッフたちは、次の週も初回の収録以上に過酷な企画を私に送り付けてくるのであった。

 

 

 2週目、着ぐるみショー体験。

 

「はぁ…はぁ…げふっ、夏に着ぐるみショーとか……殺す気か……っ!」

 外気温は30℃弱だが、着ぐるみの中の体感温度は50℃越えの灼熱地獄(ブラゴザハース)。そんなこの世の地獄としか思えない環境でダンスショーを披露するという狂気の企画に私は参加していた。

 暑いというよりも熱い。えるしってるか、人間は熱さと寒さで死ぬ。

 

「もうやだ…十分働いた……ギャラ貰って早くかえりたい……」

 本職の人には悪いが、本当に頭のおかしい企画だと思う。こんな地獄のような暑さに耐えられる本職の人は不死身なのだろうか?

 

「駄目そうなら絶対に我慢しないでくださいね?数年前には死亡事故も発生したという話です」

「労災案件っ!?」

 

 普通に死人が出てた。シャレになってないんですけど!!?

 というわけで、本気で危ない企画だったので本番のショーでは冷却ベストを装備して出演する流れとなった。最初からそうしろよ!

 

 

 3週目、ジビエ体験。

 

「はむはむ…うん、普通に美味しいです。臭みもあまりないし、丁寧に下ごしらえが出来ていますね。嚙み応えもあって私好みです…えっ、次の料理?何ですかこれ?…ひぃっ!!?」

 

 シカ肉ステーキに舌鼓を打っていたら、次に出て来たのはシカの脳みそ料理だった。

 グルメ番組のリポートだと思って油断してたら、急にゴールデンカムイっぽい展開が飛び出してきた。オチを用意しないと番組制作出来ないのかお前らは。

 

「…いま私、多分ゴールデンカムイのアシリパさんみたいな顔していると思います」

 

 「ゴールデンカムイ 顔芸」で検索したら出てくるアシリパの画像のような顔をしていた自覚があるので、とりあえず思いついた言葉をそのまま口に出してトークを繋げる。今の私ならアイヌの人たちとも仲良くなれそうだ。アイヌ差別撲滅の啓蒙活動の公演をするよりも、ゴールデンカムイを日本中で流行らせたほうがよっぽど効果があるんじゃないかな、あれ。

 

「は……はぁ……はっぷ…」

 ゴールデンカムイを意識した表情を作りながらシカの脳みそをいただく。ぱっくんちょ。

 

「……ヒンナヒンナ!」

 茶碗蒸しみたいな食感で割と美味しかった。

 

「これおいしいですよ。スタッフさんたちもどうぞ!さあ!さあさあ!つべこべ言わずに食えっ!!!」

 自分だけゲテモノ料理の被検体になるのは納得いかないので収録に参加したスタッフ全員を道連れにすることにした。お前らだけ傍観者で許されると思うなよ?

 

 

 4週目、ペットボトルロケットによる人体発射実験。

 

「私は今、50本のペットボトルロケットを背負っています。このペットボトルに詰まっているのは、水と空気と私の夢です!さあ、私はこの借り物の翼でどこまで飛んでいけるのでしょうか!?」

 

 私の体重なら、上手くいけば10mぐらいは飛べるだろう。とある芸人がペットボトルロケットの噴射でガメラのように回転しながら30mほど吹っ飛ぶシーンを見たときは大爆笑したが、タネ明かしをすると逆バンジージャンプのハーネスをCG加工で消していただけだったらしい。私の感動を返せ。

 しかし今回の企画にはそんな不正はない。私の実力で日本記録を更新してやる…!

 

「行きます!3…2…1…、わきゃっ、ごぼっ!!?……ぷはぁっ!?」

 私は勢いよく噴出したペットボトルロケットの力に翻弄されて姿勢制御をミスり、3mほど飛んだ辺りで直角に急降下して顔面からプールに着水した。

 

 記録、4m50cm。普通に飛び込んでいたほうがマシな飛距離だった。

 

 こんな結果で番組成立するのかと不安になったけど、実際の放送では私が顔面からプールに突っ込むシーンの超スローモーション映像に「その姿はまるで魚を狙う鳥。彼女は今、鳥になったのだ!」というテロップとナレーションが追加されてて大ウケしていた。だれがうまいこと言えと言った。

 

 

 そして5週目。問題児、漆原Dの企画その2。

 ヤツの持ってきた企画は、アダルトグッズ(オナホール)のレビューという企画だった。

 

「…まず最初に紹介するのが、初心者にもオススメしたいこのタイプです!詳しい使い方は付属の説明書をご覧ください!!」

 

 私は通信販売のCMをするかのような口調で無心で用意されていた台本の台詞を読み上げる。使い心地?知らんがな。後で番組にクレームが大量に来そうな気もするが、こんな昭和と平成初期の香りがする番組を未成年者が見てる可能性は低そうなので大丈夫だろう。多分。

 えっ、「お前も未成年だろ」だって?この収録が放送される頃には18歳になってるからセーフなんじゃないかな?知らんけど。

 

「ハードなものが好きな人にオススメしたいのがこのタイプ!私も愛用しています!!」

 愛用ってなんだよ。どうやって使うんだよ。この台本の台詞を考えた奴ちょっとツラ貸せや。

 

 この企画は一見私へのセクハラ企画の第二弾に見えるが、それはカモフラージュだ。流石にエロネタばかりだと芸がなさすぎるし、私の評判にも関わってくる。

 なので、ここからが本番だ。

 

「…というわけで、今回の取材はここまでとなります!ご視聴ありがとうございました!!」

「はい、OK!」

 

 漆原DのOKの合図と共に、私はカメラの前で浮かべていた笑顔を消して真顔になる。そしてオナホを持ったままセットを降りてズカズカと漆原Dの元に歩いていく。

 当然、カメラは回ったままだ。

 

「『はい、OK』じゃねーよ!私、前にこういうセクハラみたいな企画持ってくんなっていったよなぁ!!」

 レビュー用のオナホを漆原Dに突き付けながら、怒鳴る。

 

「す、すみません…」

「謝って済む問題じゃねーんだよ!!」

 私に怒られた漆原Dは、いつもの傍若無人な態度と打って変わってしおらしい態度で謝ってきた。

 

 今回の企画は、私へのセクハラが目的ではなく深掘りスタッフとのコント(プロレス)がメインだ。

 カメラの前だけ外面がいい気の強い女と、その剣幕にタジタジな中年男性。バカ殿様で有名な大御所芸人がやってたコントのオマージュであり、昭和気質の漆原Dはこういう昭和感溢れるコントは大好物である。彼はノリノリでやられ役での出演をOKしてくれた。

 

「こんなもののCMを私にやらせやがって…!お前の×××(バキューン!)をこの中に突っ込んでやろうか!?あぁん!!?」

 私はそんなことを叫びながら、漆原Dのほっぺたにオナホを押し当ててグリグリした。

 

 どう見てもご褒美です。本当にありがとうございました。

 

 普段ADにパワハラしまくってる中年男性が女子高生にオナホを顔面に押し当てられて情けないブサイク顔を晒すという汚い絵面があまりにも滑稽で、ガヤ役として集めたスタッフたちが本気の笑い声を上げた。やっぱりみんな「ざまぁ」とか「倍返し」とかいう展開好きなんすねぇ(呆れ)。

 

「あ、有馬さん!まだカメラ回っています!!」

「はぁ?」

 

 本気で嫌そうな顔をしている漆原D(当然、演技である)にオナホを押し付ける私を、吉住ADが止めに入る。私は自分に向けられたカメラに視線を合わせて、一呼吸分だけ動きを止めた。

 

「以上、現場からでした!スタジオにお返ししまーす!!」

 

 そして私は何事もなかったように、笑顔でリポーターからの中継の終わりを告げるセリフを吐いて誤魔化す。

 その場にいたスタッフ全員がズッコケた。

 

 

 

「…有馬さんって、NG案件ってないんですか?」

 深掘りスタッフ総出の茶番劇(コント)を収録したその後、吉住ADが私に話しかけてくる。これだけ好き放題やった後にその質問するのはちょっと遅すぎないかな?

 

「こんなセクハラみたいなセンシティブなコントも平気でやってますし、制作スタッフに使い勝手の良いバラドルみたいに扱われてますけど有馬さんは大丈夫なのかなぁって…」

「私は別にアイドルじゃないので、マルチタレント上等ですよ。エロ系やお笑い系のオファーばかり来るのは勘弁ですけどね」

 

 私は笑顔で吉住ADの質問に答える。ウチのミキさんは私の方針にあまり口出ししないし、私にとってはこれも「お芝居」の延長線という認識である。丁度いい機会だし、ここで私のNG案件についての情報を共有しておこう。

 

「私のNG案件は家族ネタですね。私、両親が離婚しているのでそこはセンシティブです」

 

 吉住ADと話していて思いついたのだが、もしも深掘りスタッフが「親の授業参観ネタ」なんて企画を思いついたときには下手すれば私の芸能界人生が終わる可能性すらある。私ももうすぐ18歳だし、流石にそろそろ芸能界への未練も落ち着いているとは思うがそれでもあの母親を芸能界に近づかせたくない。一種のトラウマみたいなものだ。

 細かい話は説明する気はないので、ウェットな理由でアンタッチャブルだと匂わせて釘を刺しておく。ここまで言って私の地雷を踏み抜いてくるようなら処置無しだ。視聴率のために人の心を捨てるのは別に構わないが、品性まで捨ててしまう相手とは付き合うつもりはない。悪党と外道は別物である。

 

 はあ、「深掘れ☆ワンチャン」の仕事も漸く折り返し地点か。このまま無事に終わるといいんだけどなぁ。

 あ、MEMからメール来てる。彼女も芸能界ではバラドル扱いで苦労しているようだ。お互い大変だよね。

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