絶対中立オーブ!   作:スカウトマニア

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とりあえず思いついたところは全部書きました。


オーブと言う名の一つの生き物

 ヘリオポリスを襲撃したクルーゼ隊のMSパイロットを八割ほど血祭りにした後、ギナ率いるオーブ軍とアークエンジェルは行動を共にすることとなった。

 念の為にクサナギと叢雲劾、メビウス編隊をヘリオポリスの護衛として残し、イズモとギナ、ブレラが同行する形となる。

 アークエンジェルは予定通りのクルーが操艦し、GATシリーズも誰一人欠けることなくテストパイロット達が乗り込み、エンデュミオンの鷹の異名を持つムウ・ラ・フラガも原典世界同様、同行している。

 

 GATシリーズをザフトに奪われず、キラ・ヤマトとその友人達がアークエンジェルに乗り込むこともない。

 フレイ・アルスターもヘリオポリスに留まるから、父親である大西洋連邦の高官アルスター次官が無理を言って、第八艦隊の先遣艦隊に乗り込みもしない。

 

 ヘリオポリス出立に際しては、アークエンジェル、イズモ共々たっぷりと物資を積み込み、これならアルテミスやユニウスセブンの残骸に立ち寄って、物資を補充する必要は欠片もない。

 オーブは正式に大西洋連邦とMSの共同開発を行い、アストレイシリーズの開発も契約の内だから、関連するパーツも含めて堂々とイズモ級に積み込んでいる。

 ヘリオポリスが崩壊を免れた為、ジャンク屋のロウ・ギュール一行が立ち寄る必要もなくなり、彼らの手にレッドフレームは渡らなかった。今後もロウは愛用のMAキメラに乗り続けるだろう。

 

 月面の地球連合軍基地ではなく、直接、地球連合軍本拠地アラスカ・ジョシュアを目指すアークエンジェルは、地球軌道上にて友軍との合流を目指してヘリオポリスを出立した。

 GATシリーズがザフトの手に渡らず、アークエンジェルが寄港しなかった為にユーラシア連邦の軍事要塞アルテミスは陥落せず、また水不足にならずユニウスセブンに寄らなかった影響で、プラントの歌姫ラクス・クラインを拾うこともなかった。

 なおラクスはザフトの捜索部隊が無事に発見し、プラントへ帰還している。

 

 プラント本国へ帰還したクルーゼは多大な被害と引き換えに入手した大西洋連邦とオーブのMSと運用艦艇について、その将来的な危険性を強く訴えかけてアークエンジェルとイズモの追撃許可をもぎ取る。

 GATシリーズのシグーを上回る基本性能とフェイスシフト装甲、ビーム兵器といった脅威は戦闘が無かった為、把握していなかったが、オーブのアストレイシリーズだけでもシグー以上の性能とビーム兵器を標準装備と脅威性を訴えるには十分であった。

 明確にプラントを敵視しているオーブが地球連合の三大国とMSを共同開発している以上、他国も同水準のMSを開発している可能性が高い。ナチュラルにMSが作れるはずがない、という妄言は事実を前にすれば評議員の誰も口にしなかった。

 

 クルーゼが指揮を執る形で急ぎ追撃の為の艦隊が結成される一方で、イズモとアークエンジェルは地球の低軌道上で大西洋連邦のデュエイン・ハルバートン准将率いる第八艦隊と無事に合流する。

 道中、戦闘もなにもなくGATシリーズのテストパイロット達は、ひりつくような緊張感と共に訓練を重ね、警戒を密にし、秘かにギナのゴールドフレームとブレラのレッドフレームを頼みにしていた。

 

 そして第八艦隊と合流後、ギナ達は迫りくるクルーゼ艦隊の迎撃を決め、一時的に共同戦線を張ることとなる。地球連合とザフトの戦いにオーブが介入する、と言う形である為、中立破りの怨敵はあくまでザフトとなり、地球連合と事を構える可能性は避けられている。

 一応、ザフトとの戦いにおいては事前協議の上、共闘も可としている為、オーブの中立という名の狂気の牙が地球連合諸兵に突き立てられる可能性は低いのだが……

 

「ハルバートン提督、我々は第八艦隊の右翼に布陣し、ザフトのMSを迎撃する形で動くが、あくまでオーブの指揮は私が、第八艦隊の指揮は提督が執る。この形でよろしいか?」

 

 既にゴールドフレームに乗り込み、いつでもイズモから出撃できる準備を整えたギナは、第八艦隊旗艦アガメムノン級宇宙母艦メネラオスに通信をつなぎ、ハルバートンと最後の確認を行っていた。

 地球連合非加盟国であるオーブの将官たるギナに、ハルバートンが命令を下す権限はなく、ギナもまた然り。その為、それぞれ別個に指揮を執りつつ、ザフトを迎え撃つという大雑把な決まりが取り交わされたのみ。

 

『うむ。現状の我々では相互に支援するのも難しい。貴官らの負担が大きいかもしれんが、指揮系統を二つに分けるほかあるまい。我々のGATシリーズが戦力として運用できたなら、もっとMSの数を増やせたのだがな』

 

 現状、オーブ・第八艦隊の保有する戦力になるMSはゴールドフレームとレッドフレームの二機だけ。もしナチュラル用のOSが完成していたなら、これにデュエル、バスター、ブリッツ、イージス、ストライクらGATシリーズ五機が加わり、非常に大きな戦力となった。

 とはいえ今回の戦闘では、GATシリーズとアークエンジェルを無事にアラスカに降下させるのが目的なのだ。ギナは最初から戦力としてはあてにしていない。

 

「アメノミハシラからの艦隊が間に合う予定だ。そう構えることもあるまい。東アジア共和国も部隊を出すというが、そちらも提督としては気になるところであるかな?」

 

『うむ。正直に言えば、アメノミハシラで東アジア共和国が貴国と共同で開発しているMSについて、興味がないと言えばうそになる』

 

 戦前からの仮想敵国である東アジア共和国がどんな機体を開発しているのか? MS開発計画を立案したハルバートンとしては、立案者としても大西洋連邦の高級軍人としても気がかりなのは事実である。

 オーブ五大氏族サハク家の次期当主であるギナならば、当然、把握しているだろうが、当人はこの後、直接目にする機会もあるだろうと語るつもりはないようだ。

 

 そうして両軍のトップ同士が意思疎通を終えてしばらく、クルーゼ率いるザフト艦隊との戦端が開かれ、後に低軌道会戦と呼ばれる戦いの幕が上がる。

 ザフトがナスカ級ヴェサリウスを旗艦とし、ローラシア級と合わせて五隻で艦隊を編成し、投入されたMSの数は三十機に及ぶ。

 

 対するオーブ・第八艦隊は艦艇数で圧倒し、またMAメビウスの数は百を超えるが、この時期の戦力比は1:5であり、三十機のMSに対して百五十機のMAでようやく対等とされている。

 トップエースクラスのギナとブレラが居たとしてもその差は……と言いたいが、このコズミック・イラの世界において、エースが高性能機に乗った場合の戦闘能力は十数機のMS程度なら、単独で軽く蹴散らすレベルだ。

 

 クルーゼ率いる部隊のパイロットの質が高い事と、ゴールドフレームとレッドフレームがシグー以上とはいえそこまで圧倒的な高性能機ではないのを踏まえれば、この二機だけでも数倍のジン相当に戦力換算してもいいだろう。

 幸いにしてムウがアークエンジェルで待機している為、クルーゼは指揮に専念しようとヴェサリウスに留まって出撃しておらず、アスラン、イザーク、ディアッカ、ニコルらネームドパイロット達も、GATではなくジンでの出撃を余儀なくされている。

 実体弾をほぼ無効化し、強力なビーム兵器を装備し、基本性能でもこの時期では図抜けているGATシリーズとジンとでは、どれほど脅威度が違うことか。

 

 第八艦隊側から雨あられと降り注ぐビームとミサイルの雨に、一機、二機と不幸なジンが食われる中、弾幕を潜り抜けたジン達に百を超えるメビウスが襲い掛かり、瞬く間に返り討ちにあってゆくある意味、滑稽な光景が描かれる。

 そうしてこれまで通り地球連合側が鴨打にされる光景を横目に、イズモのゴッドフリートとローエングリンが火を噴き、ギナとブレラのアストレイが襲い掛かる。

 

 PS装甲の代わりに軽量な発泡金属を用い、高い機動性と運動性を両立させたアストレイシリーズはトップクラスのコーディネイターであるギナとブレラにとって、相性の良い機体であった。

 ジンを上回る基本性能に加えて、一撃必殺のビームに襲い掛かられて、実戦での対MS戦の経験が少ないザフト側にとっては、強敵もいいところだった。

 

 本来ならキラのストライクを相手にMS戦の経験を重ねるはずのアスラン達も、MS戦童貞であった為、戦意・素質・鍛錬の全てを兼ね備え、高性能機に乗り込むギナ達は死を間近に感じるレベルだ。

 第八艦隊は事前の想定通りだったが、ヘリオポリスでも感じたように戦意旺盛かつ実も伴っているオーブ製MSの奮闘は、クルーゼに最初から自分が戦場に立つべきだったと、判断の誤りを認めさせるほど。

 ミゲルを含むアスラン達六人がかりでようやく動きを抑え込めているが、それまでの間に十機以上のジンが撃墜されてしまい、ハルバートン指揮の下、連携する艦隊とメビウスによって進撃を阻まれていた。

 

「まったく厄介な国だな、オーブは」

 

 クルーゼをして、ナチュラルやコーディネイターという括りを逸脱したアレな国、というのがオーブに対する評価だった。

 だが、どんな事態であれ独立と中立を守るというオーブの理念に賛同するならば、出自を厭わないオーブがプラントとの開戦以降、肩身の狭い地球のコーディネイターを多く受け入れて、地力を伸ばした結果、あそこまで強力なMSの開発に成功しているのだ。

 ザフトの軍人としてはある意味では、地球連合以上に厄介な敵国だと認めざるを得ない。

 

 第八艦隊に出血を強いながらも、それ以上に被害を広げて行く味方を前に、クルーゼが重い腰を上げてシグーに乗り込み、自ら出撃したその数分後、狙っていたかのようなタイミングでアメノミハシラから出撃してきたオーブ艦隊が戦場に到着した。

 ギナの姉ロンド・ミナ・サハク自らがイズモ級ツクヨミに搭乗し、同級スサノヲ、カグツチの三隻と東アジア共和国のアガメムノン級一隻からなる小艦隊だ。

 

「ほう、ギナとブレラをただのジンで抑え込むか。ザフトめ、やはり侮れる相手ではないな。だが質と数を揃えたMSを相手にした時、どこまで醜態をさらさずにいられるか、見ものだな」

 

 ミナはその美貌に酷薄な笑みを浮かべて、スサノヲとツクヨミの艦載機部隊が戦闘宙域に向かってゆく姿を見送る。オーブに限らず、この時期の地球連合ではMSそのものの開発はおおむね終わっている。

 問題なのはナチュラル用のOSだ。兵士達の大部分を占めるナチュラルで運用できるようにならなければ、せっかく製造したMSもハリボテに等しい。

 

 そしてそれはナチュラルが乗ることを前提にしなければ、実戦に投入しても問題のないレベルに達しているのを意味する。

 この時、二隻のイズモ級から出撃したのは、オーブ初の正式量産機M1の宇宙特化仕様機M1A十機あまり。

 ブルーフレームのように青と白を基調としたM1Aには、オーブ所属のコーディネイター達とキラ・クローンのミハエル、ジノ、ライガットら三名が搭乗しており、軍人としての訓練を受けたキラ・ヤマトが三人増えたようなもの。

 

 また東アジア共和国のアガメムノン級からもオーブと共同開発したフジヤマ社製のライゴウがテストパイロットを乗せて、出撃している。

 本来なら戦後の一幕を描いた外伝作品で産声を上げる機体だが、ストライカーなしの素体だけなら現段階でも完成していたようで、せっかくの機会だからとデータ取集もかねて、オーブに相乗りする形で出撃したようだ。

 喪失の危険性を伴う実戦に投入する以上、量産に必要なデータ取り自体は終えているのだろう。

 

 この局面での新たなMSの投入、更にはローエングリンを備えたイズモ級の参戦はクルーゼが思わず舌打ちを堪えきれなかったことからも、ザフトにとっていかに絶望的な知らせか計り知れる。

 加えて、この時、投入されたイズモ級カグツチは他のイズモ級とは異なる特徴を備えていた。イズモ級は中央部、艦首部、艦尾部の三つに分かれる特殊な構造をしており、カグツチは艦首部のみを他のイズモ級とは異なるものに変えていた。

 

 ローエングリンの砲口が横に二門並んだ、火力をとことんまで追求した艦首部である。その代わりにMS運用能力はなくなったが、中途半端に運用能力を残すよりもとことんまで火力に特化させるべしと判断された結果だ。

 これによりアメノミハシラ艦隊のローエングリンは合計八門。どれも直撃すればナスカ級、ローラシア級が一撃で沈む馬鹿火力である。そしてカグツチの艦首ローエングリンは特別な仕様であった。

 

 どう足掻いても艦隊同士での撃ち合いでは一方的な敗北しかないザフト側は、相当な無理をしてMSの一部をアメノミハシラ艦隊へと差し向けたが、それらの機体をM1Aとライゴウは無視して素通りしてしまった。

 艦隊の守りを一切考えない動きはザフト側に疑念を抱かせたが、これによって残るは直衛のM1Aわずか一機。

 

 これならば母艦にダメージを与えるのも容易い、とジンのパイロット達がわずかな希望の糸に縋ったその瞬間、カグツチの艦首から無数の光線に拡散されたローエングリンが発射され、回避の間に合わなかったジンを穴だらけにした上で爆散させる。

 通常のローエングリンが要塞や大型艦を想定した一点集中型なら、カグツチに装備された拡散ローエングリンは艦隊に接近するMSを迎撃する為の装備だった。

 

 実戦で用いられるのは今回が初めてだったが、見事に成果を上げて接近中だったジン三機をパイロットごとこの世から消滅させる成果を上げた。

 モニターの向こうで消え去ったジンなど目もくれず、ツクヨミの艦橋でミナはカグツチの働きに満足している様子。念の為、ツクヨミにはミナ用に調整されたM1Aがあるが、どうやら出番はないまま戦いは終わりそうだ。

 

「拡散ローエングリンは予定通りの効果を発揮したな。ライゴウも無理をしない程度に戦場の端で戦っているか。落とされぬようフォローを命じておいたが、それも杞憂であったか」

 

 想定を超える質と数を備えたオーブMSとローエングリンを連射してくるイズモ級により、ザフト側は事前の想定をはるかに上回る脅威にさらされ、早々に敗北を受け入れるほかなかった。

 アークエンジェルは悠々とアラスカはジョシュアへの降下コースに入り、メネラオスに銃弾の一発も撃ち込めなかったザフト側は歯噛みして見送るほかない。

 

 クルーゼにしても苦い、としか言いようのない一方的な敗北と言ってよい。生き残った艦艇はヴェサリウス一隻、MSに至ってはクルーゼのシグーを含めて、残ったのは八機のみ。

 ヴェサリウスの艦長でありクルーゼの副官アデスは、生き残りの中に議員の子息達が含まれていた事実に、不謹慎だと分かってはいても不幸中の幸いだと思わずにはいられなかった。

 

 ハルバートン提督としては、オーブの開発したMSとイズモ級の威力をむざむざと見せつけられた形になるが、現状、オーブとはまだ敵対していない以上、表立って警戒心をあらわにする訳にもいかなかった。

 低軌道会戦が終結後にはギナ、ミナの姉弟と会談し、直に感謝を述べ、今後の両国の友好的な関係を望む旨を伝え、最低限の礼儀は守ったことからもそれが分かる。

 なおこっそり参加していた東アジア共和国のライゴウは、敵機撃墜こそ果たせなかったもののベテランパイロットの乗るジンを相手に互角以上に渡り合い、貴重な生きた戦闘データを母国に齎し、一応の面子は守れたことをここに述べておく。

 

 この低軌道会戦でのザフトの敗北はプラント最高評議会に大きな衝撃を齎し、NJ投下によって中立国までも巻き込んだ結果、正気の振りをしようともしない狂人国家を敵にしてしまった後悔をたっぷりと味わう羽目になる。

 一方、開戦以来となる堂々たる勝利を得た地球連合軍であるが、それを成したのがオーブ軍の力によるところが大きいのは明白であった。

 

 実際の戦闘で活躍したオーブMSとコーディネイターの組み合わせは、一層、地球連合内部の反コーディネイターの先鋒ブルーコスモス関係者の危機感を煽る結果となってしまう。

 オーブとのMS共同開発そのものは継続しつつ、それぞれの国家が独自技術の占有や強力な機体の開発により力を注ぐようになったのも、当然の流れだった。

 

 そしてオーブでは低軌道会戦の結果により、自国のMSが十分に今回の戦争で通用するものであることが証明された。

 ナチュラル用OSも国内の種族を問わぬ技術者達の努力によって、他国に先駆けて完成が見込まれており、パイロットの数もある程度は目途が立っている。

 

 オーブには、戦争勃発前から迫害にあったコーディネイターがそれなりに亡命している。

 オーブの理念に賛同し、尊重するのであればナチュラルかコーディネイターかなどは些事と斬り捨てる国民性であるから、ブルーコスモスのテロに遭って殺されるよりはマシであったし、宇宙にあるプラントに赴くのを嫌った人々にとっては移住しやすい場所だったのだ。

 

 また原作世界ではオーブであっても、コーディネイターであることを隠した隠れコーディネイターがいるが、この世界では前述の国民性故、自分の素性を隠す者はおらず堂々と持てる能力を発揮して、オーブの理念の為に捧げている。

 オーブの誇る国営軍需企業モルゲンレーテでMSの開発を任されているエリカ・シモンズも、そんなコーディネイターの一人だ。

 この時代、オーブ以外でナチュラルとコーディネイターが同じ思想の下で協力し合っている国家・組織は、他には宇宙開発機構のDSSDくらいのものだろう。

 

 次にパイロット事情について少し語ろう。オーブ軍の正規軍人のコーディネイター以外にも、オーブに亡命した少数のザフト脱走兵、そして捕縛された宇宙海賊や違法な活動をしていたジャンク屋ギルドのコーディネイターが、現在、オーブには所属している。

 亡命者か犯罪者かの違いこそあれ、オーブに身柄を預けた彼らはオーブで過ごすうちに、ごく自然と、薬物投与や催眠暗示、拷問、脅迫といった行為が行われることもなく、独立と中立を維持するというオーブの思想に感化され、立派なオーブ国民と化していた。

 

 過去の行いを組み、今を見つめ、未来を思い描き、オーブによるオーブの為のオーブの中立に心から共鳴し、賛同する彼らは身命を賭してオーブのために戦っている。

 それぞれの過去の陣営に所属していた時よりもはるかに士気は高く、意欲に満ち溢れ、彼らの瞳は満天の星空のように輝きを放っている。

 

 この他国や別組織に所属していた人間が、オーブに身柄を拘束された後に思想がまるっと変化する傾向は、今に始まった話ではない。

 普通に法律にのっとってオーブを訪れた観光客やビジネス関係者などは特にそんなことはなく、南国情緒を楽しむなり、仕事をするなりして、そのまま無事に帰国している。

 

 対象となるのは先述したように犯罪者や他国の工作員となる。某国の諜報組織ではオーブへの工作員の未帰還率は百パーセントと冗談交じりに言われている。

 実際は全員が未帰還になるわけではない。仮に百人派遣したら、半分の五十人は帰還できる。ただ未帰還の五十人がそのままオーブナイズされ、身も心もオーブの理念に捧げるオーブの工作員になってしまうからだ。

 百人派遣したら五十人しか帰還できず、更にはオーブの工作員が五十人増えるということから、冗談で未帰還率百パーセントとなるわけだ。

 

 これを今次戦争に当てはめると、ザフトの捕虜が増えれば増えるほど、彼らはいずれ頭オーブとなり、プラントに背を向けてオーブ国民となる理屈であるし、実際に既にそうなっている。

 ヘリオポリス戦、低軌道会戦でオーブの確保したザフトの脱出艇やパイロット達は、オーブ本国ないしはアメノミハシラに護送され、遠からずオーブ国民となるだろう。

 ザフトとプラントはオーブにとって邪悪なりし怨敵であるが、オーブに理念に心打たれて、膝を着き、首を垂れて改心する可能性もあるので、戦場では捕虜を取るのだ。

 

 宇宙で二度の勝利を収めたオーブは、次の狙いを地球にあるザフトの拠点へと定める。

 特に候補に挙げられるのは、ザフトの拠点と知られているのはオーストラリアのカーペンタリア基地。

 オーブにとって目と鼻の先にあり、親プラント国家である大洋州連合のカーペンタリア湾に間借りしている形だ。地上最大の基地であり、重要拠点である為、ここを陥落させるとなると膨大な戦力が必要となる。

 

 他にもカーペンタリアと並ぶ重大拠点としては、イベリア半島に建設されたジブラルタル基地があげられる。ヨーロッパ・アフリカ侵攻の橋頭保として、ユーラシア連邦と熾烈な戦いを繰り広げている。

 ただオーブ本土から見ると差し迫った脅威ではなく、やはりカーペンタリアに比べれば緊急性は劣る。

 

 そしてまたウズミの伝手があるアフリカ大陸も候補の一つだ。親プラントのアフリカ共同体と地球連合側の南アフリカ統一機構に南北で分かれ争い合っており、加えて現地のレジスタンスの存在もあって、オーブのような小国でも引っ掻き回しやすい情勢にある。

 おぞましきザフトに消耗と犠牲を強いるのには、ある意味では絶好の戦場と言えよう。

 場合によってはレジスタンス、南アフリカ統一機構それぞれに戦力提供して、アフリカ共同体領内に展開しているザフトに嫌がらせをするのもありだ。

 オーブに侵略行為を行った対価は、プラントの想像をはるかに超えて、これから彼らに圧し掛かってゆく。

 

 低軌道会戦の報告を受けた後、ウズミはオーブ国民に向けた演説を行っていた。モルゲンレーテの地下格納庫に設けられた壇上に彼の姿はあった。格納庫の明かりは落とされて、ウズミのみを天井からのライトが照らし出している。

 闇の中に浮かび上がる光に祝福された聖者か、はたまた演出によって人々の心を惑わせる大ペテン師か。

 

 もちろん今もオーブの保有する軍需工場では、次々とM1が生産されており、保有数が三桁に到達するのも間もなくである。

 この小国ながら高い工業力はオーブの技術力もさることながら、その国民性に大きく由来している。理念の下、ナチュラルもコーディネイターも等しい彼らだが、同時に中立が侵された時の一致団結具合は常軌を逸している。

 

 プラントに報復を行う為に必要なすべての行為に対し、首長から国民すべてに至るまでが同じ目標に向けて、一心不乱にまい進するのだ。

 通常、発生するはずの派閥争いによって発生する足の引っ張り合いは一切発生せず、上から下までまるでオーブという一つの生き物のように行動する。

 こうなったオーブ国民と接した他国の人間は、皆が口を揃えて恐怖に顔を白く変えながらこう評する。

“まるで国民全員の中身が同じ人間で、顔だけ別人の皮を被っているみたいだった”と。

 

「親愛なるオーブ国民よ。ヘリオポリスを襲ったザフトの集団を一蹴し、また、地球連合宇宙軍第八艦隊と共に地球低軌道で行われた会戦において、我らオーブのサハク姉弟と勇敢にして敬虔なる諸兵の活躍により汚らわしきザフトの軍勢を蹴散らしたことをここに伝えたく思う。

 我らオーブの理念、オーブ国民の証拠にして象徴たる絶対的中立を侵攻によって踏み躙ったザフトに対し、守勢に回るという屈辱的失態を重ねてきた我らだが、国家と国民が一致団結して生み出した我らオーブの新たな剣、新たな盾がついにザフトの喉を掻き切り、報いの一欠けらを味わわせたのである!!」

 

 他国からは『オーブの狂い獅子』『オーブ教教祖』と忌避され、気味悪がられるウズミの美声は格納庫の隅々まで行き渡り、またモニターを通して全オーブ国民の鼓膜のみならず、全身の細胞を震わせ、魂にまで浸透している。

 ウズミは自分の言葉が聴衆の心身の奥底まで染み渡るのを待ってから、両手を大きく広げる。するとそれに合わせて背後のM1達が一斉にライトアップされた。

 

「これらのMSはM1アストレイ。M1とは量産型一号機を意味する『M』odel『1』から。そしてアストレイとは『王道ではない』という意味から名づけられている。

 本来、我々オーブとその民達は他国の戦争に介入せず、侵略せず、侵略を許さない聖なる不可侵の中立を共通の理念としてきた。その観点から考えれば自国防衛の意図を超えた兵器であるM1はオーブ的ではない。

 しかし! 我らはすでに侵略を受けた。あの宇宙に浮かぶ人造の大地、プラントを支配する忌まわしき者達によって、彼らの尖兵たるおぞましきザフトによって!!

 故に、我らには必要なのだ。中立を犯した報いを受けさせる為の力が! 宇宙の果てまで逃げようともそれを捕らえ、聖なる裁きを! 聖裁を受けさせる為の意志の具現たる力が!

 故にオーブの王道たる中立から外れたこの機体にはアストレイの名を冠した。

 我らの屈辱、我らの怒り、我らの嘆き、我らの憎しみ、我らの正統なる報復を成し遂げるこの力をもって、プラントに相応しき裁きを下した時、私の魂は遍く天地を照らすオーブの理念へと召されるであろう!!!」

 

 大演説を言い終えたウズミの姿を見て、すべてのオーブ国民は喝さいを上げる。万雷の拍手、嵐のような喝さいの声がオーブの島々を揺らし、大気をかき乱して、海に荒波を立てる。

 

「オーブ! オーブ! オーブ! オーブ! オーブ! オーブ! オーブ! オーブ!」

 

 誰も彼もがオーブの名前を叫ぶ中、誰一人としてウズミやアスハの名を叫ぶ者はいない。そしてそれをウズミも他の氏族長達も当然だとして受け入れている。

 なぜならオーブ国民が尊び、崇拝し、敬愛し、心酔するのはオーブの理念だ。あくまで最上位に存在しているのは理念であって、ウズミではない。断じてない。

 

 すべてのオーブ国民はオーブの理念が宇宙の真理にして絶対のルールであることを、常に自分達の行動によって、すべての世界に証明しなければならない。

 その聖なる責務をもっともよく果たしているのがウズミであり、理念の体解者としての尊敬を集めているから、オーブの代表者たり得ているのだ。ウズミも多くの国民同様に理念の下に集った一人の人間であるのに変わりはない。

 誰もがオーブの名前を唱える。誰もがオーブの理念を叫ぶ。それはシン・アスカもマユ・アスカも同じだった。彼らもまた頭オーブなのだから。

 




今のオーブ国民はELSやバジュラのような群体生物に半ば化しているというわけですね。
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