タキカフェを書こうとしたらいつの間にかこうなった。
なぜだ?
「緊張」そして「恐怖」と「慣れ」
茶髪の癖っ毛をした男性―アグネスタキオンのトレーナーの今の状態を表すならばこのようになるだろう。隣にいる灰色の髪をセミロングのストレートにしている女性ーマンハッタンカフェのトレーナーとの間に流れる沈黙がそうさせている原因……ではなく、
その隣にいる黒い靄の塊が原因であった。カフェトレと談笑している間、人型に見えなくも無い「それ」から感じ取れる視線から耐えていたのだが、ぶっちゃけもう限界だった。
………はっきり言って、
「怖い」
「なんてこと言うんだタキトレ、お友達が悲しむでしょうが。」
『シクシク(チラッチラッ)、カナシイナァ、シクシク(チラッチラッ)』
「ほらぁ。」
「いや僕、初めましてなんですが???姿を認識するの初めてなんですが???」
『オッ、ヤットコッチヲミテクレタナ?』
「でも慣れてきたでしょ。」
『オイスルーカヨ』
「…どうしよう、否定できない。」
『マァ、オレカラシタラジリキデハッコウデキルタキトレノホウガコワインダガナァ。』
いったいどうして「お友達」と同席する事になったのか…。
「あら、タキトレじゃない。こんにちは。今日も昼ご飯渡しに行くの?」
「あぁ、こんにちはカフェトレさん。今弁当とレポートを渡しに行くところなんですよ。あなたも"あそこ"に?」
「えぇ、ブレンドについて教えてもらおうと思って。最近コーヒーにこだわりはじめたのよねー。……担当の影響かしらね。」
「まぁ、此処でトレーナーやってると大なり小なり影響受けますからね…専属だと特に。」
会話から察している人も多いだろうが、この二人はトレーナーである。
それもかの有名な「日本ウマ娘トレーニングセンター学園」…一般的に「中央」と呼ばれるところのトレーナーだ。
二人はそれぞれ「アグネスタキオン」と「マンハッタンカフェ」を担当つまるところ「専属トレーナー」として「トゥインクル・シリーズ」を駆け抜けてきた。
今日はトレーニングはお休みで、書類仕事も終わって暇になったので、タキトレは担当の弁当を作って担当に持っていくために、カフェトレは最近こだわり始めたというコーヒーについて聞きに行くために、旧理科実験室に向かっていたところであった。
(どこからか視線を感じる気がするが気のせいであろう。)
二人が旧理科実験室に到着してタキトレがドアをノックして、「タキオン、入るぞー。」と声をかけてドアを開けると
『こんにちは、タキトレさん、カフェトレさん。何か御用ですか?』
白いボディに白衣を纏った人間の女性のように見える人物がそう声をかけた。
「あぁ、こんにちはキュリーさん。タキオンに弁当を渡しにきたんだ。」
「こんにちは、キュリー。カフェに聞きたいことがあってきたの。」
彼女は『キュリー』。AIを搭載したアンドロイドであり、旧理科実験室の管理を行っている。タキオンが本格的にレースを行うとなった時に、化学薬品や何かしらの発明品等を管理してもらおうとタキトレが購入した。
今では旧理科実験室の管理をしてもらっている。
『アグネスタキオンさんとマンハッタンカフェさんなら今外出中ですね。…此処でお待ちになられてはどうでしょうか?』
「わかったわ、じゃあ私は此処で待つわよ。タキトレはどうするの?」
「うーん、どうしようか…【ピロン!】あっ、ちょうど連絡が来たな。えーっと?…うん、それなら僕も此処で待つことにしようか。」
タキトレの腕時計型の端末から空間投影された画面に
【弁当を持って来ているなら旧理科実験室で待っておいてくれよ、トレーナー君】
と表示された。
『お二人とも此処で待機するという事でよろしいでしょうか?』
「そうね。」 「そうだね。」
『では私は
そう言った後キュリーは壁際に移動し、待機状態になり動かなくなった。
「さて…待っている間何していようかな…」
「あ、それならさタキトレ。…ふ、二人でさ…お茶会でもしてみない?ほら、最近の担当の様子とか。…お互いさ、い、色々話したい事もあるんじゃない?」
と言ってカフェトレがタキトレを見つめる。
しばしの沈黙の後「…じゃあ、やりましょうか?お茶会。」とタキトレが言ったので
「やるわね?!ヨシ、じゃあ早速コーヒー入れてあげるわ。」
「いや、僕紅茶党なんで。」
「あら、コーヒー党じゃなかったかしら?」
「アハハハ…タキオンが紅茶ばっかり飲むから気付けば紅茶党になってまして。(苦笑)」
「クスクス……これも、"影響"かしらね。」
「フフッ…そうですね。」
と言った流れで二人でお茶会をすることになって、様々な事を話していた。話の内容は、やれ某不沈艦のトレーナーとその担当がまた何かやらかしただとか、先頭民族のトレーナーがまたトモを勝手に触って蹴られたのだ、といったものだが楽しく談笑していた。(途中から横に何かの気配…というより視線を感じながらではあったが)
ただ、まぁ、なんというか、どんな者でも流石に限界はある物でとうとうタキトレが耐えきれずに冒頭の言葉を発して現在に至る…という状態である。
「いや、自力での発光が怖いって…今更じゃありません?というか、僕を異常者みたいに言わないでくださいよ。僕からしたらこの科学成長期みたいな時代に幽霊とかがいる方が怖いですよ。むしろカフェトレさんは何であれだけ怪奇現象に巻き込まれて平然としてるんですか?」
「いや、慣れたし。トレセン内なら基本安全だし問題ないかなって。」
『イヤ、サラットサモ"ジブンハイッパンジンダ"ミタイナコトイッテンジャネェヨタキトレ。フツウヒトハジブンデハッコウデキネェノ。トイウカ、カフェトレハキノウトレセンナイデツレテイカレカケタダロウガ。モットキキカンモテヨ。』
「でも君がなんとかしたじゃんよ。」
「いや、昨日神隠しに遭いかけたんですか?!お友達の言うとおりもっと危機感持ってくださいよ?!」
「いや、
((そういう問題じゃないんだよなぁ))
幽霊と心の声がシンクロしたタキトレ。この男、なんだかんだ慣れて来ていた。
『テカサータキトレクンサー、チョットビビリスギジャナイ?オトモダチカナシインダケド?』
「いやいや初見でフレンドリーに接せたカフェトレが凄いんですよ…。僕そういうのと無縁な所からやってきたんですからね?」
「んー、あっそうか、そういえばタキトレ"月"出身だったけ?そりゃ縁もゆかりもないだろうねー。」
今から100年ほど前、人類はとうとう居住地を地球上のみではなく、月面上にも広げた。当時は宇宙空間由来の諸問題が多くあったそうだが、現在はそれらの問題はほとんど解決されている。しかしながらレースに関してはいまだ地球の方が一歩先んじている為、タキトレのように月から地球のトレセンにやってくる人やウマ娘も多いのだ。
閑話休題、月では怪奇現象というものが全くと言っていいほど起こらないのでタキトレはそういったことに慣れていないのだ。
『…ン?オイカフェトレ、"アレ"ニツイテハマダハナシテイナイノカ?ハナシテイナイナラサッサトハナシタラドウダ?』
「ちょ、ちょっとお友達さぁん?!な、流れってものがあるんだt「何か、あったんですか?僕でよければ力になりますよ。」ぉあうぅ。」
『サッサトイエヨジレッタイナァ。』
「え、えーっと、そのぉ。…あ、あのですね!そのぅ…こ、今度出かけませんか、その、二人きりで。」
「えっと…?」
「や、あの、その、深い意味はなくてですね。ほ、ほらシューズとか蹄鉄とかについて意見交換しようというだけでして。時間が空いている時で構いませんから。(早口)」
(コイツヒヨリヤガッタナ…スマートファルコントタイサナイダロ、コレ。)
「…わかりました。いつにしましょうか?」
「え、い、いいんですか?」
「ええ、もちろんで【ガラララッ!】「トレーナーくぅん!話の腰を折ってすまないが大事な話があるんだが、ちょっといいかね?」す。こらタキオン、ノックぐらいしなさい。」
「ああ、すまないねぇ。でもかなり重要な話があるんだ…できれば二人で話したいんだ。」
そう言って彼女、アグネスタキオンは振り向きざまに
「うーん、そこまで言うなら…。すみません、カフェトレさん。いつにするかはLANEで連絡しあいましょう。」
「は、はい。だいじょうぶです。」
「ではまた今度。」「ほらトレーナー君はーやーくー、時間は有限だぞぉう。」
「はいはい、今行くよ。」
【ガラララ】
「………………よ、ヨシ!よぉ~しっ、さ、誘えた…。誘えましたよぉー!」
『ヨカッタジャネーノ。』
『おめでとうございます。カフェトレさん。』
「…ええ、よかったですねトレーナーさん。最後にちょっと日和りましたが。」
そういって、物陰から一人のウマ娘が出てきた。彼女はマンハッタンカフェ。カフェトレの担当ウマ娘である。彼女はずっと隠れて自分のトレーナーがタキトレを誘えるのかどうかを見守っていたのだった。
そしてうすうす察している人もいるであろうが、はっきりといえば、カフェトレはタキトレに惚れているのである。そして今回タキトレをお出かけ(本人はデートの意識)に誘うために自分の担当、お友達、キュリー、そしてタキトレの担当であるアグネスタキオンに協力してもらって今回の機会をセッティングしてもらったのだ。廊下で鉢合わせたのも実は偶然ではなく、キュリーにタキトレの行動を予測してもらったうえで、お友達が逐一場所をしていたのだ。
さらに言えばキュリーは待機状態に移行したフリをしていたし、タキオンはドアの前でタイミングを図っていた。
要するに、「全員グル」というわけである。
「いやいやカフェちゃん。ちゃんとデートみたいにするから、安心してよ。ね?」
「(無言でじとぉとした目でトレーナーを見つめる)」
『マァイザトナッタラ、オレガジョゲンシテヤルヨ。』
「ほら、お友達もこう言ってるし。」
「…はぁ…わかりました。ではこっちに来てください。コーヒーのブレンドについて教えますから。」
「やったぁ。…ありがとね、カフェ。」
「…構いません。」
『これは"一件落着"ということでいいのでしょうか?お友達さん。』
『ソンナトコロダナ。ダイイチカンモントッパッテヤツダ。』
『上手く行くといいですね。』
『ソウダナ。』
タキトレ……この後、タキオンから割と大事(世界を激震させるよう)な話
をされた。お出かけ当日にカフェトレに「また出かけましょ
う。」と約束した。
カフェトレ……タキトレに惚れたトレーナー。当日はそれなりにオシャレ
をして行くが、ヘタれる。しかし、また出かける約束を取
り付けたので今度はちゃんとしたデートに誘おうと決意す
る。
お友達……カフェトレの共犯者その1。トレセン内でカフェとカフェトレ
の守り神みたいになっている。当日はカフェに状況報告しつつ
よってくる「悪いもの」を寄せ付けないようにしていた。
マンハッタンカフェ……共犯者その2。この後ブレンドについて教えた。
ついでにオシャレも教えた。当日お友達からの状
況報告で約束をまた出かける約束を取り付けたと
聞いて、「まあ、悪くないだろう。」となった。
アグネスタキオン……共犯者その3。タキトレとカフェトレの話が終わる
まで待っていた。待っている間に色々考えていた時
に「その時、ふと閃いた!」をした結果、世界を激
震させかねない理論を思いついた。当日はタキトレ
の手伝いを断って理論の証明をエアシャカールと行
っていた。
キュリー……共犯者その4。タキトレとカフェトレの話をコッソリ聞いて
いた。当日は旧理科実験室にタキオンが許可した人以外が入
らないようにしていた。