未来世界のトレセンの話   作:RBT E10

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 今更ですがこの小説内では人間とウマ娘は「」それ以外のものは『』で話しています。


うまさんぽウレシイ、ウレシイ…。




この後七不思議がまた一個増えたらしい

 夜。それは、古来より人ならざるものの時間とされてきた。夜の闇に人は神秘性と畏れを見出したのだろう。だが、今この時代に完全なる闇は殆ど存在しない。かつて生み出された電気の力は、夜に明かりをもたらした。

 されど夜は世界を変える。当たり前の場所を当たり前でなくしてしまう。神社や寺、公園に廃墟、昼と夜で見せる顔は全く違うだろう。それならば学校だって違う顔を見せるに決まっている。

 

 ジャラジャラとブリッジコンプもその違う顔を見せられている真っ最中である。

 

「うぅー。こ、怖いよジャラジャラちゃん。」

 

「夜の学校なんて怖いに決まってるでしょ。…にしても雰囲気が違い過ぎるわね。」

 

 何故彼女達が夜の学校に門限を破ってまで忍び込んでいるのか。理由は簡単、「忘れ物」。明日が期限となっている宿題を教室に忘れたのに気づいたのが19時半。立派に門限を過ぎているが、慌てたブリッジコンプが同室のジャラジャラに頼んで一緒に学校に忍び込んだ。

 

「ええっと、"ライトの球形"、"追尾"っと。…ほら、これで明るくなったでしょ?」

 

 ジャラジャラが手首の端末の画面を操作して懐中電灯程の明るさの光の球を発生させた。

 

「ありがとー!やっぱり明かりって偉大だよね。」

 

「そうね。」(毎度思うけどとんでもない技術よね、これ。…どうやってこんなことしてるのかしら?)

 

「よーし、教室に行ってちゃっちゃと忘れ物とって帰ろう!…寮長に見つかったら何言われるかわかんないし。」

 

「…そうね。急いで取りましょ。」

 

 二人はそう言ってその場から駆け出した。『ナニカ』の歪んだ視線に気づかずに…。

 

 タッタッタッと軽快な足跡が校舎に響く。

「ねぇ、コンプ。」

 

「どうしたの?ジャラジャラちゃん。」

 

「よくよく考えたら、教室って鍵閉まってるんじゃないの?」

 

 確かにその通り。普通ならば教室の鍵は閉まっているものだが、

 

「ふっふっふー。こんな事もあろうかと、私は教室の窓の鍵を開けておいたのだよ。」

 

…どうやら対策をとっていたらしい。ただ、ジャラジャラは

 

 (いや、警備の人が閉めるんじゃ…。)

と思っていた。

 その後、二人は教室の前に着いた。…ジャラジャラの懸念が杞憂で済んだかと言うと…

 

「とうちゃーく。後は教室に入って…あ、あれ?窓が開いてない。」

 

「どうしたの?」

 

「お、おかしい。帰る時に教室の窓は開けておいたはず。」

 

「やっぱり、閉まってる。大方、警備の人が閉めたんでしょ。」

 

「えぇー?!そんなぁ。」

 

 杞憂どころか大当たりだったようである。

 

「とにかく警備の人とか、たづなさんに見つかったら大変だし、早く戻るよ。」

 

「うぅー、仕方ないかぁ。」

 

 唸るブリッジコンプを連れて戻ろうとしたその時であった。

 

『コラ!そこで何をしている!門限はとっくに過ぎているんだぞ!』

 

「「うひゃあ?!」」

 

 かのジャングルなポケットやお祭り大好きなウマ娘に負けないほどの声が響いた。驚いた二人は思わず振り返って声の主を視界に収めた。

 

 軍人が羽織るようなコートの下には黄色をメインにした勝負服がのぞいている。そしてベリーのような色の()()()()()()()をもった目がこちらを「じろり」と睨んでいた。

 

 「バ、バイアリータークさん?!」 「ええー?!なんで?…なんでここに!?」

 

『それはこっちの台詞だ。…今が何時かわかっているのか?』

 

「えと、その、…あ、あああのわ、私たち…わ、忘れ物取りに来ただけでして…。」

 

「そ、そうです。…この子が宿題忘れちゃってて…。」

 

 それを聞いた彼女は目を少し細めた後、何か悩むようなそぶりを見せて『ハァーーー。』とため息を吐いた。そして『…今回だけだぞ。』と言って鍵穴に鍵の持ち手を当ててロックを解除し、鍵を差し込んで回した。

 

『忘れ物があるんだろう?ほら、とってくるといい。』

 

「え…いいんですか?」

 

『ああ、今回限りだ。二度はないからな。』

 

「あ、ありがとうございます!」

と言ってブリッジコンプは教室に入っていった。その間、彼女はこめかみに指を当て小さな声で何か話している。

 

『どうした?…なるほど。…そうか、報告感謝する。』

 

「あの…。」

 

『ん?どうした?』

 

「いえ、どうしてここに居るのかわからなくて。」

 

『…単純な話だ。見回りを行なっているんだ。…人員が足らんからな。』

 

「そうだったんですね。…ありがとうございます。」

 

『礼には及ばん。全てはお前たちがトレーニングに集中できるようにする為だ。』

 

 しばらくしてブリッジコンプがメモリを持って出てきた。

 

『次からは忘れないようにしろよ。何度も言うが今回だけだからな。』

と言いながら鍵を閉める。

 

「次は忘れませんから大丈夫ですよー。」

 

「コンプ、次は帰る前にちゃんと確認しなさいよ?」

 

「はーい。」

 

『門まで送る。離れるなよ。』

 

そうして歩き出した時だった、

 

『貴様ら何をしているんだ!門限はとっくに過ぎているんだぞ!』

 

前から一人のウマ娘がやってきた。そのウマ娘を見て二人は驚愕し、一人は顔を険しくさせた。なぜならそこに居たのは、

 

「「エアグルーヴ副会長/先輩?!」」

 

であったからだ。

 

「え?え?な、なんでここに…?」

 

『はぁ、貴様ら…。生徒会として自主的に見回りをしているんだ。』

 

「そうだったんです

   『学園上層部は生徒による自主的な見回りを許可していない。』ね。…え?」

 

『誰だお前は?それはエアグルーヴの真似のつもりか?』

 

 その場にいた二人は驚愕した。なぜなら目の前にいるのはどこからどう見ても「生徒会副会長エアグルーヴ」なのだ。これを聞いて驚かないトレセン生などいるわけがないだろう。

 

『バイアリータークさん…何をおっしゃっているのですか?私は紛れもなくエアグルーブですが…?』

 

『白を切るか…。今向かっている?そうか、音が鳴ったら来てくれ。…いいだろう。では、その正体を暴いてやる。』

 

 そういって彼女はコートの中に右手を入れ、そこから右手を引き抜いた。そこには真っ黒な拳銃*1が握られていた。普段日本ではお目にかかれないようなものを目にして驚愕する二人を横目にバイアリータークは何の迷いもよどみもなくその引き金を引いた。

 

 銃声、轟音、破砕音が同時に鳴った。『ガアアッ?!』と"それ"は崩れ落ちる。ブリッジコンプとジャラジャラの顔が驚愕と恐怖に染まる。

 そこに居たのは怪物。弾が当たったであろう部分からドス黒い液体を流し、巨大な双眸を此方に向けて頰の端まで広がった口をガチガチとならしていた。

 

『アァアァ…ナンデワカッタ?()()()()()()()()()()()()()()()!』

 

『こっちだ!走れ!』

 

 動けないブリッジコンプとジャラジャラの手を引いてバイアリータークが廊下を走っていく。同時に正面から黒い風が吹いた。

 

「報告感謝する。後はこっちに任せろ。」

 

『頼んだぞ、副理事長。』 

 

 風が怪物に飛び掛かりその動きを抑える。その間に三名は廊下を走っていった。

…‥…‥……………………………………………………………………………

 

 気付けば二人は寮の玄関にいた。どうやってバイアリータークと別れたのか、どうやってここまで戻ってきたのか覚えていなかった。寮長のヒシアマゾンはその様子を見て、門限破りに関しては注意に留めて「今日はもう休みな。」と声をかけた。部屋に入ってもあの怪物のことがチラついた。宿題に手がつくはずもなく、二人とも一言も喋らずそのまま眠った。…そこまできて漸く「「なんとか戻ってきたのだ。」」と実感できた。

 

 

 翌日の午後のトレーニングの時間、二人は軽いアップを行っていた。

『ふむ、順調そうだな。』

 バイアリータークがその()()()()を持った瞳をこちらに向けていた。

 

「あっバイアリータークさん。こんにちは。」「こんにちは。」

 

『今日は軽めのものにするとトレーナーが言っていたが…体調管理には気をつけろ。不調の状態でトレーニングをしたとしても得られるものは少ないからな。』

 

「ありがとうございます。…あのー」

 

『ん?なんだブリッジコンプ、どうかしたのか?』

 

「昨日は助けてくれてありがとうございます!」

 

「私からも、お礼を言わせてください。」

 

『!?ちょっ、ちょっと待て。どう言う事だ?私は昨日お前たちに何かお礼を言われるようなことはしていないと思うが…?』

 

「「………えっ?」」

 

 お礼を言った二人だが、相手から「覚えがない」と言われて困惑した。いったいどうゆう事であろうか。

 

「い、いやいや何言ってるんですかバイアリータークさん。じょ、冗談言わないでくださいよ。」

 

「そうそうそうですよ。昨日の夜かっこよく助けてくれたじゃないですか。」

 

『……?何を言ってるんだ?昨日の夜?その頃にはゴドルとダーレと共にデータの整理を行なっていたはずだが?』

 

あの夜確かに私たちはバイアリータークさんに助けてもらったはずだ。彼女が忘れてしまったということは?…それは雷が直撃するよりも確率が低いことであるし、何より彼女はAIなのだ。忘れるなんてあるは…ず…が…。

 

 では、では、では、あの時助けてくれた『バイアリ―ターク』は、一体何者なのだろうか?

 

 そこまで考えた二人は顔を真っ青に染め上げた。

 

『どうした?顔色が悪いが?』

 

「あ、あの!私達ちょっと気分悪くなったので戻りますね!」

 

「ト、トレーナーさんには私達が伝えますから。」

 

『ムッ、そうか。わかった。気をつけるんだぞ。』

 

「「は、はーい。」」

 

 二人はトレーナーに昨夜の夜の事を伝えて今日一杯はトレーニングを休むことにしたそうだ…。

*1
イメージはサイコパスのアレ




ブリッジコンプ……今回の被害者その1。忘れ物取りに行っただけでどうしてこんな目に合ったのか、これがわからない。今日もジャラジャラと一緒に眠る。

ジャラジャラ……今回の被害者その2。めちゃめちゃ怖かったので、夜トイレに行くのが怖くなった。今日はブリッジコンプと一緒に眠ることにする。

バイアリーターク……間接的な被害者。みんな大好きウマの鬼軍曹。上記の二人から身に覚えのないことで感謝されて困惑した。この後ダーレーアラビアンとゴドルフィンバルブに相談した。

副理事長……前回に引き続き登場。謎の声を瞬殺した張本人。残業していた理事長うと、たづなさんを迎えに行く途中だった。怪物はあの後一秒もないうちに八つ裂きにした。

怪物……とりあえず見かけたエアグルーヴに変身し、忘れ物を取りに来た二人を襲って取って代わろうとした。徐々にこの学園にいる全員を食らってやろうと思っていたら、ラスボスが飛んできた。
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