ゆったりと頑張って行きたいと思います。
あと、ライダーが出てくるのはもう少し後になりそうなのでご了承下さいませ。
というわけで第一話、どうぞ!
Chapter1
真夜中の工場地帯。
人気もなく静まり返ったその場所で、一人の女性が一心不乱に逃げ惑っていた。
派手になり過ぎないようにまとめた身なりをかなぐり捨てて走る彼女の表情には明らかな疲労が見て取れた。
どうしてこんな事に。
もつれそうになる足を必死に動かしながら、彼女は数十分前の出来事を思い出していた。
●●●●
今日は恋人との大切な記念日。
日中はショッピングを楽しみ、夜は以前から気になっていた高級フレンチでディナー。
店を出たあとこれまでの思い出を語り合いながら、二人の愛の巣へと歩みを進める。
その道中、不意に恋人が立ち止まった。
「実はね、今日…これを渡したくて、君を誘ったんだ」
そう言った彼の手の中にはシンプルなデザインのケース。
それを開けると、中にはダイヤをあしらったシンプルなデザインの指輪が入っていた。
思わぬサプライズに自然と目に涙が浮かぶ。
彼はその涙をそっと拭うと、真剣な眼差しを向けて、告げる。
「僕と、結婚してください」
その言葉に笑顔を浮かべながら、返事を出そうして──。
「………え?」
一瞬。
何が起きたのか分からなかった。
結婚の返事を出そうとした瞬間、彼の姿が消えたのだ。
混乱した頭のまま、彼が引き摺り込まれた路地裏に足を向ける。向けてしまう。
そこで目にしたのは。
四肢を折りたたまれて事切れた彼と、それを抱えてこちらをじっと見つめる八本腕の異形だった。
●●●●
「なんで…っ!どうして……っ!」
目が合った瞬間、一目散に逃げ出した。
アレは駄目だ。逃げなければ次は自分の番だ。
生き残るための本能が、彼女を動かした。
それから数十分。
異形から逃げるために、彼女は走り続けた。
助けを呼ぼうにも、携帯が入ったバック落としたのか、どこにも見当たらない。
そうして折れそうになる心を押し殺しながら逃げ続けて、とある廃工場の奥地に彼女は足を踏み入れた。
息を整えながら背後を見るが、異形の姿は何処にもなかった。
逃げ切れた。
そう自覚した瞬間身体中の力が抜け、その場にうずくまってしまった。
大切な恋人の、事切れた無惨な姿を目にしてしまい、心はとうの昔に限界を超えていた。
これからどうしようと途方に暮れて、彼女はふと気づく。
ぽたり、ぽたりと何かが滴っている。
不審に思い徐に視線を上に上げて
『ミ ツ、ケ タ』
彼女の意識はそこで途切れた。
●●●●
天条市。
都内から少し離れた場所にあるその新興都市は今ひとつの問題を抱えていた。
正体不明の怪物が人々を襲うという事件が多発していたのだ。
政府はこれに対処するため、特異敵性体対策課──通称『特敵対』──を設立。
様々な部門のエキスパートである彼等は、怪物に対抗する為に、日夜調査を行っているのだ──!
「………っていう事なんだけどね?」
「…は、はぁ」
天条警察署内の会議室。
御子柴誠実はスクリーンで紹介映像らしきものを見ながら気の抜けた返事を出してしまう。
唐突に目の前にいる署長に呼び出されたと思えば、説明も無しに謎の紹介ムービーを見せられたのだ。
そうなってしまうのも仕方ない、と思いたい。
「あの、なぜこれを自分に…?」
「あぁ、そういえば言ってなかったね」
訳もわからず質問する誠実を見ながら、署長は更にとんでも無いことを口にした。
「君、ここに異動して貰いたいんだよね」
「………はい!?」