仮面ライダーガルム   作:眼鏡侍

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お待たせ致しました。

ようやっと変身です!


Chapter4

 

警官に案内を受けた紘人達は、廃工場の奥に位置する一番大きな建物へと辿り着いた。

入り口の扉は閉め切られており、その前に多くの警官が立っているのが見える。

 

その中の一人、壮年の男が千和を目にすると近くにいた部下であろう男を連れ歩いてきた。

 

「どうも先生、ご苦労様です」

「安森さん、先生はやめてください…この建物の中ですか?」

「ですね。我々もまだ実際には見ちゃいないんですが…通報した作業員の様子からして、当たりなんじゃないかと」

「分かりました。ではここから我々も操作に参加させて頂くということで…」

「ええ、構いませんよ。『餅は餅屋』、先生方の方がわかることも多いでしょうし…お前さんもいるから心強いよ、御子柴」

 

そういうと壮年の刑事──安森忠雄(やすもりただお)は誠実の方を向き笑みを浮かべる。

誠実も困ったように苦笑を浮かべ目を逸らしながら答える。

 

「忠さん、いつも言ってますけど買い被りすぎですって。自分なんかまだまだです」

「そうかあ?確かに捜査一課(ウチ)に来たばかりの時みたいなギラつきは無くなっちゃいるが──」

「その話もやめてくださいって!?何回その話を……紘人君?」

 

慌てた様子で話を遮る誠実を尻目に、紘人はさっさと建物の方へと歩いていく。

その様子に千和はため息をつきながら紘人の後をついていった。

待ってくれよ!?と慌てて二人を追う誠実を後ろから眺めながら安森はからからと笑う。

 

「いやあ、誠実も相変わらずだったが…あの兄ちゃんの無愛想っぷりも変わらないねえ。ありゃ誠実も苦労するぞぉ」

「あの…気になってたんですけど、彼は何者なんですか?刑事にも、研究者とも違うようですけど」

「ああ、そういやお前さんも会うのは初めてなんだっけなあ」

 

部下の問いかけに対して安森はいつもより少しばかり鋭い視線を紘人に向け、答える。

 

「あれは言うなれば…特敵対最大の『武器』…ってところだろうな」

 

●●●●

 

御子柴誠実はかつて捜査一課に所属していた男である。

犯罪の捜査に尽力し、時には凶悪犯の恐ろしい本性を目の当たりにしたこともある。

 

だから、たとえ相手が怪物であろうと動じるようなことはするまい──そう思っていた。

 

だが、たとえそう心構えていても。

 

「なん…だ、これ」

()()()()()()()()()()()()()()()を見た瞬間、少なからず思考が停止してしまった。 

 

大きさはおそらく大人一人はすっぽりと入る程。

よく見れば繭は一つだけではなく、等間隔に数個吊り下げられているのが見える。

 

呆然とする誠実や警官達。

しかし千和はそれを無視して手にしたノートパソコンを起動、紘人は繭の真下へと歩いていく。

 

「数は6…当たりでしょうけど、念の為に採取しておいた方がいいわね」

「当たりって、何が…?」

「行方不明になった人は、これまでに6人。そしてここにある繭も6個…ここまで言えば、分かりますかね?」

「いや、そんな…まさかそんなことが」

「あり得るのがアニマトゥルムの恐ろしい所です。御子柴さん、アタッシュケースの中にあるカメラを取ってもらえますか?」

 

言われた通りアタッシュケース──ハウンドトランサーが入ってるものとは別──を取り出す。

見た目はハンディカムのカメラではあるが、かなり大型で、本体に鍵穴が付いている。

 

本来カメラにあるはずのないものを怪訝そうに見ながら千和に渡すと、彼女はそれを受け取りながら懐から一本の鍵を取り出した。

 

メカニカルな見た目でブレード部分に回路図のようなものが刻まれたそれを、千和はカメラの鍵穴へ差し込む。

 

『Transform』

 

するとカメラがひとりでに変形、鷹のような形状となり繭へと飛び立つ。

 

「あれは…?」

「『ホークフォトテイカー』。特敵対の捜査用デバイスです」

 

鷹となったカメラ、『ホークフォトテイカー』は繭の周囲を飛び回ると、足に当たる部位で繭の一部を採取、千和の元へ戻ってくる。

千和はそれを容器に入れるとパソコンとホークフォトテイカーをケーブルで繋ぐ。

 

「咲耶君、今データを送ったから解析お願いできる?」

『了解…です。すぐに済むと思うんで、周辺の調査をお願い、します…』

「了解。御子柴さんは紘人と調査をお願いします」

 

刑事達も捜査を始める中、誠実は未だ繭の下に立つ紘人の元へ駆け寄る。

瞳を閉じ集中してる様子の彼を不思議そうに見ていると、不意に誠実の方へ向き口を開いた。

 

「来てるな」

「来てる?…って、何が?」

 

「犯人」

 

紘人が呟くと同時、入り口の方から警官達の悲鳴が響く。

何事かと振り返ると、視線の先に警官に掴み掛かる異形の姿があった。

 

細身の体を黒い体表で身を包み、両手の先から鋭い爪が生えている。

胸部左側、心臓に当たる部分には鍵穴のような紋様が刻まれている。

しかしそれ以上に目を引くのは、背中から伸びる三対の腕と人間とはかけ離れた頭部。

目は前面から側頭部にかけて四個ずつ、計八個揃うように配置されており、顎には強靭な牙が生え揃う。

 

まるで蜘蛛の様なその異形は唸り声を上げながら、警官達を睨みつける。

中には異形に向けて発砲している者もいるが、効果がないのか意に介した様子はない。

一触即発の空気の中、千和はそれに構わずにパソコンで何かの数値を打ち込んでいる。

 

「ほぼ確定ですね。この繭、蜘蛛の糸に似た成分で構成されています」

「蜘蛛?じゃあもしかして…」

『だと、思います…。蜘蛛型…名付けるならアニマトゥルム・スパイダー…でしょうか』

 

異形…『A(アニマトゥルム)・スパイダー』は千和…正確には彼女が調べている繭の一部を目にするとわなわなと体を震わせ始める。

 

『お、マエ…!僕、の宝、箱を…!!』

「喋った!?」

『イィィィィィィァァァ!』

 

金切り声を上げながら千和へと飛び掛かる。

突然の行動に周囲の警官達は虚をつかれ行動が遅れてしまう。

 

誠実も千和を守ろうと腰のホルスターからハウンドトランサーを取り出す。

しかし誠実のいる位置から撃てば誤射してしまう危険性がある。

そう判断して咄嗟に駆け出すが、どう見てもA・スパイダーの方が早く届く。

 

『死ィィィィィィァァァ!!!』

 

その鋭い爪が千和の眼前に迫り──。

 

『ィィィギャッ!?』

鋭い衝撃音と共にA・スパイダーが吹き飛ばされた。

 

「……え?」

 

一瞬。

何が起こったのか理解ができなかった。

瞬きをした瞬間、吹き飛ばされた異形。

そして視線の先。

そこに居たのは、脚を振り抜いた体勢で立つ紘人だった。

 

「おい、少しは逃げるなりなんなりしろ」

「問題無し。紘人ならあの程度の距離余裕でしょ?」

「いつか死んでも知らねえぞ」

 

さも当然の様に会話する紘人と千和。

その光景に目を疑う。

 

(いやおかしいだろ…!?いつの間にあんな場所に!?)

 

先程まで彼は誠実の隣に立っていた筈。

明らかに走ってどうこうなる距離ではなかった。

あまりの衝撃に動けないでいると、蹴り飛ばされたA・スパイダーが起き上がり再び唸り声を上げる。

 

『紘人さん、対象侵食率、13%、です…。今のうちに制圧を…』

『ドライバーも整備してあるから問題なく使えるよ!あ、でも武器はまだ使えないからそのつもりでね!』

「了解」

 

パソコンから聞こえる姉弟の声に答えると、懐からバックルの様なデバイスを取り出した。

 

灰色を基調とした本体、前面に鉄格子の様なパーツが取り付けられ、上側面には鍵穴が備え付けられている。

それを腰に押し当てると両側面から鎖状のエネルギーが伸び、ベルトを形成した。

 

『JAIL DRIVER』

 

バックル『ジェイルドライバー』から音声が流れるのを確認した紘人はベルト部分に備え付けられたキーケースから一本の鍵を取り出した。

 

『ォ前もソレを…!オれと同じナノカ!?』

「テメェと一緒にするな」

 

取り出した鍵の持ち手部分には鎖に繋がれた狼のレリーフが施され、ブレードには先程誠実が見た鍵と同じ様に回路が刻まれていた。

そしてそのままレリーフの裏側にあるスイッチを押し込む。

 

『WOLF!!』

 

音声が流れ回路が微かに点滅した後、ジェイルウォッチの液晶部分に鍵のブレードをかざした。

 

『WOLF!!Sand-by!!』

 

瞬間、ドライバーから生物の鼓動の様な待機音が響き渡る。

同時にブレード部分の回路の輝きが強くなり紘人の後方へと集まり徐々に形作った。

 

それは牢獄に囚われた狼。

四肢を鎖で繋がれ、牙を剥き出しにして眼前の異形を睨みつける。

 

紘人は怯むA・スパイダーを見据えながら鍵、『アニマキー』を突きつけ、静かにあるワードを口にした。

 

 

「変身」

 

 

アニマキーをドライバーの鍵穴へと装填し、そのまま90度捻る。

 

『Unlock!!』

 

レリーフが正面を向き、ドライバー前面のパーツが左右に開くようにスライドする。

すると後方の牢獄がドライバーと連動して解放、四肢の鎖も外れた事で、中にいた狼が牢獄から飛び出し、前方にいた紘人と重なり合う。

 

そして、さらに変化が起きた。

 

紘人の全身は黒を基調としたアンダースーツで覆われ、周囲に灰色のメタリックな装甲が漂う。

それが足元から順に装着されていき、最後に頭部に狼を模した仮面が形成される。

仮面が装着されると同時に、瞳のパーツが赤く輝いた。

 

『Fang the hunting!Armament WOLF!!』

 

「あれは、一体……!?」

「ガルム」

「ガ、ガルム…?」

 

その光景に圧倒された誠実が呟くと、いつの間にかそばに来ていた千和が呟く。

 

「あれが私達特敵対の切り札。アニマキーを用いる事でアニマトゥルムと同様の力を得る、特殊戦闘用スーツ…コードネーム『ガルム』です」

 

調子を確かめるように腕を回した後、紘人…否、ガルムは腰を落とし構えを取る。

そして眼前の獲物を見据え──静かに宣言した。

 

「狩りの時間だ」




感想お待ちしております。

戦闘シーンもお楽しみに!
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