「いや〜! アッハッハッハッハッ! 昨日は面白かったよなぁ〜!」
次の日の昼休み頃、俺の隣で普段よりも機嫌よく大爆笑で並んでる庵。昨日からずっとこの様子だ。
どうやら庵はスターリーの店内にいたようで、鼻血の後始末や謝罪などをしてくれていたらしい。それからバンド好きなことから話がコロコロと転がり、チームは違えど話題が合う点から楽しく会話していたようだ。
もちろん気絶から戻った時に全力で俺も謝った。
深く深く謝罪した。
そして予定通り来週からバイト入りなのでそれまでの数日間は時間が空く訳だが…………
「血が無くなりすぎて蓮太が青白くなってきたのは流石に……」
「死にかけてんじゃん」
「笑ったな!」
「殺す気か!」
ったく……コイツは本当に。
「まぁでも良かったじゃん! 大好きな音に囲まれる場所でバイトできてさ!」
「そうだけどよ……」
「いつかトラウマを克服して……今度は蓮太が音を出す方に……」
「なんか言ったか?」
「ううん、別に」
なんて会話をしながら適当に歩いていると、見慣れない男が駆け足で手を振りながらこちらにやってくる姿が見えてくる。
知らない男だ……庵関係の人か?
「庵〜!」
やっぱりか。
「あ! なっちゃん! そんなに急いでどうしたんだよ」
「今朝話したスケットの事なんだけど……見つかった!?」
「その件なら……ほら! ここに!」
……ん? 今朝のスケットの件? どういう事だ?
しかも庵は自慢げに俺の肩をバンバンと叩いてアピールをする。
「君がそうだったのか! 今日はよろしくね!!」
「んぁ?」
つい変な声が出てしまった。でもそうだろう? 唐突に今日はよろしく! とか会ったこともない人に言われたら……
誰だってそんな反応になるよね?
「おいちょっと待て、俺は何も聞いてねぇぞ」
「だって何も言ってないからね」
さも当然のように言い返す庵の脇腹に指銃をぶち込みながら状況を整理するために声をかける。
「説明」
「ぎ……今日バスケ部が練習試合の予定らしかったんだけど、別件とダブってて選手が見つからないらしくてででででで!!! 痛い!!」
「見つからない?」
そんな疑問をぶつけていると、目の前の男は細くするかのように分かりやすく説明してくれた。
「そうなんだよ……2.3年生は別件で居ないし1年生は人数は少ないしで困ってて……もちろん俺たちがメインで出るけど、力の差がさ……」
「そりゃわかるけどさ……結局外部の俺に頼っても仕方ないんじゃないの?」
「“力の差”を否定しないってことは、やっぱりまだ自信があるんだな! 元エースさん!」
「っせぇな」
庵の煽りを適当に躱しながら、その子から続いて説明を聞く。
対戦相手はウチよりも高い成績を残している高校。バスケの名門って訳じゃないが単純に実力で差がついてしまっている感じだ。
そして今回は特殊な例として、ウチ。つまり秀華高校チームはフルチームを構成するために男女混合で参戦ということ。足りない人数は2人分らしいが、男子枠で1人、女子枠で1人探しているのだという。
女子の方は1人心当たりがあったようですぐに確保できた様子だったが……男子はなかなか捕まらずって所に庵が連絡を入れたらしい。
力の差がとあの子は言っていたが、問題なのはそこじゃなくチームが正式に組めないところが気になっていたのだろう。
こんな即席チームじゃバスケ部の1年生チームよりも息が合わずにバラバラ、まともな結果にならないことは目に見えている。
きっと頭数が欲しかったんだ。
バスケは体力の消耗が激しい。人がいるだけで数分の休憩もできるし、控えに人がいることで圧力を少しでもかけられる。
それなら別に試合に出る必要はなさそうだし……バイトも来週から。それに元バスケ経験者だからか少し気になったりもしている。
「まぁ……別にいいよ」
「本当!? それじゃあ放課後になったらすぐに体育館集合で! 作戦とか打ち合わせするから!!」
俺がその件を承諾すると、スマホ片手に嵐のように去っていった。
「にしてもこんな偶然でまたバスケに絡む日が来るなんてな」
「だよな〜」
「オレも今日見に行くよ。久しぶりに蓮太のバスケ見たいしさ」
「練習しろ練習。バンドの」
と、そんなこんなでひょんなことから放課後にバスケ部にお邪魔することになった俺。
この時はまだ深くは考えていなかった。
最後のピースと巡り会うことになるとは。
…………
……
……
そして放課後、俺はのらりくらりと体育館にお邪魔する。
扉をガラッと開けると、既に何人かはユニフォームに着替えており、シュート練習をしていたりアップを始めていた。
「…………」
うん。フォームはぎこちないし腰がしっかりと落ちていない。それに明らかに練習試合とはいえ、試合前にする運動量を超えていたりしてる人もいる。
それなりに緊張しているんだろうが……確かにこの様子だとスケットが欲しくなる気持ちもわかるかな。
なんて考えていると、背後から初めて聞く可愛い声が聞こえてきた。
「あの〜、バスケ部の人……じゃないわよね? あ! もしかして助っ人の人?」
「ん?」
その声に反応するように振り返ると、そこには天使のように微笑む美人さんが立っていた。
「え? あ、まぁ……うん。頼まれて来たんだけど……部員の方?」
「ううん、私も助っ人に頼まれてきたの。それじゃああなたなのね! もう1人の頼もしい助っ人って!」
なんか話が盛られてませんかね?
ちょっと怖いんですけど。
「頼もしいかどうかはわかんないけどね。とりあえず打ち合わせしないとどうにも……」
「それなら中に入って2階に部室があるわ! 一緒に行きましょ!」
どこまでも明るい声。伊地知さんとはまた違った元気の良さがある子だ。
赤い髪から香る良い匂いは彼女の魅力をより引き立てているようにも感じる。
見た目が可愛くてスケットに呼ばれるくらいには運動もできる。この人はモテるだろうなぁ
そんな感想を抱きながら彼女について行っていると、部室にたどり着く。中は何人かがホワイトボードに色々と書き込んでおり、真剣な面持ちで話し合っていた。
「みんな! 来たよ!」
赤い髪の子が挨拶をすると、わさわさと部員たちが反応し始める。
「あ! 喜多ちゃん! それに竹内さんだよね!? 来てくれてありがとう!」
へぇ……この子は喜多ちゃんって言われてるのか。
「2人が来てくれて助かったよ……それじゃあはい! 早速だけどこれに着替えてね!」
そうして渡されるのはこのチームのユニフォームであろう服。秀華の文字が書かれている真っ赤な服だ。
これあの漫画のパクリでは?
そして赤い髪の子とほぼ同時にそのユニフォームを広げると……驚くべき番号の物が渡されていた。
秀華高校「4」番。
4番……4番!?!?
「4番!? なんで俺が……ってこの子も!?」
「なんでって……スタメンだから?」
何を言ってるんだ? この人……部外者の人間にわざわざこの番号を渡すか!?
きっと彼女もビックリしているに違いない……と思って横を向くと……
「一緒に頑張りましょうね!!」
✨✨キターン✨✨
と目を星のように輝かせて興奮している姿が見に写った。