インフィニット・ファイター   作:神無鴇人

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格闘ISについて追記。

・丹田エンジン効果により、機体は登場者は気とシンクロし、ISスーツの着用の必要が無く、寧ろ普段から着慣れた服や道着・コスチュームの方がよりシンクロしやすい。


Round3 セシリアvs真耶

「ん・・・ぁ・・・負けちゃったか・・・」

 

「お、気が付いたか?」

 

第一試合後、一夏と箒に担がれながら運ばれていた鈴音は目を覚まし、自分の状況に敗北を自覚する。

 

「詰め、ミスったなぁ・・・アレが、肝だったわ」

 

「そうだな。だけど、良い攻めだったぜ。まことも『耐え切れるかは賭けだった』って言ってたぞ」

 

「まことからの伝言だ。『また戦ろうや!次もウチが勝つけどな』だってさ」

 

気落ちする鈴音に二人から告げられる対戦相手からの言葉。

その言葉に鈴音は好戦的な笑みを浮かべる。

 

「上等よ・・・!次はこうはいかないんだから・・・!!」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

『間も無く、第2試合を行います』

 

第1試合の興奮も冷めない中、アリーナでは観客達が次の試合を今か今かと待ち侘びていた。

 

『試合前にお知らせします。

前試合でのハイレベルな戦いを鑑みて、実況席には各試合毎に2席の解説者枠を急遽設けさせて頂く事になりました。

まずは、元IS世界大会モンド・グロッソ初代優勝者にして本校の基礎操縦講師、織斑千冬先生!!』

 

『よろしく頼む。格闘技はそこそこの知識程度だが、元IS操縦者としてしっかり解説に努めるつもりだ』

 

『『『おぉ〜〜〜〜っ!』』』

 

薫子の隣に座る千冬に観客席から感嘆の声や黄色い声が上がる。

落ちぶれたとはいえかつて世界王者にまで上り詰めた千冬の存在感はやはり大きく、ファンも多いようだ。

 

「ふん、あんな負け犬ブリュンヒルデなんて呼んでんじゃないわよ・・・」

 

一方で千冬に対してアンチ感情を抱く者もいるようで、そう言った者達は冷ややかな視線を向けている。

 

『そして、もう一人はこの人!世界的に有名なプロレス団体【H.W.A(ヒュージ・レスリング・アーミー)】の若手花形レスラー!第3試合にも出場予定のシャルロット・デュノア!!』

 

『どーも♪』

 

『『『キャアアァァ!!シャルロットォ〜〜ッ!!』』』

 

『『『シャルロット様ぁ〜〜っ!俺(私)をぶん投げてください〜〜っ!!』』』

 

こちらは千冬以上に黄色い悲鳴の嵐である。

中にはヤバい事をほざく連中もいるが・・・。

 

『以上の2名を加えて実況をお送りします。

なお、解説者は試合毎に交代していただく予定ですので、観客の皆様はこの後の試合の解説者にも期待していてください。

では!いよいよ第二試合!まずは東ゲートをご覧ください!!』

 

薫子の宣言と共に会場の照明が落とされ、東ゲートにスポットライトが当たり、同時にスピーカーからは壮大なオーケストラが流れ、その選手が姿を現した。

 

『イギリスの女子ボクシング界の新星!セシリア・オルコット!!』

 

長い髪を束ね、青のグローブを手に嵌め、金の装飾が施されたボクシング用のフィットネスウェアを纏いながら、セシリアは優雅に入場する。

 

『う、美しいです・・・!これから始まるのが殴り合いだという事を忘れてしまいそうな程、気品に溢れています!!

しかし、その闘志は間違い無く本物!傍には専属メイド兼トレーナーのチェルシー・ブランケット氏を従え、そして!その右肩にはかつてイギリスで行われた【U-18・女子ボクシング無差別級】で優勝した際に獲得したチャンピオンベルトが抱えられております!!』

 

興奮気味に捲し立てる薫子のアナウンスと優雅に歩くセシリアの姿にイギリスからの留学組や女子ボクシング部の一団とセシリアのファン達の歓声が鳴り響く。

 

『それに対するは、この人!!』

 

続いて西側ゲートにスポットが当てられ、和太鼓の豪快な音色と共にその選手・・・否、力士が姿を現した。

 

『現役力士にして横綱以上の実力者と名高い相撲ファイター、幕張大関・エドモンド本田の弟子!

その実力は織斑先生をして現役時代の自分より上と言わしめたお墨付き!

誰が呼んだか、【IS界の横綱】!

日の下開山!1年1組担任・山田真耶だぁーーっ!!』

 

女子相撲用の廻しを着用し、更には筆文字で『江戸紋』と書かれた化粧廻しを身に着け、普段の幼さの残る温厚さとは打って変わり闘志溢れる真剣な眼光を携えて山田真耶が威風堂々と入場。

こちらも相撲部や応援団から歓声が上がるが、真耶は静かに腰を落として一度両腕を広げ、『パァン!』と大きな音を立てて両の手を打った。

 

『あぁっ!これは、土俵入り!?土俵入りですよね!?』

 

『ああ。今の山田教諭は教師ではない。立派な力士・・・“ちからびと”だ。

差し詰め、真耶関の土俵入りと言った所だな』

 

千冬の解説を他所に、真耶は大きく息を吸いながら片脚を上げ、180度近く開脚し、天に足を向けて一度目を閉じ、そして・・・

 

「よいしょぉーーっ!!」

 

振り上げた脚を鉄槌の如く振り下ろし、大地に打ちつけた!!

 

『うわわっ!・・・・・・え?』

 

その迫力にその勢いに、そしてその衝撃に薫子は思わず間抜けな声を上げてしまう。

 

「い、今・・・揺れた?」

 

「ゆ、揺れた・・・よね?」

 

観客達もどよめく。

真耶の渾身の四股踏みの威力と衝撃は地を、音を伝わり観客席に響いたのだ。

 

「ふ、ふふふ・・・素晴らしいですわ・・・!チェルシー、ベルトを」

 

「は、はい!」

 

真耶の四股踏みに触発され、セシリアは好戦的な笑みを抑えきれず、ベルトをチェルシーに預けて静かにアリーナの壁へと歩いていく。

 

「ふぅ・・・ダアアァァーーーーッ!!」

 

一呼吸置いてから雄叫びを上げ、壁に向かって放たれる左ストレート。

その凄まじい威力に壁は音を立てて大きくひび割れる。

 

『嘘ぉっ!?か、壁・・・壁が割れて、あれ相当頑丈な筈よね!?』

 

『改めて見ると、凄いな・・・。あの歳で全盛期の私を超えるパンチ力とは・・・。

一夏で見慣れた筈だが、やはり少し悔しいな・・・』

 

『良いパンチしてるねぇ!ナックルパートとかやらせたら絶対映えるよ!!』

 

三者三様の反応を見せる解説席。

それを他所にアリーナに立つ2人の闘士は笑みを浮かべて見つめ合う。

 

「さすが英国チャンプ・・・アナタと立ち会えるなんて、光栄です」

 

「それは私もですわ。日本の国技たる相撲のファイト・・・戦えるこの時を心待ちにしておりました」

 

『両者、アリーナ中央に!

第2戦 セシリア・オルコット VS 山田真耶  始め!!』

 

試合開始のゴングと同時に二人は静かに構えを取る。

セシリアはボクシングにおけるサウスポースタイル、真耶は仕切りの構えだ。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

眼光鋭く睨み合う両者。

誰もが固唾を飲んで見守る中、数秒程置いてからその時は来た。

 

「どっせぇいっ!!」

 

「フンッ!」

 

同時に突進、同時に放たれた張り手とストレート。

それぞれの一撃が交差し、互いの顔面を捉えたその刹那、会場内に鈍い音が鳴り響いた。

 

『いきなり二人ともフルパワーで一撃か・・・!』

 

解説席に座る千冬が一言、そう呟く。

それとほぼ同時に真耶、セシリア共に弾かれるように後退り、ふらつきながらも互いに体勢を整える。

 

『両者、一撃目は相討ちか!?』

 

『違うね・・・さすがチャンプ。防御テクも高いよ。

あの勢いの張り手にスリッピング・アウェイとはね・・・』

 

 

 

「流石ですね。今の張り手、完全に入ったと思ったんですけど・・・」

 

称賛の言葉を口にしながら、真耶は口の中に溜まった血を乱暴に吐き出す。

 

「そちらこそ、私の一撃を、急所は避けたとはいえ顔面に受けたというのに、ノックアウトには程遠い・・・。

ボクサーとしては悔しいですが、パワーでは分が悪い・・・だから、小細工を使わせて頂きましたわ」

 

一方でセシリアの方も口の端から流した血を腕で拭っている。

流血量で言えば真耶ほどではないが、その額には冷や汗が流れていた。

 

 

 

『りょ、両者いきなり流血です!

量で言えば山田先生の方がダメージは多そうですが・・・。

あ、あの!織斑先生にシャルロットさん!さっきシャルロットさんの言ってたスリッピング何とかって、一体?』

 

『スリッピング・アウェイ。ボクシングの高等技術だよ』

 

『確か、相手の攻撃に合わせて相手の攻撃と同等以上の速度で打たれる方向に顔を回転させる・・・だったか?」

 

『そう。その結果山田先生の張り手は、顔面に当たりはするけど直撃はせず、セシリアの顔面を滑るだけ・・・という事になるんだ。

とはいえ、それで軽減してもあの威力とダメージ・・・まともに顎にでも喰らったらヤバいよ・・・』

 

 

 

実況席と観客達の盛り上がりを他所に、再び距離を取った二人であったが、ここでセシリアが動いた。

 

「パワーや破壊力で勝負するのは不利のようですわ。ですので・・・」

 

そこまで言って一旦言葉を区切り、セシリアは構えを少し変え、脚をピョンピョンと軽く跳ねさせステップを踏むような体勢を取る。

 

「スピードで勝負しますわ!!」

 

言うが否や軽やかなフットワークと共に真耶目掛けてセシリアが一気に駆け寄る!

 

「っ!?」

 

一瞬にして距離を詰めるセシリアに、真耶は咄嗟に張り手を繰り出すが・・・

 

「遅い!」

 

それを見越していたかのようにセシリアはバックステップで一歩後ろに下がり、真耶の張り手は空を切る。

 

「っ!?」

 

空振りで出来た隙をセシリアは見逃さず、再度踏み込み真耶の顔面に右フックを叩き込む!

 

「うぐっ!!」

 

「踊って貰いますわ!!」

 

軽快なフットワークで逆サイドに回り込むセシリア。

そこから追撃となるボディブローが真耶を穿つ!!

 

「ガハッ!!」

 

「まだまだぁっ!!」

 

だが、まだ終わらない。

巧みな足捌きで真耶の周囲を舞うように動いては続け様に三発、四発と連続して真耶にパンチを見舞う。

その華麗な動きと素早さはまるで蝶が舞っているかのような姿だ。

 

 

 

『は、早くも出ました!セシリア選手の誇る必殺技!ダンス&スティング!!

蝶のように舞い、蜂のように刺す!かの伝説のボクサー、モハメド・アリの名言をそのまま体現した技!!山田先生!成す術無しかぁっ!?」

 

 

 

「あ、ぐ・・・!」

 

薫子の実況が表すように殴られ続ける真耶。

その顔には次々と傷が刻まれ、血で濡れ、瞬く間に腫れあがっていく。

 

「これで、トドメ!!」

 

一気呵成に攻め立て、渾身の左ストレートを繰り出すセシリア。

だが、ここで真耶の目は大きく見開かれた。

 

「どすこぉいっ!!」

 

繰り出された拳に向かい、気合いの声と共に真耶は自ら頭を突き出し、セシリアの左拳を自らの額で迎え撃った!!

 

 

 

『ず、頭突きぃ!?頭突きでカウンター!?』

 

 

 

「ぐぅぅっ・・・!て、手が痺れて・・・!?」

 

「額って、思いの外硬いんですよ・・・!今度はこっちの番です!!」

 

血塗れになった顔に獰猛な笑みを浮かべ真耶は試合開始時にも見せた仕切りの構えを取る。

 

「はっけよい・・・のこったぁっ!!」

 

気合いの掛け声と共に真耶は突撃。

その突進の速度はセシリアのスピードにも引けは取らない。

 

「望むところですわ!!」

 

セシリアもこれに応戦する構えを取る。

その姿に真耶はニヤリと笑みをより深くし、同時に体勢を一気に低くした。

 

 

 

『出た!ボクサー殺しの常套手段!足元を狙ったロータックル!!』

 

 

 

「あいにく、それは対策済ですわ!!」

 

だが、それを読んでいたセシリアが一手早く動き、右腕を大きく振りかぶる。

 

「ムーンアッパー!!」

 

繰り出されたのは超低空アッパー。

三日月の如き弧を描く軌道の拳が真耶の顎を捉えた!!

 

「ぐうぅぅぅっ!!・・・待って、ましたよ。この時を!!」

 

だが、真耶は倒れない!

真耶もセシリアの動きを読んでいた。そして、同時に打たれる覚悟をしていたのである。

 

「打たれる覚悟をした力士は・・・絶対に倒れない!!」

 

「しまっ・・・!?」

 

そして自身の顎を打ったセシリアの腕を掴み、一気に引き寄せて胴を掴み・・・

 

「どっせぇぇいっ!!!!」

 

渾身の力を込めて締め上げた!!

 

「ガアァァァッ!!?」

 

セシリアの口から大きな悲鳴が上がる。

背骨がギシギシと音を立てて軋む程の剛力・・・いや、それをも超えた怪力がセシリアの身体を締め上げているのだ。

 

「だあぁぁーーーーっ!!」

 

セシリアの意識が激痛により逸れたその刹那、不意に腕を胴から離し、真耶の手はセシリアの頭を掴み、この試合二度目となる頭突きをぶち込んだ!!

 

「ガハッ!?」

 

鼻っ柱に頭突きを喰らい、鼻血を飛び散らせて仰け反るセシリア。

そこに真耶の振り上げられた張り手が迫る。

 

「どすこいどすこいどすこぉーーいっ!!!!」

 

繰り出されるは張り手の猛連打。

張り手の弾幕とも言うべきそれはセシリアを打ちのめしていく。

 

「ぐ・・・あ・・・!!」

 

張り手の猛打を受け、グロッキーとなったセシリアを真耶は再度掴み、引き寄せる。

 

・ ・ ・

 

「がっぷり四つ・・・主導権は完全に山田先生に移ったな」

 

「・・・これは、決まりだ!」

 

控え室にいるメンバー全員が、この時確信に満ちた表情を浮かべた。

 

・ ・ ・

 

「全身全霊を懸けて、ぶん投げる!!どっ、せぇぇぇぇいっ!!!!」

 

雄叫びと共に真耶はセシリアの股下に脚を差し込み投げの構えを取る。

 

 

 

『あ、あれは櫓投げ!?』

 

『違うね。あれは櫓投げの範疇に収まらない・・・!』

 

シャルロットもまた確信めいた表情で興奮したように笑う。

真耶の繰り出す、その技は・・・

 

 

 

「大!櫓投げぇぇっ!!!!」

 

大櫓投げ・・・その名が示す通り、櫓投げの構えの体勢から高く飛び上がり、上空から一気にセシリアを地面に叩きつけた!!

 

「く・・・ぁ・・・」

 

大地に強かに叩きつけられ、崩れ落ちるセシリアの身体。

やがてセシリアの意識が失われると同時に、ISが解除された。

 

「ふぅ・・・ごっつぁんです!」

 

『試合終了!!勝者、山田真耶!!』

 

セシリアの姿を見届けた後、真耶は息を整え一礼。

徹頭徹尾力士としてのスタイルを貫く真耶の姿を讃えるかのようにアナウンスが真耶の勝利を宣言し、観客席から拍手喝采が鳴り響いた。

 

 

 

『大相撲強し!!恐るべし横綱、山田真耶ぁっ!!』

 

『黛、落ち着け。興奮するのは分かるが唾が飛んで・・・ん?』

 

唾が飛ぶ程に興奮して叫ぶ薫子。

その横で千冬は不意に気付く。シャルロットのある異変に・・・

 

「フフフ・・・凄いなぁ。

1試合目と言い、この試合と言い・・・急いでメイクしてこないと・・・!!」

 

不適な笑みを浮かべて放送席を後にするシャルロット。

その姿に千冬は次の試合も荒れそうな予感を感じた。

 

 

 

・ ・ ・

 

 

 

「・・・お見事です。力士の強さ、文字通り痛感しましたわ」

 

拍手喝采に包まれる中、セシリアは目を開き、ふらつきながらも起き上がって真耶に向き合う。

 

「ダウンすら取れなかったなんて、師匠以外では初めてですわ。

悔しいですけど、完敗ですわ」

 

「痛感したのは私も同じです。正直、何度意識が飛びそうになった事か・・・」

 

相手の勝利を讃えるセシリアに対し、真耶は苦笑いを浮かべながら手を差し出す。

 

「いつかまた戦いましょう。今度は、どっちもより強くなって・・・!」

 

「勿論ですわ。その時は、必ずリベンジさせて頂きます。

次こそは私のこのパンチでどんなものでも砕いてみせますわ!!

その日まで、今日の敗北は忘れません。Great yokozuna teacher Yamada(偉大なる横綱、山田先生)

 

お互いの強さを認め合い、がっしりと握手を交わす二人。

まだ見ぬ再戦に胸を躍らせながら・・・。

 

 

 

 

 

 

・ ・ ・

 

 

 

 

 

「ラウラ選手、次の試合の準備を・・・うわっ!?」

 

試合が控えたラウラの下を訪れた係員は思わず声を上げる。

控え室内のラウラは坐禅を組みながら宙に浮いていたのだ。

ISも無しに、生身でである。

 

「いよいよだな・・・あの試合を見て、向こうも滾っている感情をヒシヒシと感じる。

・・・相手にとって不足無しだ!!」

 

第3試合の時は刻一刻と近付いている・・・。




激闘続くエキシビションマッチ。
第3試合はラウラvsシャルロット。

変幻自在同士の戦いは、見る者に何を魅せるのか?

次回『Round4 ラウラvsシャルロット』

ラウラ「見せてやる。ヨガの神秘、その一端を」

シャルロット「僕のプロレスは単なるショービジネスじゃないよ!」
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