インフィニット・ファイター   作:神無鴇人

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学園入学はもう少し先になります。
まずは一夏中学生編から。

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二人の黒帯闘士

時は少々遡り、季節は真冬の12月。

 

ブリュンヒルデの凋落と呼ばれた第二回モンドグロッソから数年後。

世は未だ空前の格闘技ブームが続いていた!!

 

かつてムエタイ帝王・サガットの見せた圧倒的な強さに魅せられた者達は、皆その強さに憧れ、自らもあの強さの領域をとばかりに己を鍛えた。

ムエタイのみならず空手、プロレス、相撲、ボクシング、テコンドー、柔道、合気道、カポエラ、マーシャルアーツ、截拳道、中国拳法、棒術etc・・・

あらゆる格闘技が沸き立っていた。

 

そして、現在・・・

日本・武道館で行われている無差別の異種格闘大会。

そこに波乱を巻き起こす一人の少年がいた!!

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「どうした柔道家?掴ませてやってるんだぜ。投げてみな」

 

「グッ・・・!この!このぉっ!!」

 

対戦相手の女性柔道家に襟首を掴まれながらも一切動じず、逆に挑発する余裕を見せる少年。

女性の方は投げ技を極めようと試みるも少年の身体は鉄塊の如く動かない。

 

「投げ方がなってねぇな。本当の投げ技はこういうのを言うんだ!」

 

「っ、キャアァァァッ!!」

 

逆に少年は相手の身体を掴み、後方に回転しつつ巴投げを繰り出し、場外まで放り投げてしまった!!

 

「ァ・・・ゥ・・・」

 

「失神及び場外!勝者・織斑一夏!!」

 

高らかに勝利宣言が為されたその少年、かつてサガットに敗れた初代ブリュンヒルデこと織斑千冬の弟にして、世界最強を目指す黒帯の格闘少年・織斑一夏。

 

『こ、このような展開を、いったい誰が予想したでありましょうか!?

全国高校生異種格闘技選手権、その決勝進出者が特別推薦枠の中学生など、まさにジャイアントキリング!!』

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「どいつもこいつも、何てザマよ!?あんな中学生、それも男に負けるなんて!!」

 

決勝戦を30分後に控える中、選手控室にてここまでただ一人を除いて全員敗退した高知県のとあるスポーツ名門校の空手部が集まり、その顧問教師が怒声を上げながら一夏に敗北した部員達を叱責していた。

どうやらこの顧問、現在では少なくなったが、IS発展期に社会問題になった女尊男卑主義者らしい。

そんな男性蔑視の者からすれば、歳下の男に負けた部員など到底許せるものではないのは容易に想像が付く。

 

「だ、だけど先生!アイツはとんでとない強さで・・・。

現にさっきも去年の柔道インターハイ優勝の谷村さんも負けちゃったし」

 

「うるさい!口答えするな!!」

 

部員の抗議に早くも手を振り上げる顧問。

しかし、その手が振り下ろされる事は無かった。

 

「えい加減にしぃや、見っともない。

格闘技に男も女も無い。負けたがはあの中坊のがおまんらより強いきじゃ」

 

「り、竜胆・・・!」

 

顧問の腕を掴んで静止する土佐弁の少女・・・空手部が誇るエースにして、一夏と同じく決勝進出者・竜胆まことだ。

 

「おまんも自分の実力よりアイツの方が強いがは気付いちゅーはずじゃ。

そんな様で偉そうな事言うな」

 

「くっ!だったらアンタはあいつに勝てるっていうの!?」

 

「そがな事は知らん。

やけんど、そのこの大会に出ちゅー面子じゃ、アイツに勝てる可能性があるがはうちだけやね。

同世代でアイツと互角に渡り合えそうな奴なんて、うちも数えるぐらいしか知らん。

ほんじゃけんど・・・」

 

一瞬の沈黙の後、不意にまことはテーブルの上に置かれたコーラの瓶に近づき、

 

「チェストォッ!!」

 

そのコーラ瓶目掛けて手刀を放ち、手刀を受けた瓶の上部3分の1がまるで日本刀で斬られたように分断された。

 

「んぐっ、んぐっ・・・ぷはぁ〜〜〜〜っ!!」

 

泡を立てるコーラを豪快に飲み干し、まことは鋭い目つきで顧問を含めた空手部員達を睨みつけた。

 

「おまんら、うちとアイツの試合をよう見ちょけ!世界一を目指すってのがどういうものかをな!!」

 

腰に巻いた黒帯を締め直し、まことは控室を後にした。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「準備良いか?」

 

「ああ、いつでも来な」

 

一方で、別の控室・・・。

推薦校や他校の選手が見守る中、もう一人の決勝進出者・織斑一夏は、友人兼セコンドの五反田弾が支えるキックミットの前に仁王立ちして呼吸を整え、身構える。

 

「・・・」

 

数秒程の沈黙が場を支配し、ギャラリーが固唾を飲んだ直後、一夏は動いた。

 

「セアァッ!!」

 

「うおぉっ!?」

 

気合いと共に放たれた一夏の蹴りが弾の持つミットに叩き込まれる。

凄まじい衝撃音が部屋に響くと同時に、構えていた弾もろともミットが吹っ飛ばされ、壁へと転がっていった。

 

「痛って〜〜っ!また威力上がったんじゃねぇのか?気合い入りすぎだろ?」

 

「すまん。けど、次の相手は気を抜いて勝てる相手じゃないからな」

 

壁にぶつけた背中を摩りながら立ち上がる弾に、一夏は謝罪の言葉を口にしつつ眼を細めて真剣な表情を浮かべる。

 

「す、凄いキック力・・・」

 

「セコンドの奴も凄ぇよ。前にトレーニングした時はウチのレスリング部員3人でミット押さえたのに、全員耐えきれずにぶっ飛んだんだぜ・・・。

それを一人で受けて転がるだけで済むなんてよぉ・・・」

 

「今年の推薦枠はとんだ化け物だな。でもこれなら・・・」

 

「ああ。勝てるかもしれんぞ、あの竜胆まことに!」

 

それを眺めていたギャラリー達も期待の目で二人を見つめる。

 

対戦相手の竜胆まこと。

かつて土佐最大の名門と呼ばれた空手道場『竜胆館』。

先代である父を亡くし、一度は没落したものの、その娘であるまことは女子高生の身でありながら世界各地を渡り歩いて腕を磨き、道場の名を知らしめて見事道場を立て直した逸話を持つ、日本でも有数の空手家だ。

そんな一般人から見れば雲の上の存在でもあるまことを前にしてもなお、勝機を見出せるほど一夏の醸し出す雰囲気は強烈だったのだ。

 

「織斑選手、試合開始10分前です。会場の方までお願いします」

 

「応!」

 

係員の案内に応じ、一夏は道着の帯を締め直し、愛用の青の道着に袖を通し、意気揚々と会場へと歩き出した。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「試合前に改めて確認します。

ルールは事前申告したもの以外の武器の使用及び、過剰な攻撃や急所への執拗な攻撃などの危険行為は禁止。

それ以外は打撃・投げ・関節技、いかなる攻撃も認めます。

よろしいですね?」

 

試合場に上がった一夏とまこと。

二人は審判からの忠告を兼ねた説明に頷き、互いに睨み合うように見つめ合う。

 

「一夏言うたな?おまんの顔知っちゅうぜよ。

昔ムエタイの帝王に姉貴やられて挑みかかっていった奴やね?

テレビで見てたぜよ」

 

「そいつはまた、恥ずかしい事思い出させてくれるなぁ・・・」

 

少し困惑しつつ恥ずかしそうに頭を掻く一夏。

そんな一夏にまことは笑みを浮かべて頭を横に振る。

 

「何言いゆーがじゃ?あんな達人相手に挑みかかれるらぁて、大した度胸じゃ。

おんしみたいな強い奴と戦えるだけで、この大会に出た甲斐があったちもんじゃ。

正直、こがなつまらん大会より、もっと自由な所で戦いたかったねや」

 

「・・・そう言うなよ。

俺たちは格闘家だ。格闘技続けていれば何度でも戦う機会がある」

 

「それもそうじゃ。

なら、今日はその前哨戦や」

 

互いに好戦的に笑い合いながら、それぞれ構えを取り、臨戦態勢に入る。

 

「前哨戦だからって負ける気は無いぜ!行くぞ!!」

 

「そりゃこっちの台詞じゃ!こじゃんときいや!!」

 

 

 

決勝戦、開始・・・!!




まことの苗字は道場の名前からそのまま取りました。
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