インフィニット・ファイター   作:神無鴇人

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今回独自設定多いです。


愛する女と我が子へ

『全国高校生異種格闘技選手権、

優勝者・織斑一夏!!準優勝・竜胆まこと!!』

 

大会も表彰式を迎え、受け取ったメダルを首にかけ、トロフィーを手に持った一夏。

そして一夏と死闘を繰り広げたまことに観客席から惜しみない拍手が送られ、大会は無事に盛況のまま終わりを迎えた。

 

 

 

「チッ!男が優勝なんて生意気なのよ・・・!」

 

しかし、そんな一夏の優勝を快く思わぬ者達・・・先程控室で一夏に負けた者達を怒鳴りつけていた教師を始めとした女尊主義の女達は忌々しげに表彰台の一夏を睨み付ける。

 

「良い!?アイツが控室に戻ってきたら全員で袋叩きよ!

当然アイツに負けた竜胆も同罪よ!!」

 

『はい!』

 

15人ほどの人数を集めて一夏とまことを狙ってリンチにかけようと企む女達。だが・・・

 

「ケッ!やっぱり下らねえ事企んでやがったな!」

 

「っ!?」

 

そんな悪党達の前にボイスレコーダー片手に侮蔑の視線を向けて悪態を吐く男が現れる・・・一夏のセコンドを務めた少年・五反田弾である。

 

「あ、アンタは・・・アイツのセコンド!?何で私達の事を!?」

 

「私が教えたんです!」

 

通路の影からまことと同じ空手部所属の女子生徒が姿を現す。

 

「随分良い生徒に恵まれてるなアンタ。このねーちゃんが教えてくれたお陰ですぐ対処できたぜ」

 

「せ、先生!こんな事やめて下さい!負けたからって袋叩きにするなんて間違ってる!私はこんな事のために空手をやってるんじゃないのに!!」

 

「ふ、ふざけんな!この裏切り者!!アンタ達も纏めて片付けてやる!!」

 

女子生徒の訴えも虚しく顧問教師は唾を撒き散らしながら喚き、弾の持つボイスレコーダーを奪おうと襲いかかる。

 

「取りつく島も無しか。おい、レコーダー持っててくれ。あと、証言頼むぜ!!」

 

襲いかかる顧問教師の拳を軽々と避け、逆に弾のアッパーカットが炸裂する!!

 

「ウガアァッ!!」

 

「どっからでもかかって来やがれ!クソ野郎共!!」

 

中指を立てて啖呵を切る弾に、他の襲撃者達が一斉に飛びかかる。

 

「面白そうな事やってるな。私も混ぜてもらおうか?」

 

そして、もう一人・・・ある乱入者も加わり、控室はより乱戦となっていく。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「おい、外れた肩大丈夫か?」

 

表彰式を終え、控室に戻ろうとする一夏を先程まで戦っていたまことが声を掛けて呼び止める。

 

「ああ、嵌め直す時はめっちゃ痛かったけど、もう元通りだ。

そっちこそ、顎は大丈夫か?」

 

「大丈夫、言いたいけんど、しばらくは湿布が手放せそうにないねや。

えい一撃やった。ウチの完敗じゃ。

今回はウチの負けだけんど、次はこうは行かんぞ。

次に戦う時は全力でおまんに勝っちゃる!」

 

「へへっ、今度はお互い全力全開で戦ろうぜ!もちろん負ける気は無いがな!」

 

快活に笑い合う一夏とまこと。

今回の戦い、二人は全力でぶつかったが、決して全開ではなかった。

この大会のルール上、お互いにルールに抵触して使えぬ技・・・延いては切り札を出せない戦いだった。

それらを出し切らない内は決して決着とは言えない・・・それが格闘家としての不文律だ。

 

「それにしたち、さっきの昇龍拳・・・やったか?

もしかしておまんの師匠、リュウって男か?」

 

「いや、俺の師匠は・・・ん?」

 

控室を目前にして、一夏とまことの足が止まった。

 

「敵意は感じないが、誰かいるな」

 

「・・・ああ、強そうながが二人。他にも何人かいるけんど、殆ど倒れちゅーぜよ」

 

「事後って訳か・・・って事は」

 

目を細めながら二人は意を決してドアを開け、控室へと入った。

 

「お、戻って来たか?お疲れ」

 

最初に目に入ったのは一夏のセコンド、五反田弾。

無様にやられ、ボロボロになった襲撃犯達を尻目に椅子に腰掛けて一息吐くようにドリンク片手に二人を出迎えた。

 

「ウチの空手部の顧問とその腰巾着やないか。どうなっちゅーんじゃ?」

 

「アンタの所の顧問だったのか?悪いな、コイツら一夏もアンタも纏めてフクロにしようとしてたから、勝手にお仕置きさせて貰った。

ちゃんと証人もいるぜ。なぁ、ねーちゃん」

 

「は、はい・・・」

 

部屋の片隅では密告した空手部員がボイスレコーダーを手に、若干震えながら立っていた。

その様子にまことは呆れたようにため息を吐く。

元々顧問教師の女尊男卑思考やそれに同調する一部生徒とは馬が合わず気に食わないと思っていたが、それがこんな卑劣な行為にまで手を出すとは、同じ空手部員として情けなく思う。

挙げ句の果てにターゲットですらない男に返り討ちなのだから目も当てられない。

 

「弾一人で片付けたのか?」

 

「そのつもりだったが、コイツが手伝ってくれてな。お陰で早く片付いた」

 

弾の指差した先・・・一夏達から死角になっているロッカーの影にいた一人の少女が姿を見せる。

 

「あ!お前は・・・」

 

「久しぶりだな。一夏、まこと・・・」

 

その少女・篠ノ之箒は一夏とまことを見て二人に笑いかけた。

 

「「箒!?・・・ん?」」

 

思わず声を揃えて驚く二人。

だが、直後に怪訝な表情で顔を見合わせる。

 

「何じゃ一夏、箒と知り合いか?」

 

「ああ、幼馴染だ・・・。

まことの方こそ箒の事知ってるのか?」

 

「まぁな。2、3年前にウチの道場に武者修行で挑戦しに来たがじゃ。

あん時はギリギリでウチが勝ったけどな」

 

意外な所で縁のあった共通の知人に呆気に取られる二人だが、箒は悪戯が成功したように笑い、わざとらしく咳払いして二人の注目を自分に向ける。

 

「久しぶりだな、二人とも。さっきの戦い観せて貰ったぞ。

姉さんから聞いた通り、大した強さだ。見てるこっちまで滾ってくる程にな。

だからこそ少し残念だ。こんなママゴトルールの大会でなければ、もっとすごい戦いが見れたと思うとな」

 

「そりゃウチらも思うちゅー事やけんど、おまんの事や、そがな事だけ言いにわざわざ来た訳やないろ?」

 

「まぁな。もっとも、用があるのは私ではなく姉さんと師匠の方だが」

 

「そういう事♪やっほー、いっくん。久しぶり、って言っても二、三ヶ月程度だけど」

 

「ワシの方は初めましてだな。拙僧の名は烈と申す。

束と箒の大叔父だ。破門された身だが昔は少林寺拳法の師範をやっていた縁で、今は箒を鍛えてやっている」

 

箒の言葉に追従するように入室する二人の人物。

箒の姉・篠ノ之束。

そして箒の師匠にして、篠ノ之姉妹の大叔父にあたる男・烈である。

 

「今日来たのは、この前会った時に話したIS学園への入学についてだよ。機体が完成したからその報告」

 

「IS学園って、一夏は男だぞ!?」

 

束の口から出た単語に、弾は思わず声を上げる。

 

「これはもうすぐ公表する予定の事だけど、実は今ISの男女共用化及び格闘家の専用ISを開発してて、漸くその目処が立った所なんだよ。

いっくんにはそのサンプルとしてIS学園に入学してもらう予定なのだ♪」

 

「加えて、姉さんは各国の有望な若手格闘家をスカウトして、格闘ISの乗り手になって貰っている。私もその一人だ。

そして今回はまこと、お前の事もスカウトしに来たんだ」

 

「へ?ウチをか!?」

 

箒から名指しで呼ばれ、まことは素っ頓狂な声を上げる。

 

「勿論♪いっくんや箒ちゃんと渡り合える逸材だもん。逃さない手は無いっしょ。

それに、君にIS学園から徒手格闘と空手部の特別講師の誘いが来てるのは知ってるよ。

金銭面での報酬は勿論、これから世界中から有望な面子集まる予定だから対戦相手にも困らない。悪い話じゃないと思うけど?」

 

「ISに興味はなかったけんど、確かに悪い話やないのぉ。考えちょいちゃるよ」

 

束の言葉にまことはまだ若干戸惑い気味ながらも、どこか乗り気な返事を返す。

 

「それから、いっくんのセコンドの・・・弾君だっけ?君もなかなか強そうだし、良ければ6月あたりに男子の編入試験をやる予定だから、受けてみなよ。

さっきの腕っぷしならほぼ間違い無く合格出来るし、合格すれば特待生で学費はほぼ免除だからさ♪」

 

「ま、マジか!?う、受けます!絶対受けます!!」

 

こちらはほぼ即答。

その様子に束は満足げに笑みを浮かべる。

 

「いっくんの方は、2月頃に機体の最終調整に付き合って貰いたいから、その報告。

あと、良いお知らせ。世界中回って有望そうな同世代の子探したけど、結構強そうな子、多く見つかったよ」

 

束の言葉に一夏の目元がピクリと動く。

 

「へぇ・・・そんなに強いんですか?」

 

「そりゃ勿論。今のいっくんと比較しても遜色ない程にね。

最近スカウトした子だと、まずいっくんの師匠の母国アメリカは勿論、欧州はイギリスとフランス、アジアはインド、南米はブラジル、そしてこの日本!

探せばいるもんだねぇ・・・。どう?ワクワクする?ワクワクしてきた?」

 

「そりゃ・・・文句無しの最高じゃないですか!」

 

最早隠す事も出来ない満面の笑みを浮かべ、一夏の・・・いや、一夏だけではなくまこと、箒、弾までもが闘志を剥き出しにして悦ぶ。

強者との戦いが楽しみで楽しみで仕方がないと、言葉にせずとも分かる程、その笑みは雄弁に彼らの心を代弁していた。

 

「・・・おい、喜んでる所悪いが、そろそろ騒ぎを聞きつけて人が来るんじゃねえのか?」

 

そんな一夏達に割って入る烈の一言に4人は現実に引き戻される。

忘れていたが周りは弾と箒にボコボコにされた女尊男卑主義者の山。

このままでは色々と面倒な事になるのは明白だ。

 

「あ!そうだった・・・。

一夏、お前は千冬さん達を待たせてるんだから先に帰れよ。

こっちの対応は俺に任せろ。証拠も証人も十分なんだから、すぐ片付けてやるよ」

 

「なら、ウチも残るわ。こがな連中でも同じ空手部じゃ。後始末ぐらいせんとな」

 

「束さんも手伝うよ。負の遺産を野放しにしたくないしね。

箒ちゃんと烈じーさんはいっくんにまだ話が少し残ってるだろうから、いっくんと一緒に行って」

 

こうして、その場は解散となり一夏は烈、箒と共にその場を後にして帰路に着いたのだった。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「試合で見せたあの昇龍拳・・・なかなか見事だったぜ」

 

会場を抜けて一先ず近場の公園で荷物を整理する中、不意に烈が口を開いた。

 

「だが、まだまだヌシの師匠・・・ケン・マスターズにゃ及ばねえな」

 

「師匠を知ってるんですか!?」

 

思わぬ所で出てきた師匠の名に大きく反応する一夏。

そんな様子に烈はニヤリと笑う。

ケン・マスターズ・・・一夏の師匠にして、全米格闘王として名を轟かせるアメリカの格闘家にして、世界有数の財閥・マスターズ財団の重役でもある男だ。

 

「まぁな、昔戦った間柄よ。

と言っても、ワシの場合ヌシの師匠よりもその同門・リュウとの交流が深いがな。

そのリュウが今もなおライバルと呼んでいるヌシの師匠・・・リュウと互角と見積もったとして、ヌシの昇龍拳を遥かに上回る技のキレよ。

ヌシはそれを超える事を目指すと聞くが、壁は途轍もなくデカイぞ?」

 

「でしょうね・・・でも、だからこそ、目指し甲斐がある!!」

 

師の大きさを聞き、それでも萎えず衰えない一夏の闘志。

そんな様子に烈は大口を開けて豪快に笑う。

 

「カッカッカッ!!意気が良いじゃあねえか!!

それでこそ格闘家ってもんよ!箒、お前の幼馴染は良いライバルになるぞ!!」

 

ベンチに座っていた箒に目を向け、彼女を鼓舞する烈。

箒は静かに立ち上がって一夏へと近づく。

 

「今日は久しぶりに会えて良かった。

来年の4月を楽しみにしてるぞ。戦う時は、容赦なく勝ちに行かせて貰うがな」

 

「ああ、俺もそのつもりだ。

それにしても、剣道一筋だったお前が少林寺拳法とはな・・・」

 

「色々あってな。剣道とは訣別した。

だが、それ以上に得るものは大きかったと思っている。

一夏の方こそ、大変なのだろう。その・・・千冬さんと、例の子の事」

 

箒の言葉に一夏は表情を僅かに曇らせる。

 

「知ってたのか?いや、束さんが近くにいるなら当たり前か」

 

「まぁな。・・・正直言いたい事は色々あった。

文句も、恨み言も・・・だが、千冬さんとの件があるから、守る者を得たからこそ、今の強い一夏が・・・好敵手が在る。

そう思ったら、逆に何を言えば良いか分からなくなってしまった。

だから言いたい事は、後から正々堂々と拳で語る事にさせてもらう。覚悟しておけよ!」

 

「・・・ああ!」

 

箒からの激に応えるように一夏は右拳を突き出し、箒も右拳を突き出して軽くぶつけ合ったのだった。

 

「それじゃ、今日はこれでお開きだ。千冬さんによろしくな」

 

「ああ!また4月に会おうぜ!!」

 

再会の約束と共に、一夏は自宅への帰路に着いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、我慢し過ぎだぜ。失恋したってのによ・・・」

 

一夏の姿が見えなくなったのを確認し、烈は箒の頭に手を置いた。

 

「・・・」

 

「よく泣かずに我慢したな。偉いぞ・・・」

 

「・・・う・・・うぅっ・・・・・・!!」

 

優しく頭を撫でる烈に、箒は堪えていたものが溢れるかのように目から大粒の涙を流す。

 

「片想いだって、私からの一方通行だって事は・・・分かってるんです。

でも・・・それでも・・・私が最初に好きになったんだ・・・!

だけど・・・一夏には、もう・・・う、うぅぅぅっ!」

 

「好きなだけ泣きな。ココにゃ誰もおらん。

ワシも、見なかった事にしてやらあ。だから気の済むまで泣くと良い・・・」

 

「師匠、お爺ちゃん・・・」

 

「しっかり泣いて、踏ん切り付けな。そうすりゃお前はもっと強くなれらぁ」

 

「はい・・・!!」

 

箒は泣いた。

失恋の悲しみを流すために。

そして、明日にはより強くなるために・・・。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

箒達と別れて数時間後、一夏は自宅へと戻っていた。

 

「ただいまー!」

 

「おかえり、一夏」

 

「うーあー」

 

そんな一夏をエプロン姿の女性が赤ん坊を抱きかかえながら出迎える。

 

「ただいま。千冬、(しゅん)

 

自身を出迎えた女性と赤ん坊を愛しげに優しく抱きしめ、一夏は赤ん坊を撫で、女性の唇に口付ける。

 

女性の名は織斑千冬。

かつて世界最強(ブリュンヒルデ)と呼ばれながらも、格闘家・サガットに敗北して凋落したISパイロットであり、一夏の姉・・・そして現在は妻でもある女性。

 

そして彼女が抱える赤子の名は織斑春(おりむらしゅん)

一夏と千冬の間に産まれた男児である。




本作におけるSFキャラ設定・その1

まこと
初出はⅢ3rd。
本作でのオリジナル要素として苗字は道場名からそのまま取って竜胆(りんどう)と設定している。年齢は一夏より3歳年上。
父の没後、一度は没落した実家の道場『竜胆館』を復興させるため、武者修行を兼ねてⅣでの格闘大会に参加し、格闘家にして功夫映画スターのフェイロンと対戦し、名を上げた。
その後も世界中の強者と戦って地道に竜胆館の名を知らしめ、見事道場を復活させた。
現在は門下生も集まり、祖父と共に師範として道場を切り盛りしているが、IS学園から格闘技の指導員としてスカウトされている。



初出は初代。
元は少林寺拳法の師範を務めていたが、禁止された私闘を繰り返したため破門された過去を持つ。
束と箒の父方の大叔父で、要人保護プログラムで各地で転校を繰り返させられた事で精神的に荒れて揉め事を何度も起こした箒の今後を案じた彼女の父で自身の甥に当たる柳韻からの頼みを受け、姪孫の箒を引き取り、拳法を通じて箒を心身共に鍛え上げて更生させた。



次回予告
IS学園へと入学した一夏と箒。そしてまことも指導員としてIS学園へとやって来た。
そして、世界各国から集まるファイター達。

激闘の予感に胸を躍らせる一夏達を待ち構えるものは、果たして・・・?

次回『集う強者達』

?「素晴らしいデュエルの予感がしますわ」

?「伊達に功夫やってるわけじゃないのよ!」

?「イッツ・ショウターイム!!」

?「火の神、アグニよ・・・我に力を!」

?「私達をただの隠密組織と思ったら、死ぬよ」

?「下手に触ると、ビリッとするよー」

?「なかなか、ぶっ飛ばし甲斐のある後輩達ね」

?「どすこーい!!」









サブストーリー『一夏と千冬』が解放されました。
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