入学試験に無事合格し、特別推薦枠として学園に入学した一夏達。
入学より数日が経過した頃、闘士達はそれぞれがいずれ起こるであろう闘いに期待を膨らませつつ、クラスでの生活や部活動を謳歌していた。
【授業風景】
「・・・格闘ISと通常のISの違いとして、まず第一に『丹田エンジン』の搭載の有無があります。
これは『気』や『波動』や『オーラ』などと呼ばれる肉体の持つエネルギーを操作・増幅するもので、これを応用する事で搭乗者とISはより適合・シンクロし、通常のISよりも基礎性能を大幅に向上させる事が出来るのです」
新任教師にして自身も格闘IS搭乗者である1年1組担任の山田真耶の説明に生徒達は感心したような、あるいは怪訝な表情を浮かべたりと様々な反応を見せる。
「つまり、格闘ISの方が全面的に高性能なんですか?」
「確かに高性能ではあります。
ですが、通常のISと違って格闘ISは搭乗者の肉体に大きな負担が掛かります。
まず、シールドエネルギーはあるけど、それは通常のISと同等で格闘ISの攻撃力はそれを上回るものが多い。つまり格闘IS同士で戦う事は生身で殴り合う事に等しいのです。
そして、丹田エンジンの特性上、搭乗者の気を多く消耗してしまうのです。
故に搭乗者には鍛え抜かれた肉体と、それに伴う大容量の気が必要になるのです」
「でも、気とかって本当にあるんですか?
確かにこの前の試験で篠ノ之さんが、手から光の弾を飛ばしたのは見たけど・・・あれってISの機能とかじゃないんですか?」
「いえ、あれは篠ノ之さん自身の技です。
気というものは生きる者全てに備わったエネルギーなんです。
それを操作して練り上げ、飛び道具として武器とする技術は確かに存在しています。
最近では学会でも議論される事もあるぐらいですから。
でもまぁ、こういうのは実際にその目で見た方が良いでしょうね。
篠ノ之さんは別のクラスだから・・・織斑君!」
説明する中、不意に真耶は好戦的な笑みを浮かべて一夏に目を向ける。
「実際に波動拳を撃ってみてください。的は私で構いません!」
突然の爆弾発言にクラス中が騒然となる。
対して一夏はニヤリと笑いながら立ち上がる。
「加減は必要ですか?」
「いえ、全力でお願いします・・・!
危ないから皆さん壁際に下がってくださいね」
慌てて壁際に逃げる生徒達。
唯一動じてないのは同じ格闘IS操縦者の本音ぐらいぐらいなものである。
そして一夏と真耶は互いに向き合い、それぞれ構えを取る。
「マジでK.O.する気で行きますよ・・・!」
「望むところです・・・!」
腰の辺りで構えた両手に気を集めて練り上げる一夏。
対する真耶は四股立ちで迎え撃つ。
「行くぜ・・・波動拳!!」
「うわぁぁっ!!本当に撃ったぁーーっ!?」
「そりゃ撃つよ」
ぶっ放された波動拳に生徒達が悲鳴を上げる中、真耶は真っ直ぐに迫り来る気の弾丸を見据え、防御の構えを取る。
「・・・噴っ!!」
轟音と共にぶち込まれた波動。だが、真耶は気合いの一喝と共に防御していた腕を用いて波動を弾き飛ばし、霧散させた!
「おぉ〜〜、凄いパワー!」
「痛っ・・・効いたぁ〜〜!流石ですね」
「そっちこそ、俺はマジでぶっ倒すつもりで撃ったのに、耐え切っちまうんだから」
「来ると分かってる攻撃に倒れてちゃ、力士は名乗れませんよ。
と、まぁ・・・見ての通りこれが気と言うものです。皆さんの身体にもこれと同じエネルギーが流れているんです。解りましたか?」
『は、はい!』
笑い合う一夏と真耶、感心する本音の姿にクラスの生徒達は思いは二種類に分かれた。
『もっとフィジカルを鍛えよう』、『修行すれば自分にもあんな事が出来るかも』という希望感。
もう一つは『こんなの私のイメージしてたISじゃない・・・』という絶望感だった。
・ ・ ・ ・ ・
【空手部・道場】
「よーし、構えィッ!」
『押忍!』
空手部顧問として就任したまことの一喝により部員達は一斉に構えを取る。
「正拳突き百回、始めぇっ!!」
『セイッ!セイッ!!』
掛け声と共に生徒達はまことと共に正拳突きを繰り返す。
就任から数日しか経っていないというのにかなりの気合いの入り様だ。
だが、正拳突きを始めて数分後、不意にまことは視線を天井に向ける。
「オイ!天井に隠れちゅー奴!用があるならコソコソしちょらんで出てこい!」
「・・・あらら、見つかっちゃった」
天井裏から降り立つ忍装束の少女・・・1年4組所属の格闘IS操縦者、更識簪だ。
「いぶき先輩から聞いてたけど、凄い気迫・・・。空手っていうのも案外侮れない」
「何じゃ?おまん、いぶきの知り合いか?」
「所属は違うけど、里の先輩。
アナタの事は先輩から聞いてる。先輩と互角に渡り合った空手一筋の空手馬鹿だって」
挑発的に笑みを浮かべ、簪は眼鏡の位置を直して右手には愛用の鉤爪を装着する。
「アイツの言いそうな台詞じゃ。んで、わざわざウチの前に来たって事は、挨拶だけって事はないじゃろ?試合の一つぐらいやるか?」
「まぁね。お姉ちゃん・・・あ、生徒会長ね。あの人、近々格闘ISでイベントやるつもりだから。
ウォーミングアップぐらいしておきたい」
「上等じゃあ!」
ニヤリと笑いながらまことは帯を締め直して身構える。
「ウォーミングアップだから、ある程度抑えてフルコンタクトルールでどう?」
「それでええわ。
「当然。これでも私、いぶき先輩との戦績は五分だから。
遠慮してたら、無様晒すだけだよ・・・!」
「み、皆場所開けて離れて!近過ぎると余波でぶっ飛ばされるわ!!」
部長が他の部員たちに避難指示を出したほぼ同時に、まことと簪がぶつかり合い、部長の想定通り何人かが巻き添えで吹っ飛ばされたのはまた別のお話である。
・ ・ ・ ・ ・
【放課後・屋上】
「ん?先客・・・ラウラか?」
「・・・箒か」
授業を終えて屋上を訪れた箒の目に映ったのは、夕日を背に座禅を組む銀髪の少女、ラウラの姿だった。
「・・・瞑想中だったか?」
「まぁな。入学式では碌に話せなかったが、久しぶりだな」
閉じていた目を開き、箒を見詰めるラウラ。
師匠同士が知り合いな縁で、二人は交友関係にあった。
「前に会った時より瞑想が洗練されてるな。初めて会った頃の荒々しさが嘘のようだ」
「ダルシム様との修練の賜物だ。
・・・というか、お前がそれを言うか?荒々しさではお互い良い勝負だっただろ?」
「フッ・・・まぁな。あまり自慢できる事ではないが」
自嘲気味に笑いながら、箒はラウラの隣に座り、自らも座禅を組む。
「お互い、変われば変わるものだ。
私が拳法、お前がヨーガを修行し始めた頃は、誰彼構わず噛み付くような野獣そのものだったのに、だ」
「アレも私達の未熟故だ。
あの頃の私達は力ばかりに捉われ、大切なものを見失っていた。
ダルシム様に救われていなければ、私は今頃どこぞで孤独に野垂れ死んでいた」
「私もだ。父が私を師匠に預けていなかったら、私はただの辻斬り同然の下衆だったかもしれん。
お互い、出逢いに恵まれたな・・・」
「・・・そうだな」
言葉を交わし合いながら、二人はそれぞれ目を閉じて暫しの瞑想に入ったのだった。
・ ・ ・ ・ ・
それから数日後・・・
「皆、よく来てくれたわね。
簪ちゃんと本音ちゃんは知ってるでしょうけど、私がこの学園の生徒会長で簪ちゃんの姉の更識楯無よ」
教員であるまことと真耶も含め、格闘IS操縦者10名は生徒会室へと召集されていた。
「まさか、アンタがこの学園にいたなんてな。しかも生徒会長かよ?
いつの間か見なくなったと思ったら・・・」
「まぁね。2年前にアナタに負けて大恥掻かされて、それから色々あってアメリカで修行してたのよ」
『色々』の部分で一瞬だけ簪に目を向け、目を細めて睨む様に一夏に向き直る楯無。
リベンジする気満々と言いたげだ。
「まぁ、それはさておき・・・、近々行われるクラス対抗戦だけど、その日には別のイベントを考えているの。
まず、ハッキリ言って現状のIS操縦者・・・もちろん通常の方ね。
操縦者達の練度は年々下降の一途を辿っているの。
そこに格闘ISという全く新しい要素が出てきた。
そして一夏君を始めとした男性操縦者も加わり、ISの人気再燃のまたとない機会が来たのよ。
だけど、世間一般や一般生徒にはまだその実感が無い。
そこで!私達が実際に戦ってる姿を見せて、これからのISには何が必要かを示そうって話なのよ」
「なるほど。要は模範試合・・・エキシビションマッチですわね」
楯無の説明に真っ先に解答したのはセシリアであった。
「そうよ。ここにいる全員でそれぞれタイマン勝負。悪くないでしょ?」
「全員と言っても、アナタを含め11人しか居ないが?」
「それなら大丈夫よ。・・・入ってきて!」
ラウラからの疑問に楯無は扉の方へ視線を向ける。
それとほぼ同時に扉が開き、ある人物が入室する。
「失礼します」
「あ、お姉ちゃん!」
入室してきた3年生の女性にいち早く反応したのは本音だ。
「布仏虚ちゃん・・・束博士推薦ではないけど、一般生徒で格闘IS操縦者試験を主席で合格。私のお墨付きよ。
彼女を加えて12人。全6試合よ!」
宣言するように言い放つ楯無に室内のメンバー全員が好戦的な雰囲気を浮かべる。
「早速面白い事になってきたな」
「で、誰と戦えば良いの?」
「こーんな素敵な人達がゴロゴロいるんだから、目移りしちゃうね♪」
一夏、鈴音、シャルロットがそれぞれ高揚感溢れる笑みを浮かべてライバル達を見回す。
その反応に対して楯無は満足気な表情で机の上に箱を差し出す。
「ちゃんとくじ引き用意してるわよ。これで試合順と組み合わせを決めるわ。
それじゃ一列に並んでね♪」
・ ・ ・ ・ ・
そして、全員がくじを引き終え、いよいよ組み合わせ発表となった。
「皆引いたわね?それじゃ、せーので見せ合うわよ。・・・せーのぉ!!」
第一試合
まことVS鈴音
「中国拳法とはなんべんも戦うとる。やっちゃるよ!!」
「空手とは歴史の差が違うってのを見せ付けてやるわよ!!」
第二試合
セシリアVS真耶
「日本の国技である相撲。
その瞬発力は以前から興味がありましたわ」
「ボクシングですか。他流試合の相手としては不足無しです!」
第三試合
ラウラVSシャルロット
「剛力の投げ技使いか。面白い戦いになりそうだ」
「最高のスペシャルマッチにしてあげるよ!!」
第四試合
一夏VS箒
「まさか初っ端から箒と当たるとはな。全力で行かせて貰うぜ!!」
「こんなに早く戦う機会に恵まれるとは・・・何と言う僥倖!!」
第五試合
簪VS虚
「虚さんとか。お姉ちゃんと一緒にアメリカ修行した成果、見せてもらうね・・・!」
「今回ばかりは主従とかは無しでやらせていただきますよ・・・!」
第六試合
本音VS楯無
「お嬢様〜、手加減無しで行くからね〜〜!」
「え、えぇ・・・(あ、あっれぇ〜?簪ちゃんと当たる様にイカサマした筈なのに・・・)」
こうして、全6試合のカードが決定。
それからあっという間に日は過ぎて行き、いよいよエキシビションマッチ当日を迎えた!!
次回予告
いよいよ始まったエキシビションマッチ。
第一試合はまこと対鈴音。
果たして勝つのはパワーの空手か、スピードの中国拳法か?
次回『Round2 まことVS鈴音』
まこと「狙いは・・・正中線じゃ!!」
鈴音「一気に畳み掛ける!!」
サブストーリー『一夏と楯無』が解放されました。