〜side 語り部〜
目的の街まであと3里、曹操軍に襲われているとあれば軍事的に至近の距離である。
夜間行軍など危険極まり無いので、明日の朝までは時間に猶予がありそうだ。
ここまではMEMちょ隊の全員が同じ意見であり共通認識となったのである。
「敵の数は正解には分かりません。 街の市壁を四方から隙間なく包囲出来る数がいましたから最低でも万に届き、離れた場所に同じぐらいの後詰めが居ました。」
古代中華の街は一辺800mの市壁で覆われた城塞都市であり、四方を隙間無く包囲となれば7千以上、更に同数の後詰がいるなら1万5000以上となる。
包囲の密度と後詰が分散している可能性を考えれば3万近い数もあり得るのだ。
「あちゃー、これはオヤビンの本体が相手にする数じゃん!? 前線位置の予想が外れたかな?」
開戦前の情報から得た予測では曹操の遠征軍は総数で5万〜6万、徐州軍と協力すれば十分に防衛可能と考えられていたが・・・蓋を開けてみれば徐州は叛乱祭りで統治が出来ておらず、徐州軍は四分五裂でまとまった数がいない。
「まずいですぜ、今の手持ちは数百です。 とても万の敵は相手に出来ません。」
「街と共倒れって訳には行かないのよねぇ・・・仕方ない後ろの街まで下がろっかぁ・・・子義はオヤビンに続報と後ろの街へ防衛準備の連絡、それに周倉達各地の支隊から兵を供出する様に指示を出して・・・たぶんウチらが後ろの街で食い止めなるはめになるよねぇ。」
「残念ですが目標変更ですね。 指示いたしやす。」
子供達を見ると腹を満たした小さな均は、うとうとと居眠りを始め、緊張の切れた亮少年も限界のようである。
「二人は私がめんどう見るから安心してね。 お兄さんへの連絡も手伝うよ! さぁまずは明日に備えてしっかり休もう!」
そう言われて割り当てられた寝所で床に付くも少年は眠れるような精神状態では無かったのである。
手遅れと知性が訴えても感情は父母を見捨てた薄情者よ!と罵り後悔に蝕まれる。
兄と再会出来ても父母を救えなかった無能よ!と叱責され失望されると考えてしまう。
そもそも財産を失ったのは兄も同じであり足手纏いの無駄飯食らいと思われるのが辛いのだろう。
それに曹操軍は本当に朝まで活動しないのだろうか?今もここへ向かい進軍していないのか?後年に思い出せば的外れな心配なのであったと笑うのであるが、当時の少年には最優先で考えるべき事態だったのである。
「寝ぼ助け君たち〜〜、そろそろ出発だよん♪」
不安で寝付けなくても限界は来るもので、いつのまにか意識は落ちてグースカ、ピーっと爆睡してたのであるな。
「おっ、おはようございます! すみません寝過ごしました。」
世話になりっぱなしなのだから、早起きして僅かでも手伝うべきだったと少年は恥じていたのであるが・・・
「いいのいいの、疲れが十分取れるまで休むべきだよ。 はて?おチビの均くんはどうしたかな?」
「申し訳ありません。ボクが寝てる間に部屋から出て行ったようですね。もうこんな時に何処で遊んでいるのやら・・・」
「ん〜〜、ちょっと探そっか? 置いていく訳にも行かないからねぇ。」
しかし亭内を探すも見つからない。
外に出たかと付近を見回りつつ、聴き込みを行うと
「姐さん!ちょっと不味いです。 どうも家に帰ると言って西へ向かった子供が居るようで・・・」
兵士が避難の呼びかけついでに聴き込んだところ、均とよく似た特徴の子供を地元民が見ていた。
その者は遠く西の街の子供とは思わず、そのまま見送っていたのである。
「均ーーーーん!あの馬鹿ーーー!何の為に逃げて来たんだよーーー!」
「やっゔぁぃ!子義!避難の呼びかけと部隊の事は任せた!亮くん!急いで追いかけるよ!」
「はい、わかっ・・あぁぁぁぁ」
少年は返事をしようとするも宿ヌシ殿に襟首から持ち上げられそのまま運ばれる。
「姐さーーーん!」
太史子義もビックリ仰天!急いで副官に後事を託すと僅かな騎兵を伴いUMAの如く速い宿ヌシ殿の後を追うのであった。
〜fin〜
うっそだろまだ続くんか〜?