〜side 語り部〜
激動の196年も終わりの冬を迎える頃、焼け落ちた許都の館でバカが喚いていた。
「寿春が落ちたとはどう言う事だ!!!」
バカの頭の中では曹操を撃退したものの徐州の被害は大きく前年までは平原の一群しか持たなかった筵売りは徐州を復興するまで動けない。
北から南下して来た妾の子は兗州の蝗害によって動けない。
南は孫家の小僧が盾になっている。
バカとしては曹操にトドメを刺す絶好の機会到来!!っと判断していたのである。
蓋を開けて見れば曹操の首こそ得られなかったものの彼奴の支配地は無くなり一族も失い身ひとつで哀れにも放浪していると聞く『我が願いなれりw』と気色ばんだところで寿春陥落の悲報である。
バカの脳内には『どうして?どうして?』と問いかけが木霊していよう。
興奮したバカは立ち上がり勢いを持って怒鳴り付ける!
「孫家の小僧はどうしておる!建業から打って出て、徐州を圧迫するように伝えよ!」
「既に劉備めの別働隊に江東を攻められ、お討ち死に!揚州も全土を失いましてございます。」
続けて聴かされるあまりの悲報にクラっと来たバカはそのまま倒れるように玉座へ腰を落とす。
「済まぬが、今一度順を追って説明せよ。」
「はっ!陛下が曹操討伐に兵を上げ出陣した隙をつき、今年の春に徐州の劉備が攻めて参りました。」
「うむ!貧乏人が無理をして煩わせよる。」
「我が軍は、陛下のご帰還を待つべく各城にて防戦、建業からも劉備の背後を伺わせて足止めを行いました。」
「ほぉ〜しっかりと働いていたんじゃのぅ」
「しかしながら劉備めは徐州よりさらに一軍を繰り出すと江東へ逆侵攻を開始しました。」
「はぁっ!ちょっと待てぇーーーぃ そんな兵が何処にあった! 徐州を空にしたのか? 餓虎を手元に置いてチャレンジャー過ぎるじゃろ!?」
「それがそのぉ〜、江東に現れた旗印にくだんの飛将軍がおりまして・・・」
「「・・・・・・」」
「見損なったぞ飛将軍! もっと、こう、ところ構わず噛みつけよ!ワシんとこに来るな! で、・・・孫家の小僧には荷が重かったかぁ・・・」
「そのようでございます。」
「「・・・どうしよう(しましょう)」」
非常な現実はバカの思い通りに進まない。
ん〜ここは知恵者の意見を聴いてみよう!っと呼ばれた者あり。
「荀彧文若、お召しにより参上いたしました。」
「文若よ、そちを知恵者と見込んで、この状況を打開する策を聞こう。」
「ははっ!私のような者の言葉を聞いていただけるとは誠に僥倖でございます。 さすがは一度曹操に苦渋を舐めさせれらたところより再び立ち上がり、かの者を打倒せしお方。 ここは高祖劉邦の故事に倣うのが宜かろうと非才の身は考えまする。」
「高祖の故事とな?先の言と合わせれば余に再び苦渋を舐めよと進めておるのだろう、策の全貌をつぶさに語るが良い。」
「ありがたき幸せにございます。 まずは苦境の前提条件を取り払うところから始めるがよろしいかと存じます。 この度の苦境は陛下が天子の段に上がったことをやっかみ袁紹めが諸侯を巻き込んだ大戦を呼び掛けた事にございます。 そして漢は一度滅びましたが中興の祖、光武帝劉秀により再興しております。 かつての英雄達をも超える覇気に満ちた陛下におかれましては一時的に帝位を手放されても再び取り返すなど造作もなき事と私は考えます。」
「成る程のぅ、ひっじょーーーーうに悔しいが再び取り返すまで預けるだけと考えれば我慢出来ぬ事もない。 して相手はどっちだ?」
「漢朝に連なる劉備では陛下のお命が危うくございます。 ここは意を決して同族の袁紹へ一時的にお預けなされませ、私は袁紹に愛想が着くまでの僅かな間仕えましたがかの者は傲慢で3人の息子は無能かつ不仲と来ております。陛下は偽装降伏の後に財貨を持って鄴へ登り袁紹めの腹の内でお力を蓄えなさいませ。」
「ふむ、さすがは文若よ!その策を採用する。その方はこれより余の側で覇道を支えよ。」
「ははっ!」
こうしてバカがアホの傘下へ加わり獅子心中の虫になったのである。
ペンフレンドを洗脳して埋伏の毒に仕立て上げちゃった郭奉孝はホントに恐ろしいのである。
〜fin〜