〜side 語り部〜
徐州方面の決着が着いた頃、こちら平原も終わりに向けて進んでいた。
劉備軍の目も手も非常に長く、袁紹軍なけなしの糧食が何処に集められているか良く知っていた。
モチロン袁紹だって十分に警戒して領内の奥深く烏巣に補給基地を作っていたのである。
烏巣は黄河上流の兗州にあり、水運によって物資の運搬も楽に出来る。
袁紹軍としては大事な拠点でありちゃんと実力者が守って居た。
守将の名は淳于瓊仲簡 霊帝が西園八校尉に任じた人物で袁紹の元同僚、武勇統率に優れ出自も確かな、呑んだくれである・・・訂正、酒が切れると手が震えるアル中である・・・まぁ・・・その・・・帳簿の量より酒が少なくても当然だから追求してはいけない!と確かな実績を持って後方に回されるのも納得な人材であった。
「将軍、毎夜毎夜の宴会などとよろしいので?」
「ふん、我らは10倍もの大軍、敵が前線を越えて来るなどありえんよ。 本初も俺に活躍の場を与えたく無いのだろう・・・酒でも飲まんとやってられんさ。」
「はぁ・・・そうおっしゃるなら・・・」
兵も将もだらけきり、やる気のカケラも無い・・・歩哨すら立たず殆どの兵達は飲み潰れている。
真面目な参謀が再三諫言しても聞き入れられず、遂に彼もやけ酒を煽るようになっていた。
「おおっと! 零しちまった。 ちょいとションベンがてら外の風にあたって来るぞ。」
そう言い捨てると淳于仲簡は、ふらつく足取りで、ひとり立ち上がる。
「肩をお貸ししましょうか?」
「いらん、いらん!余計な気遣いじゃ!」
強めに嗜めると席を外す将軍の護衛に着こうとする者すら居ない。
統率も規律もな〜んも無いのが後方の袁紹軍となっていたのである。
「な〜んでこうなっちまったかねぇ〜」
ふらつく足取りで、ひとり陣の端を越えジョボジョボと垂れ流しながら淳于仲簡はひとりごちる。
「ガキの頃にゃ漢が滅びなんて夢にも思わんかったなぁ・・・何進の下で本初や孟徳と競ってた頃はなんで肉屋に頭下げにゃならんのか!?宦官どもも憎たらしい!死ねオラーーって考えてるだけだった。 やっと肉屋も宦官も皆殺しに出来たと思えば次は西の蛮族が漢をめちゃくちゃにしやがって、いまじゃ気が付きゃ本初も公路も孟徳も互いに殺し合うだけ・・・だ〜れも漢の事なんか考えてねぇ、もうどうでもいいんだろうなぁ。 みんな俺とは違うんだなぁ・・・ホントにさぁ、やんなっちゃうだろ?」
そう呟く淳于仲簡の言葉は誰に向けられたものであろうか? 夜の闇に消えゆく呟きはただ蝶だけが聴いている。
〜fin〜