〜side 語り部〜
「やばいっす!やばいっす!やばいっす!」
魔力が切れて燃え尽きたスクロールを投げ捨て郭奉孝は辺りを見回す。
僅かな先導役の騎兵に導かれ陛下と数名の参謀のみが下邳を目指していた。
囮かつ生還率を高めるため数隊に分散するものの遠くに見える敵の気配は消えない。
道中で出会う味方は輸送の護衛である歩兵小隊ばかり、合流すれば足が落ちるため簡単な状況だけを伝え敵追撃隊への嫌がらせだけを支持する。
そんな絶対の窮地は殿を務める総本営でも同様である。
「5千といったところか? 予想より多いな。」
「・・・陛下の離脱が遅れたため追撃を兼ねた物見が離れようとしておりますね。」
「うん、叔至・・・であれば気を引こうか。 劉玄徳が武威を示す!総員前へ!」
総大将を示す劉玄徳の旗印と共に親衛隊と総本営の歩兵およそ千より鬨の声が上がる。
総本営は情報の収集と指示を優先して劉備軍お得意の山地や森林では無く僅かに小高い丘でしか無い。
防衛陣としての機能は最低限であり殿が決まった後にせっせと準備はしたものの数倍の敵騎兵にあらがうには心細い。
それでも一歩も下がらぬと劉備軍の兵はあらゆる戦術に多彩な兵器を駆使して抵抗する。
陛下の護衛に過半数を割いた親衛隊は僅かな騎兵として敵を掻き回す役目を負っていた。
そうして敵陣を分断するため深く入り込んだ陳叔至の前を1人の若武者が立ち塞がる。
「中原にもなかなか良い騎兵の遣い手が居るじゃ無いか。 オレは涼州が馬騰寿成の息子、馬超孟起。 錦馬超と言えば分かるかな? さて劉備軍の将よ、名を名乗れ!」
「劉備玄徳の親衛隊長、陳到叔至。 今は忙しくてお相手する暇は無いので失礼させていただく。」
「つれないじゃぁ無いかぁ、どうせお前らはここで終わりなんだから思う存分楽しんで殺ろうぜ!」
そう言うと馬超は槍を繰り出す、その鋭さに陳叔至は馬超を脅威と認識する。 およそ劉備軍でも上澄である一流の武人、残念ながら己では勝利どころか正確な実力差すら把握出来ない、張益徳や関雲長に及ばずともせめて対抗出来る猛者が欲しい、無いものねだりと分かって居るが如何に良い武具を持っても己では武人の技量が足りな過ぎた。
「どうしたどうした!もっと頑張らないと死んでしまうぞ!」
連続で繰り出される槍を躱すのも覚束ず、陳叔至の鎧の隙間に傷がそして出血が増えていく、何合打ちったか数えられぬほどとなった頃
「おまえ〜堅いなぁ。 それなら、コウだ!」
あまりに堅い鎧を打っても埒があかないと見るや馬超の攻めが変わる。
素早い突きはそのままに手首の返しで巻き込むと陳叔至の槍は手から離れ遠く遠くへと奪われていた。
槍を失った事に気付くと佩剣に手を延ばすものの
「おせぇよ。」
馬超はその一言と共に槍を突き立てる。
「無念・・・」
右目から突き入れらた槍は脳へ達し致命傷となっていた。
どぅ!っと倒れ伏す陳叔至を遠目に見ながら劉玄徳も後が無い。
自らよりも遥かに強力な武人・・・許褚と典韋の2人に攻められてんてこ舞い。
「観念せよ!」
そう言って振るわれた破砕杖に右手の剣を弾き飛ばされ、
「死ぬが良い!」
と突き込まれた戟を受けて左手の剣も失う
「「コレで終いよ!」」
と決めに行った攻撃を両手の剣で受け切る。
弾いても砕いても健気に劉玄徳の手に戻る雌雄一対の剣によってなんとか首の皮一枚繋がっていた。
「相変わらず、理解出来ぬ所業よな」
都合10度は武器を奪われただろうか、理不尽な生き汚なさに二人の後ろに居た男が口を開く。
「曹操孟徳殿か、西方へ落ちていったと聞いたが今更何をしに戻られたか?」
「知れた事よ、男子たる者は生ある限り天下を望む!徐州を奪い公路も本初も打ち倒す・・・その予定が狂い貴様に一次預ける事になった我が覇道を取り返しに来た。」
「天下は静謐であるべきだ、天子様のもとで人々が祝い喜び日々安らかに暮らすただそれだけでいい。・・・戦乱も覇道も不要だね。」
「それは奴隷が望む世よ!故に貴様のような奴に大権は不釣り合いなのだ、潔くその命と共に捨てるが良い。」
そんな問答の中で東より、宿ヌシ殿の来訪を告げるように黒き光が差し込んで来る。
「来たか? MEMちょ!」
安心と信頼の実績で劉玄徳は訳分からん出来事の原因は宿ヌシ殿と決めつける。
「いかん! またゾロ理不尽な妖術か!? 許褚、典韋!劉備を仕留めるぞ!」
そうして死闘は再開される。
敵本営から離脱する一団に対して追撃を命ぜられた時、馬鉄は不満でならなかった。
遠く涼州よりこんな地の果てまでやって来たのにやらされる事は逃げるしか出来ない臆病者の狩りなのか?と、しかし臆病者は道中分散して本命を逃そうとしたり逐次弓矢投石で足止めしようと伏兵が現れたりとなかなか楽しませてくれた。 ひょっとしてコレは大手柄なのでは無いか?敵本営を攻めている長兄達を差し置いて1番手柄もあり得るぞ!と気分良く敵を追い詰めようとしていたその時!いきなり目の前が黒き光に覆われる。
「何事だ、警戒せよ!」
視界が回復しない中で周囲に注意喚起を呼び掛ける・・・ドドドっと力強い馬蹄の響きを感じ取りようやく見えた視界に映るは力強い白刃であった。
「陛下!ご無事で?」
追撃の敵騎兵を魏文長や甘興覇達が殲滅している中で宿ヌシ殿は帝の無事を確認する。
「MEMちょ! 義父上が! す、直ぐに助けに向かってくれ。」
「御意。 奉孝、詳細を手短に。 漢升、歩兵部隊を預けます。 奉先、UMA持ちを率いて着いて来るように。 総員急げ!」
宿ヌシ殿は取るものも取り敢えず部隊に進撃を命じ自ら先頭を進むのであった。
そして場面は再び寿春総本営、何度も何度も弾き飛ばされ砕かれても繰り返される武器復活に豪を煮やし、舌戦も飽きた頃に東より援軍の気配が迫る。
安堵して僅かに気を緩めたのか劉玄徳は右腕を許緒に掴まれてしまった。
振り解こうとするも許されず次は左腕を典韋に掴まれる。
両腕の自由を奪われて致命の隙を晒す耳元に「オヤビーーーン」っと聞き慣れた声が聴こえるも劉玄徳の視界は己が意に反して目ぐるましく変わっていく、一瞬映った大空に青く澄んだ海に浮かぶ島を見て『MEMちょとコレでお別れか。』と感じたのが最後であった。
宿ヌシ殿の叫びの中、ポ〜〜ンっと宙に舞った劉玄徳のカックイイ生首が確認出来た時、呂奉先を始めとしたUMA持ちは更に速度を上げるが邪魔をしようとする者あり。
「おお! 貴様強そうだな! この錦馬超と勝負しろ!」
陳叔至を倒し、弱い者虐めに混ざる気も無く手持ちぶたさだった男は無謀にも一騎討ちを所望したのだが・・・
「邪魔だ!」
宿ヌシ殿どころか路傍の石として飛将軍の一閃により片目を潰されて呆気なく落馬、後続の魏文長達にも完璧無視され捨て置かれる。 弟の馬休に助け出されて戦場を這々の体で逃げ出す事になった。
一方で曹操孟徳は宿ヌシ殿を確認すると劉玄徳の首も持たずに脱退の如く全力離脱、さすがは自称英雄の逃げっぷりは凄まじいw。
曹の旗と曹操の姿を確認した宿ヌシ殿は大激怒!
「曹操ーーーーー!またオマエかーーーー!」
未だ多数いる敵騎兵に紛れてしまった害虫を叩き潰そうと魔封じの水晶を取り出す。
更にブーストアイテムを惜しみなく消費して発現したのは大魔法!
大地の奥底より溢れたマグマが周囲の大地ごと敵兵を焼き、ひとつにまとまって巨大な姿を現した。
「行きなさい、ピョン吉!」
それは灼熱に輝くマグマの赤兎!宿ヌシ殿の手振りで目標を定めるとぴょ〜んとひとっ跳び火砕流をお供に追撃を開始したのである。
「ヨシ!劉備の首を確保したぞ。」
迫る死に気付かず劉玄徳の首を手に取った馬岱はマグマ兎に追い抜かれあっさり消し炭となる。
そんな中で劉玄徳の首は炎の熱から不思議と護られ生前の瑞々しさを保っていた。
頼りない足取りで辿り着くと宿ヌシ殿は彼を腕の中に抱き寄せる。
「オヤビン・・・」
そう力無く呟く宿ヌシ殿の背後には『『『死ぬかと思った。』』』と呟く飛将軍以下の武将達
軍勢の大半を犠牲にして曹操孟徳が逃げ延びたと知ったのは随分と後になってからである。
こうして劉袁決戦は両軍の総大将戦死、袁紹軍の包囲殲滅を途中放棄して劉備軍の諸将が寿春に緊急集合してしまったので収拾つかずとなってしまった。
戦場を離脱した曹操孟徳が司隷以西を持って元の建国を、河北では女真族を引き連れた公孫瓚によって清の建国が宣言されるのにはまた暫し時が経った後である。
そして決戦が終わった後に劉備軍の面々は気が付いたのである。
「お迎えが来たんだよ〜、オヤビンだけじゃ無くコレでみんなともお別れだね。」
大空には太陽よりも大きな海をたたえた島国、ネオ・ジャパンが鎮座している。
見た目そのまんま天の国であるその異様に劉備軍の将兵は驚きと共に納得をしていた。
「MEMちょよ、帰ってしまうのか?」
「陛下、これを逃せばもう帰れないと思うから、何処かへ跳んでいってしまう前にお別れだよ。」
「せめて玄徳様の葬儀と陛下の御大礼までは見届けていただけないでしょうか?」
諸葛光明の問いかけに宿ヌシ殿は少し考えるも
「う〜ん、私の意思じゃ無理かなぁ。 ルビーちゃんの許しが無いと〜。」
「ならば、ネオ・ジャパンに座します。ルビーちゃんよ!束の間の別れの時を頂きたく、どうか我等の願いを聞き届けたまえ。」
そう言って諸葛光明がネオ・ジャパンへ向けて祈ると劉備軍の将兵が皆々唱和していく。
「「「「「どうか我等の願いを聞き届けたまえ。」」」」」
『んーーーー、葬儀と御大礼なら絵になるから観てくねーー、OKだよ!』
ルビーちゃんは自分の欲望にどこまでも忠実なのであるw。
「有難き幸せ!それでは準備に取り掛かりますので100年ほどお待ち願いまする。」
『なんでさ!!!Σ('◉⌓◉’)』
「我等の拙い技術であまねく世界の隅々まで公布し、段取りを取り付け貴賓を招待するには時間が必要でございますれば何卒よろしくお願いします。」
『もっとこう、早くならない? 星の裏まで知らせるとかそりゃ大変だろうけど。」
「では80年ほどで頑張ってみます。」
『頑張って時間短縮してよ!多少なら援助するから。』
「それは僥倖!では50年ほどで頑張ってみます。」
流石は諸葛光明、言質を取った後のやり取りが超一流の詐欺師っぽいのである。
色々な援助を引き出し、最終的にネオ・ジャパンの滞在時間は1年と決まったが、その間に『げぇ!光明』の発言数TOP10にルビーちゃんがランクインしちゃったのは有名な話であるw。
〜fin〜
エピローグ
そして月日は流れおよそ1800年
「オヤビン、墓参りが遅くなってごめんねぇ。 他のみんなに挨拶とか野暮用も終わらせて来たから遅くなっちゃたよ。 遠い異国の地に放り出されて最初はどうなるかと思ったけど、今振り返れば面白楽しく過ごさせて貰ったよ。 私はこれからも明るく元気にタレント活動続けるからそっちで再開出来るか分かんないけど土産話は沢山用意しておくね。 積もる話はあるけど際限が無くなっちゃうから次まで取っておくよ。 それじゃまたね。」
そう言って宿ヌシ殿は立ち上がると背後の面々を促す。
「MEMちょ様 お疲れ様でした。 『ジャイアントロボ -地球が静止する日』も無事クランクアップし、草間大作役をご担当なさって下さいましたエルネスティ様も大変お喜びで大成功。 組織したBF団も国際警察機構も解体が終わり立つ鳥跡を濁さずでございます。」
「光明くん、もう政治からは引退してプロデュース業に専念するとかいいけど、ルビーちゃんに企画持ち込んでノンフィクションで全部作るのは民衆に迷惑だから程々にね。」
「心得ております。 BF団も人死が出る様なことは致しておりません。 悪徳商人や腐敗官僚にお灸を据えたようなものでございます♪」
こうして宿ヌシ殿&諸葛光明と愉快な仲間たちは新たなる人気番組を求め次の地へ向かうのであった。
MEMちょの三国志!これにて完結である。