ドラクエ7の"勇者"になって高専の"さしす"とパーティ組む話   作:キーファは通さない

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ダーマ神殿は心の中に





チュートリアル
レベル上げするな。熟練度を稼げ熟練度を


 

 

 

『勇者よ……起きなさい』

 

 

声。優しい声がする。でももうちょい寝かせて。

 

 

『……7時15分』

 

「うわぁ!? やばい、着替えんと! 朝課外遅れる……あれ?」

 

 

いつもの起床時間は6時40分。聞こえてきた時刻は間違いなく寝坊を知らせるもので、慌てて飛び起きたら目の前は一面の白。病院の個室とかそういうレベルじゃないくらい真っ白。むしろ光り輝いてすらいる。どこやねん。

 

 

『おはようございます。やむを得ず乱暴な起こし方をしてしまって申し訳ありません。私は女神です』

 

「ええ……? お、おはようございます。女神さま? あのー、これ何ですか? ドッキリとか?」

 

 

めっちゃ美人居た。つーか浮いてるし羽生えてるしどんなカラクリよ。女神……本当に人間じゃないとか? 訳わかんね。

 

 

『ドッキリではありません。そして時間がありませんので手短に説明します。あなたこそが勇者。混沌とした世をその力で救うために選ばれたのです』

 

「勇者? 俺が……勇者? ドラクエは7しかやったことないけど、あんな感じの?」

 

『あんな感じです。今のあなたは肉体を失い、魂が剥き出しになっています。あなたの魂が放つ強い輝きは、まさに闇夜を照らす光。その輝きが私の目に留まりました。必ずや世界を救ってくださると私は信じています。あなたしかいないのです』

 

 

ドラクエ7。最初は兄ちゃんがやってたのを横で見せてもらってたやつ。勇者とゴッドハンド×3のパーティで脳筋プレイ好きだったなぁ。アルテマソードさいつよ。途中からでストーリー全然わからないし、兄ちゃんも居なくなったから結局クリアできなかったなぁ。

 

そんなことを考えていると、自称女神が意味深な目配せをしながら歩いて行く。その方向に目を向けると、これまた見覚えのある台座が鎮座していた。アレに石板嵌めたら過去にワープするんだよね。んでその時代の問題を解決して元の世界に戻るってのを繰り返すやつ。わかります。

 

 

「……いや、ほんとに? 俺が勇者ってことは……途中で諦めた俺でも50時間以上使ってたのにアレ現実でやるの? 今から? マジか……」

 

 

やりたくなさ過ぎる。でも俺しかいないって言ってるし……ギガスラッシュとかアルテマソード使ってみたいし。そもそも褒められるのは悪い気はしない! なんか拒否権無いっぽいしなるようになれ! でもノーヒントは流石にナシだよねぇ!?

 

 

「あの……ダーマ神殿はありますか!?」

 

『あなたの心象風景……この世界で言う生得領域の中にあります。教会も同様です。展開は難しいですが、あなた一人なら念じればいつでも赴くことができるでしょう』

 

 

しょーとく領域? なんそれ。展開……もよくわからん。でもとりあえず転職は簡単にできるってことだな!! 復活もできそう! うれしい。

 

 

「地域ごとの熟練度習得レベルキャップは確認できますか? そもそも熟練度や職業レベルが上がったかどうか、職業をマスターしたかを確認する方法はありますか?」

 

『レベルキャップは19で固定です。また、メッセージは職業レベルが上がった際と、その職業をマスターした際に出ます』

 

「レベルキャップ固定ですか!? めっちゃ厳しいですね……」

 

 

縛りプレイ過ぎない? あ、もしかして心の中にダーマ神殿あるからずっとその地域にいるってカウント? 便利だと思ったけどデメリットデカ過ぎるなぁ。下手にレベル上げちゃったら特技も呪文も無いどうしようもない雑魚になっちゃうじゃん。最初の立ち回りマジで大事だなこれ。

 

 

「モンスターの心は手に入りますか?」

 

『手に入りません。この世界にはモンスターは存在しませんので。どうですか? 勇者、やっていただけますか?」

 

「……わかりました。勇者やります! それで敵は? やっぱり魔王ですか? 守るべき民はどこに? あとキーファは戻ってくるんですか?」

 

『敵は"呪い"です。守るべき民はあなたの目で見定めてください。私はただ、相応しい勇者を送り出すだけ……』

 

「な、なんで急に意味深な発言を……? というか俺肉体失ったって言ってましたよね。俺死んだんですか? 何で? あの、もしかして兄ちゃんもここにいますか? それならやっぱりもう少し考えてからでも……」

 

『さあ! 行きなさい勇者よ! 自分の力を信じて進むのです。その先に未来があると信じて!!!』

 

 

 

自称女神が石板を台座にセットする。ガコン、と音が鳴ると共に凄まじい光が台座から放たれる。光に包まれた俺の体は見えない力で引き延ばされていく。

 

 

「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

『……幸運を祈っています。あとキーファは戻ってきません』

 

 

 

 

 

 

 

  ++++

 

 

 

「あああああああ! ああ……? 地面だ」

 

 

気色の悪い浮遊感はいつの間にか無くなっていて。俺は自分の足でしっかりと立っていた。天気は快晴。時刻は10時くらいか。足下にはジャリつく地面。横には忍者とかが走ってそうな屋根付きの塀が続く道。

 

 

「何か大事なこと聞き逃した気がするな……つーかどこだろここ。あ! すぐに転職しなきゃ。歩いたら戦闘開始するパターンかもだし」

 

 

シンボルエンカウント方式か、はたまたランダムか。いずれにせよ動かなければ敵には遭遇しないはず。俺はドラクエ7でそう学んだ。

 

 

「むむむ……神殿、神殿……呪文と特技が奪われる……いや、それは違くて!! 白くて石っぽくて転職させてくれるとこ!!」

 

 

ググーっと意識が内側にめり込んでいくイメージ。そして目を開ければなるほど神殿だな、という感じの建物が目の前にあった。

 

 

「よし、ダーマ神殿だな。転職お願いします! まずは"武闘家"で」

 

 

俺の目標ルートは『武闘家→戦士→僧侶→パラディン→バトルマスター→ゴッドハンド→勇者』だ。

 

職に就いた状態で戦闘回数を重ねることで熟練度を稼ぎ、ある程度のラインまで貯めれば職業レベルを上げることができる。強いモンスターと戦う必要は無く、ただ決められた回数をこなせば良い。

 

ただし、敵を倒せば経験値が貰えるのでレベルアップに繋がる。俺が目指す"勇者"への転職を達成するためには経験値が低い敵のみを倒さないといけない。

 

 

「武闘家はマスターするまで何回だっけ。基礎職は200回は無かったはず……勇者とかの上位職が250くらいだったと思うし。多めに見積もって全部で2000回としとこう。とりあえず最初の職業をマスターした時点で何となく回数の検討はつくだろうし……」

 

 

職業レベルのMAXは8だ。そこに到達すれば、すなわちその職業をマスターしたことになる。そうなれば即転職する。必要な基礎職(今回は武闘家・戦士・僧侶)を全部マスターしたらパラディンなどの上位職にさらに転職。そうして戦闘に役立つ各職業の固有のスキルと魔法を習得していく。

 

最終的にはバカみたいな火力を持ちつつ最高の継戦能力を持ったクソ強勇者が誕生する。まさに最強。圧倒的な力でモンスター共を蹂躙するの楽しい。ストーリー? 知らない子ですね。

 

 

「お、転職成功。服装は変わらない、か。さっき見た感じ雰囲気日本だったしドラクエっぽい宿屋とか武器屋とか無いんだろうなぁ……なんか締まらないけどま、良いか」

 

 

そういえばドラクエ7における武道家は"かしこさ"と"最大MP"が減るデメリットがあったけど、俺頭悪くなるのかな。確かコンテストにしか役に立たない数値ってことで気にしてなかったけど……今はわからないな。アホになってないことを祈ろう。

 

 

「よし、行くぞ!!」

 

 

再び念じれば現実の世界に意識が戻ってくる。ここから俺の勇者への道が始まるのだ。のしのしと歩いて行くと、早速怪しげな生き物を発見した。

 

 

「ぶふぅー」

 

 

5センチくらいかな。ぶーん、と特徴的な羽音を出しながら飛行している。蝿にしてはデカい。ギョロ目に地味めなカラーリング。しかしそんなことはどうでも良い。注目すべきは『コイツが雑魚かどうか』だ。

 

 

「サイズは小さい。動きも鈍い。こっちに気付いた様子も無い。よし、雑魚だなお前」

 

 

俺の声にも反応せず、ソレは相変わらずフラフラと飛びながら"俺は雑魚だぜ"と全身で伝えてくれていた。マジで頼むぜ。メタルスライムみたいに弱いけど経験値豊富、なんてのはやめてくれよ!

 

 

「オラァ!! 弱っ!!」

 

 

拳一発で爆散した。我ながらオーバーキル過ぎる。

 

思った以上に雑魚だった。多分スライム的なマスコット兼序盤の雑魚敵なんだろう。スライムでも素手のレベル1主人公相手なら数発耐えるというのに何たる雑魚さ加減か。

 

 

 

ピロリロリン

 

『ようとうを やっつけた!

 1ポイントの けいけんちを かくとく!』

 

 

 

「よっしゃ! 大当たりだ!! 『ようとう』、俺は今からお前しか倒さん!!」

 

 

狙いが決まった。経験値1なら2000回戦闘してもレベルキャップに引っかかる前に確実に"勇者"をマスターできる。確かスライム3000体でレベル10いかないくらいだったはずだし。つまりはコイツだけ倒していればレベルキャップも気にしなくて良い。

 

しかし頭の中に響くはお馴染みのファンファーレ。メッセージも既視感ありまくり。これ、俺の目とか脳に直接投影されてる感じ? なんか不思議な感覚。

 

 

「不思議といえば、ゴールドは落とさないのか。あと熟練度の言及無しなのもゲーム通りでちょっと不便だな」

 

 

ま、その辺りの文句も『ようとう』の素晴らしさでチャラだぜ。スライムより弱いけど同じ経験値1で戦闘回数稼ぎに最適。反撃されるリスクも皆無だから心理的ストレスも無い。最高だ。

 

 

「お、発見。あっちにもいるな。なんかこの塀、誘蛾灯みたいなの仕込んでんのかな。『ようとう』が等間隔でいるような……ま、いいか。どんどん倒すぜ!」

 

 

塀の横を行ったり来たりしつつソロで湧いた『ようとう』をボコる。2体以上のやつはスルー。俺はとにかく歩き続けた。

 

 

 

 

 

  ++++

 

 

 

 

「ぶふぅー」

「14」

 

 

 

「ぶふぅー」

「15」

 

 

 

テテテテッテッテッテー

 

 

頭の中に例のファンファーレが頭の中で鳴り響く。俺自身のレベルアップだ。

 

 

「いかんいかん、始めたばっかなのに作業ゲー過ぎてほとんど無意識だったわ」

 

 

もはや力む必要も無いからな。だってチョップでも死ぬし。15体くらいだったか? えーっとメッセージは。

 

 

『ようとうを やっつけた!

 1ポイントの けいけんちを かくとく!

 ゆうしゃは レベル2に あがった!

 さいだいHPが 3ふえた!

 ゆうしゃの のうりょくが ふえた!

 ちから  +1 すばやさ +1

 かしこさ +1  みのまもり +0 かっこよさ +0』

 

 

「……俺の名前"ゆうしゃ"なのね。女神さまが設定したのかなぁ。ま、いいや。とりあえず『ようとう』狩り継続しましょ」

 

 

ちょうど目の前に湧いてきたしな。どんだけいるんだろ。助かるけど。

 

 

「ぶふぅー」

「16」

 

 

『ようとうを やっつけた!

 1ポイントの けいけんちを かくとく!

 ゆうしゃは ぶとうかの しろおびに なった!

 ゆうしゃは あしばらいの とくぎを おぼえた!』

 

 

「うわ、びっくりした。こっちは16回だったのか。これで武闘家の職業レベルは2と。"あしばらい"ねぇ……浮いてんだよな、アイツら。そもそも無駄だから使わないけど。さて次だな」

 

 

 

 

  ++++

 

 

 

 

「ぶふぅー、ぶふぅー、ぶふぅー」

「スルー」

 

「ぶふぅー」

「45」

 

「ぶふぅー」

「46」

 

「ぶふぅー、ぶふぅー」

「スルー」

 

「ぶふぅー」

「47」

 

 

テテテテッテッテッテー

 

 

『ゆうしゃは ホイミの じゅもんをおぼえた!』

 

 

「おーけー。『ホイミ』。おおー、気分爽快。思ったより時間かかってるけどまだまだやれるぜ」

 

 

 

 

 

  ++++

 

 

 

 

「ぶふぅー」

「158」

 

「ぶふぅー、ぶふぅー、ぶふぅー、ぶふぅー」

「……」

 

「ぶふぅー」

「159」

 

「ぶふぅー」

「160」

 

 

ピロリロリン

 

 

『ゆうしゃは ぶとうかの かくとうおうに なった!

 ゆうしゃは かまいたちの とくぎを おぼえた!』

 

 

「……あれ? ファンファーレしょぼいな。職業マスターした時ってレベルアップとは違って豪華な方は鳴らないんだっけ。ま、良いか。じゃあ次は"戦士"に転職して、と」

 

 

 

 

 

  ++++

 

 

 

 

 

「ぶふぅー」

「238」

 

「ぶふぅー」

「239」

 

「ぶふぅー、ぶふぅー」

「……」

 

「ぶふぅー」

「240」

 

 

ピロリロリン

 

『ゆうしゃは ゴッドハンドの ミラクルハンドに なった!

 ゆうしゃは アルテマソードの とくぎを おぼえた!』

 

 

「さいつよアルテマソードゲットだぜ!!!! そしてそして……上位職の"バトルマスター"、"パラディン"、そして"ゴッドハンド"の3つを得たことでぇ……職業"勇者"に転職可能!!!」

 

 

早速"勇者"に転職ぅ!! あとちょっとだ!

 

 

 

 

 

  ++++

 

 

 

 

 

「ぶふぅー、ぶふぅー、ぶふぅー」

「……」

 

「ぶふぅー」

「198」

 

「ぶふぅー、ぶふぅー」

「……」

 

「ぶふぅー」

「199」

 

「ぶふぅー」

「200」

 

 

ピロリロリン

 

『ようとうを やっつけた!

 1ポイントの けいけんちを かくとく!

 ゆうしゃは ゆうしゃの うちゅうヒーローに なった!

 ゆうしゃは ミナデインの じゅもんを おぼえた!』

 

 

「あー……よっしゃあああああ!! 終わった。終わったぞ!!」

 

 

マジで長かった。複数体との戦闘を徹底的に避けたおかげでレベルキャップの回避成功。その分めっちゃ時間かかったけど。

 

 

「まあミナデインとか実際は使うことないんですけどね……そもそも特技のMP消費がゼロなのが悪い。それより! "勇者"の自動HP回復が嬉しいよ俺は」

 

 

毎ターン50回復だっけ? ゲームの世界でもまあまあ嬉しいのに今の俺にとっては最高の職業だ。現実にターン制なんて存在しないから呼吸してるだけで体力が回復する。マジで永遠に戦い続けられるんじゃない? さすが魔王を倒す者の性能は破格だ。

 

 

「まあ魔王どころかダンジョンボスも俺にはまだ無理だな」

 

 

『ようとう』と違って普通に反撃してくるだろう。俺格闘技とかやったことないし、敵から反撃されたら普通に目瞑るムーブかましてそのままボコられそう。だって一般人だもん。

 

 

「なあ、お前の術式すげーじゃん。ちょっと手合わせしようぜ」

 

「うわ!! なに!?」

 

 

だからそう。いきなり声をかけられてびっくりしちゃうし、そもそも簡単に背後を取られてしまう。俺はゆっくりと振り返って声を掛けてきた相手を確認した。

 

 

「白髪。青い目。バリイケメンの少年。こんなの重要人物じゃなかったら詐欺じゃん……」

 

 

これが俺と五条悟のファーストコンタクトだった。

 

 

 






※主人公はPS版のドラクエ7しかプレイしてません。よって覚える呪文や特技はPS版に準拠します

※主人公は自分のステータス画面は閲覧できません。無限にモノをしまえるような便利な袋も持っていません


主人公のステータスですが物語には殆ど関係無いので書きません。攻撃力の高い特技(MP消費の無いチート技)をバンバン繰り出してくる上にパーティメンバーをガンガン回復・復活させてくる厄介なゴリラ(自動HP回復機能付き)だと思ってください。

リメイク版ではないのでベホマズンが使えないのが残念なところ。なおベホイミもザオリクも使えるので十分チート。
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