この素晴らしいエリス様と祝福を!   作:おふざけちゃん

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この素晴らしいエリス様と祝福を! 並行四重奏〜ヘイコウカルテット〜 4

 

 「第4章 この魔王軍幹部に鉄槌を!」

 

 

「………まぁ落ち着けクリス、話だけは聞いてやるから」

 

 息が上がって肩で呼吸をしてるクリスを一旦座らせて、その大変な事とは一体何なのかを聞く事にする。

 

「さてクリス、一体何が大変なんだ?」

 

「あ、そうそう!何かね、この街の温泉が何者かに汚染されてるみたいなの!!」

 

 ……何だが犯人が分かった気がする……。

 

「それでね!!その汚染された温泉が何とも禍々しいの……私の憶測によると、これは多分魔王軍の仕業だと思う!!」

 

 やっぱり昨日風呂場で会ったあの男は魔王軍だったのだろう……確か、この街を滅ぼすとか何とか言ってたしな……。

 

 ……本当はあまり関わりたくないんだが……あの男の事は言っておくべきだろうか。

 

「と、言う訳で、私は先輩の街を守りたいし、もし守らなかったら後で何言われるか怖いからね……。」

 

「……これが役に立つかは分らんが、実は俺が温泉に入った時に怪しげな男が居たんだ……この街を滅ぼすとか何とか言ってたし……確か名前は…ハンスとか言ったか?」

 

 そうして、温泉に体を休めに来たはずが魔王軍幹部らしき奴と戦う事になったのだが…。

 

「まぁ、取り敢えず今は体を休めましょうか、また明日、朝早くに決戦です。」

 

 

 さて、俺は何をするかな……と、思ってるとめぐみんが俺の体の裾を引っ張ってきた。

 

 

「ん?どうしためぐみん?」

 

「あの、今日の爆裂魔法がまだ済んでいないので着いてきてくれませんか?」

 

「あぁ、おいクリス!俺等ちょっと街の外出てくる。」

 

「え?あぁ爆裂魔法ね、早めに帰ってきなよ〜。」

 

 

 ついでにウィズも探しに行くか、何時の間にかどっか行ってたしな。

 

 

 

 

 爆裂魔法を使う前に、折角なので街中を散策する事にした。

 

 相変わらず人が良いアクシズ教徒達を尻目に、ちょむすけを肩に乗せ上機嫌で前を行くめぐみん。

 

「あら?こんな所でどうしたんですかカズマさん?」

 

 そろそろ街の外だと言う事で、ホカホカ顔でベンチに座っているウィズを見かけた。

 

「あぁ、今からめぐみんの爆裂魔法を撃ちに行くんだよ、ウィズこそこんな所で何してたんだ?」

 

「私は、少し逆上せてしまって……ここで今は落ち着いてた所です。」

 

「ふ〜ん、なら一緒に爆裂散歩でも行くか?少し歩くが気分転換になるぞ?」

 

「あら?良いんですか?ならお言葉に甘えて……。」

 

 そうして散歩を再開した俺達、そういえばふと思ったが、ウィズって何でリッチーになったんだろう……。

 

「なぁウィズ、ウィズはキワモノが多いアクセルの街の中でも数少ないまともな性格の一人だと思ってるんだが、元は高名な冒険者だったウィズが、自然の理に反してまでリッチーになった理由ってなんだ?」

 

 いきなり過ぎたかとも思ったが、前々から気になってはいたのだ…俺はウィズの他にもダンジョンで一度だけリッチーに会った事がある。

 

 その人は、大切な人を守る為にやむなくリッチーになったと言っていた。

 

 ウィズは、暫く悩んだ後……。

 

「そうですね……。とても長い話になってしまうので、その内、クリスさんもご一緒の時にでもどうですか?」

 

 屈託のない笑顔でそう言ってきた。

 

 まぁ本人がそう言うなら、クリスにも聞かした方が良いのだろう……ウィズがどういう経緯でリッチーになったのかは知らないが、やむを得ない事情によっては、ウィズに対するクリスの態度も改まるかも知れない。

 

 俺が、それじゃあクリスが居る時にでもと言うと、ウィズはニコニコしながら。

 

「はい。その時にはバニルさんも交えながら昔話などでもしましょう。私がまだ冒険者だった頃、バニルさんと死闘を繰り広げた事もあるんですよ?」

 

 何ソレ聞きたい。

 

 その後、なぜバニルと仲が良くなったのかも聞きたいし。……というか。

 

「……なぁ、昔話って言ってたけどさ、ウィズって何歳の時にリッチーになったんだ?」

 

「……20歳の時ですね…。」

 

 ふ〜ん。

 

「成程、見た目はそのぐらいだもんな。それじゃ、その姿になってからどれだけ経ったんだ?というか今いくつなんだ?」

 

「20歳ですよ?リッチーになって時点で歳は取りませんから」

 

「……?いやでも、だって……」

 

「私は何年経ってもずっと20歳ですよ?」

 

「……そ、そうか」

 

 何だが有無を言わせない雰囲気だったので、それ以上は何も言わないでおく。

 

 女性に歳を聞くものではない。

 

 と、突然先を歩いていためぐみんが……。

 

「そう言えば、ウィズに聞きたい事があるのですが……魔王軍で爆裂魔法を扱う人は、ウィズ以外にいますか?」

 

「いえ、私が知る限りでは爆裂魔法が使えたのは私一人ですね……。もしかしたら、私の後に入ってきた幹部さんの中に使える人が居るかも知れませんが……。」

 

 めぐみんが、ホッと息を吐いた。

 

「おい何だよめぐみん、俺にも分かるように説明してくれよ。」

 

「ん?あぁ別に大した事ではありませんよ。というか、私がアクセルの街に来た理由の一つに、アクセルには爆裂魔法を使える女魔法使いがいると聞いたのもあるのですよ……最も、それはウィズの事でしたが。」

 

「ふ〜ん?何だ?そのめぐみんが探してる女魔法使いさんは、めぐみんの師匠かなんかなのか?」

 

「えぇ、私に爆裂魔法を教えてくれた人であり、目標としてる人です。」

 

 成程、めぐみんに爆裂魔法を教えた人がいんのか……もしその人に会ったら挨拶しないとな、めぐみんが爆裂魔法を覚えたから、俺がめぐみんと出会ったみたいなもんだし。

 

「……あれ?今、何処かで見覚えのある方が……?」

 

 ウィズが街の温泉が密集している方を見ながら、そんな事を呟いていた。

 

 その視線の先見てみると……。

 

「あぁーっ!?ハンスさん!ハンスさんですよね!?」

 

 そう言われ男の方に走っていくウィズ、あの見た目………混浴に居た奴か!

 

「げ!?貴様は……、ハ、ハンスとは誰の事ですか?私は、この街の源泉の管理人…」

 

「ハンスさんお久しぶりです!私ですよ、ウィズですよ!!」

 

 何度もハンスと呼ばれた男は、声を震わせ誤魔化そうとしているが、ウィズは遠慮なく懐かしそうに声を掛け続けた。

 

 俺の方をチラッと見ると、更に驚いた顔した。

 なんだ?にらめっこなら受けて立つぞ!!

 

「に、しても……ハンスさんは、デットリーポイズンのスライムの変異種でしたよね?温泉に入っても大丈夫なんですか?」

 

 最早わざとやっているのではと言う程、ハンスと言う男のプロフィールを紹介してくれるウィズ……天然と言うのは怖いものだ。

 

「ねぇハンスさん、さっきから何故私を無視するんですか?私ですよウィズですよ?ねぇハンスさん、ハンスさん!!」

 

「そうだぞハンス、ウィズの事無視してやるなよ。」

 

「そうですよハンス、ちゃんと相手してあげて下さい!」

 

「悪あがきはやめて、そろそろ正体を表わせよハンス!!」

 

「うるせぇぞハンスハンスって!!!俺の名を気安く呼ぶなクソ共が!!」

 

 おっと遂に正体表したわね!!

 

「どうしてウィズがここに居るんだ!?お前、何処かの街で働いてるんじゃなかったのか!!サボってんじゃねぇよッ!!」

 

「ひ、酷いッ!!別にサボっている訳じゃないです!!休暇中です!」

 

 ハンスは深い溜息を吐くと、ゆっくりと首を振った。

 

「はぁ……、おいウィズ、確かお前は、魔王城の結界の維持以外では魔王軍に協力しない。その代わり、俺達に敵対もしないって関係だった筈だ………何故俺の邪魔をする?」

 

「えぇっ!?わ、私ハンスさんの邪魔をしてしまいましたか!?」

 

 アワアワと慌てているウィズに対して、ハンスは腰を落として身構えた。

 

「で、どうするんだウィズ?俺とやり合う気か?」

 

 ハンスが警戒しているのはウィズ一人の様だった。

 それもそうだろう、この男、デットリーポイズンスライムとか言う物騒な名前をもっているが、相手は魔王軍幹部でありリッチー。

 

 所詮スライムはスライム、リッチーであるウィズとは格が違う。

 

 ………ここは虎の威を借る狐だがとして、相手に圧を掛けておこう。

 

「おい、イチャイチャしてる所悪いがそろそろ良いか?………ハンスとか言ったな、俺の名前は佐藤和真、かつて魔王軍幹部ベルディアを葬り、デストロイヤーすらも凌駕する力で、あのバニルすら倒した者だ。」

 

 とっととこの街から追い出して、身体を休めさせるか。

 

「な、何だと!?貴様みたいなのが……!」

 

「おっと見た目に関しては少し気にしてるんだ、あまり言わないで欲しいな。まぁ、俺はこう見えても何度も死線をくぐっているんだぜ?」

 

「まぁ実際に何度も死んでいますしね……。」

 

 俺の後ろでボソッと、余計な事を言うめぐみんに目を向ける。

 

 ……明後日の方向を見てやがる……!

 

「お前が魔王軍の手の者と言う事は、最初から分かって居たんだよ!!」

 

「………この俺を前にしてその態度、ただのハッタリではなさそうだな?」

 

 ハンスは俺を睨みつけ、そんな事を言ってくる。

 

 なんだこいつスライムのくせして、もしかしてこの世界のスライムはそんなに強いのか……?ゲームと一緒と考えるのは良くなかったか…?

 

「カ、カズマさん!?大丈夫なんですか!?その、ハンスさんは………魔王軍の幹部の中でも、高い賞金が掛けられているの方です!とても強いので十分注意を……!」

 

 ………ん?魔王軍幹部?

 

「デットリーポイズンスライムには絶対触れてはいけませんよカズマ!!しかもこいつはかなりの手慣れ……私はクリス達を呼んでくるので、時間稼ぎをお願いします!!」

 

 そう言って、走り去っていくめぐみん。

 なぁ置いていかないでくれ。

 

「その………私は手を出せないので、カズマさん頑張って下さい!!」

 

 ん?俺一人?

 

「さぁ、掛かって来るが良い勇敢な冒険者よ!!この俺を楽しませ………て…?」

 

俺はハンスに背を向けて、全力で逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 流石に街に行くと不味いので、門を潜り抜け外へと足を運ぶ。

 

 これ以上ないほど息を切らし、足を止めない。

 

「貴様舐めているのか!?あれだけ啖呵をきって逃げるなど、人としてそれで良いのか!!仮にも冒険者だろうっ!?」

 

 顔を真っ赤にしたハンスが、全速力で追って来る。

 

「うるせぇ!!スライムがそんな強い何て聞いてなかったんだよ!!それに俺は冒険者は冒険者でも、最弱職の冒険者だよ!!」

 

 ハンスは一瞬、カッと目を血走らせるとも、やがて足を止め目を閉じ息を吐く。

 

 スライムの癖して人間臭いやつだ。

 

「……チッ!見逃してやる。失せろ雑魚め!!」

 

 ハンスはそう吐き捨て、来た道を引き返し、再び温泉の街の方へと向かって行った。

 

 俺はその後ろ姿を見て………

 

「びびってんじゃねーぞバーーカッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、二人が何時もの爆裂散歩に行ったのを見送りし、アタシはこの後どうするかを試行錯誤していた。

 

「………ねぇダクネス、ダクネスは好きな人って居る?」

 

 ふと疑問に思い、ダクネスに問い掛けてみた。

 

「……何故今聞いてきたのだ…、………別に、これと言って気になる奴は居ない。」

 

「えー?つまんないなぁ。」

 

「そう言うクリスこそ、好きな人は居ないのか?それこそ……カズマとか。」

 

「えー?ないない!!カズマとは只の友達だよ!!」

 

「……それは、"女神エリス"としてか?それとも、"クリス"としてか?」

 

 ……ダクネスは何が言いたいんだろう…?

 

 そうしてダクネスの方を見ると、至って真剣な表情でこちらを見ていた。

 

 まるで………何かを確認するかの様に…。

 

「……あ、あのさぁ、ダクネス…。」

 

 そうダクネスに言おうとすると………

 

「大変ですクリス!!ダクネス!!カズマがッ!!」

 

 そう慌てた様子で現れためぐみん、カズマがどうしたと言うのだろう?

 

「カズマが魔王軍幹部に喧嘩を売りました!!」

 

 あの子は一体何をしているのだろうか……。

 

「なに!?魔王軍幹部と!!場所は何処だ、私達も加勢しにn((

 

 ダクネスがそう言って立ち上がる………その時だ。

 

 ドォォォォオンッ!!!

 

 大きな音と共に、街外に現れたのは……!!

 

 

「……ねぇめぐみん、カズマが喧嘩売ったって言う幹部、名前はなに…?」

 

「………魔王軍幹部、デットリーポイズンスライムのハンスです…。」

 

 アタシ達は、とても大きなスライムが居る方へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 既に人の形の面影もなく、グミみたいにプルンと丸まった巨大なスライムは、辺りの木々を次々飲み込んでいく。

 

 俺はそんな異質な光景を背に、どんどんと街から離れるように走る。

 ハンスに飲み込まれないようにひた走る。

 

「あいつに喧嘩を売った自分を恨むよ、全く!!」

 

 もし過去に戻れるとしたら、あの時の自分を殴ってでも止めていただろう。

 

 ………に、してもどうしようか……。

 俺にあいつを倒す手段などなく、頼みのエリス達も今はめぐみんが呼びに行ってる最中。

 

 ウィズはどうやらハンスと戦う事も出来ない……と。

 

 ………どうしよっかなぁ…。

 

 どうしようかと悩んでいたその時……!!

 

「カズマ伏せろッ!!!」

 

 何時の間に後ろに居たのか、ダクネスに頭と身体を抑えられ、地面に叩きつけられていた。

 

 その衝撃のせいか、意識が朦朧としてきたその最中………何時も見てきた眩い光と、暑い熱を感じ目を閉じた。

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