この素晴らしいエリス様と祝福を!   作:おふざけちゃん

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この素晴らしいエリス様と祝福を! 爆裂娘の故郷へ!! 4

 

 時刻は夕方をとっくに過ぎているのに、未だ眠り続けるめぐみん。

 

 そんな眠り続けるめぐみんを置いて、俺達は食事を取っていた。

 

「母さん、白菜は美容に良いと聞く、肉はワシに任して何時までも美しくいてくれ!」

 

「あらあらあなた、あなたこそ最近頭髪の方が薄くなってきましたし、添え物の海藻サラダを召しあがればいいと思います!!」

 

 長い間会えなかった筈なのに、誰一人として眠る娘を気にする事もなく、俺が先程買い出しに行って手に入れた食材にがっついていた。

 

 クリスは食材と一緒に買ってきた酒を飲み、ダクネスは皆で小さなちゃぶ台を囲んで食事する事が初めてなのか、少し緊張気味だ。

 

 俺の食べ方をチラチラと見ながら真似しているが、別に作法とかはない。

 

 俺はこめっこが口いっぱいに肉を頬張るのを見て、涙していた…。

 

 

 

_____それは、俺が風呂から上がり居間に戻ろうとした時だった。

 

 

 

「何を馬鹿な事を!いくらカズマとは言え危険過ぎる!!!」

 

 クリス達は俺より先に風呂に入り、最後に俺が入らしてもらったのだが、居間の方からダクネスの大きな声が聞こえてきた。

 

 何を俺の名を出して騒いでいるのだと中を覗くと、ひょいざぶろーさんが居間の真ん中で高いいびきを上げている。

 

 俺が風呂に行く前は起きていた筈なのに、なんだか寝るのが早くないか?

 

 クリスの姿が見えない事から、既にあてがわれた部屋で寝ている様だ。

 

「そうおっしゃいましても、今まで間違いなど起きなかったのでしょう?それにカズマさんも分別ある大人………もし何かあっても、それは合意の元でしょうし…、なら親からは何も言いません。」

 

 どうやら、俺とめぐみんが同じ部屋で眠る事に反対らしい。

 

 俺もめぐみんと同じ部屋のせいで、クリスやダクネスに疑問の目を向けられたらたまったもんじゃない………まぁ最悪、俺としてはどこで寝ようが構わない。

 

 奥さんは口元をニヤつかせ。

 

「………所で、ダクネスさんは何故そこまで反対なさるのですか?カズマさんと娘が一緒に寝ると、何か不都合でもあるのですか?」

 

 そんな俺としても少し気になる事を…。

 

「えぇっ!?そう言う事を言われると、何だか非常に不愉快なので、止めてほしいのだが……。」

 

 え?

 

「そ、そうですか………しかし、家の娘をそちらの部屋に移すと大変手狭ですしねぇ。」

 

「なら、ひょいざぶろーさんとカズマを一緒に寝かせれば解決だろう」

 

「えっ…」

 

 ダクネスの正論に奥さんが声を漏らす、いや確かに正論なんだが、俺はさっきの不愉快な部分に関してかなり気になる。

 

「いや……流石に家の主人と寝かすと私が少し不安が残りますし……こめっこは論外なので。」

 

 おいちょっと待て、不安ってなんだ不安って………俺はどんな人間だと思われてんだ。

 

 と、ダクネスが少々興奮してきたのか大声で、

 

「なら……!この私が一緒に寝よう!私ならば、万が一あの男に襲われたとしても必死に抵抗すればきっと……!!」

 

「『スリープ』」

 

 奥さんが魔法を唱え、早口で馬鹿な事を口走りそうだったダクネスが、崩れ落ちるようにその場に倒れた。

 

 ………やりやがった。

 

 俺はなんとなくひょいざぶろーさんに目を向ける…………もしかして、ひょいざぶろーさんも…?

 

 と、居間の入口から様子を窺っていた俺に気付き、うとうとと眠そうなこめっこを片手で抱きながら。

 

「あらカズマさん、お風呂から上がったんですか?ダクネスさんが寝てしまったので、部屋まで運ぶのを手伝って頂けませんか?」

 

 俺は背筋が凍るような思いをしながら、逆らわずに手伝った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助かりました、ダクネスさんも旅の疲れが溜まっていたのでしょう……カズマさんも、もうお休みになってくださいな。」

 

 そんな事を言いながら、奥さんが俺をグイグイとめぐみんが寝かされている部屋へと押していく。

 

「それではごゆっくり、もし万が一ナニかあっても、責任さえ取ってくれれば大丈夫ですので……。」

 

 俺はドンッと突き飛ばされる様にして、めぐみんの部屋へと入れられた。

 

「『ロック』」

 

 そんな奥さんの声を背中に聞きながら、俺はゆっくりと暗い部屋の中を見渡した。

 

 そこにはいつの間にか運ばれた、部屋の中央に寝かされているめぐみんの姿。

 

 こうして眠っているめぐみんをまじまじと見つめる………やはりこいつは美形だな。

 

 窓から差す微かな月明かりが、眠るめぐみんの顔を優しく照らす………艷やかで、しっかりとした黒髪を見ていると、日本人を思い出す。

 

 ………見惚れてどうする、佐藤和真、本当にここで間違いを起こしてみろ、後々大変な事になるのは目に見えている。

 

 俺はめぐみんから少し離れ、壁にもたれ掛かると、ゆっくりと目を瞑る。

 

 ………と、その時だった。

 

「____何もしないんですか?」

 

 こちらに首を向け、何時もより少し赤くなった目で俺に問いかけてくるめぐみん。

 

 いつの間に起きてたんだろう。

 

「……何を言い出すんだめぐみん、お前もお前の母さんも、俺をなんだと思ってるんだ。」

 

「なんだ…ですか、そうですね」

 

 そう言って少し考え込むように布団に潜ると、少ししてからひょこりと顔を出す。

 

「………優しい人…だと思います。」

 

 そんな取り柄のない男を褒める言葉No.1の言葉を言ってくるめぐみん、懐かしいな……俺も中学の時、友達と話している振りをしながら女子の話に耳を傾けていると、俺の話題が出た時に言われたな。

 

 あの時はとても嬉しかったが、引き籠もってから意味を知ってとても悲しんだのを思い出す。

 

「どうしたんですか?急に黙って…。」

 

 固まっている俺に向かって、めぐみんは少し不安気な口調で言ってきた。

 

「いや、何でもない……少し昔の事を思い出しただけだ。」

 

 そう言うと、めぐみんがもっと不安な顔をすると、布団から出て俺の横に座った。

 

「どうしたんだめぐみん…?ちょ、ちょっと近い気が…。」

 

「………気の所為ですよ、それに私達にちょくちょくセクハラ紛いな事してきてたじゃないですか、今更なんだっていうんですか。」

 

 ………いかん不利になってきたな、過去の転生して少し調子に乗っていた俺を殴りたい気分だ。

 

 すると、もっと近付いて来るめぐみん……もう肩が触れる位近い。

 

 ………この家族はなんなんだ、本当に俺をなんだと思ってるんだか。

 

「……お、おい年頃の娘がそんな事をするんじゃない、野営の時もそうだったけど、急にそんな事をすると色んな意味でびっくりするし、勘違いするんだよ……特に男はな?だから他の奴にもやっちゃ駄目だぞ?」

 

「………こんな事、今までカズマにしかやった事ないですよ…。」

 

 俺はチラリとめぐみんの方を見ると、先程よりも目と顔が赤くなっためぐみんが、体操座りで膝関節辺りに顔を押し付けて、こちらをチラリと見ていた。

 

 ………もう良いじゃないか佐藤和真、多分めぐみんもその気だ、それに親御さんの許可も何故か得ている………。

 

 こんな状況、過去の俺が見たらそうとう怒り狂うに決まっている。

 

 なぜ速く手を出さないのかと、こんな可愛い子なら別に困らないだろう……と。

 

 ………でもなんでだろな、心で思っていても身体が動かないのは。

 

 俺って本当に"あっち"側だったのか…?

 

 そんな事を考えていると、めぐみんが俺の服の袖を握り、俺をめぐみんの方へと向ける。

 

「………それに、カズマだって私に勘違いするような事ばかりしてるじゃないですか……。」

 

 そう言って、俺達は向き合う。

 

 めぐみんが俺の肩を握り、押し倒す………段々と顔が近付いてくる。

 

 ここまで来ると俺でも分かる、正直立場が逆な気がするが…そんな些細な事を気にする暇などない。

 

 俺はめぐみんに流されよう……そう思っていると………、

 

「………カズ……マ…?」

 

 俺はめぐみんを押し返していた。

 

 ………やっちまった、今最もやってはいけない事をしてしまったと同時に、物凄い焦りと汗が出てきた。

 

「………ごめん…めぐみん。」

 

 めぐみんは俺の言葉を聞き、少し俯いた後俺から離れた。

 

 窓に手を掛けると、そのまま足を乗っけて……、

 

「カズマ、私は今日ゆんゆんの家へと泊まってきます、カズマは私の布団で寝てて下さい。」

 

 そう言って窓を開け外へと出て行っためぐみん………本当なら追い掛けた方が良いのだろうが、俺にそんな勇気と度胸はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「第五章 この恨めしい遺跡に爆裂を!」

 

 次の日の朝、とても憂鬱な気分で目を醒ます。

 

 何時のまにか空いていた扉に手を掛け、居間へと足を運ぶと___。

 

「ん?あ、和真おはよ〜。」

 

 手をヒラヒラしながら此方に首を向けるクリス、その隣で俺を疑いの目で見るダクネスに、どう弁明しようか考える。

 

「そう言えば、今朝から家の娘を見ないのですが……何処に行ったんですか?」

 

「え?……あぁ、昨日の夜ゆんゆんさん宅へ泊まりに行くって言ってましたよ…。」

 

 そう言うと、チッと舌打ちをした奥さんがし、安堵の溜息をダクネスがする。

 

 クリスは状況が分かっていないのか、二人を交互に見てキョトンとしていた。

 

「そうだな……娘の迎えに行くついでに、村の観光でも行って来なさい。」

 

「あぁ観光!いいね!ささ、準備して行こう!」

 

 元気なクリスを尻目に、めぐみんを迎えに行くと思うと………胃が痛い。

 

 俺達は各々準備を済ませ、めぐみん宅を後にし観光&めぐみんを迎えに行くのだった。

 

 

 

 

「あ、確かここがゆんゆんさんの家だったよね?」

 

 そう言ってクリスが指を指す………駄目だ、胃も痛いし頭もクラクラしてきた、迎えはこいつ等に任せておけば良かった…。

 

「すいませーん!ゆんゆんさんは居ますかー?」

 

 少しすると、ドタドタとしながら扉を開けて出て来たゆんゆんさん………何故か俺を凝視しながら。

 

「すまない、こんな朝早くに、めぐみんを迎えに来た。」

 

 そう言うと、少し考え込むようにして………。

 

「え、え〜と……取り敢えず、クリスさん?とダクネスさん?は良いんですが………めぐみんが、今は和真さんとは顔を会わせたくない……と、」

 

 そうゆんゆんさんが言ったと同時に、ダクネスが凄い勢いで俺の肩を掴み、ガクガクと揺らしながら___

 

「おい!お前やっぱり昨日ナニかやったんだなッ!?なぁそうなんだろう!!」

 

 ……おい、やめろダクネス、ただでさえ体調不良だってのに……そんなに揺らされると更に気分が悪くなるだろう。

 

「え、えーと……まぁナニかあったかどうかはめぐみんに聞くとして……和真は取り敢えず観光でもしといてよ。」

 

 苦笑いしながら頬をかき、ダクネスの背中を押しながらゆんゆん宅へと入っていく。

 

 ………去り際に、ゆんゆんさんが俺を複雑な感情で見ていたのを、気に掛けながら俺は歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから暫く、この里に一軒しかないらしい喫茶店でご飯を食べ、ぶらぶらと歩いていたら……。

 

「………なんだあれ。」

 

 俺は神社っぽい建物を見つけ、中に入る………すると、まるで神様の御神体の如く飾られた、猫耳スク水少女のフィギュアを見つけた。

 

 ………間違いなく日本人が作った物だろう……が、こんな所にあるとは思わなかった。

 

 神社を後にし、次に見つけた所は___

 

「願いの泉…?」

 

 木陰にポツンと佇む小さな泉、ゲームでよく見るあれか………ちゅちゅん丸でも投げたらエクスカリバーにでもなって帰ってこないかな?

 

 そんな事を思いながら、俺は財布に入っている小銭を一つ投げ込むと、今色んな意味で問題なめぐみんの事をなんとかして欲しい、と願いを込めて後を去る。

 

 ___服屋だろうか、色んな種類のローブが店の前に置いてある………がなんだろう、この既視感。

 

 物干しが、何だか見覚えのある形に見えて仕方がない。

 

「すいませーん」

 

 そう言うと、店の奥から黒いローブを着た厳しい顔の店主が出て来た。

 

「おやいらっしゃい……んん?君はもしかして、外の人かい?」

 

「え?あぁ、まぁ。」

 

 そんな事を尋ねながら、鋭い視線を俺に飛ばすと。

 

「我が名はちぇけら!アークウィザードにして、上級魔法を操る者。紅魔族随一の服屋の店主!」

 

 ………やはり紅魔族と言うのは、これをやらないと気が済まないのだろうか。

 

 真剣そうな表情で名乗った服屋の店主が、満足そうに笑みを浮かべる。

 

「改めていらっしゃい!いやぁ…外の人間なんて久しぶりだよ!名乗りを上げるなんていつ以来だろうか!お陰でスッキリしたよ。」

 

 まぁ………確かにスッキリするか…?

 

「これはどうも、俺は佐藤和真と申します、にしても……紅魔族随一の服屋とは凄いですね。」

 

 そんな俺の言葉に気を良くしたのか、店主がニコニコと笑みを浮かべ。

 

「あぁ、紅魔族の里の服屋はウチ一軒だからね。」

 

「舐めてんのか?」

 

 俺は思わず突っ込まずには言われなかった。

 

「まぁそもそもこの里は、被っている店はないようにしてるからね……全部がこの里随一だよ。」

 

 俺の胡散臭いものを見るような視線を受け、少し気まずそうに目を逸らす。

 

「………ま、まぁそんな事より、今日はどうしたんだね?」

 

 店主の言葉に俺は……。

 

「え?いやぁ実は、その物干し竿に少し興味がありまして。」

 

「おやお客さん、これが何か知ってるんですか?これはウチに代々伝わる、由緒正しい物干し竿ですよ、錆びたりしないので重宝してるんです。」

 

 そう店主がにこやかに言ってくるのだが………どう見てもライフルだよなぁ…。

 

 猫耳少女の御神体といいこのライフルといい……この里は一体どうなってるんだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 店を後にし、ここを最後にしようと巨大なコンクリートで出来た施設へと足を運ぶ。

 

 ………俺の勘が言っている、ここは絶対に行くべきだと。

 

 ___何の変哲もない地下への入り口、例えるなら核シェルターへの入り口見たいな…。

 

 何だか少し怖いな………そんな事を思っていると、何だか見たことある文字が見えた。

 

 そこは、巨大な扉が閉じられていて、この施設の出入り口と思える場所………そこには見たことある文字盤があった、これは___。

 

「………日本語…?」

 

 懐かしい気持ちになりつつ、何故こんな所に日本語が書かれているのか………まさかこの里、日本人が作ったのか…?

 

「あら?まさか先客が居たとは。」

 

 少し驚きながらこちらを見下ろすお姉さん、そこしエッチな格好をしていて、俺のちゅちゅん丸のボルテージがMAXだが………感知スキルのボルテージもMAXだ。

 

 まさか……

 

「魔王軍…?」

 

「えぇそうよ、にしても貴方………こんな所で何をしているの?」

 

 少し目を細めて、此方を品定めするかの様に見てくる。

 

 まさか里の中で魔王軍と敵対するとは………里の防衛軍は何をしてるんだ…?

 

「………いやぁ実はな、この文字に見覚えがあって、多分俺の故郷のだと思うんだ。」

 

「え!?あなた、この文字が読めるの!!」

 

 物凄い勢いで此方に詰め寄ってくる魔王軍、何故正直に吐いたのかといえば、1対1じゃ確実に負けるだろうと踏んで、俺を利用価値ある物としておけばまず殺されない。

 

「えぇ、なので取り敢えず俺の事殺さないで頂けると助かります………。」

 

「う、うーん…。」

 

 手を前に組み、考える様にする魔王軍の女………流石に殺されない……よな…?

 

「………分かったわ、私は魔王軍の幹部シルビア、貴方利用価値が無くなるまで殺さないでおくわ。」

 

 あっぶねぇー!まさか幹部だったとは。

 

「…宜しく、シルビアさん、俺は佐藤和真………お姉さんが美女で助かりました、これでむさ苦しい男だったら確実に逃げ出してましたよ。」

 

「あら?美女だなんて嬉しい事言ってくれるじゃない、でも褒めても何も出ないわよ?」

 

 最悪土と風の魔法の組み合わせで目潰しをし、頑張って逃げよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、この文字なんて書いてあるか言ってくれる?」

 

 そう言われ、俺は文字盤を凝視する……多分これは…

 

「小並コマンド……ですかね、多分。」

 

「こなみ……こまんど…?」

 

 懐かしい……これまた有名な入力コマンドじゃないか。

 

「それで、どうすればこの扉が開くわけ?」

 

「そうですね…この文字盤に、小並コマンドを打ち込めば良いのでしょう…少々お待ちを。」

 

 そう言って、俺は古き良き思い出を思い出しながら入力していく………懐かしいなこの感覚、久しぶりにコントローラーを握ったよ。

 

 入力が終わると、ゴンゴンと機械的な音を立て重い扉が開いていく。

 

「ほら、開きましたよ。」

 

 シルビアが、中の様子を窺いながらゴソゴソと灯りを用意する。

 

 俺の前で、無防備な背中を晒しながら。

 

 ………あれ?これもしかして…。

 

「あら?逃げてる内に脅したのかしら……ねぇあなた、灯りなんてもってな」

 

 何かを言いかけたシルビアの背中を、男女平等ドロップキックで突き飛ばした。

 

「えっ?」

 

 ___真っ暗な地下格納庫へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「__ッ!?___ッ!___ッッッ!!!」

 

 シルビアが何かを喚いている。

 

 入り口が再び閉じた格納庫の中から、ドンドンと扉を叩きながら。

 

「おや?和真君ではないか?」

 

 背後からの声に振り向くと、慌てた様子のニート集団……もとい里の防衛軍達が駆け付けてきていた。

 

「あぁブッコロリーさんですか、魔王軍幹部なら、この中に閉じ込めましたよ。」

 

「おぉ!それは凄いな、でも大丈夫か?中には確か俺達の天敵、魔術士殺しがあったんじゃ…?」

 

 ………嘘だろ…?もしそんなもんが起動されようもんなら、大変な事に…。

 

「なーに、俺達にすら使用方法が解読出来ないんだ、大丈夫だろ。」

 

「あぁ、もしシルビアが兵器が起動できたなら、逆立ちしながら里を一周してやるよ!」

 

 ………こいつ等ワザと言ってんのか…?

 

 どうにも嫌な予感がするが、大丈夫だよな?

 

「………なんだ?何だか地面が揺れてないか?」

 

 ブッコロリーが足下を何度も踏みしめながら、そんな事を言った。

 

 俺が逃げようとした瞬間___

 

 「アハハハハハッ!やってくれたわねボウヤ!でも残念、私は兵器だろうが何だろうが、身体に取り込んで一体化する力を持つ………。魔王軍の幹部、グロウキメラのシルビアよ!!」

 

 突如地面が盛り上がると、辺りに土砂が飛び散った……下半身を巨大なメタリック色の蛇の胴体と化しながら、勝ち誇った高笑いを上げるシルビアが居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 紅魔族と共に避難した俺達は、燃え盛る紅魔の里を見下ろしていた。

 

「里が……燃えていく……。」

 

 聞こえてきた小さな呟きにそちらを見ると、めぐみんと同じ様な眼帯を着けた女の子が、悲しげな表情で紅魔の里を目に焼き付けていた。

 

 里では、ラミアの様な姿になったシルビアが、口から燃え盛る炎をまき散らし、里を真っ赤に染め上げていた。

 

 それを見て、胸の辺りが痛くなる。

 

 お、俺が封印を解除したから?いやでも、あの状態なら仕方ない、うん。

 

 そんな言い訳をしていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「おーい和真!大丈夫!?」

 

 後ろを見ると、クリスとダクネスそして………こちらと目を合わせようとしないめぐみんが居た。

 

「あ、あぁクリスにダクネス………それにめぐみんも。」

 

 めぐみんは俺の言葉にピクリと反応すると、ダクネスの背中へと隠れてしまった。

 

 ダクネスは少し困った様な顔をして、めぐみんから目を逸らし俺へと向き直る。

 

「……まぁ、二人の件については後でだ………それで和真、なにか作戦はあるのか?」

 

「そうは言ってもな………魔術が利かないんじゃ、どうしようも……そういや、これがここに封印されてたって事は、昔あれを倒した物がある筈だろ?それは何処にあるんだ?」

 

 そうめぐみんに言うと、おずおずとダクネスの背中から出て来た。

 

 少し言い淀んだ後、小さな声で喋りだす。

 

「………和真。残念ですが、魔術殺しを仕留めたと言われている兵器は、誰にも使い方が分かってなく、使用法を記したとされる文献も残されてはいるのですが、里の族長ですら解けない不可解な文字でして……。」

 

 めぐみんが、燃える里の姿をしっかりと目に焼き付けながら言ってくる。

 

 知識の高い紅魔族だ、そんな考えはとっくに辿り着いていたのだろう。

 

 ………打つ手なし……か、そう思っていた時だった。

 

「ふむ……では私が囮になって、シルビアを引き付けよう、紅魔族の援護があれば、そう簡単に殺られはしないだろう。」

 

 そんなバカな事を言い出したダクネス、ここで趣味を出されても困るのだが……。

 

「………お前は何を言ってるんだ…?ここで趣味を出すのは控えろ全く…。」

 

「お、お前と言う奴は………アクセルに帰ったら決着をつける必要があるな!それに、ちゃんと考えがあっての事だ!」

 

 …考え…?

 

「私が引き付けている間に、暗視が可能なクリスと和真で、潜伏スキルであの破壊された地下格納庫に侵入、そこで兵器とやらを持ってこい。」

 

「………その肝心の兵器が、使い方が分からないって言ってんだが…。」

 

 少し呆れた様に言ってやると、ダクネスが。

 

「もちろん聞いてたし理解もしてる、だが使い方が分かればどうにかなるのだろう?ならまずはその兵器を見つけてこい、一か八かだ。」

 

 想像以上に脳筋なお嬢様の発言に、俺が立ち眩みを覚えていると。

 

「……いいんじゃない?やってみる価値はあるよ。」

 

 そうクリスが言い、それに釣られ他の奴らも言い出した。

 

「良いね!こんな展開、嫌いじゃないよ!」

 

「むしろ大好物だ!あんた達、外の人なのに分かってるな!」

 

 どうやら彼等の琴線に触れてしまったらしい。

 

 ………しょうがない、俺も正直こう言う一か八かの状態嫌いじゃない、むしろ好きだよ。

 

「ほら、和真も準備して!」

 

 何故かワクワクしているクリスと共に歩きだす___

 

「和真ッ!!」

 

 めぐみんが震えた手で杖を持ち、俺の名を呼ぶ。

 

「………気を付けて下さい!」

 

「おう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 紅魔族がシルビアに次々と魔法を飛ばし、一人一人囮になり、テレポートを使って避けるとまた次の紅魔族が囮になる。

 

 そんな事を何回も続けられ流石にイライラしてきたのか、段々とシルビアの息が荒くなっていくのを尻目に、俺とクリスは格納庫へと入っていく。

 

「……おい、こん中から探すのか?」

 

 地下格納庫の内部の中央には、用途も分からない大量の魔道具が山に積まれていた。

 

「………ねぇ和真、和真はめぐみんの事、どう思ってる?」

 

 二人で手分けして探していると、クリスが突然そんな事を言ってきた………十中八九昨日の事だろう。

 

「どう……とは?」

 

「恋愛対象として好きかどうか……言わなくても分かってるでしょ?」

 

 少し呆れ気味のクリスの言葉に、俺は考える。

 

 ………別にめぐみんの事は嫌いじゃない、むしろ好きな方だ。

 

 でも、それが恋愛対象かどうか聞かれたら、良く分からない。

 

「………分かんねぇな、でも嫌いじゃない。」

 

「そう。」

 

 そう言うと、またクリスは兵器探しへと戻る。

 

 ………なんでこんなに気不味いんだろう、てかなんで今聞いてくるのだクリスよ、今じゃなきゃ駄目だったのか?

 

「まぁ、私は和真の恋愛にどうこう言うつもりはないけどさ………ちゃんと言わなきゃ分からないよ。」

 

「………そうだ、な。」

 

 そうだよな、あそこでめぐみんが勝手に逃げた、なんて言い訳せず追い掛ければ良かった。

 

 俺に勇気がなかったのを、めぐみんのせいにするのはお門違いだな…。

 

 ………この戦いが終わったら、めぐみんと一度ちゃんと話をしよう…不甲斐ない過去の俺と決別する為に。

 

「ねぇ和真、こんな物見つけたんだけど。」

 

 そう言って、クリスが見せて来たのは一冊の手記だった。

 

 俺はクリスの傍まで行くと、横から手記を覗き込む。

 

 手記の文字は日本語で、クリスは手にした手記を読み上げていく___

 

 

 

 【ここも原作通りなのでカット】

 

 

 

 ………間違いないな、この手記を書いたのは。

 

「これで終わりみたいだね、なんだか見覚えのある文字だったけど……。」

 

 機動要塞デストロイヤーを作り、中で白骨化していた研究者だ。

 

 この手記の記述からすると、多分この後にデストロイヤーを作ったのだろう。

 

 と、言うか多分こいつもクリスが送った日本人なんだろうが………適当過ぎやしないか?

 

「………なぁ、今まで特に気にしなかったが、クリス……いやエリスって幾つなの…?少なくとも、デストロイヤーが作られる前から女神やってたって事だよな?」

 

 バサッという音と共に、クリスが手記を床に落とした。

 

「ねぇ和真?女神は年を取らないんだよ?そろそろ本気で罰当たるかもよ?」

 

 妙に真面目ぶった口調でそんな事を言ってくるクリスに向けて、俺は聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で呟いた。

 

 

 

「………エリスおばあちゃん………」

 

 

 

 クリスが腰のタガーを引き抜き、俺に刺しに掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はクリスから逃げつつ、目星の付いた所へと走る。

 

 止まれば刺され、見つかれば焼き殺されるこの状況………ダクネスが今この場にいたら喜びそうだな。

 

 そんな事を考えていると、目的の場へと辿り着いた。

 

 店の庭には、鈍い銀色のライフルが物干し台に鎮座していた。

 

「よし、後はコイツを紅魔族の下へ持っていけば………。……ん?」

 

 俺はふと周りを見渡す。

 

 先程まで嫌でも聞こえていた破壊音が消えている、不思議に思いシルビアの方を見ると、シルビアはその動きを止めていた。

 

 「ゆんゆんさんじゃねーか!あの子は一体何やってんだ…!!」

 

 見ればゆんゆんさんが、シルビアと一人対峙している。

 

 既に他の紅魔族達は魔力を使い果たしているのに気付いた、だがそれだけが理由ではないらしい。

 

 まるで憧れのヒーローでも見るかの様な目で紅魔族の人々がゆんゆんを見守る。

 

「おいダクネス、これはどういう状況だ。」

 

 俺達はヒソヒソとダクネス達の元へと戻り、この状況の理由を聞いていた。

 

「あぁ和真、例の兵器とやらは見つかったのか。ゆんゆんは今、ああしてシルビアの気を引いてくれている。」

 

「そうか、そういやお前囮はどうしたんだ?何処かやられたのか?」

 

「シルビアの注意を引こうとしたのだが……、最初は上手く囮をこなせていたが、その内お前みたいな硬い癖に攻撃しない女は相手にしてられない……と…。」

 

 悲しげに俯くダクネスの頭を、めぐみんがポンポンと撫でている。

 

 防御力だけの女と見抜かれたか……。

 

「しょうもない理由なのは分かった、それよりあそこにいるゆんゆんさんを助けないと……。」

 

「いーや!ここで邪魔してはいけません!あの子は何かやる気です!」

 

 何時の間にか調子を取り戻していためぐみんが、ワクワクと何かを期待した様な表情で言ってくる。

 

 そんな里の多くの紅魔族こ注目を浴びるゆんゆんさん、そびえ立つ高い岩の上が狭いからか、そのまま片足を鶴の様に上げてピタリとバランスを取る。

 

「すぅ〜……ふぅ〜……、我が名はゆんゆん!アークウィザードにして、上級魔法を操る者………紅魔族随一の魔法の使い手にして、やがてこの里の長となる者ッ!!」

 

「あぁっ!?」

 

 そんなゆんゆんの堂々とした宣言に、めぐみんが愕然とした声を上げた。

 

「魔王軍幹部、シルビア!紅魔族族長の娘として……!あなたには紅魔族の族長となる者にしか伝えてられていない禁呪を見えてあげるわ!」

 

 そう言って、何か呪文を詠唱する。

 

 雷鳴が轟き背後に稲妻が集まる中、そんな決めポーズを取るゆんゆんを見ていた紅魔族の面々が、ハラハラと涙を溢していた。

 

 ………そんなに泣けるシーンか?

 

「どうしたの?魔術が利かない私に、どんな魔術を見せてくれるのかしらねッ!!」

 

 そう言って、ゆんゆんの方へと走り出したシルビア、ゆんゆんはタイミングを見計らうかの様に、シルビアを見つめる。

 

 二人の間がもう数十メートルと迫った時、岩の背後から光の屈折魔法で隠れていたであろうそけっとさんが現れた。

 

「え!?ちょ……待って……!」

 

「『テレポート』!」

 

 ………これは酷い。

 

 シルビアが少しの間止まると、カタカタと震えだした。

 

「___ッ!!!…………!?……!!!!」

 

 声にならない悲鳴を上げ、暴れ始めた。

 

「おいめぐみん、アイツが隙だらけな今の内に攻撃準備だ。爆裂魔法をぶちかましてやれ!!」

 

「わ、分かりました!」

 

 そう言って、めぐみんが爆裂魔法の準備を始める。

 

 ………本当に一か八かになったな、まぁ駄目だった時はそん時だ、また作戦を考えれば良い。

 

「和真!準備出来ましたッ!!」

 

「よし、撃てぇッ!!」

 

「行きます………『エクスプロージョンッ』!!!!」

 

 めぐみんの杖先から何時もみた光景、これで倒れてくれる事を祈りつつ、俺は手を合わして目を瞑る。

 

 ………と、何時もなら聞こえてくる爆発音が来ないのを不思議に思い、目を開け辺りを見渡す。

 

「か、和真……それ…!」

 

 と、クリスがレールガンへと指を指す。

 

 そこには、先程までの無機質だったレールガンとは思えない程に光っており、今にも爆発しそうだ。

 

「……なんだかピコピコしてないか?」

 

 めぐみんを抱えていたダクネスが突然そんな事を言い出した。

 

 視線の先には___

 

「成る程な…!」

 

 地面に転がるレールガンの側面に、『FUll』の文字が点滅していた。

 

 俺は手記に書かれていた、魔法を圧縮して撃ち出す兵器だという事を思い出した。

 

「魔王軍幹部、シルビア!俺の名前を覚えとけ!あの世に行ったら他の幹部によろしくな!俺の名前は「えい。」」

 

 決め台詞と共に、トリガーを引こうとしたその瞬間、ぐったりとしためぐみんが俺より先に引き金部分を引っ張った。

 

「ハッハッハッ!!私の活躍を奪おうたってそうはいきませんよ!!」

 

 そんな事を言って、シルビアを倒した英雄は、めぐみんに取られたのであった…。

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