この素晴らしいエリス様と祝福を!   作:おふざけちゃん

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この素晴らしいエリス様と祝福を!六花の王女様!! 3

 

 「第三章 この無垢な少女に悪戯を!」

 

 辺りは完全に闇に包まれ、そろそろ人が眠りについてもおかしくない時間帯。

 

「「「お帰りなさいませアイリス様!!!」」」

 

 そんな時間にも関わらず、大勢の侍女が一斉に出迎える。

 

 そこは、この国の首都の中心にある城の大広間。

 

 俺は一体どうしてこんな所に居るんだろう、そんな事を考えながら王女様に引き摺られ城へと入る。

 

 王女様と白スーツに案内されたのは、城の上部にある豪奢な部屋。

 

 白スーツは案内が終わると何処かへ行き、俺と王女様と魔法使いだけがその部屋に取り残された。

 

 途中、通り過ぎる人達が全員一礼して素通りして行く。

 

「………何だかむず痒いな。」

 

 唐突に拉致られ、未だ状況があまり飲み込めてない俺に、魔法使いのお姉さんが口を開く。

 

「佐藤和真様、ようこそ当城へ。客人として招いたのですから、余計な礼儀は不要……どうかここを我が家と思い寛いで下さい。では………。」

 

 一通り説明を終えて、俺と王女様を残して去ろうとする魔法使いの首根っこを掴む。

 

「ちょっと待て、すいませんお姉さんちょっとだけこっち来て下さい。」

 

 俺はお姉さんを引き摺り、部屋の隅へと運ぶとお姉さんに耳打ちする。

 

「あの、すいませんお姉さん。」

 

「何でしょう?………あぁ、自分の事はレインで結構。自分に対しては敬語も不要です、一応は貴族の端くれですが……まぁダスティネス卿と比べればミジンコですので。」

 

 魔法使いのお姉さん、レインがそんな事を言ってきた。

 

「成る程。ではレインさん、ちょっと聞きたい事があるんですけど……。」

 

「……別に敬語は結構だと言いましたのに。」

 

 レインさんは少し残念そうに言ってるが、俺はただダクネスと友人なだけ。

 

 ましてや俺が何かやらかした時に助けてくれる友人も今はいない、相手が良いと言っても流石に慎重に行かざるを得ない。

 

 俺は退屈そうにしている王女様を尻目に、小さな声で。

 

「単刀直入に聞くんですが………これ誘拐ですよね?」

 

「違います。客人としてアイリス様がお招きしたのです。決して誘拐等ではありません」

 

 気は確かかこの女。

 

 すると、身を小さく屈めて囁いてきた。

 

「……常に厳格な王族である事を強いられていたアイリス様が、生まれてはじめての我儘なんです。少しの間だけで良いので、アイリス様の遊び相手を務めて頂くわけにはまいりませんか?」

 

 そう言って、アイリス様の方を見る気が確かじゃないレインさん。

 

 ………そんな事言われると、断りづらいじゃないか。

 

 しょうがない、佐藤和真一肌脱ぎますか!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白スーツが戻って来た。

 

「失礼します。アイリス様、色々と手続きを済ませて参りました、これで和真殿は正式な客人となりましたので、気兼ねなくこの城に滞在できま………」

 

 俺が王女様に語っていた話が、まさに一番盛り上がっていたところに。

 

「で、ダクネスは言ったんだ。『うぅ……やっぱり私には、こういうのは似合わないな。』って……。だから俺はあいつにプレンゼントしたんだ、白のフリフリのワンピースを。それを見つけたあいつは、恐る恐る手に取り恥ずかしそう……っ!」

 

「は、恥ずかしそうに……っ!?着たんですか、着なかったんですか…っ!?」

 

「………あまりララティーナ様の、恥ずかしい話をしてあげないで下さい。」

 

 白スーツが苦笑しながらこちらに歩み寄る、何だかあの時の白スーツとは別人だな。

 

「とか言いつつ、クレアも聞く気満々ではないですか。」

 

 そう言って、お互い笑い合う二人。

 

 何だか中慎ましい姉妹みたいだな………白スーツのアイリスに向ける目がじゃっかんやばい気もするが、まぁ気の所為だろう。

 

「それで……その後、ダスティネス卿はどうなさったんですか?」

 

 何だかアイリスよりも興味津々に聞いてくる白スーツ、俺はコホンと一度咳き込み話を続ける。

 

「そこでダクネスが周りを何度も見渡したたんだ、自分の部屋だってのに…。すると、徐ろに服を脱ぎ始めたので一度目を逸らし、3分ほどたってから部屋を覗いたんだ………すると、」

 

「「すると……?」」

 

「少し恥ずかしそうながらも、何時もより可愛らしいダクネスがそこにいたんだ……。」

 

 あの時は渡したかいがあったもんだ。

 

 まぁその後覗いている所をクリスに見られ、弁解するのに一時間程掛かったせいでその一瞬しか見れなかったが。

 

「昔からララティーナ様が可愛らしい物が好きなのは知っていたが、何時もプレンゼント等では可愛らしい物は断っていたからな………少し意外だ。」

 

「クレア、今度のララティーナの誕生日プレンゼントが決まりました!」

 

「さて、他に聞きたい話はあるか?と言っても、こっちに来てからあまり経ってないからもうそろそろ話題が尽きるが。」

 

 そう言うと、二人共少し考え込む………これ実は二人共知らないだけで、生き別れの姉妹とかではないよな?考える動作も似ている、とっても微笑ましい光景だ。

 

「なら私からも質問良いか?実は、和真殿の元居た国での話が気になっているんだ。」

 

 そう挙手して聞いてくるクレア。

 

 日本での話か………ゲームなら沢山あるが、どれも似たりよったりだしな……あ、そうだ!

 

「そうだな、ならこの世界にもある"学校"について話そう。」

 

「「ガッコウ?」」

 

 確か紅魔の里にあったな、名前はまぁ………うん。

 

 にしてもこの世界には学校はあまりないのか………まぁ必要はないか、たが少し寂しくも感じる。

 

 そんな事を考えながら、昔の学校生活を思い出しながら話初めた。

 

 勉強は面倒くさいだとか、足が速いとモテるだとか、運動部は全員もれなくモテるのは嘘だとか。

 

 一通り話終えた後、二人共うとうとしているのに気付き時刻を確認する。

 

 ………もう深夜過ぎか。

 

 二人と話している内に、二人共とすっかり打ち解け口調も砕けたものになっていた。

 

「……和真さんは、まだ眠たくはないのですか…?」

 

 コクリコクリとしながら、もう眠りに付いたアイリスを撫でながら聞いてくる白スーツ。

 

「ん?まぁ夜には慣れてるからな、この時間に寝れている方が珍しかったさ。」

 

 そうカッコつけて言うと、尊敬の眼差しでこちらを見詰めるクレア。

 

 まぁ嘘ではないからね、ゲームのボス戦で寝れない日々が続いたからね。

 

「和真さんは凄いですね………私達騎士団も、見習わなけ……れ…ば…。」

 

 完全に寝落ちした白スーツとアイリス、二人共向き合って寝ている所を見て、俺は思わず口角が天井を突き破る。

 

 ……やっぱり妹が欲しいな、確かアイリスにも本物のお兄さんがいたしな。

 

 そんな事を考えながら、俺も眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コンコンと、聞く音を不快にさせない大きさの、気配りのなされたノック音。

 

 少しぼーとした頭をお起こし、昨晩の事を思い出す。

 

 ………そういや、少しの間ここで暮らす事になってたな。

 

「アイリス様、お目覚めでしょうか。実は昨晩からクレア殿が見当たらないのです……が…?」

 

 ドアを開け、こちらを見詰める執事。

 

 多分名前はセバスチャンとかそんな所だろう。

 

 そんな事を考えながら、俺は何故セバスチャンにこんなに見つめられているのかを考える。

 

 ………あ、ここアイリスの部屋だからか、さっきもアイリス様とかなんとか言ってたしな。

 

 とここで俺は気付く、俺が今置かれたこの状況に。

 

 左手に何故か抱きついているアイリスと、そのアイリスを覆い被さるかの様に、抱きついている白スーツ………。

 

 これだけならまだ弁解の余地はあっただろう、しかし俺は寝る時に上だけ脱ぐ癖がある………つまり。

 

「事後………でしたか…。」

 

 セバスチャンがそっとドアを閉め、部屋から去っていく。

 

「ちょっと待て、話をしよう。」

 

 俺はギリギリ去る前にセバスチャンの腕を掴み、こちらへと引っ張る。

 

「安心して下さい和真様。私は口は堅い方なので。」

 

「いや違うから!そんなんじゃないから!」

 

「大丈夫です。人の噂も75日……もし私の口が緩くなってしまっても、確証されてない噂等すぐに無くなります。」

 

「テメ!話す気満々じゃねーか!!」

 

 異様に力の強いセバスチャンを引っ張り、俺は自分に用意された部屋へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お待たせ致しました。本日のお食事は、レッサードラゴンのベーコンに目玉焼き。新鮮なアスパラガスをふんだんに使った野菜サラダです。アスパラガスは攻撃力が非常に高い為、反撃を受けないようご注意下さい。」

 

 色々とツッコミ所の多い事を言いながら、セバスチャンモドキは去っていった。

 

 あの後、何とか弁明をした俺はなんとかセバスチャンを落ち着かせ、取り敢えず朝食を食べる事にした。

 

 さて………初めて見るドラゴンがまさかベーコンの姿とは悲しいな。

 

 それに攻撃力の高いアスパラガスも気になる。

 

 俺は傍らに置かれた目玉焼きにフォークを刺す。

 

「キュー」

 

 ………キュー…?

 

 何か聞こえた気がするが、多分気の所為だろう。

 

 ほら見てみろこの目玉焼き、とっても美味そうじゃないか………何か動いてる気もするが。

 

 食べるかどうか迷っているとドアがノックされる。

 

「どうぞー」

 

 アスパラガスを食べようとすると、フォークの先が弾き飛ばされたので食事を諦め、ドアの外に返事をする。

 

 そして………。

 

「…お、おはよう御座います……。」

 

 ドアの陰に半分ほど身体を隠し、恥ずかしそうにか細い声を出すアイリスがそこに居た。

 

 何だかモジモジしたまま入ってこない。

 

「お、おはようアイリス…様。昨日は夜遅くまで話してたのに、また随分と早起きですね。」

 

「あの、出来ればこの城の中では昨日の様に、もっと砕けた口調の方が嬉しい……です。」

 

 二人でぎこちない挨拶を交わし、何となく見つめ合う。

 

 昨日はもっと打ち解けていた筈だが、アレは俗に言う深夜テンションと言うやつだ。

 

 アイリスも朝になって少し冷静になったのだろう。

 

「そうか、んじゃ。おはようアイリス。」

 

「はいっ!お、おはよう御座います…か、和真さん。その、ちゃんと服を着て下さい…。」

 

 

 

 ___身支度を済ませ、一通り食事を終えた俺はアイリスと共に城の中を散歩していた。

 

「良いかアイリス?世界には全裸になって寝てる奴も居るんだ、だから俺が変態だとかじゃないんだ。」

 

「分かりました、わかりましたから。その話はやめにしましょう和真さん!」

 

 これ程朝がドタバタとした日は初めてだった。

 

 俺はこの城で何をすれば良いのかを聞いた所、アイリスの知らない事や興味を惹きそうな事など、適当に話せば良いらしい。

 

 つまり、アイリスの遊び相手的な感じだ。

 

「それで……実は、今日は習い事がお休みなので、このゲームの相手をして頂ければ、と。」

 

 アイリスが、誘いを断られないかと不安そうにおずおずと尋ねてきた。

 

 俺は椅子に座ると、盤上に駒を並べる。

 

「別に構わないが、俺これアイリスに勝ったら不機嫌になって首飛ぶとかはないよな?全力で行ってもいいよな?」

 

「は、はいっ!それこそ望む所です!城の人達は私に気遣ってか、誰も相手をしてくれないのです!私は別に負けてもいいんです!」

 

 顔を輝かせ、笑顔で首を縦に振り元気一杯の声で喜ぶアイリス。

 

 全く城の連中はなにをしてるんだ……こんな可愛らしい王女様を寂しく寂しくさせやがって。

 

 白スーツにでも言っとくか。

 

「良しッ!それじゃ、ゲームの前に挨拶だ。よろしくお願いします!」

 

「よろしくお願いします!」

 

 二人で盤を見渡し、俺は駒を手に取り……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで………チェックメイトです!」

 

 フルボッコにされた俺は、このゲームがクリスとめぐみんがやっていたやつだと思い出した。

 

 何だこのゲーム……やっぱり俺には苦手だったか。

 

「強いなアイリス……良しもっかいだ!次は勝つ!」

 

「フフン!次も私が勝ちます!」

 

 あの後、アイリスの手癖を読みつつ、なんとか喰らいついていく。

 

 成る程、このゲーム、守るよりも攻めた方が強いな。

 

 そして冒険者のポテンシャルが高すぎる、将棋で言う成るのが簡単になった歩みたいな感じだ………。

 

 見た目はチェスみたいだが、ゲーム性で言えば将棋に近い。

 

 成る程………まるで将棋だな。

 

「___和真さん。何だか急に上手くなっていませんか?」

 

 そう言って、疑惑の目を向けるアイリス。

 

 もしかして最初は手を抜いていると疑われているのか…?

 

「ん?まぁ、アイリスの手は読み易いからな。多分あと二回くらいすれば俺が勝てると思うぜ?」

 

「そうですか………でも、そう簡単に勝てるとは思わないで下さい!」

 

 そう言っても、やはりゲームで言えば俺の方が慣れている、段々とアイリスの盤面が苦しくなっていく。

 

 まぁゲームなんてそんなもんだ、一つの技を極めるよりも、すべての技を人並みに出来る方がスペックは高く使いやすい………なんて事を言えば、めぐみんに襲われる。

 

「さて、まさか二回目で勝てるとは……ほれ、チェックメイトだ。」

 

 アイリスが悔しそうに盤面を見る。

 

 何度見たって勝敗は変わらない、しかしこれなら、クリス達ともこのゲームで遊べそうだな………あのギャルゲー、クリアしたのかな。

 

「もう一度です!もう一度お手合わせをお願いします!!」

 

 机から身を乗り出し、子供ながらで済む悔しそうな言動と行動………やっぱり王女様でも子供は子供なんだな。

 

「おう良いぞ。こっから全部勝ってやるよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「___お、おいアイリス。そろそろ暗くなってきたから、今日はもう終わらないか?」

 

「もう一度、もう一度です!やっと和真さんの癖も分かってきた所です!あとちょっとで勝てる筈なんです!」

 

 困ったな………まさかここまで負けず嫌いだと思ってなかったな。

 

 ゲーム盤を前に、落ち着かせようとしていると、焦った表情で白スーツが駆け寄ってきた。

 

「ア、アイリス様どうしたんですか!?和真殿も、一体何が……!」

 

 そう言って、盤面を見る白スーツは全てを察したのか、アイリスを宥める。

 

「アイリス様、負けて悔しい気持ちは分かりますが、そろそろ夕食の時間です。また次勝てば良いでしょう!」

 

「クッ!和真さん!次は絶対私が勝ちますからね!!」

 

 そう言って何かを考えながら城の中へと行くアイリス。

 

 白スーツはもう一度盤面を見て、俺の方へと目を移すと。

 

「和真殿も、少しは手加減をして下されば良い物を……。」

 

「アイリスに言われたんだよ、本気で来てくれってな。そう言うお前だって、アイリスに挑まれたら受けてやったらどうた?」

 

「うっ…!い、痛い所を突かれましたね…。」

 

 少し困った表情で盤上を見つめる………このゲームに何だか思う所でもあるのだろうか?

 

「……実は、私自身、あまりこの手のゲームは得意ではないので……。」

 

 そう言って、何だか思い出すような表情で上を見る白スーツ。

 

 ………そうか、こいつも一応王族だったな、ダクネスがあまりに自由過ぎて、王族があまり一般と変わらないと錯覚していた。

 

「なら、暇な時間に声でも掛けてくれよ、もしアイリスを寂しい思いさせたくないのなら、簡単にゲームのいろはを教えてやるよ。」

 

 俺は席を立ち上がり、夕食を食べに城の中へと戻る。

 

 少し後ろを歩くかの様に、白スーツも着いてくるのを尻目に、俺は今日からお姫様の遊び相手を務める事になったのを、心の中で親に報告した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋の中からレインさんの声が聞こえてくる。

 

「___と、この様な理由から、代々王族の方々は、普通の人よりも多くの才を持ってお産まれになります。」

 

 どうやら歴史の授業みたいだな。

 

 ちょっとこの世界の歴史も気になるし、ここで聞いてるか。

 

「あ、和真殿。丁度良い所に居た。」

 

 耳を傾けようとした矢先、白スーツがこちらに駆け寄ってくる。

 

「ん?どうした白スーツ。」

 

「クレアです。和真殿、今お暇でしょうか?」

 

「まぁ、アイリスの授業が終わるまで暇だな。」

 

「それなら、昨日言っていたゲームのいろは、今教えて頂く事は可能でしょうか?」

 

「おぉ良いぞ。」

 

 全然歴史の事について聞けなかったが、まぁゲームの方が楽しいしね。

 

 白スーツと二人で、昨日アイリスと一緒にゲームをしていた場所へと移ると、席に着く。

 

「さて、それじゃやるか。」

 

「はい、お願いします。」

 

 ……何だか、自分より歳上のお姉さんに敬語は違和感満載だな。

 

 あの日の夜も思っていたが、やはり俺は敬語よりもタメ口派なんだ。

 

「じゃあまずはその敬語をやめろ、俺自身むず痒いから教え辛い。」

 

「そ、そうか。私もタメ口の方が楽で助かる。」

 

「さて、じゃあまずはこのゲームのルールを覚えてるか?」

 

「えっと…済まない、実はゲーム類のルールは殆ど覚えていないんだ。」

 

 ………これは骨が折れそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良いか?これがこうで、ここがこうなる。分かったか?」

 

「な、成る程、これはどうなるんだ?」

 

「これか?これはな……。」

 

 あの後、なんとかルールを覚えさしたのだが………やはり、王族と言うのは地頭が良いのだろう。

 

 思いの外すぐにルールは覚え、俺が思いつかなかった戦法を、出来るかどうかを聞いてくる。

 

 ………しかし、白スーツは気付いているのだろうか?集中し過ぎているばかりか、真隣に座って居るのを。

 

 ま、悪い気はしないけどね!

 

「…ん?もうこんな時間か。」

 

 夕方に差し掛かった頃、そろそろアイリスの勉強も終わる頃だろう。

 

「うし、なら今日はここまでだ。また時間が空いた時にでも声を掛けてくれ。」

 

「あぁ。今日は付き合って貰って済まなかったな。」

 

「良いってことよ。」

 

 ボードを片付け城へ戻る………と、何だか寂しそうな目で窓を眺めている王女様が居た。

 

 何だか絵になるなぁ。

 

「おーいアイリス!」

 

「あ!カ、和真さん!」

 

 此方を見て少し喜ぶ表情を見せると、ハッと不貞腐れた顔になる。

 

「?どうしたアイリス。そんな顔してると、可愛らしい顔が台無しだぞ?」

 

「………」

 

 困ったな。

 

 アイリスに何かしてしまっただろうか?嫌でも今日はまだ何もしていない筈だが……あ!

 

「もしかして、アイリスをゲームに誘わなかったの、怒ってる?」

 

「………」

 

 そう言うと、チラリとこちらを見た後、またプイと顔を逸らしてしまった。

 

「…和真さんは、誰の遊び相手ですか?」

 

 ………困った王女様だ、もし授業を妨害して遊びに誘ってみろ、レインさんに怒られちまう。

 

「すまんかったアイリス。別にアイリスを放ってた訳じゃないんだ。」

 

 アイリスは振り返り、少し笑いながは此方を見る。

 

「フフッ。別に怒ってませんよ、しかし今日はまだ遊んでいません。なので、今日の夜部屋へいくので待ってて下さい!」

 

 機嫌が治ったのか、鼻歌を歌いながら手を取るアイリス。

 

「さ!夕食を食べに行きましょう!」

 

 その身体の何処からそんな力が出ているのか、成人男性よりも強い力で俺を引っ張るアイリスに連れられ、夕食を食べに行く。

 

 ___夕食も終わり、アイリスが部屋に来るまでの待ち時間。

 

 今日は何を話そうかと考えていると、扉の方からコンコンと音が鳴る。

 

「どうぞ。」

 

 扉を開けると、少し恥ずかしそうに可愛らしいピンクの寝間着を着たアイリスが入って来た。

 

 ………ここ最近、アイリスはかなり要領が良くなったと思う。

 

 最初に出会った頃の素直で大人しいアイリスは何処へ、今やそこら辺に居る元気な小娘となんら変わりのない元気な子供になったな。

 

 多分、元がこれなんだろう。

 

「あの、和真さん?」

 

 俺が黙っているのを不思議に思ったのか、顔色を伺う様に覗き込む。

 

「ん?すまん。随分可愛らしい寝間着だと思ってな。」

 

 そう言うと、少し照れたのか顔を抑えるアイリスを眺めながら、俺は眠たい目を擦る。

 

「……あの、和真さん。」

 

「ん?どうしたアイリス。」

 

 何だか真剣な表情で、此方を見てくるアイリス。

 

 一体全体どうしたのだろう。

 

「前に、私にはお兄様が居るのを話しましたよね。」

 

「あぁそんな事言ってたな。」

 

「はい。………それで、実は最近の和真さんが、昔私と遊んでくれたお兄様に良く似ているんです。」

 

 ほう、それは何処が似ているのだろうか?少なくとも、王族に俺みたいな奴が居るとなると大変危険な気もするが。

 

「………もし、もしで良いのですが。………お兄ちゃん…と呼んでも宜しいでしょうか…?」

 

 下に俯き、最初に遊びを誘ってくれた時みたいな感じに、何だかビクビクしている。

 

 ………まさかこの世界で妹が出来るとはな。

 

 拝啓お父さん、お母さん、あの時は我儘言ってしまってごめんなさい。

 

「あぁ、是非呼んでくれ。」

 

「っ!!お兄ちゃん!!」

 

 アイリスが俺に懐に抱きついてくる。

 

 なんて感動的なんだ、心を開かなかった王女様が、一端の冒険者の手によって元気な子供へと変貌をとける。

 

 俺は懐で眠ってしまったアイリスを抱き抱え、アイリスの部屋へ運ぶ為にドアを開ける。

 

「あれ?聞いてたの?」

 

 ドアの傍で腕を組み、立っていた白スーツ。

 

「………済まないな。少しばかり盗み聞きさせてもらった。」

 

「そうか。」

 

 俺は気まずい雰囲気を感じながら、前を通り過ぎてさっさと寝ようと白スーツの前を通ると___

 

「和真殿」

 

 そう言って、俺の前で頭を下げながら。

 

「………和真殿が来るまで、アイリス様はあまり元気な様子はなかった。しかし和真殿が来てから、アイリス様は日に日に元気になっていった。今日は和真さんに負けて悔しかった、今日は和真さんにこんな面白い話を聞かしてもらった。そんな事を元気に言うアイリス様を見れたのは、和真殿のお陰だ。感謝する。」

 

 辛気臭い事を言う白スーツ。

 

 まぁアイリスが元気なかったのは、お前らがもう少し対処出来た気がしなくもないが……まぁ王族には色々とあるのだろう。

 

「ま、一緒にゲームをやった仲間だ、そんなに頭を下げないでくれ。」

 

 俺はそう言って、頭を上げたクレアにアイリスを託す。

 

「アイリスを部屋まで連れて行ってやれ。それと、クレア。俺の事は和真で良い、俺達の仲だろ?」

 

 因みに、アイリスが思いの外重かったので運ぶのを面倒くさくなったとかそんな事は決して無い。

 

「………それもそうだな。本当に済まなかったな、和真。」

 

 そう微笑みアイリスを抱き抱え運ぶ白スーツ。

 

 何だか白スーツの笑顔初めて見た気がするな。

 

 ここに来てから楽しい日々だったな………もういっそのことここに住んでしまおうか。

 

 そんな事を考えながら、俺は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ___今の時刻は昼過ぎだろうか。

 

 アイリスの今日の予定は、午後三時まで勉強。

 

 目が覚めた俺は、上体だけを起こしたまま手を叩く。

 

「お呼びでしょうかカズマ様。」

 

「あぁ、目覚めのコーヒーを頼むよセバスチャン。」

 

「ハイデルです。」

 

 それを聞いて現れたのは、あの時事後と誤解したセバスチャン。

 

 俺はセバスチャンに向かってもう一つ頼み事をする。

 

「それとセバスチャン。この後来るメアリーのスカートの丈を___」

 

「三mm短くするように……ですね?それと、ハイデルです。」

 

「フッ……良く分かってるじゃないか。」

 

 コーヒーに手を付け、セバスチャンが部屋の外へと出たの確認し、俺は今日こそメアリーのスカートの中を、覗くためスタンバイする。

 

 やがて、俺の予想通りに聞こえてきたコンコンと叩く音。

 

「おはようメアリー。今日こそはその夢の詰まったスカートの中を覗かせてもら……う…。」

 

 入って来たのはダクネスだった。

 

「………おはよう、ダクネス。」

 

「あぁ、おはよう和真。そしてさようなら。」

 

 俺は全力でその場から逃げた。

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