この素晴らしいエリス様と祝福を!   作:おふざけちゃん

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億千万の変態花嫁
この素晴らしいエリス様と祝福を!億千万の変態花嫁


 

 エピローグ「六花の王女様!!」

 

 次の日の朝。

 

 一夜明けた王都は大騒ぎになっていた。

 

 何せ城にたった二人で乗り込み、王女から魔道具を強奪していっただけでなく、腕利きの冒険者達が多数泊まり込んでいた日に………である。

 

 ___そして今。

 

 俺がいるこの部屋も、大変な事になっていた。

 

「ダダダ、ダクネス、お願い落ち着いてええええ!!あれにはちゃんとした訳があぁぁぁ!!」

 

「あぁ聞いてやろう、聞いてやろう!どうして女神様が義賊何かやってるんだ!?事と次第によっては、信者の私が女神様を正してやろうではないか!!」

 

 俺とクリスはダクネスから呼び出しを受け、宿の一室でクリスがアイアンクローを食らっているのを眺めていた。

 

「おい和真!貴様もそこで佇んでないで、少しは反省したらどうだ!?」

 

 クリスのこめかみを鷲掴み、ギリギリと締め上げているダクネス。

 

 俺もさっき食らったこめかみがとても痛い。

 

「だーかーら!さっきから言ってるだろう?俺はクリスに唆されたのであって、決して!俺の意思じゃないって。」

 

「キ、キミってヤツは!?痛たたたたた!ち、違う、ダクネス聞いて!和真だってノリノリだったんだよ!?確かに持ち掛けたのは私だけど、騒ぎを大きくしたのは全部和真のせいなんだから!」

 

「そりゃないですよお頭!俺はただ、お頭の指示に従ったただの下っ端助手ですよ!!」

 

 俺とクリスの言い争いを聞いていたダクネスは、ビックリするぐらいに真顔だった。

 

 床に正座させられ、未だこめかみを掴まれたままのクリスと、それを眺めている俺は責任の押し付け合いに必死だった。

 

 何せ、ダクネスが今まで見た事もない顔で怒っている。

 

「おい」

 

「「ッ!?」」

 

 喧嘩していた俺達は、ダクネスの冷たい一言で押し黙る。

 

「早く喋れ」

 

 俺達は事の経緯を全て話した。

 

「___全く。ちゃんとした理由があったのは分かったが、もっとこう事を荒げずにする方法はなかったのか?」

 

「そうは言っても俺等は只の冒険者だぞ?ダクネスだってアイリスには頭が上がらないんだ。それに、あんな危険な神器妹に持たせておく訳にはいかないだろ?」

 

「アイリス様はお前の妹ではない!………はぁ。やってしまったものは仕方ない。クリスは銀髪が悪目立ちするだろう、ここで待機しておけ。和真はめぐみんの迎えと、アイリス様への挨拶だ。」

 

 腕を掴まれ、引き摺られていく俺を見送り、クリスは頬を掻き愛想笑いを浮かべながら。

 

「じゃ、じゃあ二人共頑張ってね。そ、それじゃ私はここで待機して………」

 

「待てクリス。」

 

「ッ!?な、何かな!?」

 

 ソロソロと部屋の隅へと出ようとしていたクリスが、ビクリと震える。

 

「………まだ私に隠している事があるな?正直に吐け。」

 

「………えぇっと。」

 

 問い詰められたクリスはオロオロしながら、何故か俺の方に助けを求める様な視線を向けた。

 

 俺の方を見られても………クリスが隠しているものに思い当たる節はないし。

 

 とらクリスが俺の方を指差す。

 

「和真がエロ本盗んでました!」

 

「あぁっ!?お前このッ!!」

 

「貴様ッ!!!!」

 

 またダクネスにこめかみをギリギリと締め上げてくる。

 

 く、クソあの野郎!俺を裏切りやがって!!

 

 観念した俺は、渋々と一冊の本を取り出す………と、何かポトリと落ちてきた。

 

「全く、お前と言うヤツ……は…!?」

 

「あ、そういやこんなのも盗んだな。」

 

 本を受け取り、それを見たダクネスはその場で静止する。

 

「ここ、こ、こ………!?これを、アイリス様から盗んだのか…!?」

 

「そ、そうだけど……やめろよその反応!そんな大した物でもないんだろ!?なぁ、俺をビビらせてるだけなんだろ!?」

 

 しばし呆然と指輪を眺めていたダクネスは、それをそっと俺に渡すと___。

 

「良いか和真。私は何時までもお前の味方だ、だから絶対。絶っっっったいに!!!その指輪は無くすなよ?そして、それは例え女神様であろうとも、ここに居る3人以外には見せずに、墓まで持っていけ。良いな?絶対だぞ?」

 

「………こ、これはそんなにやばい物なのか…!?」

 

「………良いか?これは、王族が子供の頃から肌見放さず身に着け、婚約者が決まった時にのみ外し、伴侶となる相手に渡す物だ。もし貴族の連中に見つかると………お前は絶対に始末されてしまう………分かったな?」

 

 ………やばい、心臓の音が止まらない。

 

 俺はポケットにソッとしまうと、俺とダクネスは無言で宿を出た。

 

 因みに本は燃やされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイリス様、ダスティネスです!緊急のお話があり参りました!」

 

 俺とダクネスが中に入ると、そこには___

 

「___そこで私は言ったんです、今のは何点だったかと………。」

 

「そ、それで…!?」

 

「『120点』………和真はそう言ってくれました!!」

 

「「おぉっ!?」」

 

 何やら、めぐみんとアイリスとクレアで、女子会で盛り上がっていた様子。

 

 しかしその盛り上がっている話の内容はちょっと恥ずかしいので、是非ともやめて頂きたい。

 

「おや?ダスティネス卿に、和真ではないか。どうかしたのか?」

 

 クレアは、昨日の夜の事が嘘だったかの様にケロリとしていた。

 

 ………え、?あの神器の事は?

 

「あの神器について調べた結果、大変危険な物であるとの情報を得たので報告にきたのですが……。どうやら、あまり気にしていない様子で。」

 

 一芝居打つ必要となくなったダクネスが、アイリス達の前でホッと息を吐く中。

 

「あぁ、あのネックレスか………。まぁ、あまりこういう事を言うべきではないのかも知れないが………ほら、アレアルダープ殿の贈り物なのだ…。」

 

「それに、もしかしたらあの方々は、私を助けに来てくれたのでしょうか。」

 

 部屋の中央で皆に囲まれていたアイリスが、何故か俺をジッと見ながらそんな事を……。

 

 ………ん?これ気付いてるパターンじゃないよな?

 

「さぁ、それはどうか分かりません。もし本当にそうだとしたら、あの者達は大した者だと言わざるを得ませんが……。」

 

 悔しそうながらも、少しだけ尊敬の籠もった小さな声で呟いた。

 

 まぁクレアも一端の騎士だしな、手も足も出なかったのだから、相当悔しいだろう。

 

「さてアイリス様。私から一つ、アイリス様に申し上げたい事があります。」

 

 俺の隣のダクネスが、スッと片膝をつくとチラリと俺の方を見上げ。

 

「この佐藤和真なる者は、数多の魔王軍幹部を倒してきました。そしていずれは魔王を倒すやもしれぬ者。………そんな困難に立ち向かおうとするこの者に、何かお言葉を掛けてやっては頂けませんか?」

 

 コイツ、いきなり王女様の目の前でなんて宣言してくれてんだ。

 

 俺はあくまで出来たら良いな程度だ………うん。

 

「………魔王を倒す?本当に?お兄様は、本当に、魔王を倒そうとお思いですか?」

 

 アイリスまで、真剣な顔して何言い出してんだ。

 

 勿論そんな事………まぁ可能なら…。

 

「ま、まぁ、その機会があれば。魔王討伐と考えても良いか…な…?」

 

 アイリスの期待の籠もった目を受け、何だか煮えきらない返事になった。

 

「そうですか……。お兄様ならきっと出来ます。魔王退治、頑張って下さい。……どうか、お兄様にご武運を!」

 

 そう言って、アイリスが満面の笑みを浮かべると、誰も何も言えなくなってしまう。

 

 ___いや、一人いた。

 

「さっきからお兄様お兄様と、いい加減兄離れをするべきです!それに、貴方には本当に兄が居るでしょう?全く……あの話をした意味がないじゃないですか…。」

 

「妹離れしてないお前が言ってもなぁ…。」

 

「なにおぅッ!?」

 

 そんな真剣な雰囲気とは一変、明るい雰囲気に戻った俺達はそんな名残惜しい空気を背に、城からクリスを迎えに戻る。

 

 本当に楽しい時間は一瞬とは、この事なんだろうな。

 

 アイリスに蔑まれた目をされたのも、レインの授業を妨害したのも、クレアに急所を思いっきり蹴られたのも………まるで昨日の事かの様に感じる。

 

 まぁ蹴られたのは実際に昨日なのだが。

 

 そんな下らない事を考えていると、何だか不貞腐れためぐみんが俺の方へと振り返る。

 

「なんだよ。」

 

「………和真は…そんなに、妹が欲しいんですか…?」

 

「?まぁそりゃくれるなら欲しいよ。」

 

「………お兄ちゃん。」

 

「ハッ!?」

 

 刹那、俺の脳裏に流れる存在しない記憶。

 

 ………が、しかし。

 

「……すまん、もうアイリスがどっちも言ってるんだ。と言うか俺は兄貴派なんだ、更に言うとお前は妹じゃなく、ただただロリだ。」

 

「良ーしぶっ殺ッ!!!」

 

 その後、ダクネスが止めるまで俺とめぐみんの喧嘩は続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「第一章 この成り上がり冒険者にも安息を!」

 

 

 

 王都から帰ってきてはや一週間、俺はソファーの上でゴロゴロとしていると、ダクネスが紅茶を淹れてきた。

 

「お!お前の唯一の特技のじゃないか。どれどれ今日も美味しく頂いてやる。」

 

「フッ。何故か昔から紅茶だけは使用人にも絶賛されていたんだ………紅茶だけは…な?」

 

 そんな悲しい過去を今日に告白してきたダクネスを無視し、紅茶を啜る。

 

 ふむ……やはり上手い。

 

「やはり、お前も貴族の端っこに居るとは言え貴族なんだな。上級国民の紅茶はもれなく上手い。」

 

「き、貴族の端っこ…!?王国の懐刀とまで言われたダスティネス家を端っこ………そんな事を言える男は、世界で探してもお前くらいのものだろうな。」

 

「おい、褒めるんならもっと俺が気持ちよくなる褒め方をしろ。」

 

「褒めてない。」

 

 ソファーに背を預けていたダクネスが、テーブルの上に置かれていた紅茶を啜る。

 

「……そう言えば、お前は昔からそういう男だったな。私の身分ではなく、名前に興味を示す、変なヤツだった。」

 

「ほう、俺の事を変なヤツ呼ばわり出来るのは、この世界でもお前だけだよララティーナ。世間知らずのお嬢様で、冒険者でドM。どれだけ属性盛り込む気だ欲張りさんめ。」

 

 ダクネスは、啜っていた紅茶をテーブルに置き。

 

「……やはり、お前とは何時か決着を付けなくてはいけないようだ。」

 

「はいはい。何時かまた勝負しましょうねお嬢様。」

 

 悔しそうなダクネスを適当にあしらいながら、俺も同じく紅茶を啜る。

 

 ………やっぱり上手い。

 

「にしてもこの紅茶、めちゃくちゃ上手いな。もしお前が没落しても、紅茶専用のメイドとして雇ってやるよ。」

 

「没落などしてたまるかっ!……全く、お前は本当に良く分からない男だ………どれがお前の本当の姿なのだ?」

 

「全部本当だよ。俺は普通の人間だ、真面目な勇者じゃなくて悪かったな。」

 

「いいや?悪くはないさ、むしろ……私は王子様や勇者様なんかよりも、普通の男の方が好ましいぞ?………例えば、お前の様な男とか……な?」

 

「ハッ!そいつは随分と褒められている気がしない言葉だ。」

 

「今回は褒めてるんだがな…。」

 

 そんな他愛のない話をしていると、冒険者ギルドに行っていためぐみんが帰ってきた。

 

「和真ー!ギルドが私達を呼んでいます。クリスも呼んで向かいましょう。」

 

「えぇ?面倒くさいな………おーいクリス!出掛ける準備をしろ!」

 

 すると、何時の間にそこに居たのか二階へと繋がるドアを開けるとクリスが倒れてきた。

 

 ………何で俺を見て複雑そうな顔してるんだ。

 

「お前、何してんの?」

 

「はは……いやぁちょっと…。」

 

 そそくさと立ち上がると、何故か身支度を済ませていたクリスが玄関へと向かった。

 

 その時、何だかダクネスと気不味そうな雰囲気をしていたのを、俺は目逃さなかった。

 

 が、何だか面倒くさそうなので無視する事にした。

 

 まぁ行く途中も二人で仲よさげに話してたし、多分あれだろう………女の子の日だろう、俺はそういう気遣いが出来る男なのだ。

 

 ___冒険者ギルドに着くと、待っていましたと言わんばかりに、カウンターでルナさんが目を光らしていた。

 

「それでは、冒険者佐藤和真さん。今回お呼び立てした件ですが……。」

 

 冒険者ギルドのカウンターで、重い袋を抱いたギルド職員のお姉さんが俺に満面の笑みを向け。

 

「こちら、大物賞金首『魔王軍幹部シルビア』の討伐報酬、三億エリスとなります!さぁ、これをどうぞ!」

 

「「「「おぉぉぉぉぉッ!!!」」」」

 

 その様子を見守っていた冒険者達から歓声が上がる。

 

 ………何だか悪い気分はしないな、日本にいた頃じゃ考えられない程気分が高揚している。

 

「おいおい落ち着けお前ら、そんなに興奮しなくても酒くらい奢ってやるから………。あれ?ルナさんまたやるんですかこれ?もう3回くらいやりましたよね?あの、ちょ……!おい!離せ!」

 

「もう少し、もう少しで良いので!!」

 

 名残惜しそうに袋から手を離そうとしない職員と揉み合い、何とか勝利する。

 

 俺はようやく奪い取った賞金を、大切そうに抱きかかえると、未だあちらこちらで噂している連中に顔を向ける。

 

 そして……。

 

「よーし!今日は俺の奢りだ!!」

 

 

「「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」

 

 賞金を受け取った時よりも大きい歓声でギルド内に響く。

 

 俺は四人で席に着くと、皆各々呆れながら目慣れた光景を目に、自分は何を食べようか飲もうか悩み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねね和真!これなんてどうかな?」

 

 シルビアの賞金を受け取り、皆各々趣味に使ったりするなか俺はクリスと服を見に来ていた。

 

 別に今まで貧相な暮らしをしてきた訳ではないのだが………何だか、こんな感じで奮発するのはやはり気分が良い。

 

「おぉ良いじゃない!こっちなんてどうだ?」

 

「確かに!こっちも良いね!」

 

 そんな傍から見たら完全にデートにしかみえない俺とクリスの買い物も終わり、二人で談笑しながら玄関のドアを開けると……。

 

「ただい……」

 

「全く、とんだ変態クルセイダーですね!ほらほら、これが欲しいのでしょう?何時までも我慢してないで、早く参ったと言ってこれで……!……あっ」

 

「この私はその様な物に屈しはしないっ!クルセイダーとしての誇りにかけて、このまま一時間でも二時間でも……。あっ」

 

 布団で簀巻きにされ、玄関先に転がされたダクネスと

 

ダクネスの前に屈み込み、つまみ上げた氷を顔の前でこれ見よがしにブラブラさせるめぐみんがいた。

 

 二人は熱っぽく火照らせ、ダクネスに至ってはハァハァ荒い息を吐いている。

 

 そんな二人と目が合った俺は、そっとドアは閉めてやる。

 

「ドアを閉めないで下さい!二人共、これは違うのです!!」

 

「いやいや大丈夫だから。俺理解あるからそういうの!!」

 

「えっと、エリス教では無いけど。先輩の宗教では同性愛も認められてるから………祝福はいる…?」

 

「全然分かってないじゃないですかッ!!」

 

 めぐみんが俺とクリスの腕を掴み、必死に引き留める。

 

 俺とクリスが異様に力の強いめぐみんから離れようと藻掻いていると、開けっ放したドアから熱気が漏れている事に気付いた。

 

「これは特殊な遊びをしていたのではなく、ダクネスにお願いされて我慢大会の練習を手伝っていたのですよ!」

 

 中の熱気で頬を火照らせためぐみんは、同じく頬を火照らせたダクネスの額にウリウリと氷を押し付けた。

 

「と言うか、練習するならダクネスの実家でやってくれ。流石に熱すぎる。」

 

「実は、父がここ最近体調を崩してな。私がこういう事をすると何かと心配されてしまうんだ。」

 

「お前が実家で暖炉焚きまくったから体調崩したんじゃ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「___じゃ、行くぞ。」

 

「…本当に行くの?」

 

「しょうがないだろ。アイツに対抗出来るのはお前だけなんだから…。」

 

 翌日。

 

 俺は3人と、ウィズの店へと向かっていた。

 

 今ウィズの店では、バニル監修の元俺の開発した商品を売っていた。

 

 何やら未曾有の大繁盛らしい。

 

 街のメインストリートから離れた通りにある、こぢんまりとした魔道具店に到着する。

 

「おーいバニル?予定通り来たぞ。」

 

 店の戸を叩くと、待ってましたとばかりの顔で出迎えしてくる。

 

「おや?呼んだのは小僧一人の筈だったのだが………どうやら面倒くさいヤツも付いて来たようだな?」

 

「残念、和真に付いて来て欲しいって頼まれたんだよ。悪魔は信用ならないからね、当たり前だよ?」

 

 あいも変わらずバチバチの二人、でも信用ならないのは本当の事だ。

 

「おいおい二人でイチャつくな。それでバニル、報酬の件だが…。」

 

「おぉそうだったな、それじゃ小僧以外は外で待っておけ。そこの女神は別に帰っても良いぞ?光って鬱陶しいだけなのでな。」

 

「それはそれは光栄だね。私が光って見える程キミが汚れてるんだから、私が綺麗にしてあげても良いんだよ?」

 

「フン。貴様が綺麗なのはその平らな胸だけだろ。心は悪魔でも恐れおののく程真っ黒で出来ておるわ!」

 

「良し掛かってこい雑魚っぴ悪魔!!」

 

 俺は掴み合いを始めた二人を引き剥がし、バニルと店の奥へと入る。

 

 未だに暴れているクリスをダクネスとめぐみんが抑えてるの見て、やっぱり連れてこない方が良かったかも知れないと思った。

 

 まぁ思っただけだが。

 

「……なぁ。何でウィズはあんな死んだ目をしてるんだ?」

 

「ん?あぁあのトラブル店主は暇を与えると直ぐ赤字を出す。だから暇を与えない様に働かすとこれがまぁ上手くいってな。」

 

 そんなドン引きする事を言いながら、俺に袋を寄越してきた。

 

 いくら死ぬ事のないリッチーだと言っても、もうちょっと労ってやったらどうなんだろう。

 

 もうどっちがバイトで店主か分からなくなっているな…。

 

「ところで……。」

 

 と、ドアを開け未だバニルを睨むクリスを無視してダクネスを振り向くと。

 

「おい、日夜熟れた身体の性欲を持て余し、処女の癖に夜な夜」

 

「なあぁぁぁぁーッ!!」

 

 ダクネスが突然大声を上げながらこちらに向かって突っ込んできた。

 

 おいそんな事よりもさっきの続きを詳しく!

 

「ウムウム…極上の羞恥の籠もった悪感情、実に美味である。……鎧の娘よ、貴様には破滅の相が出ているな。今回大きな儲け話を持ってきてくれた礼に、吾輩の力でじっくりと占ってやろう。」

 

 と、悪魔らしくニヤリと口元を歪めながら言ってくる。

 

「………破滅の相だと?」

 

 表情を引き締めたダクネスが、思わず聞き返す。

 

「では一つ見てやろう。さぁ、中に入って座るが良い。」

 

 真面目な顔をしたダクネスが、バニルの対面に座る。

 

 俺はクリスとめぐみんと一緒に、何の使い道があるのか分からない魔道具を眺めつつ、耳を傾けていた。

 

「良し、では今からいくつかの質問をする。正直に答えるのだぞ?」

 

「わ、分かった。」

 

 何時ものバニルからは想像の出来ない程真剣な雰囲気のバニルを前にし、クリスですら気圧されていた。

 

「では汝に問う。防御力が大事なクルセイダーなのに、最近こっそり鎧の軽量化を行った様だが………それは何故か?」

 

 そのバニルの言葉に、ダクネスがビクリと震えた。

 

「……え、えと…、。そ、その…。」

 

 しどろもどろになりながら、答えを淀んでいるダクネスに厳しい目を向けたバニル。

 

「吾輩は、正直に答えよと言っている。」

 

 バニルがボソリと呟く。

 

「………最近、ますます腹筋が割れてきたのを気にして…。」

 

 ダクネスは恥ずかしそうに俯きながら、蚊の鳴く様な声で答える。

 

 ………気にしてるのか。

 

 バニルは満足そうに頷いた。

 

「では、汝に問う。最近、仲間の魔法使いのワンピースを、コッソリ自分の身体にあて、鏡の前でちょっと嬉しそうにしながら、『うん、コレはない。コレはないは……』とぶつぶつ言っていたのは何故か。しかも笑顔の練習をしていたのは何故か。」

 

 な、何て強いんだ見通す悪魔…!

 

 どこまで知ってるんだろう。

 

「………か、かか、可愛らしい系の服は似合わないし…。た、ただでさえ無愛想そうな顔だったので…つい…。ごめんなさい…ご、ごめんなさい……。」

 

 赤い顔を両手で覆い、震える声で謝るダクネス。

 

 別に、自分の服くらい好きな様にすれば良いのに……、指摘されたダクネスは余程堪えたのか、もう心の耐久力は限りなくゼロに近い。

 

 バニルはそんなダクネスを見て、満足そうにウンウン頷く。

 

「では最後に、同居人のそこの男にいやらしい目で見られている事を自覚しても尚、身体の線がくっきり出る服を着てウロウロしているのは」

 

「これはっ!本当に占いと関係あるのかッ!?」

 

 ダクネスが、泣きそうな顔でバンとテーブルを叩いて立ち上がる。

 

 バニルがそれに、『は?』といった感じで首を傾げ。

 

「いつ我輩が、質問しなければ占いは出来ないといった。我輩が質問していたのは、ただ占いの結果が出るまでの暇つぶし……、」

 

「ッ!!」

 

 ダクネスがバニルの仮面に手を掛け、剥がそうと見を乗り出した。

 

「こっ、こらっ止めろ!泣きながら仮面を引き剥がそうとするな!」

 

 何とかダクネスを押さえつけるも、散々おもちゃにされた事が悔しかったのか、水晶玉に手を置きながらも完全にそっぽを向いている。

 

 クリスは先程よりも恨めしい目でバニルを睨んているが、どこ吹く風だ。

 

「あの水晶、面白そうですね。後で私も占って欲しいです。」

 

「正気かお前?」

 

「フハハハ!気が向いたらやってる。………ん?やはり破滅の相が出ているな。貴様の家、そして父親が、これから大変な目に遭うだろう。そして自分を犠牲にすれば全てが解決すると、短絡的な行動に出るだろう。良い回避方法は……」

 

 バニルの言葉に、今までとは打って変わって真剣な面持ちになるダクネス。

 

「……おや、貴様の力ではどうにもならんと出たな。その時が来たならば、全てを捨てて逃げるが吉。『強く押せば、ワンちゃん一発くらいなら許してくれそうだな…』と思っているも、一線も越える勇気もなければ今の関係が壊れる事を恐れる小心者なそこの男と遠い地でやり直すが良い。」

 

「「和真??」」

 

 めぐみんとクリスが物凄いスピードで此方を振り返ると同時に、俺も反対方向をマッハで向く。

 

 クソッ!やっぱりこいつら連れてくるんじゃなかった!一人で寂しいからって呼ぶんじゃなかった!!

 

 ジリジリとにじみ寄ってくる二人に、俺もジリジリと出口へと寄ると、ダクネスが無言で立ち上がる。

 

 思わずビクッとしてしまった俺だが、どうやら怒られるわけではないらしい。

 

「………バニル、占いには感謝する。だが、私は貴族の娘でありクルセイダーだ、逃げる事は出来ない。和真、私は久しぶりに実家に寄ってくる、父の顔を見たくなった。」

 

 そう言って、ダクネスは店を出ていった。

 

 と、油断していると。

 

「何呆けてるの?和真。」

 

 クリスに顔を掴まれ、強制的に顔を二人の方に向けられる。

 

 奥にいるバニルはなんかめちゃくちゃ笑ってやがった。

 

「お、おいクリス。まさか女神であるお前が、悪魔如きの戯言を信じるって言うのか!?」

 

「………和真、悪魔は嘘を付かないんです。女神のクリスがそれを知らない訳がありません……。勿論、私も。」

 

 え、えーと……。

 

「ゆ、許しては…?」

 

「和真さん、今から貴方には女神の粛清を受けてもらいます。」

 

 久しぶりにクリスの女神様姿を見たなぁ………あと、なんか後ろでバニルが机を叩いて爆笑してた。

 

 まじでアイツ許さん。

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