この素晴らしいエリス様と祝福を!   作:おふざけちゃん

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この素晴らしいエリス様と祝福を!億千万の変態花嫁 3

 

 

 

「第三章 この家出少女に説教を!」

 

 

 

「冒険者の皆さん!昨日は本当に、ほんっとうに、ご苦労様でした!!『クーロンズヒュドラ』討伐、おめでとうございます!つきましては、皆さんに多大な賞金が支払われますのでっ!!」

 

「「「うおぉぉぉぉーっ!!!」」」

 

 ギルド職員の宣言に、冒険者ギルドが歓声で埋め尽くされた。

 

 クーロンズヒュドラを討ち果たした俺達は、激戦の疲れを癒した後、こうして冒険者ギルドへと集まっていた。

 

 現在、ここにいるのは昨日の討伐に参加した者ばかり。

 

 今から手にする賞金を期待してか、そこにいるのは誰しもが満面の笑みを浮かべていた。

 

「それにしても、せっかく報酬受け取りだってのにダクネスはどうして来ないんだ?今日は皆で宴会やるってのに……。」

 

「まぁ、昨日のダクネスときたら何時もよりテンションが高めでしたからね。照れてるのを隠してるのでしょう。」

 

 ギルド中央のテーブルに陣取った俺達は、昨日の妙に浮かれたダクネスを思い出す。

 

「ダクネスは私達の中で一番年上だけど、あれで子供みたいな所があるしね。きっと恥ずかしがってるんでしょ。」

 

 クリスが遠い目をしながら酒を呷る。

 

「…あれ?なぁクリスの年齢って___」

 

「おっと和真、それ以上はいけない。」

 

 真剣な顔で冷たい目を向けるクリスを尻目に、俺は喜々として報酬を受け取る冒険者達を眺めていた。

 

 今回の報酬は十億エリスを参加した皆で分ける事になっている。

 

 ……に、しても"あれ"が十億エリスか…。

 

 何でもあのヒュドラがいなくなった事で、今後湖の周りは肥沃な大地に変わるとの事。

 

 今回賞金首討伐に参加した冒険者の数は50人ほど…つまり、一人頭の報酬は二千万エリスという事だ。

 

「では、佐藤和真さんのptは四人分の報酬八千万エリスに合わせ、討伐参加者の皆さんの希望により、更に追加で二千万エリス。計一億エリスを支払わせて頂きます!!」

 

「よっしゃ!!よしお前ら、この二千万は皆で派手に……お、おいこら離せ!良い加減この行事やめろ!!」

 

 賞金の入った袋から手を離さないルナさんから、無理やり袋を奪い盗る。

 

「おいお前ら!昨日は改めて協力感謝だ!宴会しようぜぇ!!」

 

「「「おおおおおおおおッ!!!」」」

 

 冒険者ギルドに響き渡る野太い歓声。

 

 時刻は昼だが、今日は当分の間帰る事は出来なさそうだ___。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいダクネス、帰った……ぞ……?あれ、なんだよアイツ。出掛けてるのか。」

 

 俺達が屋敷に帰るも、ダクネスは居なかった。

 

 と、テーブルの上に一枚の紙が置かれているのに気が付く。

 

 そこにはダクネスの字で、父のもとへ今回のヒュドラ退治の報告に行くと書かれてある。

 

 結局、ダクネスはその内帰って来るだろうという事で、俺とめぐみんで晩御飯を作ってしまう事にした。

 

 クリスは酔い潰れて寝てしまっている為、ソファーの上に転がしておく。

 

 やがて、普段より豪華な料理が完成しそれらが広間のテーブルの上へと並べられていた。

 

「あれ?今日は随分と豪華だねぇ。」

 

「当たり前だ、折角活躍したのに飯を食いに来なかったお嬢様が可哀想だろ。」

 

 俺とクリスがそんな事を言ってる間に、めぐみんが四人分の食器とお茶を用意した

 

「今日の料理はかなり凝ってますね。お嬢様のダクネスでも、あまり食べた事の無い料理ではないでしょうか。ふふふ…!我が料理を食した際の反応が楽しみです。」

 

「お前塩振って食器出しただけだろ。」

 

 だが、めぐみんが胸を張るのも良く分かる。

 

 自分で言うのもなんだが、今日の料理はなかなかだ。

 

 ___やがて、夜の帳が下りる頃。

 

「…ねぇ和真、もう冷めちゃったね。」

 

「ご飯を前にお預けとか、私はダクネスじゃないんですから…。」

 

「だなぁ。」

 

 皆で愚痴を言いながら更に待つ。

 

 やがて、その苛立ちは怒りに変わり、ダクネスが帰ってきたらどうとっちめてやるかの会議になる。

 

 大概の罰はご褒美に変えてしまうあの女に、一体何が効くのかを真剣に考える。

 

 それでも、誰一人もう食っちまおうぜとの案だけは出ない。

 

「……遅いねぇ…。」

 

 クリスがぽつりと呟くが、それでも食事に誰も手を付けようとはしない。

 

 ヒュドラ討伐に成功した事の報告は、これほど時間が掛かる事なのだろうか?

 

 もう、このまま待っていても、今日は帰ってこないかもしれない。

 

「今日は帰ってきそうにないな。帰らないなら連絡くらい寄越せってんだ。……おい、もう食っちまおうぜ」

 

 俺がそう言っても、困った表情を浮かべ、食事に手を付けようとしない二人。

 

 ……くそっ!

 

 あのドMめ覚えてろ。

 

 俺が密やかにダクネスに対するイタズラを計画する中、ダクネスはこの日帰って来る事はなく。

 

 それ所か、その次の日も。

 

 また、その次の日も。

 

 ダクネスが屋敷に帰って来る事はなかった___。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ和真、それって何作ってるの?」

 

 俺は広間のテーブルで朝からせっせと工作していた。

 

 自分が作っていた物を手に取りクリスに見せる。

 

 それはダイナマイトの模造品、ニトロを砂と混ぜて固形化したものを紙で巻き、導火線をくっつけた簡易な物だ。

 

「ま、何と無く原理や形は分かってるけど、材料の問題で作れない物を形だけでも作ってるんだよ。頭の良い奴らに、コイツは託す。」

 

「なるほど…!でも、あんまり現代兵器を持ち込むのは関心出来ないなぁ、それ以上は___めっ!だよ?」

 

 めちゃくちゃ圧掛けてくる女神様の視線を避けつつ、模造品を手に取り眺める。

 

 とまぁ、俺がこんな事を始めたのにも訳がある。

 

 今朝早く、ダクネスから手紙が届いた。

 

「和真が今持っているそれは、何に使う物なのですか?」

 

 ダクネスから届いた手紙をじっと読んでいためぐみんが、そう言って顔を上げる。

 

「んぁ?これはな、爆裂魔法を再現する事が出来るダイナマイトっていう道具……の、レプリカだ。」

 

 すると、めぐみんが俺の方へと駆け寄りダイナマイトを奪い取ろうとする。

 

 爆裂魔法を再現という言葉に激しく反応した様だ。

 

「お、おい、ちょ!こら!離せ!!どうしたんだよ!!」

 

「浮気ですか和真ッ!?私という者がありながら、そんな下劣な物に浮気ですかッ!!」

 

 あぁコイツ、思ったより面倒くさいな!

 

 俺の手から奪い取り、窓に駆け寄っためぐみんがそれを全力で投げ捨てる。

 

「こんな物で究極の魔法を再現されてたまるものですか!」

 

 興奮冷めやらぬめぐみんは荒い息を吐いていたものの、その内思い出した様に先ほど読んでいた手紙を広げた。

 

 それは、ダクネスからの俺達に宛てた手紙。

 

「ダクネスは、本当にこのままptを抜けちゃうんですかね…。」

 

 俺とクリスはその言葉に無言になる。

 

「……しょうがねぇだろ、実家が実家だ。元々、今まで俺達みたいな一般……一般?人と冒険が出来たって事がおかしいんだよ。」

 

「で、でも!これって絶対変ですよ!ダクネスが何も言わずにptを抜けるだとか…!こんな薄っぺらな紙一枚で終わる関係ではないはずですよ!」

 

 めぐみんが俺の言葉に食って掛かった。

 

 俺はダクネスの手紙を読み返しながら、クシャッと丸める。

 

 そのままゴミ箱の中に、叩きつける様に投げ込む。

 

 そんな俺の様子に、ちょっと怯えた表情を浮かべるクリスとめぐみん。

 

 ……チッ!俺は何をイライラしてるんだ。

 

 俺はテーブルの前に座り、次なる製品の作製に取り掛かる。

 

 パキッという音と共に、俺の握るカッターの先が折れる。

 

「……和真も気になってるんじゃないですか。素直になりましょうよ!そして、もう一度ダクネスの屋敷に行きましょう!」

 

 そう言って、拳を握り俺に迫る。

 

 ダクネスが帰って来なかったあの日。

 

 結局俺達は、日付が変わりしばらくした後、冷えた料理をモソモソと食べる。

 

 そのまま朝早くダクネスの家へと、心配させんなと襲撃に行ったのだが……。

 

「また門前払いされるのがオチだって。相手は仮にも大貴族だぞ?強行突破でもしてみろ、俺ら全員逮捕だ逮捕。」

 

 俺の言葉に、めぐみんがシュンとうな垂れる。

 

 俺はイライラしながら折れたカッターの代わりを探そうと手を伸ばすと……クリスに手を包まれる。

 

「……なんだよ。」

 

「和真、大丈夫。君の前に居るのは女神様なんだよ?私達を信じて…ね?」

 

 そう言ってめぐみんも寄せて俺達で肩を組む。

 

 …女神ってのはずるいよな、こういう事するだけで様になってるんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ___そんなこんなであくる日、玄関のドアがノックも無しに突然開くと、一人の男が飛び込んできた。

 

「どうした、そんなに慌てて?」

 

 そんな俺の疑問に、家に飛び込んできた男、ダストは荒い息を吐きつつ。

 

「和真、大変なんだ!お前の力を貸してくれ!頼む!!」

 

 ヒュドラ相手ですらトドメを刺そうと突っ込んでいったこの男が、これだけ慌ててるのだから大事だろう。

 

 俺は二人の方を振り向くと、

 

「良く分からん…が、ちょっと行ってくる。」

 

 俺はダストに引っ張られるまま、屋敷を出ると一通りのない裏通りへと手を引かれる。

 

 ___ダストは俺の前を歩きながら、大変な事とやらを説明する。

 

 やがて、その説明を聞き終わった俺は思わずその場に足を止める。

 

「……えっと、ちょっとまってくれ。つまりアレか?大変な事って、リーンに男が出来たって事?」

 

「そうだ!」

 

 そう声を張り上げ、ダストは拳を振り上げると。

 

「大事な仲間が、どこの馬の骨とも分からねぇ奴といちゃついてやがんだぞ!?和真だって、アイツらが別の男といちゃついてたら腹立つだろうが!?」

 

 ……まぁ、なんとなく分かるな。

 

「そうか…でも残念ながら、俺はその大事な仲間の事情で忙しいんだ。他を当たってくれ。」

 

 俺はそう踵を返し、家え戻ろうとすると___

 

「まぁ待てよ!その大事な仲間にも関係する話なんだって!!」

 

「はぁ?リーンとダクネスの何が関係するってんだ。」

 

「違う!関係あるのは相手の男の方だ。お前も困ってんだろ、ララティーナがアルダープの野郎の息子と結婚するんだって。だからお前を呼んだんだ!!」

 

 ………。

 

「その話、詳しく頼む。」

 

「なんだ、お前言われてないのか?今、アクセルじゃあのララティーナが消えたアルダープの尻拭いとして、その息子と結婚するって話で持ち切りだぞ?」

 

 何だよそれ、そんな大事な事を俺等に隠してたってことか?

 

「その事についても聞こうと思ってたんだが…まぁ良い。兎に角、今はリーンのことだ!」

 

「ちょ、ちょっと待て。結局その男とダクネスが何の関係があるんだ?」

 

「あ?あぁ言ってなかったな。その相手が、かなり貴族っぽいんだよ…もしかしたら、貴族繋がりで何か詳しい情報があるかもなって、そう思ったんだがどうだ?」

 

 ……いや、それが聞けたなら満足だ。

 

 これで俺達はあいつの家に行く理由が出来た、本当にこんな事してる場合じゃない。

 

「…すまん、俺は今からやらなきゃいけない事が出来た。リーンの事はまぁ…何とかなるだろ。俺からの祝福を込めて…『ブレッシング』!!じゃあな!」

 

「え?おい!和真ッー!!」

 

 俺は悪友の叫び声を背に、元来た道へと走り出した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて。時間的にも良い頃合いだな。それじゃあクリス、頼むよ。」

 

 時間は深夜2時頃。

 

 俺達は今、警戒の厳しいダスティネス邸の正門と裏口がある場所ではなく、なんの入口もない屋敷の横側に待機していた。

 

 クリスがエリスへと変わり、小さな声で支援魔法を唱えていく。

 

 数々の肉体強化の魔法達…本当に必要あるかも分からないやつらまで。

 

「『ヴァーサタイル・エンターテイナー』!」

 

 エリスが、今まで聞いた事もない魔法を唱える。

 

「今の、何の魔法?」

 

「あぁこれはですね、芸達者になる魔法です。声を変えたり色々と便利なんですよ?」

 

 一通り唱え終わったのか、俺に手をかざすのをやめクリスへと戻る。

 

 色々と考えを巡らせていると、なぜかめぐみんとクリスが嬉しそうに笑っている。

 

「和真、ここの所ずっとイライラしてたのに…今は随分と楽しそうだね?」

 

 そんな事をちょっと嬉しげに言ってくる。

 

 ……あぁ、楽しみでしょうがないさ。

 

 俺は背中から、弓といつかの機動要塞で活躍したフック状になっているロープ付きの矢を取り出す。

 

「じゃあ、行ってくる。」

 

 二人との相談の結果、色々便利なスキルを持っている俺が単独で行く事になった。

 

 本当はクリスと二人で行きたかったが、エリスの時とクリスの時は魔力量が共通してるため、今回は支援魔法をに専念するらしい。

 

「頑張ってね和真。なんなら、格好良く攫ってきちゃっても良いんだよ?」

 

「クリス、仮にも女神のお前がそんな事言っても良いのか…?」

 

「いえ、クリスの言う通りです。どうせダクネスはごねるので、派手にやっちゃって下さい!!」

 

 俺は過激なクリスとめぐみんに見守られながら、弓に矢をつがえ狙撃スキルを使い屋根の天辺部分に放つ。

 

 屋敷の柵にロープをくくり付け、ロープを上っていく。

 

 支援魔法のお陰か、かなり楽に上ることが出来た。

 

 俺は二人に合図を送ると、括っていたロープを外し始める…さて、本格的に始めるとしよう。

 

 感知スキルを使い部屋を一通り見て回ると、一つ中に誰もいない部屋を見つける。

 

 その部屋へと侵入を試みるが…如何せん窓に鍵が掛かっている。

 

 だが、こういった時こそ現代科学の出番だ。

 

「『ティンダー』」

 

 やがて充分ガラスの表面を熱した所で……

 

「『フリーズ』」

 

 小さな声で囁くと、一気に冷却されたガラスは微かな音と共にひび割れる。

 

 辺りを警戒するが、バレている様子はない。

 

 部屋からでると、廊下をコソコソ部屋を一つ一つ確認していく。

 

「…なんか、音したか?」

 

「気の所為だろ。」

 

 ちゃんとガラスなどを回収して捨てておいたので、バレる心配はないはずだ。

 

 俺は角から曲がってくる二人の人間から隠れる為、もう一度先程の部屋へと戻り潜伏する。

 

 ドアが開く音と共に、呆れた様な声が聞こえてくる。

 

「ほら、なんともないじゃないか。ノリス、良い加減その小心者な所を直せよ…それより、下の厨房で夜食でも作ってもらおうぜ。」

 

「す、すまない…。何かが割れるような音がした気がして……」

 

 ドアが閉められ小さくなっていく声と足音を聞きながら、俺はその場にじっと待機する。

 

 ……厨房、そうだ!さっきの見回りが言っていた厨房へ行き、ダクネスが夜食を欲しがっていると言って夜食を運ぶ料理人の後を尾ければ…!!

 

 俺はクリスにこれほどまでにない感謝をしながら、先程のノリスと言われた男の声を真似てみる。

 

「……私の名前はノリスで……す……!!」

 

 完璧だ、気持ちの悪いくらい似ている。

 

 俺は潜伏スキルを発動しながら、先程の見回りに着いていき厨房を見つける。

 

 彼等が去ったのを確認後、ドアに近付き一つ席払い。

 

 ちょっと慌てた様にドアをノックした後、一方的に捲し立てる。

 

「すまない、ノリスだ!お嬢様から夜食を頼まれていたのを忘れていた…見回りの仕事に戻らないといけないから、部屋まで届けておいてくれないか!?」

 

「ったく、そそっかしいなぁ。分かった、届けておくよ、ご苦労さん。」

 

 ドアの中からは苦笑する様な声でそんな返事が返ってきた。

 

 そのまま如何にも急いでいる様子で…

 

「すまない!感謝するよ!!」

 

 それだけ行ってその場を離れる風を装う。

 

 やがて、どれだけ待ったのか厨房の方から気配を感じた___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢様、夜食をお持ちしました。」

 

 そう言ってドアをノックする料理人。

 

 目を擦りながら、ネグリジェ姿で纏めていた髪を下ろしたダクネスが出迎える。

 

「………?覚えがないぞ…?」

 

 眠そうな顔で言うダクネスに、料理人が戸惑いながらも頭を下げる。

 

「…!?申し訳ありません、夜分遅くに失礼しました!」

 

 そう言って慌てて下がる料理人を不思議そうに眺めながら、ダクネスはドアを閉める。

 

 人気が居なくなったタイミングを見計らい、俺はダクネスの部屋のドアをノックする。

 

「お嬢様、起きてくださいませ。夜分遅くに佐藤和真と名乗る男が現れ、どうしても面会したいと……!」

 

「……和真、クリス、めぐみんと名乗る者が来た際には、絶対に取り次ぐなと言ってあるだろう。全く、こんな時間にあいつは……。まったく……!」

 

 ドアの向こうから聞こえてくるのは、苦しそうでいて、少しだけうれしそうな小さな声。

 

「し、しかしお嬢様。その和真という男がこう言ってまして……取り次がないなら、ギルドの連中に、ララティーナお嬢様の恥ずかしい秘密を暴露する、と……。」

 

 その言葉に、ドアの向こうでは楽しそうな笑い声がした。

 

 そして、

 

「ふふっ、アイツは相変わらず……。好きにしろと言っておけ。どうせもうギルドに顔を出す事もない。」

 

 そんなダクネスの沈んだ声が聞こえてくる。

 

「……ですがお嬢様、現在その男が玄関先で良からぬ事を吹き込んでおりまして……。最近、お嬢様が日夜その熟れた身体の性欲を持て余し、処女の癖に夜な夜な……」

 

 目に涙を溜め赤くしたダクネスが、ドアを勢い良く開け飛び出した。

 

 そして、そのまま俺と目が合うと。

 

「!!?????!??!??」

 

 ダクネスはそのまま口をパクパクさせて、目を見開いて息を吸う。

 

 俺はニヤリとすると、イタズラ成功と言わんばかりの笑顔で___

 

「よぉ、お嬢様。」

 

 俺はダクネスの口元を片手で掴み、そのまま部屋に押し入った。

 

 狼狽えながらも、ダクネスが俺を引き剥がそうとするが……!

 

「残念、お前の親友から熱い応援と魔法を貰ってんだ、そうやすやすと負けねーよ!」

 

 そう言いながら、俺は後ろ手にドアを閉め鍵を掛ける。

 

 ガチャリという鍵の音と同時に、何故かビクリと身を震わせた。

 

 俺はダクネスを片手で持ち上げると、自分でもビックリするくらいの力でダクネスをベッドへと押し付ける。

 

 ……ダクネスが、俺の腕を掴んでいた手から力を抜いて、そのままクタッとベッドに身を任す。

 

 やがて、ダクネスの目尻に薄く涙が浮かび上がり瞳が潤んだ。

 

 荒い息が、俺の手の間から漏れる……あれっ!?この状況まずくない!?

 

「……おい、なんか勘違いしてないか?あくまで俺がしに来たのは話し合いだ。」

 

 俺の必死な訴えに、ダクネスがうっすらと目を開けてコクリと頷く。

 

「よし、じゃあ話すぞ?叫ぶなよ?」

 

 ダクネスがコクコクと頷いたのを確認し、俺はダクネスから手を話す。

 

「曲者ーっ!犯され……むぐぅ……っ!」

 

 やりやがったこのアマ!?

 

 慌ててダクネスの口を押さえたが、時すでに遅し…廊下からバタバタと音がする。

 

 俺はダクネスを睨むと、勝ち誇った様な挑発的な目で俺を見ていた。

 

 そして明らかにその目は笑っている。

 

 ……だが、残念だったな。

 

「どうなされましたお嬢様!只今ドアを開けます、失礼します!」

 

「開けるな!今ちょっと人に見せられない格好をしている!済まない、ちょっと激しい遊びをしていたら声が…!!」

 

 俺の声を聞いたダクネスがギョっと目を見開いた。

 

 そう、ダクネスの声色である。

 

 「しっ、失礼しましたっ!じじ、自分はこれでっ!!」

 

 ドアの外からバタバタと慌てて駆けていく音。

 

 俺は腕をギリギリ締め上げる痛みになんとか耐え、涙目でぷるぷる震えるダクネスに勝ち誇った顔を仕返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダクネスが、口を押さえている俺の手を指でツンツンと突く。

 

 俺は手を話すと、俺はベッドに座り直す。

 

 ダクネスはベッドに仰向けになり、疲れた様子で息を吐く。

 

「……全く、相変わらずとんでもない奴だ。どうしてくれるのだ、これで明日から私は、家の者に陰で変態令嬢呼ばわりされてしま……んん……っ!?」

 

「……お前今、それも悪くないとか思っただろ。」

 

「思ってない。」

 

「思っただろ。」

 

 こんな時にコイツ……!

 

「で、一体全体何がどうなってんだ…事情を説明しろ事情を。」

 

「………家の事情だ、当家はあの領主に金を借りていた。それは、父がゆっくり返して行くつもりだったのだが…最近、父の体が思わしくなくてな。」

 

「つーことは、お前は借金のカタに取られるわけか?」

 

 俺の表情を見たダクネスが、

 

「そんな顔するな和真。相手はあの良い噂ばかりの息子だ、少なくとも…不幸にはならんさ。」

 

 そう寂しそうな顔して話すダクネス。

 

 ……下からじっと見上げたダクネスが、優しく微笑み囁いた。

 

「……なぁ、和真。一人の女としての、最後の私の願いを聞いてくれないか?」

 

 そう言って起き上がり俺の肩を掴み押し返してくる。

 

「このまま、自由を奪われる前に……好きな男に私を大人にして欲しい。」

 

 落ち着け佐藤和真、よく考えろ。

 

 俺はなんとかこの状況を逃れようと考えるが、身体が言う事を聞かず左手でダクネスの顔を触る。

 

 覚悟を決めたダクネスの表情を見て俺は……ダクネスの胸元へと手を持っていこうと___

 

「………お前、本当に腹筋割れてんのな。」

 

 ダクネスの右手が俺の顔にめり込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ___星明かりを頼りに、俺達は対峙する。

 

 ダクネスが今までにない程に怒り狂った表情で、俺をどう殺そうかと考えている表情で俺を睨みつける。

 

 俺はオロオロして身構える。

 

「悪かった、俺が悪かった!ついうっかり!すまなかった!この空気に耐えられなかったんだよッ!!」

 

「巫山戯るなッ!!あまり覚悟を決めた女を愚弄するなど…タダで済むと思うなよッ!?」

 

 廊下の方からドタドタと人が駆けてくる音が聞こえる。

 

 夜中にこれだけ騒げば、流石にもうごまかせないだろう。

 

 やがて部屋の前に多数の人の気配がし、激しくドアが叩かれた。

 

「お嬢様!お嬢様、開けますよ!?」

 

 ダクネスの攻撃を支援魔法のお陰で避けまくっていると、手を広げ掴みかかってくる。

 

「開けちゃらめぇっ!ララティーナ、今全裸なのっ!見ちゃらめぇーっ!」

 

「えぇっ!?も、申し訳……!」

 

 俺の声真似に、鍵を開ける音が一瞬止む。

 

 その隙に、俺はドレインタッチでダクネスから体力を吸い始める……が、桁違いの体力を誇るダクネスには効かない。

 

「私の声で変な事を言うなっ!おい遠慮なく入ってこい!侵入者だ!!」

 

「は、ははっ!今すぐにっ!!」

 

 再び響く、鍵を開けようとする音。

 

 俺はダクネスを蹴り飛ばすと、手に『クリエイトアース』で土を生成する。

 

「全員、目を……!!」

 

 扉が開いた瞬間、ダクネスの声を遮る様に___

 

「『ウインドブレス』ッ!!」

 

 俺はお馴染みの魔法を解き放つ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いたかっ!?こっちの物陰には居ない!相手は潜伏持ちだ、何も無い所でも触ってみろ!絶対に逃すなッ!!」

 

 現在マジギレしているダクネスからどう逃げようかと思考中。

 

 ブチギレたダクネスが潜伏している俺のすぐ側で叫んでいた。

 

 俺は屋敷から脱出するべく、其の辺の手近な部屋に侵入を試みる。

 

 そこは運良く鍵が掛かっておらず、俺はその部屋の窓から脱出しようと……部屋の中央から、とても弱々しい声が聞こえた。

 

「……そこに、誰かいるのか……?」

 

 それは、ダクネスの親父さん。

 

 碌な灯りもない部屋の中でも、頬が痩せこけ、青白い顔色がみてとれる。

 

「あぁ、君か……。ハハっ、娘は良い仲間に恵まれた様だ。」

 

 流石大貴族の領主、俺の目的を一瞬で見抜いた様子だ。

 

 しかし、以前会った時の面影がない。

 

 これは……病気とかの類なのか…?

 

「親父さん、お宅の娘さん怒り狂ってるんですけど…説得してもらえませんかね?」

 

 俺の言葉に親父さんが布団の中で笑う。

 

「そうか。ここの所塞ぎ込んでた娘が、そんなに怒っているのか」

 

 ……そうだ。

 

「親父さん、この家あのおっさんに借金あるって聞いたんですけど。そもそもあのおっさん今行方不明なんですよね?しかも親父さんがあのおっさんに借金するとも思えないんですが……なぜ借金なんか…。」

 

 俺は疑問に思っていた事を親父さんに訪ねてみた。

 

「……うん。君は中々に賢い。やはり君に娘を任せよう……すまないが、あの娘を何処か攫ってくれないか?」

 

「いや、遠慮しときます。凄くお断りします。なんであんなに暴れてる娘さんと駆け落ちしなきゃいけないんですか…。言っちゃなんですが、随分とお淑やかな娘さんに育てられましたね。」

 

「はっはっ、そうだろう。アレはとてもおしとやかで、優しい子だ。」

 

 誰の事だろう…ダクネスってお姉さんいたのか…?

 

 俺の皮肉をサラッと流し、娘の自慢をしてくる親父さん。

 

「理由は聞かんでくれ、借金は娘の意思で出来た物だが……何、娘を連れて逃げてくれたら、後はこの屋敷でも売り払えばそこそこの金になる。」

 

「まだかっ!まだ見つからんのか!?」

 

 廊下から聞こえてくるダクネスの声。

 

 それを聞いて、親父さんが苦笑する。

 

「……それに、娘は面が良い。紅茶もなぜか入れるのが上手い……どうだ?」

 

 い、嫌だなぁ…。

 

「王様とかに掛け合ってどうにか出来ないんですか?親父さんは国にとって大事な人なんでしょう?」

 

 俺の言葉に親父さんは目を瞑る。

 

 そして、静かに首を振った。

 

「そんな事をしても、ウチの娘は嫁ぎに行く。アレは誰に似たのか頑固でなぁ…。全く、なぜあんな分からず屋に育ったのか。」

 

 全くです。

 

 とその時、ドアがバンと開けられた。

 

「見つけたぞ和真!!さぁ…どうしてくれようか……!」

 

「おい病人が居るんだぞ、もうちょっと静かに開け閉めしろよ。」

 

「やかましいわっ!お前が言うなッ!!」

 

「もういいだろ、借金なんて!そんなもんシカトして逃げちゃおうぜ!?それで、皆で新しい土地でやり直せば良いだろうが!」

 

「私は逃げない!私が逃げれば、その分何処かにとばっちりがいくのだ!」

 

 ダクネスが、言いながら俺に向かって駆け出した。

 

 嫁に行く前に、最後の決着を付けておく気らしい!

 

 俺はそのまま踵を返し、窓に向かって駆け出す。

 

「この分からず屋頑固女が!もういい、勝手にしろっ!後で泣いてもしらな……グハァっ!!」

 

 窓ガラスにドロップキックして逃げ出そうとすると、思ったより固く身体が激突。

 

 俺はバランスを崩して地面へと落っこちる。

 

「だ、大丈夫か和真様!お前こそ、ごめんなさいダスティネス様、助けて下さいと言えば治療してやらんこともないぞ!?」

 

 思い切り肩を震わせ、笑いを堪えている。

 

「ち、ちくしょーダクネスっ!お前泣きついてきても絶対助けてやらねぇからな!?」

 

 実に楽しそうにこちらを見送るダクネスに捨て台詞を吐きながら、俺は追いかけて来る守衛達を足止めしつつ、屋敷へと逃げ帰った。

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