この素晴らしいエリス様と祝福を!   作:おふざけちゃん

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この素晴らしいエリス様と祝福を!億千万の変態花嫁 4

 

 

 

「第四章 この花婿と決闘を!」

 

 

 

 街は連日お祭り騒ぎになっていた。

 

 なんでもあの領主の息子と、ダスティネスの娘が街に少なくない金を出し、大々的に結婚の話を広めお祝いムードを作っているらしい。

 

 結婚の日取りが決まり、既に発表された。

 

 何をそんなに焦んでいるのか、式はなんと1週間後を予定しているらしい。

 

 そんな大変な中、俺事佐藤和真はとある悪友に詰められていた。

 

「おいこの野郎ッ!!昨日はよくも一人で帰りやがったな!?お陰で大変な事になったんだぞ!!!」

 

「ちょ、ちょっとやめなよ!というか、アレはあんたの自業自得でしょ!?」

 

 胸ぐらを掴んでいるダストを、なんとか抑えようと必死に俺から引き剥がそうとするリーン。

 

 なにやら、俺が帰ったあと色々と大変だったらしい……主にダストの貞操が、本当に何があったんだ。

 

「それよりも、和真。ララティーナちゃんの事どうするの?」

 

「……どうするも何も、アイツが結婚するって言ってんだ。俺に出来る事はねーよ。」

 

「そっかぁ…。」

 

 と何やら悲しそうな目をしているリーンを尻目に、なんとかダストを引き剥がした俺は席につく。

 

 これで四度目だ、家に居るとアイツ等にダクネスの事を言われ、ギルドへと逃げてみればこれだ。

 

 何をそんなに心配しているのか、アイツが良いって言うんならそれで良いじゃないか…それに俺は決めた、もうあいつの事は放おっとく!!

 

 

 

 

 

___ダクネスの結婚式まで後六日。

 

 

 

 

 

「すいません、こちらに佐藤和真様はいらっしゃいますか?」

 

 俺が屋敷に引き籠もっていると、初老ぐらいの執事が訪ねてきた。

 

「どちら様でしょうか……って、あんたどっかで見たことあるな。」

 

「お久しぶりです、私、ダスティネス家の執事長を務めております、ハーゲンと申します。本日は、佐藤様に折り行ってご相談がありまして……」

 

 俺に相談?

 

 ひょっとして、ダクネスがとうとう折れて助けを求めてきたのか?

 

 そんな淡い期待を打ち砕くかのように、ハーゲンとなのった執事が手紙を取り出す。

 

「実は、当家のポストに毎日この様な手紙が投函されまして」

 

 そう言って、俺に手紙を渡してくる。

 

 それを開いて目を通すと……。

 

「すいませんでした!あのバカは、ちゃんと叱っておきますので!」

 

「い、いえ、これがエスカレートして領主の元へ送られると問題になりますので、そうなる前に伺った次第でございます。」

 

 俺は手紙をくしゃっと丸め、ハーゲンへと頭を下げる。

 

 用事は済んだのか、屋敷を出ていくハーゲンを見送り俺は改めて丸めた手紙に目を通し、溜息をこぼす。

 

「めぐみーん!ちょっと話があるからここ開けろ!!」

 

 俺は脅迫状を手に、めぐみんの部屋へと怒鳴り込んだ。

 

 

 

 

 

___結婚式まで後四日。

 

 

 

 

 

「おい、何へそ曲げてんだ女神様よ。」

 

「………今は女神じゃないもん…クリスだもん…。」

 

 ここ最近、あれ程までに元気だってクリスが部屋の隅で体操座りする日々を送っていた。

 

 飯はちゃんと食べるし、風呂にも入るしちゃんと寝るのは寝るのだが……ずっと俺を睨む様にジッと見るのは辞めて欲しい。

 

「………シュワシュワ飲むか?」

 

「…いらない…。」

 

「………」

 

「………」

 

「………義賊、しに行くか?」

 

「…行かない…。」

 

「………」

 

「………」

 

「………ちょっとサキュバス店行ってくる。」

 

「和真?」

 

 そう言って俺を羽交い締めしてくるクリス、そんだけ元気あるならそれ止めて欲しいなぁー……。

 

 

 

 

 

___結婚式まで後二日。

 

 

 

 

 

「ただいま帰りました…」

 

「お帰り。もうバカな事するんじゃないぞ」

 

 帰ってきためぐみんが、玄関先でグッタリしている。

 

 俺の説教に聞く耳持たず、とうとう領主の屋敷に脅迫状を送りつけた罪で、今日まで拘束されていたのだが。

 

「ダクネスの家の人の口利きで、特例として釈放されました……」

 

「お前、ダクネスを助けるんじゃなくて助けられてどうするんだよ…。」

 

 新商品の開発を進めていた俺は、めぐみんに呆れる。

 

 因みに今日もクリスは隅で俺をジッと見つめている。

 

「やはり私ではどうにもなりません。頼りの女神様も今や引きこもりニート状態、和真も良い加減そろそろ手伝ってください。」

 

 めぐみんはフラフラとソファーに倒れぐったりする。

 

 そこへ引きこもりニート発言に来る所が合ったのか、クリスがめぐみんへと躙り寄りちょっかいを掛けている。

 

「……ダクネスが助けを求めてきたらな」

 

 その言葉に、クリスに対抗しながら声を荒げる。

 

「この人でなし!私の好きな人は、こんな時嫌そうな顔をしながら、『しょうがねぇなぁ』とか言いながらどうにかしてくれる、そんな人なんで!!………ちょ、こら、クリス!そろそろやめて下さい!!」

 

 脇腹を突かれていためぐみんは、悶絶しながらも激昂を送ってくる。

 

「あのなぁ…適当に好きだとか言っておけば協力すると思ったら、大間違いだからな?」

 

 俺は唐突に好きと言われた僅かな動揺を隠す様に、めぐみんを宥める為に開発中の新商品を指で指す。

 

「そんなにカリカリしないで、これ試してみろよ。これに向かって殴ればストレス発散になるぞ?」

 

 ストレス発散の言葉に、めぐみんがちょっとだけ興味を示す。

 

「これは、どう使うのですか?」

 

「簡単だよ、さっきも言ったが、殴って良し蹴って良し。一応言っとくけど魔法は禁止な?」

 

 冗談めかして言いながら、作業に一区切りつけた俺はちょっと休憩しようとお茶を淹れに台所へ……。

 

「ぬあぁぁぁッ!!」

 

「ッ!?」

 

 めぐみんの気合いの声に、嫌な予感を感じ振り返る。

 

「ふぅ…。少しスッキリしました!」

 

「誰が刃物使えって言ったッ!!」

 

 俺の刀を手にしためぐみんが、サンドバッグをゴミへと変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ___ダクネスがいない日々に逆らう様に、半ば意地になった俺は、新商品の開発を続けていた。

 

 そしてとうとう、本当にこの日が来てしまった。

 

 今日はダクネスの結婚式。

 

 結局この日まで、アイツは俺達を頼る事は無かった。

 

「和真、行きますよ!式なんてぶっ潰してやりましょう!!」

 

 広間のテーブルの上に、俺はこの後のバニルとの商談のためコツコツと作り上げてきた物を整理していた。

 

 俺はもうこれ以上は知恵が出ない程に、考えつく限りの設計図を考えた。

 

 そんな俺を見て、悔しそうな顔で杖を握りながら声を荒げた。

 

「私の好きな人は、何時までも腐っている様な人ではないはずです!和真は、本当にこのままで良いんですかッ!?」

 

「良いわけねーだろうがッ!!」

 

 俺は思わず、めぐみんに怒鳴り返していた。

 

「俺だって嫌だよ!あんな辛そうな顔して、あんな思いに耽っていたダクネスを見て…!しかも相手はあのオッサンの息子だぞ!?幾ら評判が良くても、親があれなら中身が終わってる可能性だってある!そんな危ない奴に、俺等の仲間を安々渡したい訳ねーだろッ!?」

 

 それを聞いためぐみんは、クリスの背中に隠れながらシュンとし俯いた。

 

「すいません。和真なりに考えがあったのですか……」

 

 しかも調べてみるとあのオッサンは噂以上にロクでもなかった。

 

 不当な搾取に贈収賄…証拠もなければ、なぜか今や行方不明。

 

 めぐみんが杖をギュッと握り直す。

 

「なら、尚更放おっておけないでしょう?和真なら、何か良いアイデアが出るのではないですか?」

 

「…今回ばかりはどうしようもない。まず、ダクネスの借金がいくらあるのかが分からない。次に、金が払えたとしてもダクネス自身の説得が出来ない。そして最後に…」

 

 めぐみんが首を傾げた。

 

「最後に?」

 

「これは貴族同士の結婚式。もう今更どうやったってこっちこらは近づけない。……むしろ、それがあるからダクネスからの助けを待ってたんだ。」

 

 今まで気にしなかったが、身分の差がこれほどまでに実感したことはなかった。

 

 俺は何も言えないめぐみんに背を向け、自分の顔を隠す。

 

「ダクネスの親父さんは重病だし、面会を求めてもとり次いでくれないだろう。俺はあくまで、一般庶民なんだから。」

 

 王都で出来たコネも考えたが、例えアイリスに頼ったとしても、本人同士が結婚を望んでいるのならどうにも出来ないだろう。

 

 これが、身分の違いってやつだ。

 

「……分かりました。今まで我儘を言ってしまい申し訳ありませんでした。私は自分で考え、後悔しない道を行きます。」

 

 何時になく真面目な声で、まるで見識ある一端の魔法使いみたいな声を言うめぐみん。

 

 俺が唖然していると、めぐみんはスタスタと屋敷から出て行ってしまった。

 

 俺はソファーに腰を埋めながら、一人深々とため息をつく。

 

 ……いや、一人じゃなかったな。

 

 クリスも、慈愛に満ちた顔で俺の側へと寄り一緒にソファーへと沈む。

 

 と、そんな鬱屈とした空気を裂いて、そこに現れたのは___

 

「へい毎度!頼りにならないどころか、自分のやらかした事を必死に隠そうと一向に喋らない女神を差し置いて、見通す悪魔が助けにきたぞ。我輩の登場に泣いて喜び咽び踊り狂うが良い!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、下手な事を言うのはやめてくれる?別に何も隠そうとしてないから!」

 

「おーっと!今日の今日まで全くといって良い程喋らなかったポンコツ女神が、急に達者へと変貌したではないか!!」

 

 俺の背中へと抱きつき、俺を匿おうとするクリスとバニルが睨み合う。

 

 可笑しいな…めぐみんですら当たっていたと言うのに。

 

「ささ、まずは商品をキリキリ出すべし。我輩の目利きでズバリ適正価格を見抜いてくれよう。……まぁ、もう貴様が納得するだけの金額はここに用意してあるのだが。」

 

 言いながら、少し大きい黒い鞄をポンと叩いた。

 

「と言っても、俺が取引に応じるか分かんないぞ?」

 

「助けに行きたくて行きたくて、しかし助けに行って鎧娘に拒絶される事を怖れる男よ。見通す悪魔バニルが宣言しよう。貴様は全ての知的財産権を引き換えに、この鞄の中身を所望する。」

 

 ………見通す悪魔さん、本当に厄介だなぁ。

 

 バニルは、俺から受け取った数々の設計図や試作品をロクに確認せず大きな鞄へと詰め込んでいった。

 

 ………見通す悪魔、か。

 

「なぁバニル。お前色んな事が分かるんだろ?」

 

「うむ。全てとはいかないが、大概の事が見通せるな。今から貴様が知りたがっている借金の額から。借金した理由など。」

 

 俺はゴクリと喉を鳴らした。

 

「……なぁ。お前は、悪魔の」

 

「クセに、何故貴様に協力的なのか。何か企んでいるのではないか。……勿論企んでいるぞ。何せ我輩悪魔だからな、だがまぁ今回は貴様と利害が一致したまで。この際纏めて安く売ってもらおうとな。」

 

 ……この野郎。

 

「それより、俺が聞きたい事分かっているのなら勿体ぶらずに教えてくれよ。」

 

「良いだろう良いだろう。今貴様が知りたがっている事…それは、そこのポンコツ女神の今日の下着の色であるな!フハハハハ、なんつって……おや?美味しい感情ではなく殺意しか湧いてこないな。」

 

「白色と知っているからです。あ、おいこら首を締めるな!」

 

「そ、そうか……。では、事の発端は、貴様ら冒険者達が機動要塞デストロイヤーを倒した事に起点する。」

 

 世間話でもする様な感じでバニルがそんな事を……。

 

「おい、詳しく。」

 

 俺の言葉にバニルが笑った。

 

「詳しく…と言っても。今までの街ならば蹂躙され領地は土地を失うものだ。……が、この街はそうはならなかったわけだ。」

 

 ……良い事じゃないか。

 

「街自体は助かった。街中で商業に携わっている者達は、結局なんの被害も受けてはおらぬ。……そして、デストロイヤーは街の目の前で倒された。すると当然、街へと続く殻倉地帯、治水施設その他もろもろ、実に様々な物が破壊されていった。」

 

 …それはまぁ分かるが。

 

 でも、被害は最小限に抑えられたって事じゃないのか?

 

「農業に携わっていた者達は、仕事と財産を失い、領主へと助けを求めた。」

 

 ……もう嫌な予感しかしない。

 

「そう、貴様の予想通り!あの領主は助けを求める者共にこう言った。贅沢を言うな、文句があるなら、守りきれなかった冒険者に言うと良い、見ろ、冒険者達は今や莫大な報酬を得て潤っている。彼らの報酬を充てて貰えばよいだろう?……と。」

 

「……それで、ダクネスの親父さんに頼った…ってことか?」

 

「その通り、勿論王家の懐と呼ばれたダスティネス家は、その慈愛溢れる心で補修しはじめた………が、あまりにも多すぎた。その額なんと五十億!!うち三十億は払えたが、足りなかった。」

 

 ……あの女。

 

「ダスティネス家は屋敷を除く殆どの保有資産を充てた…しかし、それでも蹂躙された者達を助けようと、責務を放棄した領主に頭を下げ、金を借りた訳だ。」

 

 何勝手な事してやがんだ、あの女。

 

「でもよ、あの息子はどうなってんだ?評判を聞く限りじゃ、そんな事を見逃すって、やっぱ蛙の子は蛙なのか?」

 

「と、ここで一つ。そこの居た堪れない気持ちになっているポンコツ女神よ、貴様に一つ頼みたい事がある。」

 

「……あの悪魔が、女神に頼み事なんてなにごと?」

 

「本当は貴様なんぞに頼りたくないのだがな…残念ながら、我輩にも出来ない事がある。そこで、今の所やらかしてしかいないポンコツ女神に一つ、チャンスをくれてやろと。」

 

「……良いよ、今回限りは手を組んであげるよ。」

 

 何だコイツら、ちょっと格好良いやりとりしてやがる…俺も混ぜろ。

 

「…まぁ良いや、ダクネスの借金額。いくらなんだ?」

 

「お客様の持つ資産にこの鞄の中身を合わせると、ちょうど借金と同額になります!……では、商談に入ろうか!」

 

 この人でなし悪魔め!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とても……!とてもお綺麗ですよお嬢様……!」

 

 新人のメイドが、私のドレス姿を見て喜々として褒め称えた。

 

 その言葉に思わず苦笑を浮かべてしまう。

 

 この新人メイドは、当家の細かい事情も結婚への経緯も知らない。

 

 あの男との式が終わって、父にこの姿を見せたらきっと悲しむだろう。

 

「……お嬢様、とてもお綺麗ですよ……!」

 

 感嘆の声と共に、若干しわの交じったその顔を綻ばせた。

 

 長く家に仕えてくれている守衛の一人だ。

 

 融通が効かず、子供の頃に屋敷の外へ出ようとする私を連れ戻していた。

 

 何時しか私は、いかにこの守衛を出し抜くかで夢中になっていたのを思い出す。

 

 庭からボールを柵の向こうに投げ、取ってきてくれと駄々をこね、この男が取りに行った隙に外に出る。

 

 外に出た私をすぐに連れ戻すのが、とても面白く毎日柵の向こうへボールを投げていた。

 

 毎日、男が騙されてボールを拾いに行くのが楽しくて……。

 

「お嬢様は、たまに見せるその笑顔が非常にお美しい。最後にそのお顔を見られて、自分は幸せ者です。」

 

「……そうか、やはり守衛をやめるのか。」

 

「自分が仕えるのはダスティネス家だけですので…お嬢様様が認めた相手なら、仕えても良いのですが。」

 

 男は満足そうに笑みを浮かべると、そのままクルリと背を向ける。

 

「……そ、その。あまり、激しい一人遊びはなさらぬようご自愛下さい……。」

 

「!?」

 

 恥ずかしそうにそう言い残すと、ドアの向こうに行ってしまった。

 

 二人のメイドが、そんな私から目を逸らす。

 

 ロクでもない噂の元凶になった、あの男をとっちめてやりたい!!

 

 口が悪く、礼儀を知らず、誰も知らない変わった知識はあるくせに、常識をしらない無礼な男。

 

 臆病で、保守的で、突然無茶をやらかすときもある、掴めない男。

 

 ………そして、私の好きな男。

 

 私は鏡の前で、自分の純白のウェディングドレス姿の自分を見て苦笑した。

 

 この姿を見せるのは、残念ながら好きな男ではない。

 

 一般人は式には参加できないが、式が終わった後の披露目では、教会の前でその姿を見ることができる。

 

 そこにアイツは……いや、きっと来ないな。

 

「時間です。参りましょうかお嬢様。」

 

 そう言って片手を差し出しひざまずくのは、当家に最も長く仕えてくれている執事、ハーゲン。

 

 この日まで私に自由を与えてくれた、この街の人達への感謝と共に。

 

 ハーゲンが差し出す手を取った___。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここはアクセルの街で最も神聖な場所。

 

 エリス教の教会の中である。

 

 教会の入口の前には領主の部下による警備がなされ、それと共に野次馬も花嫁だけは見ようとごった返していた。

 

 ずっとざわめていた教会の中が、やがてシンと静まり返る。

 

 教会の入口の左右に備え付けられた、新郎新婦の控え室……そこから、ハーゲンに手を引かれ純白のドレス姿で現れたからだ。

 

 そんなダクネスに見惚れているオッサンの息子、バルターさん……いや分かるよ、何時ものダクネスが嘘の様に綺羅びやかなんだもん。

 

 ほら綺麗だなんて声に漏れてるもん……ま、ダクネスは気付いてないみたいだが。

 

 さて、二人が俺のいる祭壇へと来た訳だが……そう、"俺のいる祭壇"へと。

 

 神父さんがなんか結婚に関する色々な事を説明しているなか、どのタイミングで飛び出そうか俺は考えていた。

 

 すると、俺の背中を足でコツンと蹴る神父。

 

 俺をチラリと見ると、次だと言わんばかりに咳を一つ……コイツ、ダスティネスの回し者だな?

 

 厳かな音楽がピタリと止み、さぁ誓いのキスの前にヴェールを___!!!

 

「ちょっと待ったぁぁぁぁぁッ!!!」

 

 俺は声を荒げ立ち上がった!

 

 ざわざわと騒ぎ始める参列者達、ドアの向こうで歓声をあげる冒険者達、そんな奴らを尻目に、俺はバルターへと拳を向け高らかに宣言する。

 

「なーにうちのララティーナちゃんを貰おうとしてるんだ!?ララティーナの親父の代わりに、ララティーナを守りにきた!さぁ、ララティーナが欲しければ俺を倒していきな!!」

 

 未だ状況が掴めていないバルターとダクネスに捲し立て、バルターへと剣を投げる。

 

 その隙にハーゲンをダクネスの手を取り脇の方へと連れて行く。

 

 やっと状況が掴めたのか、バルターが笑いながら剣を手に取り、こちらに構える。

 

「ハハハッ!!やはり最高だ、ダスティネスのお仲間は!!良いだろう。君を討ち取り、正々堂々ララティーナさんを貰おうじゃないか!」

 

「バッ!?和真!な、なんて事を……。ハーゲン!今直ぐその手を離せ!あの馬鹿をつまみだせ!!」

 

「すいませんお嬢様。私には、辛そうなお嬢様の結婚式など見たくないのです…!」

 

 激昂し、泣きながら俺の方へと今にも駆け出しそうなダクネスを、なんとか抑えてくれているハーゲン…いやよく見ると神父も手伝ってくれてるな。

 

「さぁ、確か和真と言ったかな?君の実力を見せてくれ!!」

 

 そう言って飛び掛かってくるバルター。

 

 …クッ!流石貴族のボンボン、経験値の多い飯ばかり食ってきたのだろう、確実にレベルの差が出ている。

 

 押され気味になりながらもまだ耐えている理由に、今握っているチュンチュン丸ともう一つ、クリスのダガーの恩恵がでかい。

 

 やはり女神が使っている武器ともあって、チュンチュン丸なんかよりも硬く軽く使いやすい。

 

 リーチはないが、そこはチュンチュン丸でカバーだ。

 

「このまま耐えるつもりかい和真ッ!これはあの時の模擬戦ではない、君と僕の決闘だ!!」

 

 だんだんと疲れてきた…が、時間的にそろそろだろう。

 

「すまんなバルター!俺から言っといてなんだが、俺とお前じゃ経験とステータスの差がありすぎるみたいだ!!」

 

「なら諦めるのかいッ!?」

 

「良いや、仲間に頼るんだよ!!めぐみーんッ!!撃てぇぇぇぇぇッ!!」

 

 そう叫ぶと同時に、天井に見慣れた魔法陣が現れる……と同時に、眩い光と爆音が鳴る。

 

 それに同様して俺とダクネス以外の全員が動きを止める…俺はその隙を逃さない!!

 

 チュンチュン丸を動揺しているバルターに投げると、一瞬反応に遅れ弾く……と同時に空いて手から俺のスティールが放たれる。

 

「『スティール』ッ!!」

 

 剣を奪い取り投げ捨て、手ぶらになったバルターへとダガーを振り下ろす。

 

 目をつむり腕で頭を隠すバルターの手前でダガーを止め、俺はバルターが目を開くのを待つ。

 

 本当に殺されると思ったのか、目を開くと腰を抜かしその場にへたり座ったバルターへ、俺はニヤリと笑う。

 

「俺の勝ちだ、バルター。ララティーナは返してもらうぞ!」

 

 チュンチュン丸とダガーを鞘に差し、俺はララティーナにバインドを掛ける。

 

「あッ!!」

 

「行くぞダクネス!今日から俺は犯罪者だッ!!」

 

「誰がこんな事をしろと言った!お前は本当に何を言っている、この大バカがッ!」

 

 泣きながらも、何処かうれしそうな顔で俺にお姫様抱っこで運ばれるダクネス。

 

「バカバカうっせー大馬鹿女が!!お前の方こそ馬鹿な事ばっかりしやがって…!!」

 

 俺は貰い泣きしそうになりながらも出口へと走っていると、後ろから大きい声でバルターが聞いてくる。

 

「和真!後だしジャンケンのようで申し訳ないが、ダスティネスの家への借金はどうするつもりだいッ!?君に二十億エリスを払えるのかいッ!!」

 

 バルターの言葉に、俺は背負っていた鞄を掲げ、

 

「しっかり聞いたぞバルター!おら、ダクネスが借りた金二十億エリス。一枚百万のエリス魔銀貨で二千枚だ!これでダクネスは貰って行くぞ!!」

 

 その鞄をバルターの方へと投げつける。

 

「……ハハッ…完敗だ。和真。」

 

 その場にへたれ座り追ってこない事を確認。

 

 と、ダクネスが俺の顔をギョっとした顔で見てくる。

 

「おっ、お前は!私の覚悟を何だと思っているんだ!それに、この金は!この大金は一体どうしたんだっ!!」

 

 こんな時まで頑固はダクネスに、俺は笑いながら。

 

「売った!俺の思いつく限りの全ての知識と権利を、全部売っぱらってきた。それに合わせて今までの貯めた討伐賞金首をひっくるめたら、丁度二十億エリスになった!!」

 

 そんな俺にダクネスは、困った様な嬉しい様な、泣き笑いみたいな不思議な表情を浮かべそれでも何かを言い掛ける。

 

「そんな事をしてまでお前は……、お前という奴は……っ!」

 

 貴族たちの間を駆け抜け、扉を蹴り上げると拍手喝采の冒険者達の中から、ゆんゆんに背負われためぐみんがこちらに親指を立てて笑っていた。

 

 俺は清々しいまでの笑顔で、ダクネスに怒鳴りつける。

 

「ガタガタガタガタ、いい加減にしろよコラッ!!お前はもう俺に買われた身なんだ!これからは散々酷使してやる!俺が叩いた金の分、身体で払ってもらうから覚悟しとけよ、このド変態クルセイダーがッ!!」

 

「ふぁ、ふぁいっ!!」

 

 揺さぶられ、衆目の中ド変態呼ばわりされたダクネスが、目に涙を浮かべたまま恍惚としたヤバメの顔で変な声で返事をした。

 

 どうやら今の言葉はドM的にクリティカルヒットしたみたいだ。

 

 ……が、しかしどうやら簡単には奪わせて頂けないみたいだ。

 

 外にいた為何も知らないバルターの部下達が立ちはだかる。

 

 しょうがない、ここはダクネスだけ逃がす間の足止めを…!俺がそう思って引き返そうとしたその時だった。

 

「痛えぇぇぇぇぇっ!いきなり押されてっ!骨が、骨がぁぁぁぁっ!!」

 

 一人の男が悲鳴を上げ、地に転がる音がする。

 

「おい大丈夫かキース!こいつぁひでぇ……。粉砕骨折してやがる…!?」

 

 何だか聞いた事のある声と名前が聞こえてきた。

 

「なっ!?触れただけで何を大袈裟な!いきなり飛び出してきたのはその男だぞ!?」

 

「オイオイオイ!お前まさか俺のダチを下半身不随にしておいて、謝罪もなしで逃げようってのか!?」

 

 タチの悪いチンピラと部下が言い争いしていると、殴り合いへと発展し乱闘が始まる。

 

 ほとぼりが冷めたら、またアイツらに酒でも奢ろう。

 

 なんて考えていると、ダクネスが少し照れた表情で俺の頬を触れる。

 

「?なんだよ、動き辛いからやめろよ。」

 

「………和真、有り難う。私はお前を好きになって良かった!!」

 

 そう言って、ダクネスは俺に顔を近付ける。

 

 俺は、この瞬間ファーストキスをこの女に奪われてしまったのだった___。

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