この素晴らしいエリス様と祝福を!   作:おふざけちゃん

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年に一度の先輩vs後輩
この素晴らしいエリス様と祝福を!年に一度の先輩vs後輩


 

 エピローグ「億千万の変態花嫁」

 

「___お、お嬢様!?そのお姿は……!!と、とにかく中へ!」

 

 バルターの部下から逃げおおせた俺達は、ダクネスの屋敷へと逃げ込んだ。

 

 守衛の一人が慌てて門を開けてくれる。

 

 突然式を放り出して帰って来た、破れたドレスの姿のダクネスに屋敷の者が驚くが、ダクネスはそれらを無視して堂々と歩いて行く。

 

「お父様、失礼します。」

 

 そこは、何処か見覚えのある部屋の扉。

 

 あそこ窓を叩き割った気がしたが…大丈夫だろうか?

 

 俺が以前侵入した時よりも痩せ細り、目の下に黒い隈を作り深く眠っている。

 

「……おぉ、ララティーナ…。………綺麗だなぁ…まるで母さんみたいだ…。」

 

 そう言って、弱々しく優しく微笑む。

 

 その親父さんを見て、ダクネスは申し訳なさそうに顔を伏せた。

 

「……その、申し訳ありませんお父様。勝手に進めた結婚式ですが、最悪の形でぶち壊して逃げてきてしまいました…。」

 

 それを聞いた親父さんは、実に嬉しそうに目尻を下げる。

 

「そうか……!それは良かった。気にする事はない、むしろ良くやってくれた!」

 

 そう言った後、親父さんは俺に向き。

 

「和真君、こっちに来てはもらえんか。」

 

 その親父さんの言葉に、俺はベッドへ近付いた。

 

 その場の空気を呼んだのか、めぐみんが廊下へと出ていくのを見送り、親父さんに向き直る。

 

 親父さんは俺の顔を見ると、嬉しそうに笑う。

 

「和真君、ウチの娘を貰ってやってくれ。頼むよ」

 

「えッ!?」

 

 そしてダクネスが居る前でとんでもない事を言い出す。

 

 勿論、ダクネスはギョっとする。

 

「いらないですよ…何の罰ゲームですか。」

 

「えぇッ!?」

 

 俺の言葉に、ダクネスが更にギョッとして声を上げた。

 

 そんな俺達を見て親父さんは楽しそうに笑みを浮かべる。

 

 ……分かってますよ、変な男に取られる位なら、ちゃんと面倒見ておきますよ。

 

「…ララティーナ、今の暮らしは楽しいか?」

 

 親父さんが、目を閉じながらそんな事を呟いた。

 

 それにダクネスが迷いなく即答する。

 

「楽しいです。全てを投げ出して、仲間達を守りたいと思えるぐらいに。」

 

 親父さんはそれを聞き、満足そうに一つ頷くと小さく、そうか……と呟いた。

 

「ララティーナ。お前は好きな道を行きなさい。こんな身体でも、最後に一筆書くぐらいはできるだろう。」

 

 そんな親父さんに、ダクネスが寄り添い手を握る。

 

「愛していますお父様。今まで育ててくれて、ありがとう……!」

 

「愛しているよ、可愛い娘よ。」

 

 ダクネスの瞳が潤む。

 

 親父さんは、またいつか…そう呟いて、幸せそうな笑顔と共にダクネスの手を握り返す。

 

 そんな感動的な場面を、俺はぶち壊すかの様に咳き込む。

 

「あ、えーとな。二人共今世紀最大のお別れをやっている所悪いんだが…ちょっと良いか?」

 

「…和真。流石にこの空気でのそれは私も怒るぞ。」

 

「まぁまぁ……親父さん。ここで一つ申し訳ないんだが、俺の親友に凄腕の……いや、この世界で一、二位を争うアークプリーストが居るんだが。一度ソイツの治療を受けてみてくれないか?」

 

「………和真君。残念だが、寿命は魔法で治らないだ…それに、その子を呼ぶ前に私は女神様に会いに行くだろう。」

 

 俺はその言葉を聞き、ニヤリと笑う。

 

 そんな俺に気付いたダクネスが、まさかと言いたいかの如く目を見開く。

 

「なら良かった。向こうから来てくれるみたいだからな!」

 

 俺は今まで生きてきた中で一番格好付けた指パッチンをする。

 

 パチン……良い音が鳴ったと同時に、俺の背後に現れる魔法陣の光。

 

 突然の閃光から現れるのは、我らが大親友であり女神様…エリスが現れる。

 

 その光景を見た親父さんが、顔をあんぐりとし…少し顔を歪めて笑う。

 

「……和真君。本当にウチの娘を貰ってくれないか…?」

 

「冗談を言ってる場合じゃないですよ、ささ。やっちゃって下さいエリス様!!」

 

 エリスが親父さんへと近付き、額に手をかざすと驚いた表情で親父さんを見つめる。

 

「これは……良かった、直せそうでなによりです。ダスティネス・フォード・イグニスさん、"コレ"は寿命なんかではなく呪いです。それもかなりの上位悪魔による……ですが、私なら治せます。」

 

「なっ!それは本当なのかエリス…様!?」

 

「えぇ、ですので……『セイクリッド・ブレイクスペル』!」

 

 親父さんを囲った光が収まると、親父さんの顔からは隈が取れ、肌に薄っすらと赤みが差す。

 

 呆然としている親父さんに、ダクネスはもう我慢ならないと涙を浮かべ親父さんに抱きつく。

 

 未だ何が起こったか理解出来てない親父さんと、感極まって泣いているダクネスを尻目に、俺はエリスに近付く。

 

「………流石、エリス様だな。」

 

「やめて下さい…私は私のすべき事をしたままですから。」

 

「ま、助かったよエリス。やっぱお前は最高だよ。」

 

「フフッ、褒めても何も出ませんよ?………それじゃ、私は後一つすべき事がありますので。」

 

 そう言って、また最初の魔法でこの場から去ろうとするエリスに親父さんが呼び止める。

 

「ま、待ってくれ!」

 

 エリスが魔法を中断すると、深く息を吐き頭を下げる親父さん。

 

「本当に有り難う!この御恩は一生忘れない!!」

 

 それを聞いたエリスは、またクスリと笑い指を自分の口に近付け一つ。

 

「私が一人に深入れしたのは……ナイショですよ?」

 

 可愛らしい仕草で親父さんに言うと、エリスは今度こそ魔法で何処かへ消えていく。

 

 ……俺らに深入れしているのは、果たして良いのだろうか?

 

 なんて事を考えながら、俺はエリスを貰った事を心底天使に感謝するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 幕間「悪魔と女神のナイショ話」

 

 

 

 ……どうして、どうしてこうなった!!

 

 寝室の地下にある隠し部屋。

 

 そこでワシは息を荒げながら、足枷と手錠を外そうと藻掻く。

 

 ここに来て何日、何週間、何ヶ月たっただろう…ある日起きたら急にここに居て、このまま放置されている。

 

 巫山戯るな!ワシはあのララティーナを手に入れるまで、くたばれん!!

 

 ……その時だった。

 

「領主殿はいるか?私だ。助けに来た。」

 

 この、誰も存在を知らない地下室の入り口がコンコンと叩かれた。

 

 どうしてもこんな時間にだとか、何故この地下室を知っているのだとか、そんな事はどうても良い!

 

 その声は、勿論この私が聞き間違える事などない……!

 

「ララティーナ!ララティーナか!助けてくれ!手足が動かないんだ!!」

 

「な!?大丈夫ですか!今開けますね!!」

 

 そう言って勢い良く開けられた扉からは、銀髪の少年と背の高い男が居た。

 

「お、お前達はなん………ガハッ!!」

 

 銀髪の少年が勢い良くワシを蹴り上げると、髪を掴み顔を上げる。

 

「…嫌にニヤついた顔してるね。本当にダクネスが助けてくれると思ったんだ?」

 

「フハハハハハ!ララティーナだと思ったか?残念、我輩の声真似でした!!」

 

 何なんだコイツラは!!まさかワシを閉じ込めたのは!?

 

「それで…おい鬱陶しい女神よ。我輩の同胞は何処だ?」

 

「あそこ、あの箱の中に隠してある。」

 

 銀髪のやつがワシの少し離れた場所にあった箱を指差す。

 

 タキシードの男が箱を開けると、そこにはワシが呼び出した下級悪魔がボロボロの状態で押し込まれていた。

 

「ヒュー、ヒュー、ヒュー!!」

 

「マクス!生きていたのか…良し!この汚らわしい二人を殺せ!!」

 

 奴が生きていたのは嬉しい誤算だ!ワシを馬鹿にしおって、絶対に、絶対に許さない!!

 

「……?アルダープ、何故僕が同胞を殺さないといけないの?ヒューッ……あれ?君はどこかで会ったのかもしれないな?」

 

 マクスが命令も聞かずにそんな事を言い出した。

 

 口答えをしたのはこれで何度目だろう、そんな事を考えていると、タキシードの男が完璧な作法と共にお辞儀をする。

 

「貴公に自己紹介をするのは何百回か何千回か。初めましてだなマクスウェル。我輩は見通す悪魔、バニルである。真理を捻じ曲げる悪魔、マクスウェルよ。迎えに来たぞ!」

 

「バニル!バニル!何故だろう、何だかとても懐かしく感じるよ!」

 

「フハハハハハ、貴公は会うたび同じ事を言うな!!さぁ、貴公が在るべき場所…地獄へと帰ろう!!」

 

「ま、待て待て!そいつはワシの下僕だ!勝手に連れて行く……ガッ!」

 

 思わず出た言葉を、銀髪に殴られ遮られる。

 

「さて、我輩はもう貴様に用はない。後はマクスウェルを地獄へと帰し、我輩はあのへっぽこ店主の下であくせくと働くのみだ。」

 

「ヒュー!ヒュー!バニル!バニル!帰る前に、僕はアルダープから代価を貰わないと!」

 

 興奮した悪魔が、喉から笛の音のような音を鳴らし喜々としてそういった。

 

 その時だった、暗い地下室に響く鈍い音。

 

 それが、ワシの腕が折られた音だと気付いたのは……、

 

「……えっ、あっ、ああああぐあああああっ!?」

 

 悪魔が、ワシの両腕を握りへし折る姿を確認してからだった。

 

「アルダープ!アルダープ!!良い悲鳴だよアルダープ!!」

 

「何を!放せ!!止めろ!痛い、止めてくれぇっ!」

 

 泣き叫ぶ私の声を聞き、長い付き合いだったこの悪魔が、初めてその顔に表情を見せた。

 

 無機質だった能面の様な顔をぐにゃりと歪め、実に楽しそうに笑う。

 

「フハハハ!マクスウェル、続きは地獄へと帰ってからやればよい。」

 

 悪魔は楽しそうに笑っていた。

 

 それは、とても無邪気な笑顔。

 

「大事にするよアルダープ!攫った少女を嬲った後、すぐ捨てていた君とは違い、僕は君が壊れない様ずっとずっと大事にするよ!!ヒューッ、ヒューッ、ヒューッ!」

 

 ワシは薄れゆく意識な中、銀髪のタキシードの会話が耳に入る。

 

「しかし、貴様は女神の癖して随分と悪魔の如く人の不幸を笑うのだな。貴様も悪魔にならないか?」

 

「それ以上馬鹿を言うと祓うよ?それに、私は人の不幸を笑うんじゃなく、私の親友を傷付けた人を笑うんだよ。」

 

「フハハハ!!とても女神とは思えんな!!」

 

 その二人の会話を最後に、ワシは意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「第一章 この変態バツイチにお帰りを!」

 

 

 

「………何をしているんだお前達。」

 

 俺は呆れた様なダクネスの言葉に、背負っていた荷物を降ろした。

 

 後ろにいためぐみんとクリスも、それぞれ抱いていた荷物を降ろす。

 

「何って、逃げるんだよ。当たり前だろ?」

 

「あぁ、安心してほしい。バルター殿も気にしてないと言ってるし、ここにきてあの失踪した領主の悪行の証拠があちこちで湧き出てきてな。……まぁ、そんな訳でもう夜逃げする必要はない。」

 

「そうなのか、なら良かった。………って、どうしたんだよ、早く中に入れよ。」

 

 俺は玄関先で立ったまま、屋敷に入ろうとしないダクネスを促す。

 

 だが、ダクネスは思い詰めた顔で動かない。

 

「……すまなかった。今回は自分勝手な事をして、皆に迷惑を掛けた。……挙げ句、クリスにもその…結局頼ってしまった。」

 

 それを見たクリスとめぐみんが、慌ててダクネスに駆け寄る。

 

「もう良いじゃないですか、こうして無事に帰って来られたんですから…ね?」

 

「そうだよ!それに、アレは私が勝手にやった事だし……。」

 

 ダクネスは二人の言葉を聞きながら、俺を真っ直ぐ見つめてきた。

 

「和真には、本当に大きな借りが出来た。和真が私の代わりに払ってくれた金は、今すぐにではないが国から還付される。」

 

 ダクネスが、顔を曇らせる。

 

「……だが、お前が売ってしまった知的財産はもう…戻ってこない。」

 

 ……なんだ、そんな事か。

 

「その事ならもう良いよ。金は返ってくるんだろ?しかも二十億だ二十億!こんだけあれば、ここ数十年は遊んで暮らせるじゃないか。まぁ…だからこれで、昨日は全部何もなかったって事で。」

 

 ぶっちゃけ、返ってくる予定の金の額が額だからみみっちい事はどうても良い。

 

 だがダクネスは、何もなかった事に、という言葉を聞いてその表情を曇らせた。

 

「それは……。私を買った、という言葉も無かった事に?」

 

 ダクネスの言葉を聞いた、めぐみんが俺を怪訝な目でジッと俺を見つめてくる。

 

 クリスは俺の襟を持ってがくがく揺らしてくる。

 

 ……や、やめてください。

 

「も、もも勿論無かった事に!あれだ!もう昨日の事は全部忘れようぜ!!」

 

 ダクネスが、それを聞きなおさら沈んだ表情を浮かべた。

 

 ……あれっ?

 

 ひょっとして、貴方の物にして下さい的な…?まぁ俺の事好きって言ってたし……ダクネスなりの変わった告白展開なのか?

 

「…その、手紙の事だが……。私をptから外して欲しい、と書いたあの手紙の事なんだが……。」

 

 あぁなるほど、ダクネスの中ではptを抜けたつもりでいるのか。

 

 なんだ、ちょっと期待した俺の気持ちを返してほしい。

 

「何言ってるんですか、ダクネスはウチの大事なクルセイダーなんですよ?」

 

「そうだよ!それに、今更抜けるだなんて私が許さないよ!!」

 

 そんな二人の熱い言葉を受けたダクネスだが、胸の前で指をモニョつかせ、おどおどした不安そうな顔で上目遣いに俺を見上げる。

 

 俺の口から聞かないと安心出来ないのだろうか?

 

「そ、その!私は、硬いだけが取り柄のクルセイダーだ……、です…が。もう一度…もう一度、私を仲間にしてくれますか……?」

 

 不安そうに慣れない敬語を使ってきたダクネスに、俺は思わず苦笑する。

 

「当たり前だろ。……お帰り。」

 

「……た、ただいま!!」

 

 目尻に涙を溜めながら、安心した様に微笑んだ___。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「___ねぇ和真。何だかんだダクネスを買ったのを無しにしたの、ちょっと残念だって思ってない?」

 

 あの後ダクネスが家へと入り皆でくつろいでいると、クリスが急に俺にそんな事を聞いてきた。

 

 コイツ、なに言ってんだ?

 

「そう言えば、ダクネスは俺の所有物だと公衆の面前の前で宣言したんでしたっけ。なんですか、それって愛の告白のつもりなんですか?王都でアイリスに簡単に手懐けられていたり、紅魔の里では私に迫られると狼狽えていたり…もっとしっかりして下さい。」

 

 めぐみんが、若干不機嫌そうな顔でそんな事を言ってくる。

 

 ……コイツも何言ってんの?

 

 と言うか、お前に関しては俺ちゃんときっぱり拒否したから!!

 

 と、ダクネスの様子がおかしくなった。

 

「……そ、そう言えば私も、和真が屋敷に侵入してきた時危うく一線を越えそうになったな。」

 

「「えぇッ!?」」

 

 恥ずかしそうに、余計な事を言ったダクネスに二人が驚きの声を上げる。

 

「お、おいやめろよ…俺は未遂だっただろ…。」

 

 弱々しい俺の声に、クリスとめぐみんが叫ぶ。

 

「「未遂ッ!?」」

 

 なんという墓穴…。

 

「君ってヤツは君ってヤツは!!私の親友に手を出したら只じゃ置かないんだからねッ!?」

 

「和真、貴方はダクネスに夜這いにしに行ったのですか!?私の時は拒否した癖に!胸ですか、胸が原因ですかッ!!」

 

 ………地獄絵図だ。

 

 めぐみんが阿鼻叫喚し暴れ始め、クリスは俺をガクガクと先程よりも揺らす。

 

 この女、どうやら以前の夜這い未遂の事件の仕返しをする気らしい。

 

 俺が困り果てるそんな様子を、腕を組みながらニヤニヤと見ているダクネス。

 

「………お前の方から、誘った癖に…。」

 

「「!!」」

 

「ちちちち、違ッー!?あれは、あの男の下へ行くくらいなら、好きな男にいっその事……あ。」

 

「認めましたねエロネス!!以前から怪しいと思っていたら、とんだビッチではないですか!!」

 

「そ、そんな……。私の可愛い信者が……。」

 

 クリスはがくりと項垂れ、めぐみんは杖の先でダクネスの頬をグリグリする。

 

 ダクネスが俺を恨めしそうに俺を見る……どうやらまだやる気らしい。

 

「……なぁ、クリス。この国の結婚って、入籍とかどうなってんの?」

 

 突然違う話を始めた俺に。

 

「………なにさいきなり、私はショックでそれ所じゃないんだけど…。たしか、挙式の日の朝に夫婦になりましたって書類を役所に出す、それからお昼頃から結婚……式……。」

 

 クリスは、俺の言いたい事に気づいたらしい。

 

 途端に顔を引きつらせるめぐみんも、同じくそれに気付いた様だ。

 

「……?何が言いたい。」

 

 世間に疎いお嬢様だけが、話に付いてこられていない。

 

 すると、めぐみんがフォローでもするように。

 

「さ、最近は、バツイチなんて珍しくもないですしね、えぇ!」

 

 その言葉でダクネスもようやく気付いた様で、ハッと顔を上げる。

 

「その……これって、どうなるのかな?式の途中でダクネスは攫われた訳だけど。」

 

 ダクネスは恐る恐る不安そうに、正面の俺の顔を見上げる。

 

「まぁ……籍ぐらいなんて事ないさ。気にするなよ……。………バツネス。」

 

 ダクネスが、ワッと泣いて背を向け逃げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「___とまぁ、そんな事があったんだよ。」

 

 アクセルの街……ではなく真っ白な部屋。

 

 俺を呆れた目で見る女神アクアと、俺は向き直る。

 

「ねぇ、私。次は寿命で死んだ時に会いましょうって言ったわよね?」

 

 ポテチの袋を俺に投げ渡すアクアに溜め息を付かれる。

 

 ………いや、これはしょーがない。

 

「しょーがねぇだろ。俺だってまさかあんなに怒るとは思わなかったんだよ。」

 

 あの後、ダクネスを追い掛けて笑いながら街中で叫ぼうとすると、ダクネスのドロップキックをもろに貰ってしまった。

 

 それだけでもほぼ死にかけだったのに、打ち所が悪かったのか頭を角に当てそのままぽっくり……今に至る訳だ。

 

「あのねぇ……はぁ…。もう何も言わないわ。とにかく、あんまりあの子を虐めちゃいけないわよ?上で見てると結構分かりやすいけど、あの子かなり繊細なのよ?」

 

「分かった分かった、今度から気を付けるよ。」

 

 ポテチをバリバリ食べながら聞き流している俺に、また溜め息をつくアクア。

 

 すると、何かを思い出したのか俺にふと席を立ち上がる。

 

「ん?どうした。」

 

「あ、いやね。実は私今度地上に降りるのよ。んで、その時に私を見かけても声は掛けずにスルーして欲しいなって。」

 

「へぇ〜、了解了解。とゆか、エリスって結構皆の前で正体見してるけど、あれって天界的に良いのか?」

 

 ふと疑問に思った事を、アクアに投げかける。

 

「良い訳ないじゃない。あのね、エリスに頼るのは別に構わないけど…あんまり頼りすぎると上に怒られちゃうのよ。まだ私が謝ってるからなんとかなってるけど……あんまり私の可愛い後輩をこき使うのはやめてよね?」

 

 それは……申し訳なかったな。

 

「そうだったのか…すまんな。いっつも迷惑掛けて。」

 

「あら、ヒキニートの癖にえらく素直に謝ってくるのね。」

 

「なぁ、お前は俺を煽らないといけない病気なのか?」

 

「冗談よ。天界は暇で暇でしょうがないのよ、だからあんたでストレス発散してるだけよ。」

 

 こ、この野郎…!

 

「というか、それ位許してよね。あんたの蘇生の手続き、誰がやってると思ってるのかしら?」

 

 と勝ち誇った顔で俺を見下ろすアクアに、俺は何も言えなかった。

 

 不貞腐れてポテチを食い終わると同時に、エリスの声が聞こえてくる。

 

「ん、呼ばれたわよ。ほら行った行った。」

 

 シッシと手で俺を払うアクアに俺は手を振り出口へ走り出す。

 

「いっつもありがとよ!!ニートババア!!」

 

「よしぶっ殺すッ!!」

 

 アクアに捨て台詞を吐き捨て、俺は白い光に包まれた。

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