この素晴らしいエリス様と祝福を!   作:おふざけちゃん

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この素晴らしいエリス様と祝福を!年に一度の先輩vs後輩 3

 

 

 

「第三章 この変態アドバイザーにお仕事を!」

 

 

 

 酷い目に遭った。

 

 昨日はアイギスが叫んだおかげで屋敷の住人達が起き出し、俺とクリスは逃げざるを得なくなった。

 

 夜が明ける前に自宅に帰った俺達は、昂っていた気持ちも落ち着きようやく眠りに……、

 

「おはよう御座います!和真!」

 

 バン!と扉が勢い良く開かれ、ウキウキ顔のめぐみんが入ってくる。

 

「……おはようめぐみん。俺は昨日から一睡もしてないんだ、それじゃおやすみ…。」

 

「何クリスと同じ事を言ってるんですか、でも分かりますよ。和真も今日から始まるお祭りの準備が楽しみで仕方がなかったのでしょう?」

 

 そう微笑みながら、やたらテンションの高いめぐみんがカーテンをシャッと開け、パジャマ姿のまま嫌がる俺に服を渡す。

 

 俺は渋々着替えながらも、ふと疑問に思う。

 

「と言うかさ、祭りの準備なんて昼からでも良いだろう?何でこんな朝早くから……って、お前何照れてんの?」

 

「い、いえ。流石の私もまさか目の前で堂々と着替えられるとは……。それよりも、和真は何を言ってるんですか、私達は冒険者ですよ?なら、モンスター討伐に決まってるではありませんか。」

 

 ………?

 

「祭りの準備だよな?」

 

「はい、祭りの準備です。」

 

 コイツはとうとう、頭をやっちまったのだろうか?

 

「何か失礼な事を考えているみたいですが。さっさと準備して下さい、クリスもダクネスも準備は終わっています。」

 

 そう言って部屋から出ていくめぐみん。

 

 いや、本当になんなんだ。

 

 俺は言われるがままに着替えると、装備を身に着け___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 冒険者ギルドに来た俺達は、ドアを開けると固まった。

 

 そこには仕事を求めて掲示板に群がっている、大量の冒険者の姿。

 

 さっぱり意味が分からない。

 

 俺と一緒に大物賞金首クーロンズヒュドラを狩りに行ったのはついこないだの事。

 

 となれば彼等の懐も今は温かい筈…。

 

「山に巣を作った、レッサーワイバーンを狩りに行く人はこちらです!参加者後六人です!!」

 

「森に昆虫モンスターが大発生していますので、そちらの方もお願いしますね。」

 

 彼方此方でそんな声が飛び交い、人がバタバタと駆けて行く。

 

「なぁ、何でこんな事になってるんだ?」

 

 俺は同じく寝不足のクリスに尋ねる。

 

「……えーとね、ごめん和真忘れてたよ。お祭りの準備期間は安全に行う為に、近所のモンスターを駆除するのに皆必死なんだよ。」

 

 なるほどなぁ。

 

 しかし、それにしたってこないだのヒュドラ戦で稼いだ連中はもうちょっとダラダラしていそうだが。

 

 と、見慣れた冒険者グループを見つけた俺はその連中に近付く。

 

「ようお前ら。金のないダストはともかく、他の皆までこんな朝はやくからどうしたんだ?」

 

 ダスト達のptに声を掛ける。

 

 弓の調子を念入りに確かめるキースは、そんな俺に小首を傾げる。

 

「カズマの事だから真っ先に参加すると思ってたんだけどな。」

 

 ……なぜ俺が?

 

「あぁ、例の店の常連なカズマが珍しいな……。まさかお前、ついに彼奴等の誰かとデキたのか…?」

 

 何時になく真剣な表情で剣を砥いでいたダストが、変な事を口走っているが気にしない。

 

「どういうこった?お前らそんなに祭りが楽しみなのか?」

 

「祭り?あぁ、女の冒険者は祭りの開催の為に活発になったモンスターを駆除しているが……俺達は皆森でのモンスター討伐を希望している。」

 

 森?

 

 というか、他の冒険者達がこれだけ頑張っているのだから、もう俺達は頑張らなくても良いんじゃないだろうか。

 

 と、混雑するギルド内で冒険者達に各種支援物資の提供をしていた職員が…

 

「皆さん!森に大量発生したモンスター討伐は特に重大責任です、頑張って下さいね!今年の祭り開催期間中を快適に過ごすには、皆さんの手に掛かっています!!」

 

「……なぁ、夏を快適に過ごす事と森のモンスター退治、どう関係あるんだ?」

 

 俺の疑問にクリスが答える。

 

「えっとね、蝉って居るでしょ?」

 

「蝉?蝉がどうしたんだ。夏の風物詩だろ?」

 

「そう、その蝉なんだけど…この世界の蝉って日本の蝉とは大きく違う所が二つあるの。一つは蝉の声量がとても大きい事、まぁ日本の蝉の数倍?くらいかな。」

 

 あのやかましいのが数倍か…。

 

 いや、それは確かに迷惑だが……。

 

「あと、こっちの蝉は夜だろうと構わず鳴き続けるの。」

 

 超迷惑!!

 

「そんな蝉を駆除してくれる業者も居るんだけど、モンスターが森に蔓延っていると仕事が出来なくなるんだよねぇ…。」

 

 なるほどな…そりゃ確かに真剣にもなるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 街の近くの森の中。

 

「では、防御に自信のある前衛職の方はこちらのポーションを身体に塗ってくださいねー!数が多いので、油断はしない様お願いします!!」

 

 多くの冒険者を従えたギルド職員が、森の中の中心部にてアナウンスを行っていた。

 

 今回の様なクエストは大規模狩りと言うらしい。

 

 日頃こんな所には出張ってこない職員だが、こういった統率する者が必要な場合は出てくる。

 

 というのも冒険者は協力性がない連中が多いため、職員が指揮しないと揉め事がおきるらしい……たとえば、そう。

 

「領主代行の私が全てのモンスターを引き受ける!そう、これは民を守る私の役目だ!!」

 

「駄目ですよ、大量に塗り込むとモンスター以外の生物にまで攻撃を喰らいますよ!」

 

「ぜ、是非とも望む所ではないか…!」

 

 こんなヤツとか。

 

「ほらダクネス!ギルドの人に迷惑を掛けないで…ダクネスは私達だけを守ってくれれば良いから!」

 

「あぁっ!頼むクリス、後生だから……!!」

 

 クリスがズルズルと引っ張り連行していく。

 

 この地点での駆除の参加者は俺達を合わせて三十人程。

 

 大体が四人か五人ptの様だ。

 

 ふとダクネスに視線を向けると、信じられない光景が待っていた。

 

「……お、お前ってヤツは……。ちゃんとギルドの職員の話を聞いていたか…?」

 

 職員から数本多めに貰ってきたらしいポーションを、自分の身体にドバドバと振りかけていた。

 

 呆れたような俺の言葉にダクネスは…

 

「フフッ。日頃お前に散々働けだの言っておきながら、自身が矢面に立たないでどうする?クルセイダーは盾職だ、私が全てを受け止める!」

 

 久しぶりのクエストに昂っているのか、ダクネスはそんな格好良い事を宣言し、自身たっぷりの表情で不敵に笑った。

 

 そんなダクネスを見て、呆れたように頭を抱えながら項垂れるクリスを尻目に、俺も気合を入れる。

 

 彼奴等が気合を入れている理由が分かった、あの蝉だ。

 

 夜通し鳴く蝉のせいで安眠出来ないとなると、当然素敵な夢を見せてくれる例の店も意味を成さなくなる。

 

 と、そんな俺やダクネスに触発されたのか…

 

「なんだか、二人共やる気みたいですね。なら私は、誰よりも多くのモンスターを討ち取ってみせますよ。和真、見ていて下さいね!」

 

 そんな俺達に対抗でもするかの様に、めぐみんも自信あり気に微笑する。

 

 俺は項垂れていたクリスを見ると、俺と目が合い頬をポリポリと掻く。

 

「そうだね、私も祭り中に蝉が煩いのは勘弁だしねぇ…勿論頑張るよ!………まぁ、和真はかなり不純な理由みたいだけど。」

 

 こちらをジト目で見てくるクリスから目を逸らし、俺は冷や汗がとまらない。

 

 まさか気付いていたとは…人の心を読まないで欲しい。

 

「不純な理由…とは?和真、一体どんな理由で……」

 

「冒険者の皆さーん!モンスター、第一陣が集まって来ましたよ!殺虫剤も大量に用意してありますので、お願いします!!」

 

 ギルド職員の声が轟く……助かった!!

 

 急いで殺虫剤を手に取り、森の入り口目掛けて武器を構える。

 

 迫りくるのは昆虫型のモンスター達。

 

 耳障りな羽音を立てて、敵寄せのポーションを被った連中に突撃を敢行している。

 

「うぁー!ちょっ……援護を頼む!!」

 

 それはとある冒険者の叫び声。

 

 見ればカブトムシみたいなのにたかられていた。

 

「あふっ!?」

 

 更に一人、そのカブトムシと突撃を受けて悶絶する。

 

 見るとカブトムシの角が深々と突き立っていた……うぇ、なんて攻撃的なカブトムシ!

 

 その冒険者の鎧に刺さったカブトムシを慌てて他の冒険者が抜いてやる、それと同時にその冒険者の身体が淡く光る。

 

 回復魔法でも受けたのだろう、尚苦悶の表情を浮かべる冒険者。

 

「二十匹までいける!二十匹までいけるっ!!もっと、もっと!!」

 

 そんな冒険者とは真逆に、興奮した様子のダクネスを尻目にアイツの化け物さが更に浮き彫りになる。

 

 先ほどの宣言通り、今日のダクネスはちょっと頼りになるみたいだ。

 

 クリスも有象無象に駆け回り、次々と昆虫達をワイヤーで縛り上げ叩き落としていく。

 

 下で待機していた冒険者が昆虫にトドメを刺す……そんな仲間達の思わぬ活躍に、俺もこうしてはいられない。

 

 ギルドから支給された、竹で出来た水鉄砲みたいなタイプの殺虫剤。

 

 それらを向かい来る昆虫型モンスターに散布する。

 

 飛来するのはカブトムシだけではなく、クワガタやカマキリみたいなやつ……どれも軒並み体がデカいのが気持ち悪い。

 

 俺が昆虫達に殺虫剤を振りまいていると、服の端をクイクイと引っ張られる。

 

「まだですか?和真、私の出番はまだですか!?」

 

 皆の活躍を目の当たりにしためぐみんが、杖を構えてうずうずしていた。

 

「あー…悪いが、お前の出番はなしだ。なにせ森の中だからな…魔法を放つにしてもその辺の木に当たれば大惨事だ。今日は大人しく」

 

「『エクスプロージョン』ッ!!」

 

 俺の言葉を遮って、めぐみんが突然魔法を唱えた。

 

 小さな昆虫型のモンスター達は、その衝撃波の余波に耐えられなかったのか全て地に転がっていた……まぁ、地に転がっているのは昆虫だけじゃないが。

 

 めぐみんが俺と共に地に転がったままポツリと言う。

 

「めぐみんはレベルが上がった!」

 

「馬鹿野郎が!!」

 

 俺はムクリと起き上がり、恍惚とした表情で満足気に仰向けに寝転がっているめぐみんを起こしてやる。

 

「お前ってヤツは…どうして駄目って言うとやるんだよ!見ろ、この惨状を!お前皆に謝っとけよ!?」

 

「和真が私の出番はなしだなんて言うからですよ!それに、この街の冒険者は既に爆裂慣れしてますから大丈夫ですよ。」

 

 堂々と開き直るめぐみんの言葉通り、あちこちに転がっていた冒険者達が文句の一つも言わず起き上がる。

 

 こいつらも大概だな……。

 

 起き上がろうとジタバタしているダクネスの下へ近付くと、鎧が重く苦戦中の様だった。

 

「…なんだろう、身体がチクチクするんだが。」

 

 言って、不思議そうな表情で首を傾げ……。

 

 俺はダクネスの鎧を見て、ギョッとしながら後退る。

 

「おま……っ!鎧に蜂がたかってるぞ!」

 

「あぁっ……!ちょ、和真頼む!私に殺虫剤を掛けるか鎧にクリエイトウォーターで水を……!」

 

 自分では鎧の中が搔けない上に簡単には脱げもせず、ダクネスは悲鳴をあげていた。

 

 もう面倒だし自業自得なので放っておく。

 

 やがて転がっていたギルド職員も、荒くれ冒険者達のこんな行動には慣れているのか、文句を言う事もなく起き上がる。

 

「皆さんご苦労様でした、ではそろそろ第二波が参りますので……。」

 

 ……第二波?

 

 淡々とした職員の言葉と同時に、大量の虫の羽音が聞こえてきた。

 

 恐らくは、森を揺さぶるような爆裂魔法の衝撃と振動で、木々の虫達を怒らせてしまったのだろう。

 

「……これはあかん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「___うぅっ……、私が何をしたって言うんだよめぐみん…私はただ真面目に頑張っていただけじゃないか……。」

 

「す、すみませんクリス…まさか昆虫の上に乗っているとは……。」

 

 ギルド職員や他の冒険者達と、街に帰る道すがら。

 

 昆虫に乗り移ってワイヤーを使っていた所、爆裂魔法の風圧で昆虫ごと地面に叩き落されたクリスは足を挫いて嘆いていた。

 

 ダクネスがめぐみんを、俺がクリスを背負って家へと歩む。

 

 すまなそうな顔をしながらも、一人モンスターの群れに爆裂魔法を叩き込めてご満悦なめぐみん。

 

 比較的安全に大量のモンスターが討伐された為、その多額な討伐報酬が均等に分け与えられる事となり、皆もご機嫌な様子だった。

 

 そして…

 

「んっ……。くっ……、ハァ…ハァ…ハァ……和真…。新感覚だ……。新感覚だぞコレは……!」

 

 未だに鎧の中は蜂にたかられているのか、赤い顔で馬鹿な事を口走っているダクネスがご満悦そうだった。

 

 時折蜂が飛び出してきて、近くのめぐみん目掛けて飛んでいくが頑張っておいやっている。

 

「……クリス、和真の背中と変わってくれませんか?」

 

「それは私の足に対する罰だよめぐみん…。」

 

 めぐみんが時折クリスに交渉しているのを尻目に、俺はどうしてあの時、こんな変態を助ける為に全財産を投げ出せたのだろうか…そう真剣に考え始めた。

 

 ___それからは、忙しくも充実した日々だった。

 

 朝はモンスター討伐に出かけ、昼からは祭りの準備に奔走する。

 

 普段なら乗り気じゃないモンスター退治も、文化祭などの学園生活を楽しみたいという想いがあったのだろうか?

 

 引き籠もりだった俺にも、この祭りが成功する様にとの純粋な願いから様々なアドバイスをした。

 

 

 

『祭りまで後一週間』

 

 

 

「各所の売り上げ向上策の一つとして、出店の売り子さん達は皆水着にすれば良いんじゃないかと思うのですよ、アドバイザーとしては!」

 

 俺はバンと、テーブルを叩きながら熱く語る。

 

「それは素晴らしい!素晴らしいのだが…如何せんやり過ぎると警察からの指導が入るのではありませんか!?」

 

「指導が怖くて祭りが出来るか!売り上げが伸びると分かってやらない商売人がどこにいる!!」

 

「いや、会長の懸念ももっともだ…。くそ、売り子を水着にさせる大義名分はえあれば…!」

 

 悩む会長。

 

 唸る役員。

 

 そんな彼らを見渡すと、俺は人差し指を出し口を開く。

 

「俺に考えがある。」

 

 その一言に、会議室の空気が変わる。

 

「な、なんだと!?」

 

「アドバイザー殿、それは!?」

 

 そんな彼らを見返しながら。

 

「水着を着た売り子に打ち水をさせよう。それなら水を被っても平気な格好をしているだけだと言い張れる、熱中症対策も兼ねているとも言えば良い。何か言ってきたのなら、『じゃあ熱中症で誰か倒れたら責任取るんですか?』とでも言ってやれ!責任という言葉に弱い役所の人間はこれで静かになる筈だ…!」

 

「天才だ!アドバイザー殿は天才だ!」

 

「祭りが終わったら、ウチの店のアドバイスも頼みたいものだ!」

 

 会議室には拍手の音が鳴り響いた…。

 

 

 

「___なぁ和真。祭りの実行委員の方から、『熱中症対策概要書』とやらが届いているのだが、確かお前も役員の一人だったな?これは一体…。」

 

「あぁ、祭りの当日は暑いからな。熱中症対策としてあちこちで打ち水をする事になるが、普段着だと水を被って下着が透けたりするだろう?水着なら恥ずかしくないもんってやつだ。今回の祭りはどうしても成功させたいんだよ……。」

 

「そ、そうか。すまなかった、変に勘ぐってしまった。そういう事なら問題ない、許可しよう。」

 

 と、まだ政治に不慣れな領主代行、ダクネスの相談にも乗ったりした。

 

 コイツやっぱチョロいな。

 

 

 

『祭りまで後三日』

 

 

 

 アドバイザーとして全てが上手くいった訳ではない。

 

 当然、運営委員達と激しく討論する時もある。

 

「爆発魔法の使い手が、王都近辺での魔王軍活発化のせいで援軍として出向してしまっている。今年の花火大会は中止せざるも得ませんな。」

 

 そんな会長の一言に、俺は激昂し罵声を飛ばす。

 

「バカッ!花火大会を中止だなんてとんでもない、花火と言ったらYUKATAだろ!?YUKATA.見ずしてどうするんだ!!」

 

「アドバイザー殿落ち着いて!YUKATAと言ったら、遠い異国から伝わったYUKATAの事ですか?」

 

「たかが花火大会とYUKATAではないですか、それがそんなに大事なのか?」

 

「ファイヤーボールを打ち上げた所でたかが知れてるしなぁ…。」

 

 そんな彼らを見渡すと、俺は秘策を持ち出した。

 

「俺の仲間の一人に、爆裂魔法の」

 

「却下だ却下!」

 

「祭り自体を無くす気か!?」

 

「こんな男にアドバイザーなんてやらせるんじゃなかった…。」

 

 俺の秘策も虚しく役員達が罵声を上げる。

 

「何だとこの野郎!花火大会は男のロマンなんだよ馬鹿共が!!」

 

「このクソガキが!だったらもっと使える代案を寄越せ!あっ、なんだその手は、冒険者が一般人に暴力を振るっても良いってのか!!」

 

「やっちまえ!この成金冒険者は対して強くない、皆で取り囲んでやってしまえ!」

 

 そんな感じで、役員達と意見が合わず行き違う時もあった。

 

 

 

「___『爆発ポーション使用許可証』……?おい和真、こんなものを使うのか?そもそも……なぜお前は傷だらけなのだ。」

 

「そのポーションは、祭りに必要な物なんだよ…。それと、男にはな…絶対に守らなきゃならない物があるんだよ。」

 

「そ、そうか分かった、深くは聞かない。」

 

 困惑するダクネスを説得し、忙しい日々はなおも続く。

 

 思えば俺は、中学時代の文化祭もロクに体験しなかった。

 

 これは楽しめなかった学生生活を、ほんの少しでも取り戻したいという俺のワガママ。

 

 正直言って、アドバイザーのしての報酬なんて二の次なのだ。

 

 

 

『祭りまで後……』

 

 

 

 ___とうとう祭りの開催が明日へと迫り、会議室……ではなく、俺は自宅のリビングに居た。

 

 俺だけじゃなく、クリスもめぐみんもダクネスも、皆黙々と自分の作業に没頭していた。

 

 それは、あの日約束した仮装用の衣装の最終チェック。

 

 最初はなんで受けちまったんだと後悔していたが……初めてみるとこれが案外楽しいものだ興が乗った。

 

 分からない所があるとクリスに聞き、お互い衣装のグループに分かれ確認しあう。

 

「………良し、出来た!」

 

 なんだかんだ一番楽しい作業だったかもしれないな、そんなこんなで祭りの準備は慌ただしくもなんとか進行し。

 

 やがてとうとう、その日を迎えた___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この日を楽しみにしていたアクセルの皆さん、準備はよろしいですか?今ここに、女神様大感謝祭の開催を宣言します!』

 

「「「うぉぉぉぉぉッ!!!」」」

 

 拡声の魔道具により開催宣言が街中に響き渡る。

 

 それと共に、空には祭りを祝うかの様に魔法が打ち上げられ、地上ではそれに負けじと歓声がわき起こっていた。

 

 そして俺は今、女神の格好をしてイスに座らされ、メイクをされていた。

 

「ちょっと和真動かないでよ!ずれちゃうでしょ?」

 

「……なぁ、これ後どれくらいだ?」

 

「もうちょっと!もうちょっとだから!」

 

 メイク経験のないめぐみんは、ダクネスが入れた紅茶を啜って俺を眺めていた。

 

 ………あんまりガン見されると恥ずかしいな。

 

 とゆかめぐみんってメイクした事なくてアレなのか…やっぱりコイツら面は良いんだよなぁ…。

 

 ダクネスは優雅に紅茶を啜っているが、やはり気になる様でチラチラと俺を見ていた。

 

 クリスにメイクされ、めぐみんとダクネスに見られながらもうかれこれ小一時間程経った頃だろうか。

 

「……良し!完成!!」

 

 やっと終わったのか満足気なクリスに手鏡を渡され、俺は自分の面を見る。

 

 そこに映っていたのは……!

 

「これが……私…?」

 

 そこには何時ものカッコいい和真さんは何処へやら、彼奴等にも見劣りしない程の女が映っていた。

 

「……前々から可愛らしい顔立ちをしているとは思っていましたが、まさかメイクによって真価を発揮するとは。」

 

「あぁ、クリスのメイクの腕には感心すら覚えるな。」

 

「そうでしょそうでしょ!さ、出発するよ和真!!」

 

 財布とチュンチュン丸を手に取ると、俺達は家を飛び出す。

 

 待ち行く人から誰だアイツはという目線で見られる……が、それは不審などではなく好奇な目線だった。

 

「…おいダクネス、なんだか小っ恥ずかしいからお前の背中に隠れて良いか?」

 

 エリスの格好をしたダクネスに声を掛けると、ニヤニヤしながら俺を見下ろす。

 

「フッなんだ和真?お前の可愛らしい姿を、街の皆に見せれば良いではないか?ほら、先頭に立て先頭に。」

 

 ダクネスに背中を押され、俺は怖ず怖ずと前を歩く。

 

 すると、クリス…元いエリスが後ろから肩に腕をまわしてきた。

 

「せーんぱい!どうしたんですかそんなに元気なさそうに、何時もの調子はどこに行ったんですかぁ?」

 

「な!お、お前この野郎…!アクアにそんな絡み絶対しないだろ!!」

 

「えー?なんの事ですか先輩!ほらほら、何時ものヤツ見せて下さいよ、ほら花鳥風月ってやつ!!」

 

 何だかウザい後輩ポジションへと変貌したエリスを尻目に、同じ姿のめぐみんの方へと逃げ出す。

 

「おいめぐみん助けてくれよ!アイツらを俺をイジメて……おい、どうしたんだ。俺の顔になんか付いてるか?」

 

 俺の顔をずっと見てくるめぐみんに聞くと、少し納得のいかない表情で口を開く。

 

「…いえ、何だか私より可愛いのが気に食わないのです。」

 

「何言ってんだめぐみん?お前のアクアの姿のが可愛いじゃねーか、もっと自信持てよ。」

 

 そう言うと、少し照れた様子でそっぽを向いてしまった。

 

「えーねぇ先輩。私達後輩は可愛いって言ってくれないんですかぁ?」

 

 やけにテンションの高いエリスと、モジモジしているエリスの姿のダクネス……あの野郎、人に言う癖して自分も恥ずかしがってるじゃないか。

 

「………まぁ、エリスも多少は可愛いんじゃない?私の美しさには敵わないけど!!」

 

「アッハハハ!!似てる似てる!!」

 

 手を叩いて爆笑するエリスに釣られ、ダクネスもめぐみんも笑い出す。

 

 何だか今のエリスはエリスって言うより、エリスの格好をしたクリスって方がしっくりするな。

 

 やけにテンションの高い所だとか言葉遣いだとか、やっぱり素はクリスなのだろうか?

 

 なんて考えていると、周りを良くみてなかったせいか人にぶつかってしまう。

 

「あ、すんません。」

 

「おいおいねーちゃん、余所見はいけねーなぁー?……ってあれ、お前ら和真はどうしたんだ?」

 

 朝っぱらから酒を呑んだくれていたダストにぶつかったらしい、そして酒のせいもあってか俺が誰か気付いていないようだ。

 

 そんな様子に気付いた三人も、ダストに対して笑いを堪えていた。

 

「揃いも揃って女神の格好なんかしやがって……あ、おい和真は女神の格好してねーのか?アイツが女神の姿なんかしてたら笑いが止まらねーよ!」

 

 その言葉にもう耐えられないとばかり三人が笑いだし、めぐみんが俺に指を指す。

 

「あ?コイツがどうしたってんだ……おいねーちゃん、お前和真って男しらねー……か…?」

 

「くッ、フフッ…おいダスト、俺の姿は笑いが止まらねーか?」

 

 笑いを堪えつつ、俺はダストに問いかける。

 

「お、お、お前和真なのか…?嘘だろ、おいキース!キース来てくれ!!」

 

 大慌てでキースを呼びに行き、キースどころかダストのpt全員が集まってきた。

 

「おいダスト何がどうなって……って、おいおいこんな綺麗なねーちゃんここら辺に居たか?しかも後ろは和真のptメンバー達だし……ってまさか!?」

 

「えぇー!!和真ったらスッゴイ可愛いじゃん!!」

 

 流石リーンと言うべきか、俺の正体を一発で見抜く。

 

「で?どうだダスト、俺の姿は笑えるか?」

 

「お、恐れ入った……お前にそんな才能があるとは…。」

 

「ま、メイクはクリスがしてくれたんだけどな。」

 

 そんな会話をしていると、俺の正体が和真だと次々に気付いた連中に囲まれ初める。

 

 ………なんだか、可愛いって言われるのも悪くないな。

 

 そんな感じで、俺は新たな道が開かれる……事は別になかった。

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