「第四章 この男に青春を!!」
商業区に漂うソースの香り。
それに惹きつけられたのか、やがてそこには大行列が出来ていた。
「はい、次の方!マヨネーズマシマシの青のり多めね、おいクリス!キャベツもっと切ってくれ!めぐみんは豚肉を頼む!!」
「分かった!……うわ、今日のキャベツは活きが良いなぁ…。」
「分かりました!」
クリスがキャベツを相手に多少苦戦しつつ、めぐみんは手際良く豚肉を刻んでいく。
先程まで女神の真似事をしながら屋台を食べ歩いていたのだが……如何せん何かが足りなかった。
そう…それは日本の祭りといえばの定番料理、みんな大好き焼きそばだ。
日本人がこちらに来たことにより、色々な日本の料理がもたらされている筈なのだが…未だにきちんと伝わっていない料理もある。
焼きそばが恋しくなり、暇そうな屋台を借りて焼きそばを作らして貰ったのだが……。
「美味いなこのYAKISOBAっての!」
「全くだ、匂いを嗅ぐだけで腹が減ってくる!」
「おい兄ちゃん…いや姉ちゃん?マヨマシキャベツ大盛り麺堅めで!」
「有難う御座います、ご注文承りました!あと兄ちゃんです!……クソっ、まさかここまで繁盛するとは…!」
匂いに釣られ色んな人が焼きそばを求めてきた為、今こうしてみんなで作っている訳だ。
しかし人手が足りなすぎる…ダクネスがまさか領主の手伝いで離脱するとは思わなかった。
……いや、あいつが居ても不器用だから注文を聞くくらいか。
焼きそばソースはこの世界の人には新しかった様で、皆美味しそうに頬張っている。
日本から来た連中も、料理の作り方は知っていてもソースのレシピまでは知らなかったのだろう。
料理スキルを取得したお陰で俺は作れたのだが…こんな所に役立つとは思わなかった。
あぁクソっ!せめて後一人…いや二人も居れば多少は楽になるってのに…!
「忙しそうだな、和真?」
な…!その声は!!
「ッ…!店長!!お久しぶりです!最近顔出せなくてすんません…!」
そこにはギルドの料理長が居た。
過去アルバイト時代にお世話になったのだが、ここ最近はめっきり顔を出せていなかった。
「ハッハッハ!なに良いんだ、お前さんの目まぐるしい活躍はこの耳にしっかり届いている。また落ち着いた時にでも、手伝ってくれや。」
そう男らしい事を言いながら、厨房の中へと入ってくる。
「おい坊主、キャベツの切り方がなっちゃねぇ。貸してみろ。」
クリスから包丁を受け取ると慣れた手付きでキャベツを切り始める。
流石店長だ……!!坊主と言われてしょげているクリスには悪いが、今は休んでいる暇はない。
これで多少は楽になる筈だ!良し、もう一踏ん張り頑張りますか!!
「___づがれだぁ…。」
俺はソファへとダイブし項垂れる。
あの後店長の手伝いのかいもあってかなんとか事なきを得た………のだが、途中順番待ちの連中が割り込みしただので喧嘩したり、材料が足りなくなって買いに行ったり、同じ仮装した人間に仮装のできを褒められ質問攻めされたり……本当に大変だった。
皆同じ気持ちなのか、最初はテンションの高かったクリスも机にもたれ掛かり、一生豚肉を切るマシーンになっていためぐみんは虚ろな目をしていた。
「和真…ここ1年はもう豚肉は食べたくありません、私は牛肉派になります…。」
そんな馬鹿な事を言い始めるしまつ。
「…私ってそんなに男に見えるのかなぁ。」
「贅沢言うなめぐみん、余った焼きそばを俺達は消費しないといけねーんだぞ?クリスはクリスでそう落ち込むな…店長も悪気があった訳じゃねーよ。」
「なっ!?あのねぇ、途中で来た仮装していた人達に女装上手ですねって言われた気持ちが分かるかい!?なんっで和真は言われないのさ!!なんで可愛いって褒められるだけなのさ!!ねぇなんでなのさッ!?」
「ちょ、おい…!落ち着け、めぐみーん助けてくれぇ!!」
俺の服の襟を持ちガクガク揺さぶりながら暴れ始めるクリス。
めぐみんがそんなクリスと俺を面倒くさそうにチラリとみると、ソッポを向いてちょむすけとじゃれ合い始めた。
「……そもそも、なんで和真は男なのにそんなに可愛いのさ、私よりも可愛いじゃん…。」
落ち着いたかと思うと、今度は俺の足にしがみつきながらヘロヘロと座り込んでいく。
………ハァ…。
「なぁクリス?皆はクリスの可愛さを分かっていないだけさ、俺はクリスの可愛さを知ってるからな?しかもお前は女神なんだ、もっと自信持てよ。」
「………なにさ、和真の癖に。」
「おいこらどういう意味だ。」
失礼な事を言うクリスから離れると、俺は残った焼きそば10パック程を覗き込む。
これを食わないといけないのか……めぐみんにはあぁ言った手前、文句を口に出せずにただ憂鬱な気分になる。
「………はぁ…すまない、今帰った…。何か食える物はあるだろうか?」
と、どんよりした雰囲気が流れていた我が家に一筋の光が差し込んで来た。
「おぉダクネス…!良い所に帰ってきた、ほら。大量の焼きそばだ。」
「YAKISOBA…?何だかとても腹のすく匂いだな……な、なぁこれ食べても良いのか?」
「そりゃ勿論!なんなら全部食っても良いんだぜ?」
「な!そ、そうか…是非頂こう!!」
ワクワクした様子で焼きそばを食べ始めるダクネス。
………なんだか、そんなに美味そうな表情で食われたら頑張ったかいがあったってもんだ。
しかしダクネスも随分と疲れた様子だ、領主の仕事はやっぱり疲れるのだろうか…。
「俺が言うのも何だが、ダクネスも随分と疲れた様だな…顔色が悪いぞ?」
「顔色だって悪くなるさ、領主の仕事がこんなに大変だなんて思わなかった……。」
取り敢えず俺はダクネスにお茶を入れる事にした。
ダクネスはお茶を受け取ると、力なくそれを啜りしみじみと息を吐く。
「ありがとう……。何だが私は、ここ数日で一気に老け込んだ気がする……。」
「大変そうだなぁ…でもなダクネス?めぐみんが名前を馬鹿にされて子供と喧嘩したり、お前が冒険中に敵を集めすぎて依頼所じゃなくなったり……俺がそんな苦情を受けて頭を下げている時も、大体そんな感じだって覚えとけよ?………ま、明日からは俺も祭りを楽しむだけじゃなく、巡回的な事もするから苦情も多少は減ると思う。もうちょっとだけ頑張ってくれ…な?」
俺の慰めを受けたダクネスは、よほど弱っていたのか瞳を潤ませる。
「あ、ありがとう……!お前だけだ、分かってくれるのは……!!思えば何時もお前に苦労を掛けていたのだな……。」
泣きながらも焼きそばを食べ止めない所をみるに、こりゃ飯を食う暇もなかった程忙しいかったみたいだな。
俺は何時の間にか寝てしまっていたクリスとめぐみんを抱えると、飯を食うダクネスを尻目にそれぞれの部屋へと運ぶ事にした…。
___女神様大感謝祭二日目。
昨日の疲れからか、昼過ぎまで寝ていた俺は身体の悲鳴を聞きながらリビングまで降りていた。
そこにはボーっとしているクリスと、ちょむすけを抱いてソファにうずくまっているめぐみんが居た。
「おそようお前ら…ダクネスは?」
「…ん?あぁ、ダクネスは朝早くから領主の仕事に行ったよ。」
そう言ってまたボーっとするクリス。
そう言えば昨日言ってたな、何時もより随分と疲れた様子だったし……そうだな。
「おいクリス、めぐみん、今からデート行こうぜ。」
「えっ?」
「……何ですか、遂に女を侍らかす事にしたんですか?」
ギョッとした目で驚くクリスとは対照的に、ジト目で何か疑う目でような俺を見つめてくるめぐみん。
人聞きの悪い奴だ…まぁ、願望がないって言ったら嘘じゃないけど。
「違うわ。…ほら、ダクネスがだいぶ忙しそうだろ?俺達も楽しむだけじゃなく、同じ仲間としてアイツの手助けでもしようぜ?って。まぁ巡回だよ巡回。」
「あぁそう言う事ね。」
「素晴らしい心掛けだと思いますよ。でも私はパスでお願いします、昨日の疲れであまり動きたくないのもありますが…この後ゆんゆんと約束があるので。」
少し残念そうなクリスと一緒に、手をヒラヒラしながら見送るめぐみんを尻目に外へと出る。
しかし昨日と同じで随分と熱狂しているな……チラリとクリスを見ると、やはり女神としてはこういう行事は嬉しいのか見るからにニマニマしていた。
「あ!ねぇねぇ和真和真、アレ食べようよ!」
「ん?うわ、懐かし!」
そう言ってクリスが指を指したのは、あの懐かしきかき氷の屋台。
かき氷か……何時ぶりだろうか。
二人でかき氷屋台の方へと足を運んで行くと、何処か見たことのある人物が居る様な……。
「ってあんた、アクシズ教徒の!」
「ん?あらあの時のお兄さんじゃないですか!いやー貴方がたの目まぐるしい活躍は耳にしていますよ!!」
アルカンレティアに行った時、アクシズ饅頭を入り口で配っていたお姉さんだった。
まさかこんな所で再会するとは……どうせなら仮装してくるんだったな。
「貴方達には我々アクシズ教徒一行、感謝しています!そんな訳でコチラ、お馴染みアクシズ饅頭をサービスしますね!」
アクシズ饅頭をクリスに渡すと、俺にかき氷を二つ渡してくる。
「有難うアクシズ教のお姉さん!」
「いえいえ!お兄さん二人も頑張って!!」
そう言われ、さっきまでの笑顔は何処へやらスンッと落ち着いた表情へと変貌したかと思うと、急に自分の胸に手を当てるクリス。
「…ま、まぁあの人も悪気があった訳じゃないさ。」
「うん…それは分かってるよ?分かってるけど…ね…。」
「あーもうほら!かき氷食って元気だせ!」
そう言ってクリスにかき氷を差し出す。
しかしクリスは饅頭で埋まった両手を少し持ち上げ下ろすと、口を開けて立ち止まる。
……え?アーンしろってこと?
俺がタジタジしていると、チラリと片目だけ開け俺を見つめるすぐまた閉じてしまった。
喉を鳴らしゆっくりとかき氷をクリスの口へと運ぶ。
………やばい、なんか背徳感が凄いな。
「…和真ってアレなんだね、されるのは良いけど自分からするのは躊躇するんだ?」
悪戯顔でニヤニヤしながら俺を見てくるクリス…クッ!この野郎!!
昨日と言い今日と言い、なんだかクリスにはしてやられるばっかりだな。
何だが気恥ずかしい状態にされ、たまったもんじゃない俺とは裏腹に笑顔へと戻ったクリスと街中を歩んでいく。
時折クリスに食べさせつつ俺もかき氷を食べ進める。
どんどんと中心部へと進んでる為先程よりも盛んになってくる店や人々、見知った顔を増えてきた為さっさとかき氷をかき込む。
皆の前でやらされるのはたまったもんじゃないからな…。
名残り惜しそうに空っぽのかき氷をチラリと見て俺に訴えてくる……が、鋼の意志でそれを断固無視を決め込む事にした。
………と、どうやら仕事の時間みたいだ。
何やらギルド前で見知った顔が言い争いをしていた様子だ、場合によっちゃ加勢に行かなきゃいけない為急ぎ足で向かう。
「___か…ら!テメーがぶつかってきたんだろうが!肩の骨が折れたけど、三十万エリスで許してやるって言ってんだろうが!!」
「何を馬鹿な!?確かにぶつかったのは悪かったが、多少コツンとなっただけだろう!!おおほら吹っ掛けるのもいい加減にしろ!!」
「………何してんだお前ら。」
そこには何時もの様に酔っ払ってダル絡みするダストと、何故ここに居るのが不思議なクレアが激昂していた。
「あん?っておい和真!お前からも言ってやれ!このねーちゃんが俺の肩の負傷に対しての補償をしないって言うんだぜ!?コイツのせいだってのに!」
「はぁ、和真殿。友人の少ない私が言うのもなんだが…付き合う人間は考えた方が良いぞ?」
ごもっともです。
「この馬鹿が!酒代はリーンにでも土下座して貰ってこい!!」
「なんだと!?この野郎俺を裏切るのか!「『バインド』!」あこの野郎離せクリス!おい和真!和真ー!!!」
クリスに捕まえられズルズルとギルドの方へと引き摺られるダストを尻目に、俺はクレアに向き直る。
「すまんかったなクレア、アレは根は良い奴なんだよ…うん。俺の顔に免じて許してやってくれないか?」
「……しょうがない、和真殿が言うなら___って、今はそれ所ではないのだ!!」
先程の呆れ顔とは打って変わり、急に焦った表情へと変わると俺の肩を掴んでくる。
「和真殿!アイリス様を見なかったか!?実はお忍びで来たは良い物の…この通り、逸れてしまったのだ。レインとは今別行動で探している所、先程の状態だった訳だ。」
なんだって!?
「おいそれ大丈夫なのか…?クソっ!なんでお前が居て俺の可愛い妹が危険な状態に陥るんだ!!」
「うっ…す、すまない。私自身、あまりこういう事に慣れてないのもあって少し浮かれていた様だ。」
ガチ反省するクレア…まぁ浮かれるのは分かる、それはしょうがない。
「まぁ事情は分かった。俺に任せとけ、アイリスを探しつつ街の巡回をしてやるよ!」
「本当か!あ、ならば声を掛ける時は『アイリス』ではなく、『イリス』と偽名で呼んで欲しい。一応お忍びだからな…あまりおおっぴらに名前を晒す訳にはいかないのだ………頼んだぞ、和真殿!」
「あぁ任せろ!っと後、俺の事は和真殿、じゃなく和真だろ?これからも宜しく頼むよクレア。」
「ッ…!あぁ、分かった…和真。」
そう言って少し明るくなった顔でアイリス探しに走り出したクレア……フッ、アイツも見てくれ良いからな。
前世の俺じゃ考えられない位可愛い女の子と友人になれてるからな…この調子で、和真さんカッコいい抱いてハーレム計画を進めるんだ!
「なにいやらしい事考えてるの?」
「ヒュッ……!!!!」
何時の間に後ろに居たのか、とっても怖い顔をしたクリスが立っていた。
人間、驚き過ぎると声が出ないとはこの事だな……さっきから心臓のドキドキが止まらない。
「…なんだろう、クリスを見てたら心臓が止まらないよ。」
「それはどうも、で?何いやらしい事考えてたの?」
ジリジリと腰のタガーに手を掛けつつこちらに近寄って来るクリス。
「って、別に俺がいやらしい事考えてるのは何時もの事だろ。」
「それはそうだけど開き直るなよぉ…。」
シリアスな雰囲気から一転、何時もの調子を取り戻す。
アイリスの件をクリスに伝え探す事にした俺とクリスは、先程よりも用心深く周り見渡しながら屋台を回っていく。
……なんだか出る時は冗談まがいに言ったデートも、この状況をみたらデートって言っても差し支えないのではないだろうか。
日本ではないにしろ、デート相手は女神様って言う見る人が羨む状況。
クリスを連れてきて心底良かったと、心から思うなぁ……。
「ん!ねぇ和真それも頂戴?」
「はいどうぞ。」
あれからアイリスを探しつつ、かなりの屋台を回って今は綿飴を食っている所。
これまた見慣れた背丈の少女を発見した。
……あれアイリスじゃね?
「おいクリス、見つけたぞ。」
「ふぇっ?ふぁ、ふぉんまらー!!」
綿飴を食べながらアイリスの方へと近付く。
「おーい!アイリ……じゃなくて、イリスー!!」
「いりふふぁーん!!」
お前は食べてから口を開くと突っ込みたくなる。
俺達の声に気付き振り返る少女…やっぱりアイリスだった。
「あ!お兄様!!」
灰色のローブを被ったアイリスが手を振りながらこちらに走り寄ってくる。
テトテトと効果音を付けたくなる様な可愛さとは裏腹に、一般的な冒険者を馬鹿にした足の速さでこちらに向かってくる。
ていうか早すぎね?なんか思いっきり手を広げて抱きついてくる気満々みたいだし…。
俺は腰を落として衝撃に耐えうる準備をする………よし、バッチコーイ!!
「お久しぶりでーす!!」
「ひさしぶグハァーーッ!!!」
この衝撃……思い出した!日本でトラックに跳ねられた衝撃と瓜二つだ!!
「うわぁ!?大丈夫和真ッ!!」
すぐ傍に近寄ってきたクリスに抱き抱えられながら身体を起こす。
「ご、ごめんなさいお兄様!!」
頭がクラクラする感覚がまだ残っているが、クリスに肩を借りなんとか立ち上がる。
「大丈夫だアイリ……イリス、お兄ちゃんはこの程度痛くも痒くもない!」
「さ、流石ですお兄様!!」
「…どの口が言ってるんだよほんと……。」
耳元で余計な言葉がボソっと聞こえたが素知らぬフリ、俺は手を開きハグの準備をする。
「ほら、おいでイリス。」
「…!久しぶりですお兄様、会いたかったです!!」
さっきとは違いゆっくりと優しく抱きついてくるアイリス…やっぱり俺の妹は可愛いな本当!!
「クリス様もお久しぶりです!」
「久しぶりイリスちゃん。元気してた?」
「はい!皆様方のご活躍、王都に響き渡っています!!」
そこからは三人でワイワイと雑談の時間。
最近城を騒がしくする人が居なくなって寂しいとか、クレアがやっと本気でボードゲームをしてくれる様になっただとか、積もる話しが沢山あった。
……が、時間がアイリスを許してくれない。
「良し、それじゃあそろそろ戻ろうかイリス。クレアも心配してたしな。」
「あ…もうそんな時間ですか。」
名残り惜しそうな表情で俺とクリスを交互に見ると、さっきまでの可愛らしい顔から一国の姫としての、引き締まった顔へと変わる。
やっぱり俺も名残り惜しいからもうちょっと遊ぼうかな、なんて思っていると___
「あ!見つけましたよイリス様!!」
何時の間に近くに居たのか、クレアと息を切らしたレインが近寄って来る。
「見つけてくれて有難う和真!さ、帰りますよイリス様。」
「おう、それじゃあ元気でなイリス!」
「またねー!!」
「はい、また会いましょう!」
クレアとレインに連れられ、ちょくちょく振り返りながら離れていく。
……あれを見たら、魔王討伐も吝かではないって気持ちになれるよなぁ…。
「…私達も帰ろっか。」
「そうだな。」
___女神様大感謝祭二日目、終了。
___女神様大感謝祭三日目。
自室のベットで寝転がる俺に、仮装してアクアの姿になっているめぐみんが部屋に入ってきた。
「和真!起きてますか?」
「んー?どうしためぐみん。」
扉を閉めベットの傍まで寄ってくる。
「和真、私とデートしませんか?」
……何を企んでるんだこいつ?
「あ、何を企んでるんだと言いたげな顔ですね。私も昨日今の和真とおんなじ気持ちでしたよ。」
「まぁ行くのは全然構わないんだが…如何せん俺の足が言う事聞いてくれないみたいだ、コイツをどうにかしてやってくれ。」
正直昨日歩き疲れたし、何だかんだアクアの姿になれって言われそうだし…色々と面倒くさい。
そんな俺の気持ちを汲み取ってか、少し寂しい表情をしたと思ったら俺の服に手を……、
「ってうぉっ!?ちょ、ちょっと何してんのお前!?」
俺は脱がされそうになり飛び起きる。
「もう和真の裸には慣れましたよ、ほらさっさと着替えて仮装デート行きましょう!ね?」
「いーやーだ!今日は花火まで家でゴロゴロするって決めてんだ!」
「クッ!この男。折角可愛い女の子がデートに誘ってくれてるんですよ!?どうして乗ってこないのですか!!」
この野郎自分で可愛いとか抜かしやがった!
俺はなんとか抵抗しつつも、何故か俺よりも力の強いめぐみんの手によってあれよあれよと言う間に………。
鏡の前では、何時の日か見た可愛らしい俺が座っていた。
「これが……私…?」
「もうそのネタは飽きました、ほら。行きますよ和真!!」
「いってらっしゃーい。」
昨日とは立場が代わり手をヒラヒラしながら見送るクリス。
さっきはアレだけ嫌がってはいたが……正直、このアクアの姿ちょっと気に入ってるんだよなぁ。
めぐみんとはクリスと行ってない屋台を回る事に決め、早速目に入った射的に目を付ける。
「おいめぐみん、なんか欲しいのあったら取ってやるよ。」
「え、うーんそうですねぇ…。あ、ならあの猫の縫いぐるみが欲しいです!ちょむすけみたいで可愛らしいので。」
店主に金を払うとそれを聞き、射撃スキルを発動させ狙いを定める……。
持ち前の運の良さとスキルを信じて引き金を引く___
「っと、ほら他に欲しいのあるか?」
「凄いですね…少しズルい気もしますが、お言葉に甘えて隣の冬将軍の縫いぐるみが欲しいです。こめっこが喜びそうなので。」
そんな妹思いのお姉ちゃんの願いを聞き止め、次から次に商品を欲しいままにする。
俺もめぐみんもテンションが上がってきて、次は次はと話していると……
「ね、ねぇちゃん…いやにいちゃん…?そろそろ勘弁してくれねーか…?」
引きつった泣きそうな顔の店主にそう縋られ、仕方なく俺とめぐみんは射的を後にすることに…因みににいちゃんです店主さん。
それからも持ち前の運の良さでくじ引き関係の店も荒らし続け、俺とめぐみんの手元は商品で一杯になった。
「……なんというか、私が言うのもなんですが随分と酷なことをしてしまいましたね。」
「良いんだよ。祭りってのは本来店主との戦いなんだから…。俺の居た国なんかでは、高価な景品をくじの一等に飾っておきながら、完売しても出ないなんてザラだったんだぞ?」
「一度じっくりと和真がいた国の話しを聞いてみたいですね……。それよりも、何だかんだお祭り悪くないですね。紅魔の里に居た頃と違って楽しいです。」
そう顔を綻ばせ、それに釣られ俺も辺りを見渡す。
何時もとは違うアクセルの街。
そこではバニルがお面屋ならぬ仮面屋を開いていたり、それを嬉々として買うサキュバス達に交じり、めぐみんまでもが仮面を欲しがったり。
何故かバニルの店の手伝いに駆り出されているゆんゆんが居たり。
かたや女神の格好で溢れた通り道では、普段はあまり見る事のない獣人や耳の短いエルフ、ドワーフ、その他様々な種族が見られた。
篝火に照らされた幻想的な光景に、俺は今日ほど異世界に来たんだなと感じた事はなく。
「本当に、異世界なんだな……。」
「………」
気が付けば、そんな言葉を小さく溢していた。
隣にいためぐみんが、そんな俺をジッと見ながら少しだけ不安そうな表情を浮かべる。
「……どうした?」
「………いえ、別に。」
あのめぐみんが珍しく言葉を濁す。
コイツラにも、いつか異世界からやって来たと言うべきなのだろうか。
それを言った所でどうにかなるものでもないし、変わる訳でもないが……態々隠す必要もない。
それにクリスがここに居る理由だったり、コイツラも多少なりとも疑問がある筈だ。
いつかこいつらに、俺の国の話をしてやろうか___
とその時、街の貯水池の方から腹に響く振動と共に音がなる。
花火大会が早くも始まった様だ。
「和真、私達も早く向かいましょう!!」
そう言って俺の手を引っ張るめぐみん。
「えっ、ちょ、花火ならここからでも十分見えるだろ!?」
「何を言ってるのですか、私達は冒険者ですよ?ここで防戦しなくては、一体誰が祭りを守るのですか!」
……え?
嫌な予感は的中、魔法使い職とおぼしき者達が取る者も取らず駆けていく。
「な、なぁめぐみん。もしかして防戦する相手って…」
「?そんなの決まってるでしょう!あの忌々しき、虫です!!」
さっきまでの染み染みムードは何処へやら、めぐみんがワクワクした様子で俺の手を引っ張っていく。
これだから異世界は!!